俺と鈴との試合当日。分かってたが第一試合は俺 対 鈴。つまりは一組対二組。運営よ、手を抜くなと言いたい。まあ、このころに簪と出会っても白式のことでもめるからある意味助かったんだろうな。なんか絶対的な力でも働いてんのかねぇ、こう、運命的な?
『両者フィールドへ出てきてください』
おっと、出番か。こんなこと言うのも失礼だが鈴との勝負は楽だからいい。問題は無人機、対策や作戦はばっちりしてあるけどこれが初めての単独任務。初めてのこれで篠ノ之束との接触って、うちの組織ブラックかよ。いや、わかってますって、俺が意見具申したのは。だからこそ失敗はできない。任務のためなら、正々堂々でも真剣勝負でも、なんだってぶち壊してやるさ。どんなに汚くても、卑劣な手段だろうと、俺はもう明るいところの人間じゃない。俺は、今の俺らしくやってやる。なあ?白式、ユニコーン。
『もちろん!』
『……うん、ユニコーン、頑張る』
え?それを問うにはもう時すでにおす……遅し。俺はフィールドへと飛び出していた。
「来たわね一夏」
俺が所定の位置へ着いたとき、鈴は『甲龍』を纏ってその時を待っていた。正式名称なんだっけ?あ、シェンロンか。いっつもこうりゅうって呼んでたから覚えてなかったな。
「悪いな、なにぶん、公式試合は初めてでさ。緊張してたんだ」
「あんたはそんな玉じゃないでしょ。どうせあたしとどう戦うかとか悩んでたんじゃないの?」
「それが出来たらよかったんだけどな。俺はお前のISのこと、名前くらいしかわかんねぇから無理だった」
「あら?悪いことしたわね。あたしはアンタのこと調べさせてもらったわ。おおよそ千冬さんの劣化ってね」
あー……すまん鈴。それ無駄になりそう。俺亡国入ってから、いろんな武装で手数揃えるほうに変えたんだよね。一番手になじむのはやっぱ刀か剣だけど。
「姉さんは自分の獲物を投げるだなんて暴挙には出ないさ」
「あはは、確かにね。でも、手加減はしないわよ」
そうか、でもごめんな鈴。俺は半分以上手を抜かさせてもらうぜ。
『それでは両者スタンバイ……スタート!』
ビィー!っとなるブザー。その音を皮切りに、両者とも少し距離をとった。
そして、お互い自慢の獲物を呼び出し一気に距離を詰める。
ガキィン!
俺は雪片弐型、鈴は青竜刀で一度打ち合う。
「アンタの白式だっけ?あたしの動きについてこれるとはやるじゃない!」
「そこは素直に俺の実力だって言おうぜ?」
「ISに乗り始めてまだ半年もたってないニュービーがなにいってんのよ!」
つば競り合いをしていた俺たちだが鈴の力業で俺の雪片が弾かれる。
「動きが甘いわよ一夏!」
その瞬間、俺は機体を思いっきり右に回転させる。予想していたようにさっきまで俺のいた場所を空気の弾丸が通り過ぎる。
「っ!あたしの龍砲を初見でよけるなんて!?アンタいったいどういう神経してんのよ!見えてないはずよ!」
そう、鈴の借るIS、『甲龍』は第三世代兵装である『龍砲』を装備している。この兵装は、周りの空間に圧力をかけ、そこに生じている衝撃を打ち出すというもの。簡単に言ってしまえばあの国民的アニメの秘密の道具、空気砲だ。ただしこっちはもっと厄介で、空間に圧力をかけるというのは別に正面に限った話ではない。後ろや上など射角限界がなく、ハイパーセンサーと合わせれば360度どんな方向のでも不可視の弾丸を打ち出せるということだ。
「勘だよ。野生の勘ってやつ?」
「知らないわよそんなこと!これなら手加減は必要ないわね。代表候補生の力、見せてあげるわ!」
遠慮がなくなった鈴はすごい勢いで猛攻を仕掛けてくる。空中ならではの三次元機動、PICを使いこなした全方位への軸反転、決まった型がない、変則的な斬撃。どれも高い水準でこなしている。
(うーん、やっぱ鈴の操作技術って他の人と比べても飛びぬけていた気がするんだけど、俺の気のせいか?白式?)
『他の人たちに埋もれちゃったとこが大きいね。第二世代機で第三世代機にも勝つシャルロット・デュノアや遺伝子強化個体のラウラ・ボーデヴィッヒ。後は生徒会長とか、赤月…じゃなかった、紅椿を手に入れてからの篠ノ之箒とか』
だよなぁ、やっぱ周りがおかしいだけだよなぁ。俺なんてもうあの頃はな、毎日訓練という名のリンチだった。
『あはは……っ!一夏、右斜め下から衝撃砲!』
「あいよっと!」
「アンタ避けすぎ!まだ龍砲まともにくらってないじゃない!」
「なに、必死に訓練しただけだ!」
そろそろ、招かれざる客も来る頃だし、そろそろ準備しとくか。
「そろそろ決めるぞ!鈴!」
「なによ、楽しい時間はもう終わり?いいじゃない、二年間もほっとかれたあたしの愛もくらわせてあげるわよ!」
鈴ってこんなキャラだったか!?まず俺たちは付き合ってないだろ、しかもその言い回しじゃまだお前は俺のことが好きってことに…あ…マジ?
「行くぞ鈴!白式!」
『うん!』
「『零落白夜』」
「あたしの全力、受け取りなさい!」
それは一瞬の出来事。二人が交差した瞬間、真上から飛んできたのは衝撃砲ではなく、レーザーでもなく、ビーム兵器。
「チッ!間に合わなかったか!あ、鈴は!?」
ついにやってきた。世界初の無人機型IS『ゴーレムⅰ』人が入っていないからこその、人型にしては不釣り合いなボディ。全身から出ているコード。まさに機械といったところか。
鈴との一騎打ちに勝利した俺は、今の衝撃で絶対防御が発動しISが解除された、気絶状態の鈴を発見する。
「鈴!!気絶か、不幸中の幸いか。すぐに運ぼう」
ビィー!ビィー!ビィー!
学園の緊急用アラームが鳴り響いている。生徒や教師たちは事の重大さを理解したのかパニックになりながらもし必死に逃げる。
『一夏!ゴーレムからロックされてる!来るよ!」
アリーナの防衛用バリアフィールドを破るほどの兵器を持った敵が、負傷者を抱えている俺をロック、しかも後ろには、いまだパニックになっている生徒たちと避難誘導をしている教師たち。なんで教師たちはISを展開していない!馬鹿か!
「くっそ!お構いなしかよ、さすがは束さんだな!興味がない人間はもはや見えてないらしい!」
鈴を傷つけないよう必死に動き回る。ゴーレムは固定砲台のようにひたすらこちらに向かってビームをうっている。
『織斑君!聞こえますか!こちら山田です!凰さんと通信ができないのですが無事ですか?』
山田先生がプライベート・チャンネルで状況報告を促している。
『山田先生ですか。凰は最後の一騎打ちとビーム兵器の爆風で今気絶しています。誰でもいいので回収の向かわせてください!』
『わかりました!織斑先生、どうされますか?』
指示があるまではやるしかないか。
(白式、作戦開始予定開始までは後どのくらいだ?)
『五分くらい?』
なんで疑問形なんだよ…
『織斑君!いまオルコットさんを向かわせています!オルコットさんに牽制射撃を任せますので一緒にピットまで後退してください!』
『了解!』
数秒後、セシリアから連絡が来る。
『一夏さん!用意が出来ましたわ。こちらへ!』
俺は、セシリアの姿を確認すると瞬時加速を使いすぐに移動する。あ、鈴はPICが機能するようにしてあるから問題ない。
「セシリア!鈴を頼んだ」
「一夏さん!?頼むって申されましても!」
「あのISにロックされてるのは俺だ!俺がひきつけてるからさっさと行け!鈴を殺したいか!」
これは本音だ。こんなところで鈴を失うわけにはいかない。
「一夏さん…承知いたしましたわ!ご武運を!」
そうしてセシリアは鈴を抱きかかえてピットに向かった。
『織斑君!?何してるんですか!早く戻って!』
『山田先生、本人がやるといっているんだ。やらせてみろ』
『ですが!!』
『山田先生、私たちのやるべきことは生徒たちの安全確保だ。優先事項を忘れるな。安心しろ、奴を誰だと思っている?私の弟だ』
ありゃりゃ、俺の加わる余地なしにどんどん話がまとまってら。姉さんに関してはあれだな。この間酒分の小遣い抜きにした私怨も混じってる。
『とりあえず落ち着いてコーヒーでも飲め。糖分が足りてないからイライラするんだ』
『織斑先生、今入れたの塩ですけど…』
『……』
これ聞かなきゃダメか?
『わが相棒ながら、恥ずかしい…』
(おわ!白騎士か、すまん…マジですまん)
後で無事だったらとどめもさしておかないといけなくなったな。身内の恥は俺が処さなくては。
漫才を聞くのが面倒になった俺は、さっきから沈黙を貫いているゴーレムの正面に立つ。
(白式、プライベート・チャンネル頼む)
『まっかせて!」…ほい!』
お仕事が早くて何よりです。
『束さん、俺は束さんの予想よりはるかに成長してる。だから、こいつを帰らせてくれないか?俺は無駄な被害を出したくないんだ』
…………
応答はなし。仕方ないか。ついでだからコアもお土産にもらって帰ろう。
「敵目標、未確認IS『ゴーレム』。戦闘行動に移る」
束さん、アンタがその気なら俺もその気になろう。篠ノ之束、覚悟しておけ。俺は、お前の期待する主人公じゃない。ただの破壊者で、任務を遂行するものだ。
プライベート・チャンネルで名乗る。
『織斑一夏…いや、コードネーム S 目標を破壊する!』
今後の進行における重要事項『アンケート結果がそのまま反映されるわけではありません。あくまで参考にさせて戴きます』
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凍結し、リメイクのみを制作、順次更新
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リメイク版無しでこのまま継続
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リメイク版ありで両方継続
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この作品のまま加筆修正