なんでもできるうちの娘は、異世界ライフを落下からスタートさせる   作:オケラさん

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腹ペコ幽霊 リン・フォール

 

リンが亀裂に落ちてから早1日。

リンはある事で悩んでいた。

それは、

 

「…何か食べたい」

 

勿論、その必要性もないし、幽霊がこんな事を思うこともないだろう。いや、それを見れんとしている幽霊を除けばの話だが…

リンのこれは、それとは違う。元々人であり意識をはっきりと保っていることに加え未だに人としての感覚が抜けないが故の欲求。

 

実際にそう感じているわけではなく、人であるならこう感じているだろうな、という想像であり勘違いであり、リンの考えすぎによるものでそう錯覚しているだけである。

 

性別に関しては男という事に頓着せずにすっぱりと諦めたが、元々の娯楽というか好きなことに食べることがあった。創作を読み漁ることと、眠ることに並び好きだったこと。それが食べること。

 

おまけに、リンは亀裂に落ちる前、鉱石や薬草などを食べていた。そこで人としてはおかしいのだが、それを自覚したのはその後のことだった。

この、幽霊であろうと食べた。体に栄養となった事がトリガーとなり、リンの食欲は加速していた。

さらに、亀裂付近と思われるここら一帯は魔除けの結界の効果なのか、生物はおろか薬草や鉱物すらなく、目の前には代わり映えしない通路があるのみ。これも、食欲増大の原因となっていたのだ。

 

さらに、リンはマッピングのために魔力で目印を作っては、一定間隔に配置していた。

人一人分くらいの大きさの槍のような細長い棒を、通路の中央に目立つようにして設置していく。

 

これは、アリスへの目印になると同時に、自分の魔力を固めてあるのでどれだけ離れようと、状況がわかる。おまけにその周囲、半径20メートルくらいまで魔力掌握と似たような効果で探知も出来るという優れものだ。

 

まあ、狙ったわけではなく、偶然出来ただけであり、気づいたのは、10本ほど設置し終えた頃であった。

また、この自分の魔力を消費し続ける状況も、魔力を求める一因であった。

 

「あぁ…なんか食べたい。…お!」

 

魂魔掌握内に反応があった。

反応は前方。未探索のエリアである。

通路は途中から曲がっていたり、分かれていたりでまるで迷路のようになっているが、魂魔掌握の前では関係ない。魔力の流れから、場所を把握して駆ける。

 

「ここだっ!」

 

そこにあったのは、一面に広がる魔鉱石の穴場。天然であり、未だ手付かずの広大とは言えない空間に所狭しと顔を出す、紫色の水晶のような鉱石郡。

ここだけで一財産になるだろうそれらは、あたりに紫色の光を反射し、幻想的な空間を作り出していた。

 

「探知できていたのはほんの一部。地面から飛び出ていたところだけだったのか…嬉しい誤算だ!」

 

リンは、近くにあった魔鉱石に触れ次の瞬間、魔鉱石を白色の鉱石が覆い尽くす。

それは地面の中まで伸び、地中の鉱石も丸ごと覆い次第に蠢き、何かの割れる音を響かせながら収縮していく。

 

「うまい…」

 

リンは嬉しそうに、そして幸せそうにそう呟いた。

無意識に、見た目が人形から変化していく。

己のかつての姿を思い出したように、人形の体はやがて少女の姿になる。変化はそれだけでは終わらず、手足や髪の先から、青く薄い糸のようなものが伸びる。

これらは触手のようにうねり、あたりの鉱石など絡みついていく。

 

そしてそれらは、リンが先ほど触れた様に鉱石を今度は同じ薄い青色で覆い尽くして、鉱石を喰らっていく。

 

「成る程。密度を下げればこんな事もできるのか」

 

リンは完全無意識だった様だが、果たして幽霊としての本能的なものなのか、魔力を欲するが故にできた事なのかは分からない。

リンはこれを「魔触」と名付け、思うがままにあたりの鉱石を覆っていく。

 

そして、そこにポツンとあった、黒い球体を見つける。それはとても強い魔力と力を発しており、思わず魔触を伸ばす。

そしてリンは、少しの逡巡の後にそれに触れる。その球に触れたとき、まるで溶けるように、球がリンの魔触に流れていく。

 

それはリンの意図するものではなく、慌てて離そうとするが、液体のように絡みつき、やがてリンに取り込まれた。

 

(よくわからないが、何だったんだ?今のところ害はないけど…)

 

黒い球を間違って飲み込んで少し、体に何も変化が出ない事を訝しみつつ、再び魔鉱石喰いを開始した。

─バキン、バキ、バキバキ、パキンッ─

あたりに鉱石の割れる、だが心地の良いリズムと音が響く。

 

(もっと…もっと…もっともっともっと!)

 

やがて、リンは鉱石を残すなど頭にはなくなり、ただ魔力を欲して手当たり次第に周囲を貪っていく。

そしてその体は、より広範囲の魔力を取り込むため密度下げて肥大化していく。

 

その体はやがて周囲の壁を破壊し、取り込み、魔力へと変えて貪っていく。そこには顔や手足の区別もつかなっていき、より大きく、丸く、しかし流動的な悍ましい姿へと変貌していく。

 

そして、通路を塞ぐほどに大きく肥大化した体は、触手をあたりに這わせながら、洞窟の奥へと進んでいく。

その姿はまるで、生まれ落ちたばかりの悍ましい邪神の幼生が、あたりを侵食しながら這いずっているようであった。

 

「あぁぁ…ううぅ…」

 

その姿は知性などなく、ただ欲望の赴くまま、魔力を求めて奥へ奥へと進んでいく。

 

 

──感情が一定値に到達。スキル「抑制」が発動しました──

──再び感情が一定値に到達。スキル「抑制」が発動しました──

──スキル「抑制」が発動しました──

──スキル「抑制」が発動しました──

…以下ループ




あれ?コイツ、主人公だよね?

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