56話
〜福音事件当日、消灯時間近く〜
やぁ諸君、一夏だ(キリッ)
現在、今日の事件に関する報告書を姉さんに提出し終えたところだ。いや、面倒な作業でしたね。だってあれやで?何でか知らないけど誰もユグドラシルの2人のこと覚えてないんだ。多少色つけて書かないといけなかったからな。しかもモノクローム・アバターの連中から逃げるように帰ってきたから夏休みに本部に帰還する時は土産がないとしばかれるだろう。
「ほんとに……ほんとに何も知らないんだ!!」
「ンなわけねえだろ。俺も暇じゃねえんだ、とっとと吐け」
変な声が聞こえる?ハッハッハ!!何のことかわからないなぁ諸君。全く、作戦行動中に海上にいた民間船の乗務員を拷問してるとかそんな話あるわけないじゃないか。
「だから本当なんだよ!!船の計器が突然狂ったと思ったら変な海流で流されただけなんだ!!それで気づいたら……」
「気づいたらあの海域に?生憎と、テメェらの船は轟沈したからな、証拠が取れねぇ。お前らがさっさと暴露してくれたら俺も相応の処置で済ませる事ができるんだが?」
旅館のとある一室にいる俺達だが、外に声が漏れることはない。学園が毎年利用する旅館だからかは知らないが懲罰房みたいや部屋があるからな。そこに拘留されているコイツらとお話をしているだけだよ。懇切丁寧に。
『男の人のほっぺたにナイフをペチペチする事をお話しっていうんだったら辞書引いてくれば?』
(まぁまぁそう言うなって。コイツらは一般人、しかも可能性の一つとしてアレを見られたかもしれないんだ。ちゃんと話は聞かないとな?)
『はぁ……理解はしてるけどさ……』
全く……どうしてこう人間ってのは強情なのかね?コイツらも早く言ってくれれば楽になれるのに。
「……ふぁ……眠い。おい、今日は疲れてんだ。早く喋れ」
「だから知らねえって言ってるだろ!!」
「……もしもし姉御?」
『あら、どうしたの一夏。さっきの今で急に通信だなんて』
面倒臭くなった俺は姉御に通信をした。ノータイムで出てくれるところ愛してますよ。親愛的に。
「報告した民間人なんだけどさ?何も情報を持ってないっぽいんだよ。……どうする?」
『ちゃんと調べたの?』
「ああ、民間人ならここまでだろうって思って爪4枚で止めてんだけどさぁ……」
『仕方ないわね。撤収して構わないわ。後処理はお願いね』
「お、マジ?やっと終われるわ。了解〜んじゃ」
『お疲れ様一夏』
通信を切って再びコイツらに向き直った。
「今の通信、聞こえてた?」
「あ、ああ……それが何だってんだよ……」
「後処理って、何だと思う?」
「はぁ……まさかっ!?」
「さよなら、哀れな被害者諸君。恨むなら不運な己と俺を恨め」
そして6人分、咲き誇る紅い花が部屋を彩った。
「たくっ……無用な手間取らせやがって。こちとら神経張り詰めすぎて疲れとんじゃ」
ただの肉塊となってしまったモノを眺めながら俺は呟く。あーあ……ナターシャ・ファイルスはまだ目覚めないし、明日に持ち越しだな。早く戻らないと姉さんにもバレそうだし。
「悲しいことに君達が発見されるのは明日だな。死体処理も出来ないがな〜」
そして俺は無慈悲に扉を閉めた。
「んじゃ、バイバイ」
一度部屋に戻った俺だが、何とまあ部屋に姉さんはいなかった。バレてもゲンコツくらいで済むかと思ったので風に当たるために外に出ることにした。砂浜を歩くこと数分。強化された五感、聴覚に2人分の女性の声が聞こえてきた。束さんと姉さんだ。
「ねぇちーちゃん。この世界は楽しい?」
「……そこそこな。お前はどうなんだ?」
「結構楽しいよ。刺激があってね♪」
「お前でも楽しめるような刺激がまだあったのか。驚きだ」
いや、多分ウチの事ですねはい。そりゃあ刺激だろう。俺の3桁にも及ぶファンネルを避け切って遊ぶくらいなら。ちなみに今は気配を全力で押し殺して隠れている。おそらく束さんは気づいているだろうがな。
「まぁね〜。あ、そういえばね。いっくんの機体なんだけど……」
「ああ、あの過剰なエネルギー反応を示した事か。お前の仕業ではないかと思っていたんだが……」
「いいや、私じゃないよ。アレはいっくんと白式、そしてもう1人が望んだ結果だよ。武器の名前もね」
束さんにはすでにバレていたか。考えてみれば当たり前だろう。アイツらだってISコア同士のネットワークがある。生みの親である束さんからすれば覗くのも簡単だろうからな。
「……『懺悔』、『贖罪』、『断罪』。何が一夏をそこまで言わせている?」
「さぁ?いっくんのみぞ知る、ってやつだね。ちーちゃん的には寂しいかな?いっくんが雪片を捨てちゃった事」
「……少し…… な」
……悲しそうな姉さんの表情はあまり見たくなかったんだが。それすら俺のせいらしい。でもな姉さん。俺はアンタが選ばなかったものを選んだ。『いもうと』だ。アンタが『おとうと』を選んだなら、俺は『いもうと』を選ぶ。俺はアンタじゃない。だからもう雪片はいらないんだ……織斑一夏が織斑一夏であるためにな。
「(いっくん悲しそう。じゃあちょっとサービスしちゃおっかな)
ねえちーちゃん。今度とある研究所を潰そうかなって思うんだけどいい?」
「また変な事をする気か……一応聞いておこう。何の研究だ?」
束さん……?何の話をしているんだ。
「密かに続く『プロジェクト・モザイカ』の研究」
「「ッ!?」」
……マジかよ。まだあったのか。もうないって聞いていたんだけど。
「馬鹿な……すでにあの研究は……」
「そう、終わったはずだった。この私、篠ノ之束が現れた事でね。そしてその成功駆体3人を持って」
「だったら……だったら何故!!」
「満足しなかったんだよ彼らは。私以上を目指してね」
「無理に決まっているだろう……」
姉さんに同意見だ。どんなに頑張っても人工が天然に勝てるわけがない。無論、俺もだ。それなのに束さん以上?馬鹿にしているのか?
「私もそう思うよ。だって私でさえ無理なんだもの。だからさ、
「…………あぁ」
掠れるように絞り出した声で姉さんは言った。そして一瞬、束さんは俺が隠れている場所を見た。
『だってさ、いっくん』
『ボスからの命令としてなら受諾しましょう』
『ふふっ……うん、じゃあ頼んでみるよ』
秘匿回線で束さんが言ってきた。なるほど、俺がやるのか。いいだろう……負の連鎖はここで止めるしかない。他ならぬその研究の成功……いや、ある意味では失敗作の俺が直々に手を下す。
「ちーちゃんからの了承も得たし、そろそろ帰るとするよ。箒ちゃんとも和解できたし」
「……それは良かったな」
「うん!!いっくんとちーちゃんには本当に感謝してるよ。だからちーちゃん……」
「……なんだ?」
「ちーちゃんも、いっくんと仲直り出来たらいいね?」
「ッ……待て、一体それはどういう……」
「じゃあね〜」
そして束さんが岩から飛び降りた。一瞬だがISを展開したのも見えたし、おそらく俺の知らない機体だろう。そしてステルスにより反応もなくなった束さんは、海を駆けて行った。
全く……人をかき回すことではまだまだ天災だなあの人は。俺と姉さんが仲直り出来ることなんぞ一生来ないというのに。
さて、俺も帰ろう。今の状態の姉さんに近づいたら何されるかわからないしな。
『……一夏』
(いいんだよ白騎士。俺は亡国、姉さんは学園。それぞれ居場所があるんだから)
『いえ、そのことではなく……』
(あ?)
『もうすでに消灯時間を過ぎてしまったのですが?』
先に言えよ!?
そして俺は全力で旅館に戻った。もちろん山田先生にバレて少し説教を食らった。チクショウ……束さんが笑ってたのはそういう意味もあったのか……
〜翌日〜
「……美味い」
なんとか姉さんが部屋に戻ってくる前に説教から解放された俺は部屋に戻ってぐっすり寝た。それはもう死んだように寝たさ。人殺しの日に来る夢も今日は見なかったし。万々歳。
そして何より朝飯が美味いッ!!
「朝から刺身が食えるなんて最高だ……そしてこの味。魚の鮮度を全くと言っていいほど落とさない包丁の入れ方……一体どんな人が厨房に……ああ、教えてもらいたい……」
「朝からアンタ面倒くさいわね……」
「おはよう鈴。いいからお前も食えって」
どうやら鈴も起きてきたらしい。それに続くように箒達も食堂に入ってきたので、折角だから専用機持ち全員で座ることにした。
「ねえねえ、昨日結局何があったの?」
女生徒が代表して聞いてきた。他の奴らも同じことを思っていたのか俺達の方を向いている。
「悪いな。機密事項ってことで言えないんだ」
「え〜、ちょっとだけね?」
「ダメですわ。言った方も聞いた方も、卒業後に最低2年の監視が着きますわよ?」
「そうそう、分かったら辞めときなさい。あ、箒、醤油取って」
「ああ、ほら」
「ありがと」
しれっとした顔で忠告をしている。シャルロットやラウラ、簪さんも同じような感じで別の生徒に喋っているのでそろそろ絡まれる事もなくなるだろう。
「そういや簪さん。痣は大丈夫か?」
「うん、湿布を貼っただけだから……すぐ良くなると思う」
「そうか(おそらく帰ったら楯無がヤバそうだな)」
そして俺に絡んでくるのだろう。男ならちゃんと簪ちゃんを云々……と言うように。
「いつまで遊んでいる。さっさと食べろ!!」
そこへきたのは姉さん。その一言で全員が席に戻り急いで朝食を取り始めた。あーあ……せっかくの刺身が……
ちなみに俺は元々結構食べていたのでペースを変えることなく食事を終えた。さて……あとは帰るだけ……まぁ、やる事はあるが。
そして、各自部屋に戻って荷物を纏め終え順々にバスに乗り込み始めた時、1人の女性が俺の元へとやってきた。
「貴方が私を助けてくれた天使君?」
「ナターシャ・ファイルスさん。もうお体は良いんですか?」
福音の操縦者、ナターシャ・ファイルスだ。昨日は目を覚さなかったらしいからおそらくさっき目が覚めたのだろう。
「ええ、お陰様でね」
「それは僥倖。……天使ってなんですか?」
「ああ、助けてくれた時の貴方のIS。まるで天使様みたいだったから。8枚の翼を広げて白いオーラを出している姿がね。福音も教えてくれたわ」
「なるほど……ん?福音が?」
まあ確かに白式・新月は装甲に使うはずの金属をほとんどエネルギー・ウイングに回しているから無駄に仰々しく作っている。そりゃあぼやけた視界でみればまるで天使に見えるだろう。しかし福音が……というのはもしや。
「旅館で寝ている時、幼い女の子の声が聞こえてね。『もう大丈夫。天使様が来てくれたから』って」
「ははっ……そうですか。じゃあ1つアドバイスしてあげましょう。ちゃんとその子の声を聞いてあげてください。それが貴女にとっても、福音にとっても良い結果になるでしょうから」
「へぇ……ISを知ったばかりただの男の子かと思ってたけど、そうでもなさそうね。でも無理よ。暴走したこの子は、おそらく凍結処理がなされるでしょうから」
その通りだ。しかもこの事件は表向きには無かったことにされる。つまり軍用として開発された福音もアメリカとイスラエルが協力したことすらなかったことにされるというわけだ。そこで役に立つのが『名もなき兵達』、通称『アンネイムド』と呼ばれるアメリカの組織だ。そこに所属する兵士は全員の情報が消されているためアメリカ軍所属という事以外は何も情報がない。しかも拠点は海のどこかにある空母と来た。おそらく福音はそこに収容され密かに凍結処理がなされるだろう。
1回目の通りなら、だ。
「そうでしょうね。アメリカのアンネイムドは優秀と聞きますし」
「ッ!!……何故アンネイムドのことを。まさか貴女、亡国企業」
「察しが良いですね」
ナターシャ・ファイルスはすぐに身構えた。目の前に国際的なテロリストの一員がいるから当たり前だ。
「ですが何も証拠がありませんし、貴女を害する気もありません。今日のところはやめておきましょう。出なくて良い犠牲が出るかもしれませんしねぇ」
チラッとバスを見る。もちろん未だに生徒達が乗り込んでいる。
「貴方……卑怯なのね」
「ククッ……テロリストに卑怯は褒め言葉ですよ。さて、取引といきましょう」
「取引?」
取引と聞いて彼女の顔に警戒の表情があらわれた。
「まだ、福音と飛びたいですか?」
「ッ……出来ることならね」
「それは良かった。ではもう一つ、世界を変える気はないか?ナターシャ・ファイルス」
「世界を……変える……?」
「我々、亡国企業は今の世の中を良く思っていない。女尊男卑などという風潮が世界中で起こり、IS絶対主義のような連中が存在するこの世界。そんな世界を我々は変える。ISを全て奪うことによってね」
「無理に決まっているわ!!世界各国にはそれぞれ国家代表や候補生達がいるのよ。たかがテロリストの兵力じゃとても……ッ!!そういえばこの前、アラクネが盗まれて……」
彼女は気づいたようだ。オータムが操縦する第二世代機アラクネは俺が学園に入学する前にはもう強奪済みだ。というか亡国の影響を一番受けているのはアメリカだ。姉貴もレインもアメリカ出身だからな。
「亡国は……一体どれほどのISを持っているの?」
「企業秘密ですよ。でも、確実に一機増えます。福音を強奪することでね」
「なっ……そういう事ね」
「ああ、本当に察しのいい人だ。我々はいつでも優秀なIS乗りを欲しています。それはたとえ軍属だった人間でも例外ではありません」
「私に、祖国を裏切れと?」
「対して情もないでしょう?福音を軍用機として開発したアメリカには」
「それは……」
どうやら少し彼女の中で迷いが生まれたらしい。いいぞ、この調子で攻めればきっといける。間に合わなくとも、夏休みに帰国するであろうレインにも説得して貰えばいい。
「そういえば、福音が暴走した原因である組織と敵対しているんですよ。亡国企業は」
「何ですって?」
食いついた。
「ユグドラシル、という組織です。構成員はたったの5人。そんな少人数の組織に、完璧な隠蔽工作を働かされながら福音は暴走させられたのです。借りを返したくありませんか?福音と一緒に空を駆け、元凶を墜とすことによって」
「…………でも……私は……」
大きく揺れている。後一歩だろう。しかし、時間が来てしまった。
「織斑、何をしている?」
「ッ……織斑千冬」
「ああ、織斑先生。昨日の件でお礼を言われていました。すぐに乗ります」
「なるほど。分かった。すぐに済ませろよ?」
「はい」
簡単な挨拶をして、姉さんは旅館に戻っていった。最後のチェックだろう。
「どうやらタイムアップのようです。まあ考えておいてくださいよ。ちなみに……これが俺の連絡先、こっちがISのことなら右に出るもの無しな兎さんの連絡先です」
「……ええ、今すぐにというわけにはいかないから受け取っておくわ。今日のことも秘密にしておいてあげる」
「それはありがたいです。また会いましょう。福音のパートナー、ナターシャ・ファイルスさん」
メモを渡して俺はバスに向かう。彼女も少しだけ俺を眺めた後、自らの目的地へと行ったようだ。
「…………もしもしボス、少しよろしいでしょうか?」
『ああ一夏か、少し待て。…………そこの書類はフランス支部へ回せ。なに、コアの強奪に失敗?どこの部隊だ。……そうか、処理はスコールとタバネにやらせろ。研究所の予算向上……却下だ。……すまない一夏。いいぞ』
めっちゃ忙しそうですねボス。あと、レイさんドンマイ。いつも変なの作ってるからだぞ。
「現時点でのナターシャ・ファイルスの勧誘に失敗しました。あと一押しというところで織斑千冬からの邪魔が入りまして」
『ほう?残りの決定打は?』
「愛国心かと思われます」
『なるほど、後でアメリカ支部に上層部の汚職等のデータを探らせ彼女の元へ届けよう』
あぁ……今回の被害者はアメリカ政府ですか。かわいそうに……自業自得だがね。
「ありがとうございます。夏季休暇には帰還します」
『分かった……そうだ、現在、量産型ISの操縦者の完熟訓練に難航していてな?暇があるときに教官役を頼む』
「了解しました。では、失礼します」
『ああ、任務ご苦労だった』
「勿体なきお言葉」
通話を切った俺は少しにやけてしまった。ボスからの賛辞ほど嬉しいものは少ないからな。
すぐに表情を引き締めた俺は、何事もなかったかのようにバスに乗った。
「兄様、是非とも隣に座らせて欲しいのだが」
「んあ?あー……」
自分の席に座ると、後ろの席からひょこっと顔を出したラウラが尋ねてきた。横目で周りを見渡せば、何故か手にお菓子を持った女子達がチラチラとこちらを見てきている。
「俺とばかりじゃなくて、ほかの女子達ともコミュニケーションを取ったらどうだ?」
「む、兄様は私の隣が嫌なのか……」
「へっ、いや、そういうわけじゃっ……」
シュン……っと効果音がつきそうなほど落ち込み出したラウラ。そんな様子を見兼ねたのか女子達がいそいそとお菓子を仕舞い始めた。お前ら分かりやすすぎるわ。
「……分かった。隣に来てくれ」
「そうか!!それは良かった!!」
一気に花が咲いたかのようなテンションのあがり方をして、ラウラは席を移動してきた。シャルロットも苦笑いでラウラを見ている。セシリアと箒が複雑そうな目をしているが、許して欲しい。こうなったラウラを俺は止められん……妹には甘いのだよ。
そういえば先生達遅いな〜。なんかほとんどの教員が慌ただしい雰囲気で生徒を引き剥がしてたけどなんかあったのか?……ああ、俺がそういえばやったんだったな。ふっ……足跡も指紋も何も残ってないから調べる事は不可能だ。無駄な作業をせずにとっとと死体処理でもしときゃいいのに。あ、あと遺族への配慮とか?
それから数分経ってやってきた姉さんと山田先生は、なるべく生徒達の不安を煽らないような声音で連絡事項を伝え、学園に向けてバスが発車したのだった。
「……すぅ……すぅ……にいさまぁ……」
「こいつ……隣がいいって言ってきた割にはすぐに寝たな」
バスが走り出して10分も経った頃には、ラウラは夢の中だ。しかも体を大きく倒して俺の膝で眠っている。
「きゃぁ〜……めっちゃ可愛い!!」(小声)
「織斑君、写真撮っていい!?」(小声)
近くの女子達が俺たちの様子を見て携帯のカメラを構え出した。しかも御丁寧に小声で叫ぶという高等テクニックを添えてだ。こいつら……て慣れてやがる。あ、写真はどうぞどうぞ。
「いい感じにポーズ決めて〜」
「うん?うーん……こうか?」
「「「「「「きゃぁ〜!!」」」」」」(小声)
ラウラの頭に手を乗せ、優しげな表情でラウラを見る。どうやら好評らしい。
『お兄ちゃん……帰ってきたら……ね?』
おっとぅ……何やら死神の足音が聞こえる。いや、気のせい……気のせいだ。ウン……白式、通知オフで。
『後でどうなっても知らないからね……はいオフ』
今の俺はIS学園の織斑一夏なのだよ。
「ふにゅぅ……」
「……俺も写真撮っとこ」
カシャっと一枚。そしてすぐさま送信。程なくしてメールで返信が返ってきた。
『どういうつもりですかいっくん様?』
字面から分かる。少し機嫌が悪い。
『偶には妹の顔も見ておけ。ハイパーセンサーで見えているだろう?』
『だから彼女は完成品だと何度も申し上げたはずです。断じて妹などではありません』
『いいや、お前はクロエ・クロニクルだ。そしてラウラ・ボーデヴィッヒはお前の妹だ。唯一の家族なんだからちゃんと向き合う覚悟を持て。余談だが、俺はお前の目は好きだぞ?』
クロニクルの目は、白目の部分が【黒】、黒目の部分が【金】だが、それが逆に彼女を『個』として際立たせていると言っても過言じゃないと思っている。そして何故だか返信が来なくなった。照れたかな?
数分待っても返信が来なくなったので俺は一眠りすることにした。ラウラは……ほっといていいか。
〜クロエ・クロニクル〜
「…………好き?私のこの目が?」
私が右手に持っている携帯電話に表示されている画面に書かれているあり得ない内容。あり得ない。失敗作の象徴でしかないこの歪な瞳を見て嫌悪感を抱かない人間なんていない。
「面白い人……そうですね。この写真は貰っておきましょうか。私がクロエ・クロニクルであるために。ふふっ……私が誰かに会いたいと思うなんて……次に会うのが楽しみですよ、いっくん様」
「クロエ〜、オータムの所に凸らない?また料理教えてもらお〜」
「ん……分かりましたマドカ。少し待ってください」
私はまだ、胸に宿った想いに気づけていなかった。
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