なんでもできるうちの娘は、異世界ライフを落下からスタートさせる 作:オケラさん
「僕たちは魔獣被害者を助けたり、支援しているんだ。君も協力してくれるかい?」
そうあの人は言っていた。
実際に村が狼に襲われた後から今まで信じていた。
それ故に、その今までを否定しひっくり返すような事実を認めることが出来なかった。
知りたく無かった。
聞いてしまった。
「ほら、誘拐団がダンジョンにいるってバレたら面倒なことになるじゃん?」と、連れてきた少年に言い放った事。最初は、ダンジョンで子供を保護してきたのかと思った。今までもそう言ったことがあったからだ。
だが今回は、明確に誘拐団を庇った発言に自分も誘拐団のメンバーであるかのような言い草であった。
少年は眠らされ、そのまま大きな扉の奥に連れていかれてしまった。
それらを陰で見ていた時は顔が青ざめて震えていた。今まで自分がやってきた事は何だったのかと。
彼らは子供を保護していたのでは無かった。
子供を攫ってきていたのだ。
いや、自分が付いて行った時には例外なく大人達は魔物に殺されており、そこを助けていた。
それらも全て仕組まれたものだったのか?
親を殺し、そこを助けて子供を騙し連れて行く、そういう手口だったのだ。
なら、自分が今までしてきた事は…
その協力をしていたのなら…
自分と同じ不幸な目に遭う子供を減らしたい、その一心で今まで手伝ってきた。
そのために死ぬ可能性がある子供に避難を促したりもした。
男に囲まれて生きてきた為、優しい言葉遣いなどは分からなく怖がらせてしまうこともあったが、それでも子供達を助けるために避難を促し続けた。
親と思しき人達にも避難勧告をしたりした。
親が目の前で殺された後もその信念でここまで生きてこれたのだ。
だから信じたく無かった。
◇
「ハッ…ハァハァハァ」
荒い息遣いと足音だけが響く暗闇の中。
少年は駆けていた。
この事実を少しでも頭の隅に追いやるように。
少年は駆けていた。
はやくこの事実を他の人に知らせるべく。
少年は駆けていた。
そこから逃げるために。
(逃げなきゃ…伝えなきゃ…この事を誰かに…)
幸い、誘拐団のアジトから少しは一本道で、カーブで先が見えないところもあるが、迷う事はなかった。
しばらく少年が走ると、少し先から音が聞こえてきた。
(なんの音?戦闘音とは違うみたいだけど…何かが砕ける音?)
その、ゴリゴリと何か硬いものを砕くような音は進むに連れて鮮明になっていく。
やがて、音の出所を目視出来るまでに近づいた。
そこには、全身を青い水晶に包まれ、そのまま潰されていく黒服の男とそれを笑いながら見ている少女の姿があった。
(あの男は!それにあの子はギルドで注意喚起した…)
フリッツは混乱の極みにあった。
先程、死ぬほど憎む存在になった盗賊団の一人、優男と行動を共にすることが多く実力も高い黒服の男。
そんな男が、自分がか弱そうだとギルドで脅かした子に殺されている。
あの子は何だ?少なくとも人間では無い?
そんな事を考えるフリッツを少女がチラリと一瞥し、背を向けて歩いていく。
付いて行かなくてはいけない、何故かそう感じフリッツは慌ててその後を追った。
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