あの日の戦友たちは今敵となる   作:ゼノアplus+

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空を駆ける戦姫達

53話

 

 

「なに……これ?」

 

 

一夏と福音が戦闘を行なっていたであろう海域まで猛スピードで到着した簪達だが、思わぬ光景に絶句していた。

 

 

「…………」

 

 

 

彼女達の目の前には、機体ごと光り輝きながら膝を抱え蹲っている一夏と、同じように光っている海の中で一部分が見える。

 

 

「一夏!!」

 

 

試しにシャルロットが一夏に声をかけるが何も反応を示さない。

 

 

「どうしてしまったのだ兄様」

 

「…………ッ!?みんな構えて、何か来る!!」

 

「「「「ッ!!」」」」

 

 

鈴が突然叫び、全員がその言葉通り戦闘態勢に入った。一夏を中心として円状に展開した5人はとある方向から向かってくるISの反応に警戒を強めていた。

 

 

「速すぎるッ!!」

 

「初めて見る機体コード……搭乗者は……『篠ノ之箒』……ってことは」

 

 

簪が呟いたと同時に他の4人もそれを見た。ISからのシグナルを読み取ったのだ。一同はISが来るであろう方を向き思い出した。

 

 

「そういえばこの方向……旅館がある方向ですわね」

 

 

代表してセシリアが言った。

 

 

「みんな、待たせてすまない!!」

 

「「「「「箒(さん)!!」」」」」

 

 

そして現れたのは、『紅椿』を纏い、両手に刀を持った箒だ。

 

 

「箒、アンタどうしてISを……」

 

「姉さんからの誕生日プレゼントらしい」

 

「お姉さん……あっ、篠ノ之博士!!」

 

 

シャルロットの呟きで全員が驚愕した。ISの生みの親が直々に開発したISという事実に気づいたからだろう。

 

 

「箒は、それを持つ意味を理解しているのか?」

 

「もちろんだ。新しいISコアに、国籍問題。何より姉さんと接触したということもな」

 

 

人一倍ISの危険性に気付いているラウラが箒に問うがどうやらしっかり理解しているらしい。

 

 

「私の実力が足りないことは重々承知している。専用機を持つ資格も無いこともだ。だが……今はお前達と共に戦いたい……その頼む!!」

 

 

箒は頭を下げて5人の代表候補生に頼み込んだ。

 

少しの沈黙の後。鈴が代表して言葉を述べた。

 

 

「バカなの箒?」

 

「なっ……人が頭を下げているのにバカだと……」

 

「いえ……流石に今のはおバカさんとしか言いようがありませんわね」

 

「うん、僕もそう思う」

 

「ああ、私もだ。箒、お前はバカだ」

 

「…………私も」

 

「全員なのかッ!?」

 

 

5人全員にバカ認定され、多少は性格が丸くなったはずの箒がキレかけている。

 

 

「私のどこがバカだというのだ!!」

 

「全部でしょ、まず一つ目。アンタ、私達の訓練について来てるじゃない。それで実力が無い?他の生徒達に謝ったら?」

 

「あれくらい余裕でこなせねば強くはなれないだろう?」

 

「いや、あれハードメニューだから。あんなのに搭乗時間も少ない箒が付いて来てるのはどっちかっていうとヤバいから」

 

 

キョトンとしている箒に追撃をかけるように鈴は言っている。箒はそれを聞いて驚く。

 

 

「二つ目、セシリア」

 

「はい、資格なら十分にありますわよ箒さん。貴女の努力は一夏さんを含めた皆さんが存じていますわ。何も問題はありません。IS適性のことを申し上げるならそれを凌駕する実力をこれから身につけていけば良いだけですから」

 

「努力……(姉さんの言っていた通りだ。私が思っていたよりも私は認められているということか)」

 

 

先ほど束からも言われた努力という言葉をセシリアからも言われ少し考え始めた箒。しかし鈴はそれすら許さぬように続けた。

 

 

「3つ目、シャルロット」

 

「はーい、あのさ。箒は僕達のことをどう思ってるの?」

 

「……その、友達だと思っている」

 

「うん。僕もそう思う。じゃあ遠慮なんて要らないよ。ね、みんな?」

 

「「「「もちろん!!」」」」

 

 

シャルロットはニコニコしながら箒に問う。しかしその笑顔は少し暗い……いや少しでは無い。

 

 

「4つ目、ラウラ」

 

「む、私もか。ふむ……お前の実力は我らがドイツのIS部隊隊長であるこのラウラ・ボーディッヒが保証しよう。運が良かったとはいえ、私のAICに一時的に打ち勝ったのだ。誇れ」

 

 

ドヤ顔で語るラウラに、箒の表情も少し和む。

 

 

「5つ目、簪」

 

「ふぇ!?……えっと、私が言うと説得力がないけど……お姉さんに認められるように頑張らなくちゃ……ね?」

 

「姉さんに……あぁ、この紅椿でみっともない所は見せられないな」

 

 

姉との確執という意味では簪も経験がある為、姉に対する思いという意味では箒の良き理解者となるだろう。箒は簪の言葉でさらに決心したようだ。

 

 

「ありがとう……みんn…ッ!?後ろだ!!」

 

「「「「「ッ!!」」」」」

 

 

紅椿の高性能なハイパーセンサーが異常を感知した。すぐに全員に知らせ振りかえると……先ほどまで姿が見えなかったはずの福音が白く輝きながら海面より浮上して来たのだ。

 

 

「姿が違う……さっきはこんなのじゃなかった……」

 

「ッ……まさか、二次移行か!!」

 

 

ラウラが叫ぶと同時に、そうだとでも言いたげな福音が進化した『銀の鐘』を展開した。

 

 

「全員退避ッ!!」

 

「一夏ッ……」

 

 

すぐさまシャルロットが大型の盾を呼び出して未だ動かない一夏を守る。それ以外の5人はすぐに回避行動をとった。

 

 

「くぅっ……一夏、どうして目覚めないの?」

 

 

必死に福音からの攻撃を耐えているシャルロットが思わず悪態をついてしまう。白式にはこれといった損傷もない。しかし全く反応を示さない一夏はまるでもう起きないのではないかという不安を起こさせている。

 

 

「シャルロット、ここは私が!!」

 

 

すぐさま箒がシャルロットの前に出て、展開装甲を用いてエネルギーシールドを展開。二次移行し威力も桁違いになっているはずの『銀の鐘』を完璧に防ぎ切った。

 

 

「すごい……これが篠ノ之博士が作ったIS!!」

 

「一夏を頼んだ。はぁ!!」

 

 

攻撃が止んだと同時に、箒は一気に攻勢に出た。『空裂』と『雨月』の二本の刀で福音を牽制し始めた。『雨月』を福音に向けて突き出すことでその先端からレーザーを撃ち出したが福音は難なく回避。続いて箒が振るった『空裂』からはエネルギーも刃が飛び福音を捕らえた……が、これも回避されてしまう。

 

 

『La…………』

 

 

無機質な音が響き、福音が箒見据えた。どうやら箒と紅椿を脅威と認識したらしいが、そこへすかさずレーザーや実弾が着弾し福音は思わぬダメージを受けることになる。

 

 

『La……?』

 

 

福音が辺りを見渡せば、遠距離よりセシリアとラウラがそれぞれの銃身の長い武器で狙撃をしていた。さらにそこへ鈴の『衝撃砲』、シャルロットの手に持つ2丁のアサルトライフルによる連射で完全に動きを止められた。

 

 

「簪、箒!!」

 

「「はぁっ!!」」

 

 

動きの止まった福音の懐にいつのまにか入っていた簪は薙刀を、箒は2振りの刀を共に振り上げていて上段からの斬撃がしっかりヒットした。

 

 

『La…………』

 

 

すぐに体勢を立て直した福音は加速して距離を取った。

 

 

「意外とやれてるわね……第二形態ってこんなもんなの?」

 

「油断出来ないよ……」

 

『La……ッ!!』

 

 

福音が吠えた。否、甲高い機械音を盛大に鳴らしたのだ。

 

 

「雰囲気が変わった……ここからが本気と言うわけか」

 

 

ラウラが呟いた瞬間、福音の姿が消えた。

 

 

「なにっ……一体何処に……」

 

「ラウラ、上ッ!!」

 

「えっ?がぁッ!?」

 

 

距離があったはずなのに、瞬時にラウラの頭上まで迫っていた福音はラウラにかかと落としを仕掛けた。その一撃はラウラが操るシュヴァルツェア・レーゲンの大型レールカノンを粉砕しながらラウラを海へと叩き落としたのだ」

 

 

「ラウラさんッ!!……なッ!?」

 

 

セシリアが海に落ちるラウラの名を叫んだ瞬間には何故か彼女の目の前にいた福音が、『銀の鐘』を最大稼働させてブルー・ティアーズを穴だらけにしようとしていた。

 

 

「セシリアァ!!」

 

 

そこへすかさず飛び込んだのがシャルロットだ。出撃前に装備していたパッケージ『ガーデン・カーテン』の2枚の実体シールドと2枚のエネルギーシールドでセシリアへの攻撃を遮断するが、最大稼働した『銀の鐘』はその防御をたやすく貫いて2人に襲い掛かった。

 

 

「「きゃあぁぁぁあああ!!!!」」

 

「セシリア、シャルロット!!」

 

 

鈴が名前を呼ぶが、すぐ近くの小島に墜落したらしく反応はなかった。

 

 

「簪、『流星』のスピードで撹乱しながら遠距離火力支援。箒は一夏を連れてセシリアとシャルロットが落ちた島まで退避」

 

「鈴はどうするのだ!!」

 

「なんとかして福音を私に釘付けにしておくわ……いいからさっさと行く!!」

 

 

鈴の決死の叫びが2人に届き、簪は『流星』を展開して超加速で距離を取った。すぐに遠くからビームやらミサイルやらが福音を襲っている。箒はエネルギー・シールドを展開したまま一夏の壁となって後退していった。

 

 

「仕方ないわね……燃費が取り柄の甲龍でこんなことしたく無かったんだけど。行くわよっ!!」

 

 

鈴はパッケージによって追加された衝撃砲の2門を背部に構え、スラスターを吹かすと同時に撃ちだした。その衝撃でさらなる加速を生んだ鈴は高速で福音に迫りながら青龍刀で攻撃を仕掛けていく。

 

 

『La……』

 

「はあっ!!逃げてんじゃないわよ!!」

 

 

鈴から離れればビームとミサイルが、避ければ鈴による高速の斬撃が襲い掛かる福音だが、その全てを躱し、いなし、火力で押し切ることでダメージを最小限に抑えている。お互いに一歩も譲らない攻防が続いて少しすると、鈴の秘匿回線に簪から通信が来た。

 

 

『ごめんなさい……ミサイルもビームも残ってないから……ちょっと離れてて』

 

「?……分かったわ」

 

 

何か考えがあるのだろうと思った鈴は素直に簪の言う通りにする。福音は今が好機と鈴を墜とそうとさらに追撃を仕掛けようとして、今までにない衝撃を受けることになった。

 

 

「はぁぁぁぁぁあああああ!!!!」

 

「簪ッ!?それは無茶よ!!」

 

 

残り少ないエネルギーを使って、『流星』ごとその巨体をぶつけたのだ。直線運動により爆発的な加速をした打鉄弐式は、そのまま福音をひきづりながら箒達がいる島とは別の小島へと突っ込んだ。

 

 

「簪!!」

 

 

あまりにも無茶苦茶な行為。一歩間違えれば自分の身も危なくなるような、ある意味特攻と言えるその攻撃に簪の身を案じて鈴は近づいて行く。そして鈴が見たのは……

 

 

『…………La』

 

 

身体からスパークを放ちながらも違和感なく立ち上がる福音と、半壊した『流星』の真ん中で打鉄を纏ったまま気絶している簪の姿だった。

 

 

「簪ッ!!箒は……まだみたいね。軍用機が二次移行したにしては強すぎない!?」

 

 

悪態を突きながら距離を取った鈴。簪を脅威と認識しなくなった福音は、鈴目掛けて飛んだ。

 

 

「うげっ!?」

 

 

鈴は全ての衝撃砲を福音に向けて不可視の弾丸を連射する。その全てを躱しながら鈴に詰め寄る福音が遂に鈴に触れようかというときに、横からレーザーが飛んできた。福音は急ブレーキをかけて方向転換し加速してそれを避けた。

 

 

「無事かッ!!」

 

「ナイスタイミングよ箒……」

 

 

箒が間一髪で福音にレーザーを放ち鈴を助けたのだった。

 

 

「初めて乗るにしては上手くできてるじゃない」

 

「ああ……私自身そう思う。姉さんの調整が良かったのだろうな」

 

 

話をしていても2人の目はしっかりと福音を捕らえている。

 

 

「……どうする?」

 

「あれだけ皆の前で啖呵を切っていてなんだが、勝てないだろうな」

 

「やっぱりそうよね。で、問題はどうやってみんなを回収しながら撤退するかなんだけど……」

 

「難しい……だろう」

 

 

全員で攻撃を仕掛けても倒しきれない相手に、負傷者を回収しながらの撤退戦。難しいどころか絶望的な状況だ。そして負傷者の1人には海に落ちたラウラがいて、捜索すら困難な状況だ。

 

 

「生憎……衝撃砲を撃ちすぎてエネルギーが怪しいのよね……」

 

「私は……問題なさそうだ。鈴は一旦ラウラを探すべきだろう?」

 

「箒1人でアレを抑えられるの?」

 

「まぁ……無理だろうな。初陣が確定で敗北とは情けない話だが……」

 

「仕方ないわよ。相手が悪い。ッ……来るわよ!!話は後!!」

 

「そのようだッ!!」

 

 

福音が『銀の鐘』を連射しながら迫ってくる。二次移行してさらに理不尽な挙動ができるようになったらしい。2人は回避し、盾で防ぐなどしてどうにかダメージを食らっていないが、ジリ貧であることに変わりはなくエネルギーを減らしながら追い詰められている。そして遂にその時は来た……

 

 

「はぁ……はぁ……ねえ箒」

 

「どう……した?」

 

 

息も絶え絶えな2人だが、ふと鈴が箒に話しかけた。

 

 

「エネルギーが底をついたわ。先に休んで……わ……」

 

「鈴ッ!!」

 

 

過度な集中で脳が強制的に気絶させたのだろうか、ギリギリISを纏った状態で意識を失った鈴が海へと身を投げ出していた。箒はそれに気付いてすぐに手を取りお姫様抱っこの要領で抱きとめた。

 

 

「私はどちらかと云えばされたいのだが……我儘を言っている場合じゃないな……くっ!!」

 

 

両手が塞がったことで攻撃を防ぐ手段がなかった箒だが、束が搭載していた操縦支援システムにより、箒のイメージを受け取って背部の展開装甲が紅椿から分離。シールドビットとして自立稼働し箒の正面でエネルギーシールドを張った。

 

 

『La…………』

 

 

無尽蔵かと思うほどの『銀の鐘』を連射しながら蜂起に詰め寄る福音。他のISでも一線を超える性能を持つ紅椿でも防戦一方となれば話は違う。エネルギーをどんどん消費させられ、シールドを維持できなくなったビットが廃部へと戻ったのだ。そして無防備となった箒の首を、福音が右腕で掴んで持ち上げた。もちろん箒は鈴を抱き抱えたままだ。

 

 

「うぐっ……かはっ……(い……ちか……私は……)」

 

 

 

そのまま福音は力を緩めず背部のエネルギーの翼を大きく広げた。この近距離で『銀の鐘』を叩き込むつもりらしい。

 

 

(今鈴を離せば海に落ちてしまう……しかし離さなければ攻撃を……私は……わたしはァ!!)

 

 

箒が心の中で叫んだ瞬間、紅椿が黄金に輝いた。そして箒の視界の端では、シールドエネルギーが急激に回復していくのが見えた。なにが起こったのか分からない箒だが、今しかないと思い再度ビットを射出して福音を引き剥がした。

 

 

「げほっげほっ……なんだこれは……?」

 

 

すぐに反転して加速し福音との距離を取った箒は、紅椿のデータを確認した。

 

 

「絢爛舞踏……?エネルギーが回復しているのか……これならッ、と言いたいところだがいくらエネルギーがあっても実力で負けているからな……」

 

 

単一能力を発現させた箒はすぐに能力を分析した。その判断ができるだけ十分すぎるだろう。

 

 

「ひとまず鈴を逃すのが先か……」

 

 

抱き抱えている鈴を見ながら、箒は行動を決めた。そして福音の方を向き直そうとして……後ろから誰かに肩を掴まれた。

 

 

「誰だ……ッ!!……一夏……」

 

「待たせたな箒」

 

「一夏……遅すぎるぞッ!!」

 

 

叱責しながらも、箒の表情は晴れやかだ。理由は敢えて言及する必要はないだろう。

 

 

「……鈴。セシリア、シャルロット、ラウラ、簪さん」

 

 

一夏は順々に周りを見渡すと、その顔を歪ませた。

 

 

「箒、後は俺がやる。絢爛舞踏でエネルギーをくれ」

 

「あ、ああ……」

 

 

差し出された一夏の手を握ると、黄金の輝きが一夏へと移りエネルギーが回復していった。

 

 

「お前はラウラと簪さんを回収してからセシリア達のところに戻って見てろ」

 

「ッ……私では足手纏いか?」

 

「ああ」

 

「……分かった。負けるなよ一夏?」

 

「当たり前だ」

 

 

突き放すような一夏の言葉に箒はその表情に影を落とすが、理解したのか素直に箒は鈴を抱えて下がっていった。

 

 

「ごめんな箒……後でとっておきの誕生日プレゼントをやるから許してくれ。ふぅ……白式、全ての人間がドン引きするような蹂躙劇を始めよう」

 

 

そう言って一夏は背中に4対のエネルギー・ウイングを展開し、右腕にショートブレードを、左手に拳銃を取り出した。

今後の進行における重要事項『アンケート結果がそのまま反映されるわけではありません。あくまで参考にさせて戴きます』

  • 凍結し、リメイクのみを制作、順次更新
  • リメイク版無しでこのまま継続
  • リメイク版ありで両方継続
  • この作品のまま加筆修正
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