東方幻守録 〜Guardian of illusion〜   作:希望光

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どうも、あけましておめでとうございます(遅い)。なんとなく書きたいという理由だけで書き始めました。
今回はこのシリーズ初投稿ですが、イメージ曲の紹介をさせていただきたいと思います。
今回のイメージ曲は豚乙女さんの『幻想のサテライト』です。この曲の歌詞などを後半部分はイメージしながら書いてみました。では、どうぞ。


前日録 幻影の狭間

 燃え盛る炎の中に1人の少年がいた。その少年は、もう息が無いであろう少女を抱いている。

 その少年の見つめる先、灰色に染まった空に1つの黒い影があった。

 少年はその影を見つめながら、ただ泣くことしかできなかった——

 

 

 

 

 

 とある時代の京都にあるとある大学にて、2人の少女が話していた。

 

「今日はどうするの蓮子?」

 

 蓮子と呼ばれた黒髪の少女が答える。

 

「今日も昨日と同じところを調べに行こうと思うだけど。それでいいかなメリー?」

 

 メリーと呼ばれた少女が金髪を風になびかせながら笑顔で頷く。

 

「うん!」

「じゃあ行こうか——」

 

 そう行った彼女は何かを見つけた。

 

「あれってもしかして」

 

 彼女の向いている方向には1人の少年がいた。

 

「おーい」

 

 蓮子に呼ばれた少年は振り返る。髪と双眸はそれぞれ黒。見た目は彼女らより少し幼く見えた。しかし、どことなく大人びていた。

 

「……ん?」

「やっぱり昊空君だった」

 

 昊空と呼ばれたその少年は彼女らの側に近づいてきた後、2人を見てから問いかける。

 

「どうしたんだ蓮子? それにメリーも。秘封倶楽部の活動か?」

「うん。昊空君も一緒に来ない?」

 

 メリーに問われた昊空は少し考えてからこう返す。

 

「遠慮しておくよ。今日はこの後バイトが入ってるから」

「そっか、残念だな〜」

「昊空君も一緒に秘封倶楽部として活動しようよ」

「考えておくよ。それはそうと、今日は何をするんだ?」

「今日は向こうの森を調べてみようと思うの」

 

 蓮子が答えたことにメリーが付け加える。

 

「といってもここ数日ずっと同じところを調べているけどね」

「あっちか……」

「どうかしたの?」

「いや、最近『あっちの方が危ない』って言う話を聞いたりしたからなと思って。止めはしないけど注告はしておくよ。あまり奥の方に入るなよ」

 

 それに、と言って昊空は続ける。

 

「ここ数日、なんとなくだけどあっちの方から嫌な予感もするし」

「そっか。取り敢えず気をつけてみるよ」

 

 昊空は何となく腕時計に目を落とし言った。

 

「おっと、もうこんな時間だ。俺はこれで失礼するよ」

「うん、じゃあね」

「また明日」

 

 そんなやりとりの後、昊空は走って行った。

 

「私達も行こうか」

「そうだね」

 

 メリーと蓮子、秘封倶楽部の2人も目的の場所に向かって行った。

 この時宇佐見 蓮子、マエリベリー・ハーンことメリー、そして霧島 昊空(そら)の3人はまだ知らなかった。この後に待ち受けているとんでもない出来事を——

 

 

 

 

 

 その日の夜、バイトから帰ってきてある程度のことを済ませた昊空は寮にある自室で寝巻きに着替えてベットの上で横になっていた。

 明かりを消し、目を閉じてまさに眠りにつこうとしたその瞬間、ある光景が見えた。

 森の中を走る2人の少女、2人を追いかけるかのように後ろから無数の影が迫っている。

 

「……?!」

 彼は飛び起きた。そして、妙な胸騒ぎを感じた。今見た光景が夢ではなく現実である。そんな気がしてたまらなかったのである。

 ベットから出た彼は、急いで着替える。

 

 そして小さめのレジャーリュックと、布に包まれた棒状のものを掴み取る。

 そして、靴を履いた彼は彼女らが——秘封倶楽部の2人がいるであろう場所へとかけて行った——

 

 

 

 

 

 森の中を走る少女と手を引かれるように走るもう1人の少女。2人を追いかけるように無数の影が迫り来る。

 2人は必死になって逃げる。そうして森の中を走っている間に開けたところに出た。

 そこに出たところで、手を引かれるように走っていた少女が突然手を振り払って言った。

 

「もう……もう嫌だ! 何もかも信じられない! 全部、全部嘘なんだ! こんなことになるなら、くるべきじゃなかったんだ!」

「落ち着いてメリー!」

 

 取り乱したメリーをなだめようと試みる蓮子。

 

「どうして蓮子はそんなに落ち着いていられるの!? 私には、私にはわからないよ!」

 

 そう言うと、メリーは走って行ってしまった。

 

「あ、メリー! 待って!」

 

 蓮子はメリーを追いかけようとする。

 

「——!」

 

 その彼女の目の前に、先ほどまで後ろにいた影が現れる。

 その影が彼女を取り込もうとしたその刹那、彼女は左からの強い衝撃によって右側へと転がる。

 

「うっ……」

 

 ゆっくりと瞳を開くとそこには見覚えのある少年がいた。

 

「……昊空……君?」

 

 体を起こし先程まで自分がいた場所を確かめると、影が静止していた。どうやら、彼に助けられたらしいことを蓮子は理解した。

 

「……逃げるぞ」

 

 昊空がそう言いながら蓮子の手を引いて走り出す。

 影は相変わらず静止している。

 

「待って、メリーが、メリーが居なくなったの!」

 

 それを聞いた昊空は驚く。

 

「何だって! メリーはどこに行った?」

 

 蓮子は泣きながら答えた。

 

「分からない……分からないよ!」

「落ち着け、蓮子!」

「全部……全部私が悪いんだ……。あの時……昊空君の注告をちゃんと聞いておけばこんなことには……。そのせいでメリーは……」

「お前のせいなんかじゃ無い。誰も悪くは無いんだから」

 

 昊空は少しの間、蓮子が落ち着くのを待つ。

 そして蓮子が少し落ち着いたところで尋ねる。

 

「メリーはどっちに行った?」

「あっちの方向に走って行ってしまった……」

「分かった。探しに行こう」

 

 そう言いながら、そばにあった水溜りに目をやる。

 そこには月が映っていた。どこも欠けていない満月の月が。

 昊空はその月に違和感を感じた。

 

「……なあ、蓮子」

「何?」

「今日って満月だっけか?」

「え? 違ったと思うけど」

 

 蓮子がそう行った次の瞬間、水面に映る月が黒く染まり不気味な笑みを浮かべた。

 

「……ッ?!」

「え?!」

 それを合図にしたかのように、周りの木の影などにも同じような黒い影が現れ、口を開けて不気味な笑みを浮かべる。

 

「しまった……囲まれている!」

「え!」

 

 そして、周りの影たちは一斉に2人へと迫ってくる。

 

「走れ!」

 

 そう言った後、2人は走り出した。

 しかし影達は簡単には逃がしてくれなかった。

 迫ってくる無数の影を躱しながら走って行く2人。

 その影の1つが蓮子へと襲いかかった。

 蓮子は目を閉じて身構えた。

 しかし、何の違和感もなかった。恐る恐る目を開けると、昊空が身を呈して彼女を守っていた。

 

「昊空君!」

 

 昊空は影に絡みつかれていた。

 自分を助けようと近づいてくる蓮子に昊空は言った。

 

「行け!」

 

 蓮子は躊躇う。

 

「で、でも昊空君——」

「俺に構わずに行け! アイツを、メリーを助けられるのはお前だけだろ!」

 

 その言葉を聞いた蓮子は少し俯いた後に彼に背を向けた。

 

「行ってくるよ」

 

 そう言って彼女は再び走り出した。

 その彼女に地面を這って近づく影があった。昊空はその影に向けて、布に包まれていたものを投げつける。

 投げたものは影の目の前の地面に突き刺さり、影の行く手を阻んだ。

 

「これ以上は……行かせないぜ」

 

 昊空はそう呟いた。

 そして、絡みついている影を無理やり引き剥がす。

 

「……ッ!」

 

 影を引き剥がした昊空は、地面に突き立っているものを掴む。

 彼が掴んだもの、それは——刀である。

 そして横に持った刀の柄の部分右にしてを掴んで鞘から抜く。

 その刃は、鮮やかな銀色の輝きを放ちながらも僅かに緋色の輝きも放っている。

 昊空は抜いた刃を影へと向ける。

 

「……ようやくみつけた」

 

 その言葉に反応したのか、無数の影が1つに集まり人のような形を成して行く。

 

「……」

「……」

 

 お互いの間には沈黙が続く。

 その沈黙を破るかのように昊空が斬りかかる。

 

「はぁぁ!」

 

 その攻撃を影は避けた後、一歩後退する。そしてその刀に対して、どことなく恐怖のようなものを表した。

 

「……?」

 

 昊空はそれを見て首を傾げた。

 次の瞬間、影は逃げ出した。

 

「あ、待て!」

 

 昊空はその影を追いかけるために走り出した。

 影は森の奥へと進んで行く。それを追いかけて昊空も森の奥へと進んで行く——

 

 

 

 

 

 しばらく追いかけた後、昊空は影を見失ってしまった。

 代わりに、進んでいた方向に光が見えた。

 昊空はそこを目指して進んで行く。

 そこにたどり着くと、少しだけ開けたところに出た。

 

 その正面には、何やら道のようなものがあり、その傍らには苔むした地蔵があった。

 彼はまた進んで行く。

 その先には、石段があった。

 

「石段?」

 

 首を傾げながら石段を登ると、鳥居が構えられている。

 その鳥居を見たとき、随分と長い間放置されているような感じがした。

 そこで、彼の持っていた刀が震え始めた。

 

「……なんだ?」

 

 その光景に、少し唖然としていた彼の頭に痛みが走る。

 その後、彼の頭の中にとあるイメージが流れ込む。

 

「これ……は?」

 

 彼は少し戸惑った。

 

「こう……しろって事か?」

 

 そのイメージ通りに刀を正面へと向ける。

 すると刀が緋色の光を放った。

 

「……?!」

 

 その光が辺り一帯を包んだ。

 思わず彼は目を閉じた。そしてゆっくりと目を開くと、先程までとは違う光景が目に入った。

 

「……さ、桜?!」

 

 辺り一帯が先ほどまでの生い茂った緑から桃色に変わった。

 同時に、先ほどまで紺色だった空が雲ひとつない青空になっていた。

 

「何が起こっているんだ……?」

 

 そう呟いた彼の耳に自分のものでは無い声が入ってくる。

 

「……教えて欲しいか?」

「……!?」

 

 声のした方向を向くと、先ほどまで自分が追いかけていた奴(・)がいた。

 彼は、刀を構えた。

 

「まあ、そうピリピリするな。取り敢えず、お前には礼を言わないといけないわけだしな」

 

 影の言ったことに対して眉を潜めながら聞き返す。

 

「どういうことだ?」

 

 影は答える。

 

「俺はずっとここに入ることを目的としていてな。今、その目的がお前のお陰で叶ったから礼を言わなければならないと思ってな」

 

 そこまで聞いて昊空は理解した。

 自分は利用されたのだと。

 

「……謀ったな」

「そんなことはしていないよ。ただ俺はお前をここに導いただけだ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、彼は斬りかかっていた。

 

「——おっと」

 

 その攻撃を予想していなかったらしい相手は慌てて避ける。

 

「危ねーな。いきなり刀を振り回すなよ」

 

 刀は相手を軽く掠っただけであった。

 

「さてと、こっちにきたからにはこれはもう必要ないな」

 

 そう言ってそいつ——影は自(・)分(・)に(・)憑(・)い(・)て(・)い(・)た(・)影(・)を(・)取(・)り(・)払(・)っ(・)た(・)。

 

「な……!」

 

 あまりのことに昊空は唖然としていた。

 影の中から出てきたのは、自分とそっくりな姿をしたものだったからである。

 昊空は目の前の光景に訳が分からなくなった。

 

「おーい、何ボーッとしてんの? まあ、良いや。じゃあね」

 

 そんな昊空を横目に、そいつは飛んで行く。

 我に返った昊空はそいつを追いかける。

 こいつは仕留めないといけない。そう思った。

 その日を境に蓮子とメリーのいる世界から、霧島昊空という1人の人間が忽然と姿を消した。




今回は取り敢えずここまで。次回もどうぞお楽しみに!(いつ投稿されるのかがわからないが)
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