それから数時間、俺は白式のメンテナンスをした。やはりというべきか、スラスターの不具合が若干あった。まあ、少し強かったゴーレム相手に白式の性能ではよく頑張ったと言えるが、無茶な使い方したからな。
『IS使いが荒いね、一夏』
「当たり前だ。俺の相棒はこれくらいでくたばったりしないからな」
『もちろん!あ、それでさ。一夏は二次移行いつしたい?』
いつって…え?
「それは白式のタイミング次第だろ?」
『うん?一夏決めていいよ。なんなら今からでもするけど?』
えぇ… 軽いな〜。一応、二次移行って世界でも発現したの2桁もないはずなんだけど…
『それは、私達からの呼びかけに操縦者が気づかないからだよ。コアによっては、専用機として初めて乗られた時に気に入って、二次移行のアプローチかけてる子もいるんだから』
「二次移行って恋愛でしたっけ?ちなみにそのコアは?」
『えっと…確か…あ、銀の福音って名付けられてるね!』
ナターシャさんか。まああの人は、ISを我が子のように扱っているからな。そりゃあ、福音も懐く。
「ふ〜ん。じゃあ、コアからの声に気づくにはどうすんの?」
『知らない』
「え?」
『私達は呼びかけるだけ。それに気づくかどうかは、人間次第だよ』
あー…
「そうか… 人間はISを道具か、兵器として見てるからな。まさか声があるなんて思わないんだろう。かく言う自分も最初はそうだったし」
『まあそんな感じだね〜。で、どうする?』
「今はいいよ。早すぎるし、今の性能で困ってない。機体はもうちょっと頑丈にしたいけど…」
俺の5割くらいの力出したら多分装甲が逝くんだよなぁ…
『二次移行するときは、頑張ってみるよ…』
「ああ、マジで頼む。死活問題だから。じゃあ、メンテナンス終わるからな。どうだ、普通に声を出す気分は?」
『いや〜やっぱり良いね!人目を気にせず話せるし、わざわざ、こっちに意識を持ってくる必要もないし』
持ってくるって表現どうかと思いますよ?
「ならよかった。白騎士は?」
『白騎士は、表に出て万が一バレたらいけないので、だって』
「白騎士らしいな。まあ、白式やユニコーンもいるし退屈はしないだろ」
PIPI…
む、着信?誰からだ?
「はい、もしもし」
『あ、一夏?簪です。今大丈夫?』
簪さんか。そういえば名前を登録してなかったな。あとでしておかないと。
「今、ISの整備終わったから大丈夫だぞ」
『よかった。これから一緒に夜ご飯食べない?私もISが完成して、あとは2日かけてのテストだけなの』
お、ついに完成したのか、打鉄弐式。1回目は俺と
『……一夏?』
「…ッ、ああ。じゃあそうさせてもらおうかな。食堂集合でいいか?」
危ない、また意思が弱くなった…
『わかった。じゃあ先に行ってるね』
「じゃあまた、後で」
ふぅ…
「そういえば、俺簪さんと鈴以外のアドレス知らなかったな。聞かれなかったし… まあいいか。行こう」
この後は、簪さんと夕食をとり、用意されていた部屋の備え付きのシャワーを浴びていつもと違う感触のベッドで寝た。
〜イギリス、とあるIS研究所〜
「ついてないな〜。外の警戒はスコール達に任せたのはわかるけど、潜入してるのが私だけっていうのはどうなんだろう?」
誰もいない通路を独り言を呟きながら歩いているのはイギリスの第3世代型ISサイレント・ゼフィルスの奪取の任務についている、コードネームM、織斑マドカだ。
「今頃、ほかの隊員の野郎どもは酒盛りでもしてるんだろうなぁ… ああ、私も混ざりたい。さっさと終わらせて帰ろう」
本来の口調とは全く別物だが、あれはキャラである。もう一度、いや何度でも言おう。あれはキャラである。一夏と出会ってから、素を出すことが増えたのか、1人や一夏がいるときは素の口調が多くなっている。
「反応はあの扉のむこう… あとはISを待機形態にして持ち帰れば終わり。このミッション意外と余裕?」
プシュー…
と、あらかじめ研究員から奪っておいたカードキーで、扉を開ける。
「お〜、綺麗な青。さすが、名前の通り蝶みたいな形状」
Mの前にあるのは、青いカラーリングで蝶の羽のようなスラスターを持つ、ブルー・ティアーズ型二号機『サイレント・ゼフィルス』である。
「えっと、待機形態にするには…形状を思い浮かべるんだっけ?」
正確には違うのだが、まあここで言ってもあまり意味がない。
「あ、出来た。一応、誰でも使えるように指輪にしたけどよく考えれば指のサイズ、私の人差し指で考えてた…マズイかも」
普段は凛々しく隊員からも信頼の厚い彼女だが、本質はお兄ちゃん大好きのアホの子。オータムのことを言えないレベルだ。もちろんモノクローム・アバターの隊員達には周知の事実でありよくネタにされるが、それはマドカにいないところで行われる。誰もISにダメージを与えるようなナイフで刺されたくないのだ。
「ま、まあレイさんに任せたらなんとかなるでしょ…さ〜て、早く帰って開発部に渡そう!スコールに見つかる前に!うん、それがいい!」
「………」
何をしているのだろう。それが、侵入者の知らせを受けて緊急出動してきた者の最初の感想である。名はサラ・ウェルキン。イギリスの代表候補生で、IS学園の2年生だ。BT兵器適性が低いため専用機は所持していないが、それを抜きにしても、ほかの代表候補生の中では実力が抜きん出ている。現在はイギリスにたまたま帰って、研究所でISのテストをしていた。学校を休みにし、サラに帰省する時間を与えた一夏様様である。
「貴女が、侵入者でいいのよね?」
「ッ!?誰だ!」
声をかけられやっと自分以外の存在に気づいたM。口調をキャラの方に戻すがもう遅いだろう。
「貴様、サラ・ウェルキンだな?今はIS学園にいるはず… なぜ?」
「たまたま休みが増えて帰って来たのよ」
まさか、この原因が自分の兄にあるとは、Mは知るわけがない。
「それより貴女、口調今更よ?さっきの現場見ちゃったし」
「なっ!?忘れろ!あれは、ちょっとミスをしただけで…」
痛いところをつかれたM、マスクをしているのでサラは気づかないが、顔は真っ赤である。
「さっきの方が可愛いわよ。やってることを抜きにしたらね。さて、侵入者さん、どうやってこの情報を手に入れたのか知らないけど、サイレント・ゼフィルスは返してもらうわよ!」
そう言ってサラはラファール・リヴァイヴを展開する。装甲、武装共にカスタムのされていない一般機だ。
「ISだと…?」
「いや貴女だってあるんでしょ?こんなところにわざわざ1人で来たんだし」
そう言われたMは気まずそうに目をそらす。
「………」
「…貴女…まさか…持って来てないの?ISを!?」
ピクッ…とMの方が跳ねる。図星のようだ。
「いやいや、そんなことあるわけないでしょ?こんなところにISなんか必要ないよ。うん…決して忘れて来たわけじゃない」
「口調戻ってるわよ。あと貴女、忘れたのね…」
一応、侵入者と防衛という敵対関係なのだが、2人の間には別の意味で気まずい雰囲気が流れる。
「ま、まあ捕縛しやすいからいいわ。敵じゃなかったら、仲良くなれそうなのにね。残念だわ」
「………」
動かないMにサラは疑問を感じる。
「抵抗は無し?その方がいいわ。それじゃあ、獄中で会いましょう」
「……今許可が出た」
「なんの?」
Mは仮面越しでもわかるのではないかと思うほどに笑みを浮かべる。
「私に、このISを与えてくれるそうだ。この意味、わかるな?」
「な…それでもフィッティングもパーソナライズもされてないISでまともに戦えるわけないでしょう!しかも貴女は性能も武装も把握してない」
「いや、私は知っている。私の…
Mは先ほど待機形態にした、サイレント・ゼフィルスを取り出す。
「嘘…このISはまだどこにも公表してないはず。誰も知っているわけないわ!」
「正直なところ、私見聞いただけの話だからちょっとだけ不安がある。だから、今から試そうと思う。あの人も、出会ったばかりのISで、戦ったらしいからな」
Mは待機形態の指輪を前に突き出す。
「さあ、やろうじゃないか。サイレント・ゼフィルス!」
そしてMはゼフィルスを纏う。
「フィッティングとパーソナライズは戦いながら行えばいい。私のナノマシンも流して、生体データを送ればもっと早く終わるし。武装は…これか」
Mは主武装の一つである【スターブレイカー】を取り出す。
(マズイ。乗ったことがないとはいえ、話からIS乗りなのはわかる。第3世代機の火力をまともに受けたら、ラファールじゃ持たない…)
「へぇ…エネルギー弾と実弾両方あるんだな…。じゃあ、行くぞ!サラ・ウェルキン。ISのテスト代わりだ!」
待機形態は、人間の意思では決める事は出来ず、ISによって異なりますが、一夏のようにISとの相性がいいので、自分の意思で待機形態を決めています。
今後の進行における重要事項『アンケート結果がそのまま反映されるわけではありません。あくまで参考にさせて戴きます』
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凍結し、リメイクのみを制作、順次更新
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リメイク版無しでこのまま継続
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リメイク版ありで両方継続
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この作品のまま加筆修正