55話
「クソがッ……もうちょっと空気が読めねえのかッ!!」
どこからかの砲撃を防ぎ切った俺は、なんとか女子陣を逃すことに成功した。実は、皆と話しているときにスコールの姉貴から連絡があったのだ。
『謎のエネルギー反応を感知した』……と。それで急いでシールドを張ってみれば案の定。姉貴からの通信がなかったらお陀仏だったぜ……そして、福音でなければ確実に奴らだろう。またイベントがある時にちょっかいをかけてきやがって……
『クククッ……戦場で油断をする方が悪いではないか?』
「その声……この間の野郎だな。テメェ……どうやってウチの精鋭を突破した?まさか……」
『安心してくれたまえ。誰にも気づかれてはおらんよ』
「何かしやがったな……」
束さんやレイさんお手製のレーダーを気づかれずに突破するとかどんな技術を使ってんだよ……
「何か仕掛けてくると思っていたが、福音にはなにもしていないようだな?」
『機体性能の向上程度はしたさ。最も、貴様には温かったらしいが』
「俺達を舐めすぎていたな。あの程度で俺をどうにかできると思っていたのか?」
『ふっ……もちろん想定内だ。が、想定外の出来事があったので急遽私が直接出向いてやったのだ。ありがたく思ってくれ』
「おかえりくださりやがれ……って言いたいところだが、駄目そうだな。なにが目的だ?」
なんだ、俺の行動についての想定外とはなんだ?考えろ俺……って言っても、まず奴らのことがなにも分からないんだ。考える権利すら手に入れていない。
『クククッ……簡単だ、私と戦ってもらうぞ』
「ああ?なにを言って……ッ!?」
そしていつのまにか俺の目の前にソレはいた。俺の『越界の瞳』を用いても捕らえられないヤツ……おいおい……これはやべぇな……勝てるビジョンが浮かばねぇ。
全身装甲の黄金の騎士甲冑、何も持っていないが頭部に王冠のようなパーツが見える。しかも赤いマントを肩にかけているあたり、おそらく『王』がモチーフなのだろうそのISは、カメラだろうその目を俺に向けている。
「ふむ、こうして直接会うのは初めてだな。織斑一夏」
「お前……男のはずだろう?」
「その例はお互い、目の前にいるではないか?2人いるくらいどうって事はない」
どうやら、コイツは2人目の男性操縦者らしい。俺以外にいるとは思ってなかったけどな。いつも通りな上から目線の言葉遣いが少しウザい。
『一夏、戦ったらダメ……いや、戦闘にならないよ!!』
『白式の言う通りです。即時撤退をお勧めします。まぁ……出来ないでしょうが』
「そこの2人の言う通りだろうな。私は強い」
『『ッ!!』』
「白式と白騎士の声が聞こえてやがる……?」
俺の周りには誰もいないはずなのに、ヤツはそこの2人と言った。コイツ……異常だ。
「人間は本来ISのコア人格の声を聞くことができる。だがそうしないのは人間側に問題があるからだ。それに関しては貴様も知っているはずだが?」
「ッ……お前は聞こうとしているって事かよ」
どう考えても最近ISに乗り始めたようなヤツの台詞じゃない。明らかに経験が段違いだ……
「ああ、ちなみにこのISにコア人格は居ない。『番外』だからな」
「番外……?(いや、気にしている場合じゃない)」
「ほう……私を前にして考え事とは余裕だな?」
「なっ……いつのまにッ!?」
目を瞑って、開けてみれば目の前に黄金の騎士甲冑。今の一瞬でどうやって目の前に……
「ふーむ……目覚めてもおかしくはなかったのだがな……」
「あぁ?何を言って……くぅっ!?」
ブツブツと独り言を呟いたヤツは突然俺に蹴りを入れてきた。予想外すぎて流石に反応できず躱しきれなかった。
「何しやがる!!」
「言っただろう?戦ってもらうと」
「チッ……流石にやべぇ……白式!!競技用リミッター解除ッ!!」
『もうやってる!!……完了!!』
仕事が早い。恐らく白騎士の補助だろう。すぐに機体を制御しヤツから離れた。
「緊急コール!!モノクローム・アバターに救援要請……任務レベルはSSSランクだ。生存と撤退を第一に考えろ!!IS学園にバレてもいい!!」
『『『了解!!』』』
すぐにマドカ達が了承し彼女達とのコアのリンクが開始され現在位置が表示された。不味いな……ここでゼフィルス達をお披露目するつもりは毛頭なかったんだが……しかも俺が『S』じゃなく『織斑一夏』の時にだ。
「クハハッ!!良い判断だよ織斑一夏。だが、これで貴様はもう学園にはいられまい?」
「テメェ……まさか、世界を混沌に落とす事が狙いか!!」
IS学園という表向きの身分を完全に消去させて表舞台から抹消する気か?しかもその場合、亡国がアメリカやイギリスのISを盗んだ事実も明るみに出る。当然、大国がコア盗まれた事もだ。それによる責任問題でドイツやフランスに付け入る隙ができ……さらなる混沌が世界で始まるかもしれない。
「……どうでもいい。それは付加価値でしか無いのだから」
「付加価値……」
「行くぞ織斑一夏。貴様の力、私に見せてみろ。『アーサー・フェイク』出る」
「ッ!!」
ヤツがそう言うと同時に腰部のスラスターを吹かして突撃してきた。俺はすぐに拳銃で牽制。確実にヒットするはずのその攻撃は、何故かヤツの機体をすり抜けた。
「残像……後ろかッ!!」
「これくらいもっと早く気づけ」
『越界の瞳』の知覚向上能力により一瞬反応があった俺の後方に向けてショートブレードを振り抜く。しかしまたもや感触がない。
「展開!!」
一点狙いでは当たらないと察した俺は、すぐにエナジー・ウイングを全て広げてエネルギーを撒き散らした。
「不正解とは言わんがまだ足りん。出直してこい」
突如、白式のモニターに反応がありエネルギーが掻き消された。
「おいおいマジかよ……流石にそこまでは聞いてねぇ……」
その方向を見れば、先ほどヤツがアーサー・フェイクと名乗ったISが右手に見るだけで業物と分かるような大剣を持っていた。
「『カリバーン』と言う。さあ、続けるぞ」
「めんどくせぇ……」
今度は正面から突撃してきた。その一撃は重く、ブレードでは逸らすだけで精一杯だ。お互い剣での攻防を少し続けたあと、俺から仕掛ける。
「食らえッ!!」
「わざわざ叫んでから撃つ人間がどこに……む?」
俺は大声をあげながら拳銃を撃つ。その弾は確実にISの装甲を貫く威力だったはずだが、ヤツは剣を一振りすると銃弾を斬り裂いた。
もちろんそこまでは予想内。しかし、何も考えていないわけではない。
「ククッ……面白い。そうでなくてはな」
ヤツの手の甲の装甲が少し凹んだ。何故かって?俺は2発撃ったからだ。一発目の銃弾の真後ろに向けて2発目を撃つ。もちろん風向き、一発目の弾道計算など色々計算してから発射が必要だが、マスターすればかなりの脅威だ。相手からすれば一発にしか見えていない銃弾は防いでもすぐ後ろから2発目が来るからだ。一発しか銃声が聞こえていないのにだ。無論、参考にしたのは『暗殺◯室』だ。思っていた以上に色々載ってて面白かったぞ。実益もあるしな。
「凹むだけかよ……」
『うへぇ……出力は上がってるのになぁ……』
どうやら白式も予想外らしい。そりゃまぁ……二次移行してすぐに負けそうになるんだからまぁ……仕方がない。俺だって悔しいさ。
「当たり前だろう?……ふっ、もう来たか」
ヤツがそう呟いたと同時に、閃光がヤツを襲った。しかし、またもや剣で掻き消した。何あの剣?
『兄さんッ!!』
「ああ」
すぐに加速してヤツから距離を取る。向かう先はもちろんマドカ達の元だ。
「……織斑マドカ、スコール・ミューゼル、オータム。亡国企業の精鋭IS乗り。ふっ……私の前に立つか」
アラクネを纏ったオータム、サイレント・ゼフィルスを纏ったマドカ、ゴールデン・ドーンを纏ったスコールの姉貴。そして俺。モノクローム・アバターが勢揃いしてISを纏っているのも珍しいだろう。俺は白式だから厳密には違うが。
「兄さん……一応任務中だ」
「おっとすまん……今は織斑一夏だからな。油断していたよM」
「おいコラS。口調も変えろ」
「まぁまぁ、いいじゃないオータム。どうせISのログはタバネが消すんだし」
全員がヤツを見ながら会話する。誰も油断はしていない。
「…………興が削がれた。今日は帰るとしよう」
「逃すわけ無いだろうが。テメェらの組織についてペラペラと吐いてもらう」
「フッ……全員で私に挑んで勝てると言うのか?」
「少なくともISの機能停止までは持ち込めると思うが?兄さんもいる事だしな」
ヤツはどこまでも余裕そうな口調で言うが、マドカが挑発的な事を言った。
「やめておけ。ここで貴様らを殺すつもりはない。我々のことか……一つだけ教えてやろう」
「あぁ?……その情報が真実である保証がどこにもないだろうが!!」
オータムが少しキレながら言った。アイツの口調がウザくてももうちょい我慢しろよ……そんなんだからアホなんだ。
「信じるか信じないかは貴様ら次第だ。ふむ……どの情報ならいいと思う?」
「ここで私頼りですか……全く、仕方の無い人ですね」
「「「「ッ!!」」」」
ヤツが問いかけると、どこからともなく女性の声が響き空間が歪んだ。そして現れたのは白銀に少し黒いラインが入った全身装甲のIS。反応はなかったのだが……ステルスは当たり前か。
「折角ですし、構成人数でも教えてあげたらどうでしょう?我々の組織の」
「おお、良いじゃないか。ククッ……貴様らの驚く顔が目に浮かぶよ」
会話から察するに2人の中は良い。ただの部隊員というような間柄でも無さそうだ。
「構成人数……?それほど人数が多いと、亡国が見つけられない訳が無いのだけれど……」
幹部級の地位を亡国内で持っている姉貴が言った。当たり前だ。まず亡国の人数がバグってるからな。
「我々は『ユグドラシル』の構成員は合計で5名だ」
「「「「はっ?」」」」
5人……そんな訳が無い。確かに、1回目で俺を殺した時のISは無人機だった。しかし、10機ものISを用意するのにたった5人ではどれ程の時間がかかるというのだろう。恐らく束さんでもあり得ない。なぜならあの時は、あの人はマドカ達の元で色々していたはずだからだ。
「おやおや……信じられないという顔ですね。ええ、その顔が見たかったですから良い表情をしています」
「公共の場でくらい自重してくれ。そういうのは夜、ベッドの上でしっかり聞こうとも」
あ、やっぱコイツら殺すわ。こんなシリアスな場面で下ネタ打ち込んできやがった。俺が最近一番気にしてることを言いやがってテメェらッ!!
「クククッ……まあそう怒るな織斑一夏。例え、初めての相手が部隊長の姪だとしても、そして酔った勢いの無理矢理だったとしてもだ……フッ」
「なんでそんな事知ってんのッ!?」
「兄さん……その話詳しく」
「アッヒャヒャヒャ!!Sお前、レインに手を出したのか?今度帰ってきたらあのレズを全力で笑ってやるか!!」
「あらあら……ご愁傷様ねS」
「その感じからするにスコールも知っていたな?もちろんお前も同席だ」
「…………」
「ほらこうなった!!」
滅茶苦茶だぞマジでッ!!どうしてくれるってんだよぉ……チクショウ……
「今のうちに帰るか。また会おう」
「我が主人が大変失礼しました。それでは」
「な、待て!!」
爆弾発言で面倒なことになったウチを横目にヤツらが帰ろうとした。俺はすぐに調子を取り戻して止めにかかる。しかし……
「ふふっ、遅いですよ」
「なっ……消えた、だと?」
もう1人が腕を上げたと同時に奴らの姿が消えた。ISの反応も消えている。どうやらもう居ないらしい。空間移動の能力か?
「……状況終了。俺は織斑一夏として旅館に戻る。お前らもとりあえずバレないように帰ってくれ。じゃあな、白式、フルスロットル!!」
『ラジャー!!』
「あ、待て兄さん!!さっきの話を詳しく……って速ッ!?」
それはもう全力で逃げた。旅館で待ってた専用機持ち連中に流星かって間違えられる程度のスピードで。マドカ……男にはな、絶対に折れることができない事があるんだ……そんでもってレイン超逃げて?
こんな調子だが、決して表に出ることのない福音事件は幕を閉じた。面倒な事実を持って。……と、思っていたんだが
その時不思議な事が起こった。
旅館に戻った俺だが、所属不明ISとの接触についての件で拘束される事がなかったのだ。あの場にいた専用機持ちの誰もがヤツとの接触を覚えていないかのように何も聞いてこない。それどころか、国際的テロリストとの接触容疑もかけられなかった。姉さんからも労いの言葉と報告書の提出しか求められる事はなかったのだ。
まるで、
どうやら、思っていた以上に俺達の敵は規格外らしい。しかもそいつらはたったの5人という。なんともふざけた冗談だ。
でもまぁ……とりあえず全員無事だったし何よりも、
「白式、ありがとな」
『むっふふ〜。もっと褒めてくれても良いんだよ〜?』
『あら、私への労いは無いのですか?』
「もちろん白騎士にも感謝してるさ。出力調整のサポートは大助かりだったぜ」
『それで良いのですよ』
腹減ったな〜。
ー福音編【完】ー
〜???〜
「『現実改変』完了しました。私達が接触した事実はあの亡国企業を除いて全て消去しました」
「ご苦労様。やはりいつ見ても反則だな」
「いえ、今は最低出力しか出せませんので『デリート』しか行えません」
「十分なのだがなぁ……まあいい。今日は戻るぞ。あの2人が夕食を用意してくれたらしい」
「それは……楽しみです」
「毎日毎日、最後の晩餐かと思うながら食う飯に味気も何も無いのだが……」
「不味いのですか?」
「まさか、最高の食事だよ。あの2人が作っていてくれるという事実だけでもね。もちろん味も美味だしな」
「ふふっ……早く帰りましょう。私が怒られてしまいます」
「え、いや何故?」
「なんでもありませんよ」
今後の進行における重要事項『アンケート結果がそのまま反映されるわけではありません。あくまで参考にさせて戴きます』
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凍結し、リメイクのみを制作、順次更新
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リメイク版無しでこのまま継続
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リメイク版ありで両方継続
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