prr……prr……
『…もしもし?』
「もしもし、簪さん。今いいか?」
保健室から出た俺は、自分の部屋に戻る途中だ。この時間だったらそろそろシャルルも部屋に戻ってるだろう。今は簪さんにペアのお誘いだ。
『いいけど…どうしたの?』
「ああ、いやな。この前ISが完成したって言ってたろ?だからさ、今度の学年別トーナメントのペアになってほしいんだ」
『学年別トーナメントって、今回タッグ戦なの?』
おや、知らなかったのか。…授業後はすぐに部屋に戻ったみたいだな。アニメを見てたのか、ISの整備をしてたのか、分からないけど。
「ああ、そうらしい。どうだ?」
『一夏はいいの?オルコットさんとか鳳さんとか、もっと適任がいるんじゃない?』
「…あの2人は怪我をして試合に間に合わないんだ。でも、最初から簪さんにお願いしようかって思ってたんだよ」
まあ、実力の再確認と、所属企業の宣伝って言う意味合いも強いけどな。……あと、魔改造されて無いかもチェックしないと。
『ふーん、倉持の宣伝ってことかな』
「あはは、まあそれもあるんだがな。できればお願いしたいんだが…」
『…いいよ。私もタッグ戦のこと知らなかったからペアいなかったし、探す手間が省けるから』
さすが簪さん!!いや〜マジでありがたい。
「マジか、ありがとな!細かいことはまた連絡するから。申請も出しとくけど…いいか?」
『申請は私が出すよ?そこまでしてもらうのは悪いし』
「気にすんなって。…その、正直に言うと、俺と組みたい女子が書類偽造するって言う事案があるから……」
その相手はしっかり姉さんに粛清されたけどな。
『そ、そうなんだ… 分かった。じゃあお願いするね。練習日とかはまた都合がいい日を連絡するから』
「ああ、頼む。…急いでいる感じがするけどなんかあるのか?」
『ん?貯め録りしてたアニメ見てるだけだから大丈夫だよ?』
「なるほど、邪魔して悪い。じゃあ切るな。また、アニメ関連で話そうな〜」
『うん。じゃあね』
そうして通話が終わる。まあ、ここに名前を書いてある申請書があるからあとは提出するだけなんだけどな。……さてと。
「隠れてないで出てきたらどうです?ていうか隠れる気ないでしょう。気配ダダ漏れ…いや出してるのか」
「…………………」
無視かよ。
「良いんですね?倉持に行く時もした通りまた布仏先輩にサボってるって送りつけますからね?」
「ちょっと!?あれやったの君だったの!?あの後大変だったのよ!!…あ」
チョロい。チョロインさんびっくりなレベルでチョロい。……フッ。
「生徒会長先輩?」
「生徒会長先輩って初めて呼ばれたわ…。そんなことより、初めましてかしらね。貴女はもう知ってるみたいだけど私がこのIS学園生徒会長の更識楯無よ。以後よろしく♪」
開かれた扇子に『挨拶』と書かれた文字。…いや、挨拶だけどさ、そのチョイスは何さ。
「よろしくお願いします」
「あら?初対面だとこの扇子で引かれるんだけど…何も思わないの?」
「引かれるんならやめたら良いじゃないですか…。別に個が強いんだなぁとしか。あと、初対面じゃ無いですよ」
「あ、やっぱり分かってた?」
当たり前だろ。突貫工事で自室に人を閉じ込めたのなんか生まれて初めてだったよ。
「ええ、あの時閉じ込めて織斑先生にチクったの俺ですから」
「あの時もなの!?何してくれるの!?いや、本当に!!最近教師間で私の印象不味いんだけど!?」
自業自得に決まってんだろ?
「………?」
「何その自業自得に決まってるだろ?みたいな顔…いやその通りなんだけどね」
扇子には『図星』の文字。自分で図星って言ったら意味ないだろ…
「まあそんなことよりも…」
「私の事情はそんなことで片付けられちゃうのね。お姉さん悲しいわ」
「……フッ、で用事はなんですか?」
文字だけ見ると背伸びしてるだけに見えるな。
「今笑ったでしょ?…まあ良いわ。本題なんだけど、簪ちゃんと最近何してるの?」
「シスコンも極めすぎると良く無いですよ?(人の事言えないけど)簪さんとは普通に友達ですよ。趣味があったんで、同じ企業所属ですし」
「シスコンてほどじゃ無いわよ。本当にそれだけ?いっときの迷いで簪ちゃんとムフフなことになったりしてないわよね?」
「(自覚ないの!?あれで!?)するわけないじゃないですか。後、ムフフって表現古いですよ?」
「…一夏君て結構バッサリ言うのね。私の心にグサグサ来るんだけど」
自分の行い見直したほうがいいですよ?とは口が裂けても言えない。
「まあ、そういう性格なんで。そこは勘弁してくださいよ」
「性格なら仕方ないわね。…まあホントに簪ちゃんとは何もないようだし今回はこれくらいにしようかしら」
「ええ、そうしてください。貴女にはまだお仕事が残っているのですから」
刹那、その場の温度が下がった。
「う、虚ちゃん…?どうしてここに?」
「またメールを頂きまして。あ、貴方が織斑君ですね。生徒会会計を務めさせていただいてます。布仏虚と申します。おそらくですが、以前もメールを送ってくださいました?」
「はい、お役に立てたなら嬉しいです」
震えてる楯無を無視して俺と虚さんは会話する。
「ええ、情報提供ありがとうございます。あ、良かったら普通に連絡先交換しても良いでしょうか?また同じようなことがあれば連絡下さい」
「良いですよ、これもこの学園のためです。上に立つものがしっかりしなければ、集団はただの有象無象ですからね」
「あら、よく分かってますね。どうです?お嬢様の代わりに会長になってみては?」
「な!?ダメに決まってるじゃない!!何言ってるの!?
「冗談ですよ、いつも苦労させられてる分の意趣返しです。さあ、執務に戻りますよ」
「ちょ、ちょっと!私はまだ〜…」
そう言って、楯無は連れていかれた。…こっそりメール打ったの俺だけど、なんか哀れだな。すいません会長、今度生徒会室行くときは手土産持っていきます。あ、縫い物なんて良さそうですねww
「なんか、嵐が来た後みたいだな… 帰るか…」
「………教……なぜ……!!」
……今日はいろんなことが起きるな。まあ、アレだろうし?出て行かずにこっそり聞くか。チクってたら止めないといけないし。
「シュヴァルツェ・ハーゼ隊に戻ってきてください教官!!我が隊には…私には貴女が必要なのです!!」
「先生と呼べと言っているだろうラウラ。一体何がお前をそこまで焦らせる?」
だいたい聞こえる距離まできたしここら辺でいいだろう。
「私は…強くあらねばならないのです。この力を制御し、誰にも負けない最強の力を…教官さえいれば…それが実現できる!!」
眼帯をしている左目を抑え、真剣に姉さんに言う。あ〜、そっち方面に考えたか… 1回目とほとんど変わんねえな。
「今でもお前は学年でトップレベルにいるだろう?なんの不満がある?一夏とお前の模擬戦で何があった?」
む…これ以上はダメだな。
「それh…「ん?織斑先生とボーデヴィッヒ?どうしたんですかこんなところで」…お、織斑」
「織斑か、ボーデヴィッヒから人生相談を受けていてな。…ラウラ話はまた今度だ。今日はもう部屋に戻れ」
おっ、思ったより反応が良いな。
「ですが…」
「すまないな。わたしも仕事が立て込んでいてな」
そう言って姉さんは去って行った。
「さてと」
「ッ……」
ピクッ…とボーデヴィッヒの方が動く。なんか最近余計に小動物感が出てきたな。
「…そう怯えるなよ、若干悲しい」
「貴様の事情なんぞ知るものか」
プイッとそっぽを向くボーデヴィッヒ。呼び方が戻った…
「邪魔したのは悪いと思ってるけどさ、お前も良くない」
「何がだ?」
「俺の
「……ッ!!そうだ、そのことだ。何故貴様が持っている!!」
感情豊かだねぇ… 今の俺では持てない物だな。
「…それを知る権利はお前にはない。知りたければ…」
「なんだ?」
「そうだなぁ… 学年末トーナメントで俺たちに勝て。そうすれば、教えてやらんこともない」
教えるとは一言も言ってないけどな。
「……フッ、そうか。顔を洗って待っていろ。私は勝つ。勝たなければいけない!!」
そう言い残してボーデヴィッヒも去って行った。
「……首を洗うの間違いだぞ…ボーデヴィッヒ」
とても締まらない別れだった…
今後の進行における重要事項『アンケート結果がそのまま反映されるわけではありません。あくまで参考にさせて戴きます』
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凍結し、リメイクのみを制作、順次更新
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リメイク版無しでこのまま継続
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リメイク版ありで両方継続
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この作品のまま加筆修正