あの日の戦友たちは今敵となる   作:ゼノアplus+

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デュノア

40話

 

 

 

「うっ… おえぇぇ…」

 

 

やあみんな絶賛嘔吐中の一夏だぜ。お見苦しものを見せている自覚はあるが許して欲しい。

 

数時間前に学園の侵入者を2人以外殺した俺だが、生き残りの2人は前もって呼んでおいたスコールの姉貴に任せた。その際…

 

 

「一夏、今日は辛いと思うけど、なんとかして寝なさい」

 

 

って言ってたのはこういう事か… もう何度も、ユニコーンのビームマグナムで研究所ごと人間を焼き払っていたりしていたが、今回は生の…直接の殺し。意識していないつもりでもキツイものがあったんだろうな。自分の体くらい分かってるつもりだったんだが、まだまだ甘いって事か。

 

 

「気持ち悪りぃ…うがいもしとくか」

 

「一夏?どうしたの、大丈夫?」

 

「ああ?あぁ、シャルルか。大丈夫、ちょっと良くない夢を見ただけだ」

 

 

そう、あれは夢のような出来事だったな。

 

 

「そう?無理しちゃダメだよ?()何か手伝えることある?」

 

「いや大丈夫だよ…おやすみ、シャルル」

 

 

寝ぼけてたせいか演技が崩れてる。こいつマジでスパイ向いてないなって今更ながら思う。

 

…俺も寝よう。

 

 

 

〜翌日、放課後のアリーナにて〜

 

 

「簪さん…遅くなって悪いな…」

 

「あっ、一夏?全然大丈夫…ちょっと、なにその顔!?」

 

 

いつもの練習時間より遅れてきてしまった俺は簪さんに叫ばれてしまった。

 

 

「ん?ああ…大丈夫大丈夫。昨日ちょっと良く無い夢を見ただけだから」

 

 

嘘です。夢どころか全く寝れませんでした。俺も鏡見てビビったよ。隈が凄いから、いやマジで。朝、箒と鈴に会った時もめっちゃ心配された。…良い友人を持ったよ。

 

 

「ホントに大丈夫?…いやでも」

 

 

簪さんが突然ブツブツ言い出した。え、なに?

 

 

「一夏」

 

「は、はい!」

 

 

すっごい低い声で喋り出した簪さん…いや簪様。何故だろう…逆らってはいけない気がする。

 

 

「練習は無しにするから、今日は部屋でしっかり休んで」

 

「えっ?いやでも、もうタッグマッチ戦まで時間が…」

 

「休むの!ペアとしてじゃなくて私個人として、一夏を心配してるの!!」

 

 

グッと顔を寄せて言ってきた簪さん。そんなに心配させたのか……

 

 

「……分かった。今日はしっかり休むよ。…だからさ、その…ちょっと離れようか?」

 

「え?」

 

 

自分がどんな行動をしたか、やっと理解したらしい簪さんはボッ!っと顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

 

「あうぅぅ……///」

 

 

可愛いかよ。……ハッ!?俺は何を…

 

 

「でも、ありがとうな。心配してくれて…」

 

 

俺は俯いている簪さんの頭を撫でる。そうすると簪さんがプルプル震えだし…

 

 

「うぅぅ…///一夏のばかぁぁ…」

 

 

といった具合に走って行ってしまった。………また俺無意識にやってしまったか…?治ったと思ったんだけどなぁ… ごめん簪さん。羞恥心をパンクさせてしまった…

 

 

「……帰るか。気配もないし、あの駄姉会長もいないし問題なく帰れるかな」

 

 

 

 

〜一夏、シャルルの部屋〜

 

 

 

「………過去の過ちをどう正すべきか」

 

 

今、シャルルがシャワーを浴びている。そして今朝俺は昨日の気分を消すためシャワーを浴びた。その時シャンプーが切れたのだが……しっかり忘れてたな。

 

 

「今持って行ったら一回目と同じ結果に……いやしかし流石に女子にシャンプー無しは……」

 

「一夏〜?」

 

「は、はい!?」

 

 

やばい、聞こえてた……?

 

 

「シャンプー切れてるんだけど、新品ある〜?」

 

「あ、ああ、ちょっと探すな〜」

 

 

俺に決断の時間を与えてはくれないか……どうする……

 

 

「見つかったら扉の前において貰えるかな?」

 

「わかった」

 

 

そ、その手があったか…… これで俺が直接女子だと知ることは難しくなったな……仕方ない。

 

 

「開けたらすぐのところに置いとくな?ちょっと飲み物買ってくる。なんかいるか?」

 

「ん〜、じゃあ紅茶を頼もうかな。後でお金払うね」

 

「気にすんなって」

 

 

()()()P()C()()()()()()()()()()、部屋を出て一番近い自販機まで歩く。体に良くないからあんまり飲まないんだけど、久しぶりに炭酸でも買うか。

 

 

(ユニコーン、白式に少し我慢してくれって伝えてくれるか?)

 

 

『今、お話してたからお姉ちゃん聞いてたよ。分かった、って』

 

(そうか、ありがとな。白式になんかされたら迷わずに白騎士に言うんだぞ?)

 

『…はーい』

 

 

なんか、白式や白騎士と話すようになってから明るくなったか?俺もたまに白騎士から強制的に参加させられるけど、言葉に明るさが出てるな。

 

自販機のそばに、休憩用の椅子があるためそこに座り、スマホを出して部屋のカメラのリアルタイム映像を確認する。

 

 

「なんかしてるかなぁ?」

 

 

自分の部屋の様子をカメラで見るのはあまり気分のいいものじゃないけど仕方ない。

 

 

『あれ、一夏戻ってないなぁ……売り切れてたのかな?」

 

 

シャルル……もうめんどくさいからのデュノアでいいか。どっちで呼んでも紛らわしいし。デュノアがシャワーを終え、いつもの寝巻きで戻ってきた。

 

 

『うーん、それにしてもこれきついなぁ……胸を潰すためだから仕方ないけど気分のいいものじゃないし、シャワーの時だけは外せるけど、時間が短いし。それよりお風呂にも入りたい……』

 

 

はい証拠頂きました。良かったぁ……俺の行動のせいで、歴史に何か異常でもあるかと思ってたけどまだ大丈夫そうだな。

 

 

『それにしても一夏遅いなぁ。そろそろ戻ってきてもいいんじゃな……ッ!?これは……一夏の専用機?置いて行ってたの?』

 

 

おっ、食いついた。白式には悪いなぁ…

 

 

『今なら……白式のデータを……』

 

 

「……行くか。紅茶だったな、俺は……ラムネでいいか。……なんで自販機にラムネ売ってんの?」

 

 

ちょっとよくわからないけどまあいいや。それよりも……

 

 

「ただいまシャルル。近くに自販機あったに忘れててな〜。結構遠くまで……何してんだ?」

 

「い、一夏!?い、いや……一夏の白式の待機形態がどんなのか見てただけ……だよ?」

 

 

ふーん、そっかー。……無理ありますねぇ。

 

 

「そうか、あっ、これ紅茶な」

 

「え?う、うん。ありがとう」

 

「それとシャルル?」

 

「どうしたの?」

 

「両手を上げろ。心優しいシャルル君、俺に、ルームメイトを撃たせないでくれよ?」

 

「ッ!?」

 

 

俺はいつもの拳銃を取り出し、デュノアに向ける。

 

 

「どういう……事?」

 

「お前に答える必要はない。ああ、別にお前の内ポケットの()()はくれてやるよ。要求を飲んでくれるならねぇ」

 

「………」

 

「へぇ……この状況でそんな顔するのか。じゃあ仕方がない。……お前の身ぐるみ剥いで写真撮って先生に通報するだけで今回の件も終わるし、それでいいか」

 

「……ッ!!バレてる……」

 

「バレてる?今更すぎんだろ。お前隠す気あるのか?まだ男装が趣味のボーイッシュな女子って言った方が皆信じるぞ?」

 

「……要求って何?」

 

 

デュノアの低い言葉。よほど焦ってんなぁ……

 

 

「デュノア社長に電話をかけろ。かけた後は携帯をこっちに渡してベッドにでも座ってろ」

 

「分かった」

 

 

デュノアが電話をかけ、携帯をこっちに渡してきた。俺は()()()()携帯を耳に当てる。

 

 

「……ッ!!」

 

「ああそうそう、言い忘れてたけど……」

 

 

カシュン……

 

 

「ヒッ!?」

 

 

俺がデュノアの方を見ずに撃った弾が、デュノアの目のすぐ横を通る。弾は枕に当たったため壁が壊れることもない。

 

 

「こんなことも出来るから、あんまり動かない方が身の為だぞ?」

 

「………」

 

 

俺に対してどうにかしようと立ち上がろうとしたデュノアを牽制。

 

 

「おっと、ちょっと黙ってろよ?繋がった」

 

 

俺はボイスチェンジャー付きのマスクをし、デュノア社長に呼びかける。

 

 

『どうしたシャルル?何か問題があったか?』

 

 

電話から聞こえてきたのはデュノアの父親、アルベール・デュノアの声。俺はフランス語で話す。

 

 

『アルベール・デュノアだな?』

 

『ッ……貴様は誰だ?』

 

『誰?そうだなぁ……まあ名前なぞどうでもいいだろう?それよりも……貴様の娘、シャルロット・デュノアは預かった』

 

『ッ!?なんだと……』

 

「……ッ!?」

 

 

なんとのわかりやすい反応だろうか。デュノア自身も、本名まで知られてるとは思ってたなかったのか、名前を言うとすごい形相でこちらを見る。俺は、携帯をハンズフリーにした。

 

 

『預かった、という言い方は正しくないな。生殺与奪が私に握られている、という言い方が正しい』

 

『どっちも変わらないだろう!……貴様、何が目的だ?』

 

『それもまあ、貴様の言動と行動次第だなぁ……』

 

『………要求はなんだ?』

 

 

やっとこの話か。

 

 

『シャルロット・デュノアを手放してもらう。代わりに私が入手した織斑一夏のISのすべてのデータをくれてやろう』

 

『なっ……!?』

 

「えっ……」

 

 

何を言ってるの?みたいな目でこっちを見てくるデュノア。まあ、こっちが絶対有利なはずなのにちゃんと相手にも見返りがあるからな。

 

 

『どうした、破格の条件だろう?もともとその為にシャルロット・デュノアをIS学園に送ったのだ。どこに問題がある?』

 

「……」

 

『……私が要求を飲んだ場合、シャルロットはどうなる?』

 

『どのような国でも、優秀なIS操縦者は必要だからな。どうした、足りないか?ならば仕方ない。他国の代表候補生のデータもやろう』

 

『ふざけるな。第一、そのデータが本物だとは限らないだろう』

 

 

……一回目の時、俺はデュノア社長と殴り合って本音を吐かせた。今回はもっと醜い方法だが……俺はあのデュノア社長がもう一度見たい。

 

 

『こちら側が絶対有利な条件でこれだけ破格の物を用意したのだぞ?別に断るのは自由だ。貴様の娘がちょっと良くないことになるだけだしな。何が貴様の決断を鈍らせている?』

 

『……あの子は私の愛人との子だ』

 

「……ッ」

 

『私はたとえ愛人でも、1番に愛していた。そして生まれたのがシャルロットだ』

 

『貴様の愛を聞かされて私の心が変わるとでも思うのか?』

 

 

ちょっと意地悪い言い方だがこれも必要な手順。

 

 

『つまりは……データなぞ要らん!!それよりも()()()を返してくれ!!」

 

「………お父さん」

 

『本当にか?聞いたところによると貴様の本妻はシャルロット・デュノアを平手打ちしたらしいではないか。今、シャルロット・デュノアを返したところで何が変わるのだ?』

 

『ロゼンダはあの後、後悔をしていた。子供が産めない体で愛人が子供を作っていたから少し思うところがあったのだろう。出来れば謝りたいともな』

 

「………あの人が」

 

『ではデータは諦めるのか?デュノア社が第三世代機を開発出来ていないこの状況で』

 

 

もう本音は聞けたし会話を続ける必要もないんだけどな。

 

 

『ああ、愛する娘を犠牲に得たデータなんて、たとえこの身が滅びようとも使ってたまるか』

 

「お父さん……お父さん……!」

 

 

デュノア社長の言葉を聞いて泣き出したデュノア。……いや、なんか……ごめんな。

 

 

『……合格だ、アルベール・デュノア。後は貴様らで話せ』

 

『なに?どういう意味だ?』

 

 

俺は携帯をデュノアに返す。勿論ハンズフリーは切った。

 

 

「正体バラしたらお前をバラす。物理的に」

 

「……ぐすっ、ありがとう……一夏。僕は……」

 

「いいから出てやれ。俺はもう一回自販機に行ってくる」

 

「……うん。それと一夏」

 

「なんだ?」

 

「さっきのバラすっていうの、あんまり面白くなかったよ?」

 

「…………そうか」

 

 

俺はまた部屋を出る。面白くなかったかぁ……




〜自販機付近〜


「久しぶりにラムネ飲んだけど美味いな。蓋開けるときに瓶ごと破壊しそうだったのはマジで危なかったけど」


いや〜人助けって良いなやっぱり。清々しいね!昨日大虐殺した後だけど。


「この自販機さっきと品物変わってるんだけど?なんでここにユグドラ汁あんの?」


俺が自販機に対してツッコミを入れてると……


「あれ、一夏じゃない?どうしたの?」

「ん?ああ、鈴か。いや、自販機でなんか買おうとしたんだけど……」

「あ〜、種類変わってるのね」

「知ってんのか?」

「もう、寮ではお馴染みよ。自分の欲しい飲み物は置いてあるから、誰も気にしてないわ」

「そ、そうか」


だとしてもユグドラ汁はダメだろ。怪物化しても知らんぞ?ていうかまず缶切り持ってないと開かねえじゃねえか。


「そういえば一夏、今日も簪って子と訓練してたの?」

「いや、俺の顔色を見るなり今日は中止だって。別に大丈夫なんだけどな」

「いや、その顔でいけるって言われても無理よ。よくある秘密結社のボスみたいなのよりエグい顔色してるわ。その子も絶対心配してたわよ」


いや、うちのボスの悪いこと考えてる顔には負けます。


「そうか?まあ正直、昨日ほとんど寝れてないし今スッゲェ眠い」

「あら、私の膝貸してあげようか?ちょうどそこに椅子あるし」

「ん〜、じゃあ頼む。……そろそろ限界だったんだ〜」

「へっ?ちょっ、一夏……///」


俺は倒れこむように鈴の膝に頭を置く。あっ、柔らかい……意識が……


「すぅ……すぅ……」

「よほど疲れたのね……ふふっ、お疲れ様一夏」




起きてから2人が気まずかったのはいうまでもない。


今後の進行における重要事項『アンケート結果がそのまま反映されるわけではありません。あくまで参考にさせて戴きます』

  • 凍結し、リメイクのみを制作、順次更新
  • リメイク版無しでこのまま継続
  • リメイク版ありで両方継続
  • この作品のまま加筆修正

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