あの日の戦友たちは今敵となる   作:ゼノアplus+

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乙女の会合と亡霊達の密会

49話

 

 

昼飯をとった俺たちはさらに遊んだ。束さんと箒の会合場所を姉さんに伝えもしたし、抜かりはない。

 

そんなこんなで現在は夜。旅館の大きな風呂を一人で占領してひたすら楽しんだ俺はルンルン気分で部屋に戻ろうとしていた。ひたすら携帯を弄るのである。ねえさん?ふっふっふ……酒禁止するぞ(はーと♪)って言ったら瞬殺だったぜ。まぁ……ラウラが風呂に侵入しかけてたときは焦ったが、待ち伏せしていた姉さんによってアイアンクローされながら強制退室していった。良いやつ……ではないが、良いやつだったよ。

 

そんな姉さんを見送った後に部屋に戻った俺は、取り敢えず携帯でマドカ達へ異常なしの報告をした。

 

 

「全く、ラウラめ……目を離すとすぐにおかしな行動をとる……」

 

「あ、おかえり姉さん。ラウラは?」

 

「デュノアのところに放り込んできた。お前の妹を自称しているんだから兄のお前がなんとかしろ」

 

「その場合姉さんの妹でもあるんだからちょうど良いじゃん?」

 

 

会話をしながら、姉さんは備え付けの冷蔵庫から缶ビールを取り出した。俺が妹、と言った瞬間にピクッと眉が動いた。ついさっき俺がマドカとメールしてたとか夢にも思わないだろうな〜……

 

カシュッ……と良い音を鳴らしながら姉さんはビールを喉に流し込んでいく。

 

 

「俺にもちょっとくれよ」

 

「バカ言え、お前にはまだ早い」

 

「ですよねぇ……そうだ姉さん、最近俺の周りの奴ら関連で疲れてるだろ?折角だからマッサージしてやるよ」

 

「む?そうか、なら頼もう。いつのまにか店を出せるレベルだからなお前は」

 

 

缶ビールを右手に持ちながら布団に寝転がる姉さん。どうやら少し酔い始めているらしい。俺は姉さんの近くに寄り背中に手をかけた。

 

色々まずいので割愛するが、俺が力を入れるたびに艶やかな声を上げるのは本当にやめてほしい。1回目の俺のタイプの女性は姉さんみたいな人なんだから少し意識してしまう。今は、そんなことはないけどな。と……そんな時、ドアの外で気配がした。

 

 

「……はぁ、お客さんだぞ」

 

「んんっ……ああ、そのようだな」

 

『ッ……やば』

 

 

微かに鈴の声が聞こえた。どうやら姉さんが近寄るのに気づいたらしい。

 

 

「「へぶッ!?」」

 

 

女性があげちゃいけないような声を上げたのはおそらく2人。セシリアと箒だ。ドアの奥を見れば退避していたであろう鈴が「やっぱりか……」と呟いて顔を青ざめさせていた。中学時代に鈴にもマッサージしてやったことがあるから覚えていたのだろう。

 

 

「盗み聞きとは感心しないなぁ?良いだろう、少し入っていけ」

 

 

ニヤケながら言う姉さんの迫力に、3人は抵抗することなくドアをくぐって部屋に入ってきた。その様子はまるで首元を掴まれた猫のようだ。ウケる。

 

 

「そうだ、デュノアとラウラ……ああ、更識も呼んでこい」

 

「「了解しました!!」」

 

 

シュッとセシリアと箒が敬礼して走り去って行った。鈴は頬をひくつかせがら呆れている。

 

 

「鈴……やっとくか?」

 

「別に良いわ。あたしはあの2人について来ただけだもの」

 

 

数十秒後、やや小走りで部屋にやってきた鈴以外の5人は恐る恐る部屋に入ってきた。簪さんは、急に姉さんに呼ばれたことで怒られるんじゃないかと死にそうな顔をしている。

 

 

「姉さん、俺は少し外に出てるよ」

 

「ん?なんだ、お前も分かるようになってきたじゃないか」

 

「おかげさまでね……んじゃ」

 

「ああ」

 

 

何故姉さんにまで俺の女癖の悪さを指摘されなきゃいけないのだろうか。中学からも一応気をつけてたつもりだぞ?告白される回数は減らなかったけど。

 

 

「はぁ……どこ行こう?」

 

 

 

 

〜一夏が出て行った後の部屋内 三人称視点〜

 

 

 

「そう緊張するな……っといっても無理か。飲み物を奢ってやろう。好きなものを取れ」

 

 

千冬が冷蔵庫から紅茶やらコーヒーやら炭酸やらを取り出して箒達に手渡した。いただきます、と全員が言って口につける。冷えた飲み物に全員が一息つくと、千冬はさらに笑いながら言った。

 

 

「飲んだな?」

 

 

含みのある言い方に全員がビビる。何かが入っていたのではないのか……そんな恐怖が彼女を襲うが……鈴がやれやれといった表情で言った。

 

 

「はぁ……千冬さん、なんか作りましょうか?」

 

「いやいい、客に作らせはせんよ」

 

 

そう言いながら千冬は2本目のビールを取り出してぐびぐびと飲み始めた。

 

 

「織斑先生……まだ仕事中じゃ……」

 

 

簪がビクビクしながら千冬に言うが、さらにビールを喉に流し込む。

 

 

「やめなさい簪……あたし達はもう口止め料払わされてんのよ」

 

「え?……あ」

 

 

全員が気づいた。飲み物を奢ることで、この事は見逃さなければいけないと言う事実に。

 

 

「さて、前座はこのくらいで良いだろう?肝心な話をしようか。ぶっちゃけた話、お前らアイツのどこがいいんだ?」

 

 

どかっと座った千冬は興味深そうに尋ねる。意味が分かったのか、箒達は少し恥ずかしそうにしている。

 

 

「わ、私は……別に……」

 

 

逃げるためかラムネを飲む箒。

 

 

「わたくしは、クラス代表としてしっかりしてほしいだけで……」

 

 

セシリアは、顔を赤らめながら……そしてどこか不安そうな顔で言う。

 

 

「ふむふむ、ではそう伝えておこう」

 

「「なんでもないです、忘れてください(ませ)!!」」

 

 

息の合った2人、仲はいいのである。

 

 

「あの……僕は別に彼に恋愛感情を持っているわけでは……」

 

「む…?そうなのか、てっきり……」

 

「どちらかと言うと好奇心かなぁ?一夏は……何も知らなさそうでなんでも知ってる感じがするんです」

 

 

真面目に語るシャルロットに千冬は少し考えてから言葉を発する。

 

 

「確かに、アイツは中学くらいから急に大人びたな……」

 

「ああ〜そのくらいでしたっけ。悟りきったようで、どこか決意に満ちた目をしてた一夏って」

 

「私より長く時間を共にしたお前の方が知っているだろう鈴?」

 

「家族のアンタがそれ言っちゃダメでしょうよ……まぁ、無理して大人ぶってる節はあったわね。それなのに無駄に博識だし」

 

 

うんうんと頷きながら語る鈴に、一夏の中学時代を知らない他の5人は興味深そうに話を聞いている。

 

 

「ラウラは?」

 

「私は……現に兄様と呼んでいますし、恋愛感情はありません」

 

「そうでしたわ、ラウラさんは何故一夏さんの事を兄とお呼びになるのです?しかも急にでしたし……」

 

「まぁ……なんと言うのだろうな。ああ!ビビッと来たんだ。この人が私の兄様だとな。あとは祖国の黒兎隊の副隊長が、日本では慕う男性のことを兄と呼ぶと聞いたんだ」

 

「クラリッサか……ラウラ、間違っているからな?直せとは言わんが覚えておけ」

 

「はっ!!」

 

 

ラウラは特に変な反応をする事なく素直に答えた。セシリアに問われたときは少し眉を寄せて千冬を見たが、おそらく誰も気づいていないだろう。

 

 

「更識はどうだ?」

 

 

ピクッと肩を跳ねさせ反応した簪はあうぅ……顔を真っ赤にしながら答えた。

 

 

「私を……私として見てくれたところです」

 

「ふむ……それは?」

 

「私の姉は更識楯無、この学園の生徒最強……そして、織斑先生も知ってる通りです」

 

「ああ」

 

 

日本の対暗部用暗部、『更識』のことだ。公には知られていないので簪は濁して伝えた。

 

 

「だから……お姉ちゃんの妹としてしか見てもらえなかった私を……更識簪として見てくれた一夏には……すごく……うぅ……もういいですか?」

 

「十分だ、なあお前ら?」

 

 

のぼせあがりそうなほど顔を真っ赤にしてこれ以上は言えないと示す簪に、千冬は満足そうに箒達に問う。

 

 

「「「「「…………」」」」」

 

「え!?……せめて何か言って欲しいなぁ」

 

 

無言になって少し俯く5人。どうやら簪の話が想像以上に響いていたようだ。

 

 

「思わぬ伏兵がいたようだな?ハッハッハ!!鈴、お前の天下かと思っていたがなかなか分からないものだな?」

 

「千冬さん……乙女の恋話を酒のつまみにするのは趣味が悪いです……」

 

 

高笑いしている千冬に、すでに鈴はジト目だ。しかし、すぐに調子を取り戻すと語り始めた。

 

 

「私は前に告白紛いのことをしました」

 

「「「「「「ッ!!」」」」」」

 

「もちろん、抜け駆けだってことはわかってるけどね。でも……保留にされちゃった♪」

 

「保留……一夏が、勘違い以外の答えを出したのか?」

 

 

小学生時代の一夏を知っている箒が、その鈍感さを発揮しなかったのか聞いた。

 

 

「ええ、言っとくけど中学に入ってからはちゃんとはっきり告白を断り続けてたのよ?そんな一夏が、保留だってさ」

 

「何故なのだ?」

 

「1年間待って欲しい、それまでには全てを終わらせる。って言ってたわ。なんのことかさっぱりだけどね」

 

「……(一夏さんには、やはり何かとてもつもない秘密が……あの時見たのは決して幻覚じゃなかっと言うことでしょうか?)」

 

「ほぅ……一夏がそんなことを……それで鈴はなんと言ったんだ?

 

 

千冬が追撃とばかりに鈴に聞いた。

 

 

「そんなに短くなくても、何年でも待ってやる!!って言いました」

 

「「「「「「おお!!」」」」」」

 

「だからあたしは待ちますよ。もちろんアピールは続けますし、誰にも負けるつもりはありませんから!!」

 

 

鈴の力強い宣言に、箒達、それにシャルロットとラウラまでつられて気合を入れ直した。

 

 

「ふっ……アイツも好かれたものだ。知っての通り一夏は、家事も料理も完璧、マッサージも上手ければ何より強い。アイツと付き合える女はお得だな」

 

「強い以外千冬さんできないから言ってるだけじゃ……にぎゃぁ!?」

 

「この頭だな?愚かなことを考えて言っているのは……?」

 

「「「「「……(うわぁ……命知らずだ……)」」」」」

 

 

鈴がアイアンクローで締められている。一見凄惨な現場だが完全に鈴の自業自得なので誰も助けようとしない。いや、助けようとすれば同じ目に合うのが目に見えているのだ。

 

 

「このくらいにしといてやろう……それよりも、一夏が欲しいか?」

 

「……くれるんですか?」

 

「誰がやるか。女なら自分で勝ち取れ。すでに鈴は王手をかけているぞ?」

 

「「「ッ!!」」」

 

「自分を磨けよ、ガキども。ああ、鈴は体型もだな」

 

「いつか絶対にぶっ飛ばしてやるわこのマダオ(まるでダメなお義姉さん)……」

 

 

千冬が3本目のビールを開けながら、女性だけの話は続いて行った……

 

 

 

 

〜一夏〜

 

 

 

 

「で、姉さんに部屋を追い出されて私達のところまで来たの?」

 

「ああ……行くところがなくてな」

 

 

現在、昼に見つけた場所でモノクローム・アバターのメンツと密会をしていた。

 

 

「だからってわざわざ私らと会うか普通?」

 

「いいじゃないの。たまにはね」

 

 

オータムとスコールの姉御が言う。さすがっす姉御、ついて行きます。

 

 

「そういや、姉御のISは出来てるのか?」

 

「ええもちろんよ、ゴールデン・ドーン……黄金の夜明けって言う名前。炎での攻撃を得意とするわ」

 

「へぇ〜今度スペックデータ見せてくれよ。なんなら模擬戦でも……l

 

「却下よ、貴方とやるのは疲れるから嫌だわ」

 

「えぇ……」

 

 

何故だ……何故なんだ……

 

 

「ああ、そういえば一つ言っておくことがあったわ」

 

「なんだ?」

 

「亡国で使う量産型ISのことよ」

 

「ッ!!ついに完成したのか?」

 

 

素晴らしい……無駄に技術は高い亡国が作る量産機だ。きっと打鉄やラファール・リヴァイブよりも性能が高いのだろう。

 

 

「試作第3世代量産型IS『ウィル・オ・ウィスプ』……亡国の使う量産型にふさわしい名前よ」

 

「ウィル・オ・ウィスプ……鬼火か。ははっ、いいじゃねえか。ていうか、第3世代ってことはイメージ・インタフェースシステムを搭載しているのか……一体どんな?」

 

「そう焦らないの。ほら、これを見なさい」

 

 

姉御が手渡してくれたスペックデータを見る。

紫の武士鎧のような装甲に大きな翼型の浮遊ユニットがある。どこからどう見てもアンバランスだ。和風と洋風をごちゃ混ぜにしたみたいな違和感を感じる。標準武装は両刃のロングブレード『カゲロウ』、3連装アサルトライフル『炎天』だ。……何故カタカナと漢字なんだ?

そしてお待ちかね、第3世代武装『紫苑』。浮遊ユニットのエナジー・ウイングが青紫に輝いて機体を包みその性能を上げるらしい。夜間実験で使用した時、その飛行している様子がゆらゆらと空間を漂う鬼火のようなことから、機体名称が『ウィル・オ・ウィスプ』になったそうだ。ちなみに、エナジー・ウイングから発するエネルギーは部分的に付与することが可能……ふむ。

 

 

「おい、これ白式の『零落白夜』を流用しただろ?てことは束さんが噛んでるな?」

 

「あら、よく分かったじゃない。完成間近でタバネが加わってくれたから、問題点をポンポンと解決してくれて完成が早まったそうよ」

 

「うわぁ……レイさんがんばったなぁ(白目)」

 

 

変態技術者が増えるとこうなるって分かってたはずなんだがなぁ……

 

 

「で、何機用意してるんだ?」

 

「なんと63機よ。今までのISのコア強奪任務で集めた分の殆どがこの機体を装備させるの。それ以外は全て私達モノクローム・アバターと新設される実行部隊のISに回されているわ」

 

「いつのまにか結構コアあんじゃん……新設される実行部隊?」

 

 

テロリスト組織が所有していいコアの数じゃないんだよなぁ……多分EU連合も完封出来るだろうな。えっと……白式とユニコーン。マドカの機体に、ゴールデン・ドーン、あとオータムのアラクネもあるな。あとは……ウェルキン先輩に渡したISに、レインのハウンド。ああ、買収した倉持のコアも含めるからまだ8、9個はあるな。簪さんの打鉄弐式は除外しても多い。

 

 

「ええ、【フォールン・ワールド】……世界を変える私達にはお似合いの部隊名よ。隊長は私、隊員はオータム、レイン、そしてタバネ」

 

「え……モノクローム・アバターは?」

 

 

その理論だと俺とマドカとウェルキン先輩が置き去りなのですが……もしや……

 

 

「隊長は一夏に任せるわ」

 

「ガッデム!!やっぱりかこんちきしょう!!……はぁ、で?隊員は?」

 

「マドカ、サラ・ウェルキン、クロエ・クロニクル、そしてレイさんよ」

 

「なるほどねぇ……おい、ちょっと待てや姉御。どうしてクロエが部隊に配属されてるんだ。あの子に戦闘は……」

 

「あの子が自分から言ってきたのよ。一夏のサポートがしたいってね」

 

「はぁ?」

 

 

アイツ、そんなに積極的だったか?束さんの助手を務めるのかと思ってたんだが……

 

 

ピピピピ……

 

 

「あら、もう時間ね……戻りなさい一夏。ユニコーンはまだかかりそうだけど、詳細な情報を纏めたものをユニコーンに入れておくってあげるから」

 

「ちっ……今日はここまでか。分かったよ姉御……じゃあなみんな」

 

「じゃあまた、兄さん」

 

「一夏、今度料理のレシピを教えろよな」

 

「ああ、いいぜ」

 

 

モノクローム・アバターのみんなに別れを告げてから旅館に戻った。

 

 

「急な部隊数の増加、人員分け、量産型の完成……亡国はこれまでなく活発に動いている……そろそろ本格的に動き出すのか……俺の……いや、俺達の目的のために。ボス、頼みますよ」

今後の進行における重要事項『アンケート結果がそのまま反映されるわけではありません。あくまで参考にさせて戴きます』

  • 凍結し、リメイクのみを制作、順次更新
  • リメイク版無しでこのまま継続
  • リメイク版ありで両方継続
  • この作品のまま加筆修正
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