なんでもできるうちの娘は、異世界ライフを落下からスタートさせる   作:オケラさん

45 / 52
前回の話が二つ投稿されていたようで…

誤字脱字報告やアドバイスなどあればお願いします。


フリッツ少年(2)

 

魔物には危険度が割り振られており、ランクは冒険者と同じく、基本的にE〜A-である。

これは、同じランクの冒険者が対面で最低三名、一個下の冒険者なら最低六名くらいで対処を推奨されている。

 

Aランクを超える魔物はそうそう出現せず、もし出たならば国もしくは周辺国家が総力を挙げて討伐を行う。

AAランクなどそれこそおとぎ話や遥か昔にいたとされる「死霊王」や竜族の祖、竜帝国の初代皇帝である「竜皇」ぐらいである。

 

そしてこの狼は、種族名を「シャドウウルフ」という個体での危険度D〜C-の魔物である。

 

影を泳ぐもしくは操る特性を持っておりその特性上、厄介であるためこのランクだが、能力はそこまで高くない。

能力を使わなければそこら辺の狼と変わらず、狩人などに仕留められる事例もある、でかい狼である。

 

しかし、狼とは基本的に群れで行動する生き物であり、当然ながら群れると危険度が跳ね上がる。

どのくらいかというと、Dクラスの個体の群れで10匹ほどだとC+、20を超えた群れがあると一気にA-だ。

 

中でも、統率個体と呼ばれる個体は、個で危険度がC、報告ではB+まで確認されている。

そして大きな群れだとそれに準ずる幹部のような個体がおり、今の所はC-ランクとされている。

 

 

この個体はランクDであり、魔物との戦闘経験や、狩りを日常的に行うものならば対処は十分可能であった。

しかし、それは平時の場合である。

 

その目は明らかに理性がなく、タガが外れているのは明白でありおまけに筋肉が隆起しどこか歪な姿であった。

 

「GRRUUUOOOO!」

 

狼が一つ咆哮を上げ、恐怖に立ち止まっていた村人たちへ襲いかかる。

そのひと噛みで、その爪のひと振りで家は崩れ次々と人が死んでいく。

 

………

……

 

「くそ!なんてこった!」

 

遠くで状況を見ていた団長と見張りが絶望に満ちた顔を浮かべていた。

理由は、先ほどの惨状だけでは無い。

シャドウウルフは群れで行動するのだ。

 

そして今回も例外では無い。

先頭にいた狼が1匹、侵入してきただけ。

たったそれだけだ。見張り台からは、まだ複数の影、そして統率個体と思われる巨大な狼がこちらに到着しようとしているのが見えた。

 

「くそ!どうすれば…」

「奴らと反対側の柵を壊し、森に逃げるというのはどうでしょう?」

「バカ野郎!それこそこちらから死にに行くようなモノだろうが!」

「いや、ですがしかし…この村にあれらを撃てるだけの戦力など…」

「…あぁ、分かってる。お前が正しい。すまない、その選択しかないのを認めたくなかったんだ…」

「隊長…」

「くそ!やはりそうするしか無いよなぁ…よし!村人を護衛しつつ門を一部破壊。そこから、反対側の森を抜けて国へと逃げ延びる。お前はこの事を他の奴らに伝えて、村人達と一緒に行け!」

「了解しました!では、隊長は?」

「はん!奴らを少し足止めして追いつくさ。そうすれば少しでも、他の奴らの生存率が上がるだろう?」

「隊長…」

「わかったらさっさと行け!」

「─っ!はい!」

 

 

「さてと…」

 

部下を見送り、見張り台からゆっくりと狼達を確認する。

 

「これらを相手取るにはどうするか…まずは家を壊して影を減らして…」

「パパ!」

「あなた!」

 

隊長の思案を遮り、焦りと恐怖が渡来する。

ここにいて欲しくない、もう会えないだろうと考えていた愛しい家族の声だ。

家内と息子の二つの声は、すぐ下から聞こえてきた。

見張り台を降りてみると、やはりそこには二人がいた。

最後に一目見れて嬉しいが、今はそれどころではない。

 

「何やってんだ!こんなところで!早く逃げろ!」

「で、でもあなた…」

「死にたいのか!いいから…」

「やだ!お父さんも一緒じゃなきゃやだ!」

「そんな事を言っている場合ではないんだ!おねがいだから早く逃げてくれ…」

「……」

「お父さん…」

 

普段見せない父の弱った姿に衝撃を受けたのか、母と子供は静かになった。

いや、母親の方はやはりダメだとわかってた顔で、息子の方は何かを堪えるような顔をしていた。

 

「さぁ。わかったら早く逃げるんだ」

「うん」

「あ、あな…」

「よし。いい子だ。ママはお前が守るんだぞ?」

「うん」

「あなた…あなた…」

「よし!じゃあもう二人で逃げられるな?」

「うん」

「あなた!」

 

父と息子の別れの約束、それを遮るように妻の絶叫が響く。

 

「あなた!あれ!あれを…」

「うん?どうし…」

 

妻の指差す先、そこは確か部下に柵を壊させに行ったところだ。

だがそこには脱出の希望や無事に逃げた人々の姿などなく、無残に蹂躙される村人の姿があった。

 

脱出口に人が群がっていたところを狙われたのだろう。

村に侵入したのは最初の一匹だが既に二匹目三匹目が壊れた柵の間から入ってこようとしていた。

大きさは一匹目の倍ほどあり隙間を通るのに苦労しているようだったが、じきに柵を壊して入ってくる事だろう。

 

今更もう一度柵を壊す時間はなく、出入り口には狼。詰みであった。

 

 

「とりあえずここに隠れろ」

「大丈夫だからね」

 

もはや脱出は不可能。ならばと父と母は見張り台の隙間に息子を隠した。

 

「お母さんも…」

「無理よ。そこには入れない。狭すぎるもの」

「おい。奴らがこちらに気づいたぞ」

「じゃあね。フリッツ…」

 

そこからは、一方的で残虐な数ある悲劇のうちの一個が繰り広げられた。

しかしそれらは、まだ幼い少年が見るには酷なものであった。

 

目の前で父が殺され、母は生きたまま頭から囓られた。

不幸か幸いか、父と母が近くで死んだためにフリッツの匂いが隠れて狼たちに見つかることは無かった。

 

……

 

それからどれくらい経っただろうか?

1秒が1時間にも感じるほどの緊張の中、暗闇に息を潜め続けた。

やがて辺りは静かになり狼の破壊音も、遠吠えも、村の人たちの悲鳴も聞こえない。

 

何をするでもなくただ怯え、恐怖やら何やらが入り混じった嗚咽が混じりに泣いていたフリッツに、光が差した。

 

「おや?生き残りか。それも子供だとはな。全くドルクは仕事が荒くていけない。こう言った資金集めも大事だというのに…」

 

それが、フリッツ少年と誘拐団の優男との出会いだった。




早い事で今年ももう十二月ですね。
沖縄住まいの私ですがまだまだ暑く、昨日は28度でした。(異常気象です。)
例年なら既に冷たい風が吹いている時期なんですが…

今年は色々とおかしいようなので、皆様もどうか年終わりまではお気をつけください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。