なんでもできるうちの娘は、異世界ライフを落下からスタートさせる   作:オケラさん

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※こんな事してても主人公です。
※人によってはグロと思われる描写がございます。
※感想やアドバイスなどあれば是非どうぞ


以上が守れる方のみ閲覧をお願いします。
ではどうぞ!


バケモノ

 

──感情が一定値に到達。『抑制』を発動します。

──感情の抑制が一定値に到達。スキル「貪食」を獲得しました。

──スキルの獲得及び感情の抑制により、理性値を回復。

 

 

「な、なんだぁ!」

「うわぁぁぁ!」

「地震か?崩落は?」

「いや違う!おそらく地下だ!」

「地下空間が崩れたのか?ヤバイぞ。じきに床が抜けるかも知れん」

 

ダンジョン内部。誘拐団の隠れ家にて、攫ってきた子供達を本国へ転送するために準備をしていた構成員たちが、突然の揺れに軽くパニックになる。

 

「さっきのガキは?」

「眠らせて魔法陣に置いてあります!」

「アイツは?」

「後一人、ギルド受付やダンジョン街で会った上質の子供を三人ほど、捉えに行っております」

「…そうか」

 

揺れが収まり、構成員たちはそれぞれの持ち場に戻り、大きな機械のようなものを操作していく。

これは、外見こそ機械に似ているが、本質としては魔道具である。

 

本来ならイメージや呪文、魔法陣などで操作するはずの魔法に関するあれこれを操作することができる。

例えば、転移先の変更や、長距離転移、範囲拡大や威力増加などが、さほど集中しなくても設定できる。

 

「戻り次第、子供たちを転送して本国に帰還だ」

「「「了解です!」」」

 

 

「さて。最後の標的は、ギルドやダンジョン街であった少女三名だ。分かるな?」

「……」

「一応、冒険者でランクはBらしいが…まあ、本来の実力はCくらいで、ボーナスやポイントの譲渡でも貰ったんだろう」

「……」

「一応安全策を取って、お前が襲撃者。顔を見られていて2度も彼女たちを救って信頼を得ている私が助ける側だ。それでいいか?」

「…あぁ」

 

優男の提案に、黒服が頷いたり小さく返事や相槌を返すだけの会話。

そうして男たちがダンジョンの通路を歩いていると…

 

─キィィン!カン!ガン!ガキン!

 

奥の方から戦闘音ような音が響いてくる。

誰かが戦っているようであった。

少し進むと、その姿が見えてきた。

 

「 あれは…目的の子だ。それに戦闘中とは都合がいい」

 

視線の先では、目当ての少女が一人、籠手を付けてゴブリンたちに囲まれて戦っていた。

優男は呟くと、魔法を発動させる。

 

「中位召喚 陰狼の群れ(シャドウ・ウルブズ)

 

男の影から全身黒で、まるで影で形作ったかのような狼が複数這い出てくる。

それらは音もなく、少女の背後に忍び寄り飛びかかる。

 

「─っ!」

 

どうやってか反応した少女は、大きく跳びのいて回避する。

そこへゴブリンが襲いかかるが、ゴブリンの顔面に拳を合わせて吹き飛ばす。

 

「なかなかやるようだね。やはり助けずに、敵としての登場でよかったな。じゃ、さっきの話とは逆だけど助けてきてくれない?」

 

離れたところで、小声で打ち合わせをする優男と黒服。

優男は、初見で少女の優勢を見抜き、今助けても大した恩は売れないと判断し、一度彼女を不利な状況にしてから救うというマッチポンプを思いついた。

 

「ほら…従魔と主人の間には繋がりが存在するじゃん?万が一にでもバレないようにさ」

 

──コクン。

優男の提案に、黒服が頷く事で了承を示す。

 

 

陰狼たちが、統率のとれた動きで連携し、少女を撹乱、包囲していく。

ゴブリンたちは陰狼を無視して少女へと突貫する。

 

「──っ!」

 

正面からの攻撃を捌き切り、ゴブリンたちを壁に叩きつけた後、陰狼を蹴り飛ばす事で制圧を完了しようとした少女の背後、その陰から狼が飛び出てきて…

 

─グシャ!

 

それを横から出てきた刀が切り捨てる。

続いて、同じ方向から現れた鎖が、狼達やゴブリン達へ飛んでいき縛り付ける。

 

「…大丈夫?」

 

鎖と刀の発生源。通路の影から黒尽くめの男が出てきて声を掛けてくる。

見た目は忍者とアサシンを足して二で割った後に、申し訳程度に衣装の形が魔法も使える事をアピールしているようだった。

 

──コクン

 

少女は頷く事で返答する。

それを見た黒服が、縛り上げていた魔物達に何やら攻撃を行ったらしく、魔物達は破裂して消えた。

 

しかく

 

「だ、大丈夫かい⁉︎」

 

戦闘が終了して少しして黒服の後ろ、洞窟の奥の暗闇から優男が登場する。

いかにも慌てて駆けつけたと言った様子の優男を目に留めて、黒服が少し目を細める。

 

「また会ったね。危ないところだったみたいだけど一人かい?」

 

…コクン

 

「はぐれたのかい?迷子?」

 

…コク

 

「そうか。じゃあ、取り敢えず安全なところに案内しよう。他の子たちは、僕と仲間で必ず見つけ出そう」

 

…コク

 

「よし。じゃあこっちだ。付いてきて」

 

黒服との会話と同じように、優男の質問に頷く事で反応する少女。

そして、三人は洞窟の奥へと歩き出した。

俯きながら歩く少女の口角が釣り上がり、三日月の様な笑みを浮かべている事に、男たちは気がつかなかった。

 

 

 

「君を届けたあと、他の子たちを探すけど、何か手がかりになることは覚えてないかい?」

 

─スッ

 

男の問いに、少女はちょうど出た分かれ道の奥を指差した。そこは、誘拐団のアジトとは別方向の洞窟の奥へと進むルートであった。

 

(ふむ…そういえばこの子とよく似た子がいたな。何かわかる事があるのか?だとしたら好都合だな。まさかこんな近くにいたとはラッキーだな)

 

優男はそう判断し、

 

「よし、お前はこの子を届けてくれ。俺はこっちに行こう」

「…わかった」

 

優男と別れ、黒服と少女が誘拐団のアジトに向けて歩く。

互いに喋ることはなく、静寂に足音だけが響く。

 

アジトへあと半分ほどの道のりというところで、突然少女が立ち止まった。

 

「……。」

 

黒服は僅かに顔を顰めながら少女の様子を確認する。

 

「…どうした?」

 

問いかけても返事はなく、少し待ってみても動く様子はない。

腕を取り連れて行こうとするも、少女はピクリとも動かない。

 

(大人である自分がこんな華奢な少女に負けるはず…)

 

黒服がそんな疑問を抱いた頃、突如少女がクスクスと笑い出す。

訝しげに少女を観察すると、自分が掴んでいたはずの腕が、手にぴったりとくっついて離れない事に気がついた。

 

「──っ!」

 

慌てて対処しようとするも、まるで巨石に貼り付けられた様に動かない。

少女の笑い声は次第に大きくなり、ケタケタと耳障りなものに変わる。

 

「─ひっ!ぁ…ゔぁぁぁ!」

 

少女の背後に現れたそれを見た黒服は、思わず声を悲鳴をあげた。

そうしなければ、恐怖と狂気に飲まれてしまいそうだったから。

 

だが、所詮それも無意味であった。

黒服の足元から地面が這い上がってくる。まるで、大地そのものが生きており男を飲み込もうとしているかの様である。

黒服は、スキルや魔法を持って逃亡を図ろうとするも、少女の背後から伸びる太い触手が、黒服の動きの邪魔をする。

 

「ひぃっ…ああぁぁぁぁ!…ぁ。ぉ、おご…」

 

じわじわと時間は過ぎ、流動的な大地はやがて男を飲み込み固まり少女の元へと動いていく。

途中で色が大地の色から薄い青白へと変わり、中の様子もよく見える様になる。

一つの鉱石と化した男とその周りの魔力は、やがて「バキバキ」という音を立てながら縮小していく。男は動けず、声も上げれずに体ごと砕かれ、縮められていく。

 

常人であれが吐き気を催す様な、か弱い少女であれば卒倒しそうなその光景を、その少女は楽しそうに笑いながら見つめていた。

 

やがて結晶の中は赤く染まり、それすらも無かったと言うように元の大地の色に戻る。

やがて静寂が戻った空間で、少女は踵を返して歩き出す。明かりもなく、道もわからないはずの洞窟の中で、少女は嬉しそうに軽やかな、しかし確かな足取りでもって、優男の追跡を開始した。




「主人公はどこへ向かってるんだ?」「何をしたいの?」ご心配なく!ちゃんと考えておりますとも。

次回はフリッツ少年(誘拐団と一緒にいた子供)視点でございます。
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