60話
〜一夏、サラ(一夏視点)〜
「C、ブースターでかかるGに問題はなかったか?」
「飛行中に聞いて欲しかったわよ隊長。問題ないわ。速度を聞いた時は死を覚悟したけど、亡国製のISって凄いわね。体に負荷が掛からなかったもの」
「それは僥倖。さて、ここだ」
フランスのとある市街地、女性権利団体フランス支部の目の前に俺達はやってきた。今はISを解除してフランスに送り込んであるスパイから俺達用の服を受け取り、ISスーツの上から着ている。俺は世界でも有名人で、ウェルキン先輩も元イギリス代表候補生とあってISに関わる人が見れば身バレしてしまうので2人とも髪型を変えたりサングラスを掛けたりして変装している。
「で、どうやって中に入るの?」
先輩が聞いてくる。今回襲撃する女権団の施設には、色んな企業やフランス政府との癒着やら何やらの証拠だったり物品がこれでもかとある。情報や証拠に関してはウチの電子工作班がもう抜き取ったので破壊してもいい。物品はどうせ証拠になるか分からないので一緒に壊す予定だ。1番の目標は2度とフランスで活動が出来ないようにする事。
要は、この建物の全てを塵に変え、ここのトップを殺す。もちろんその時に生き残りの雌どもに俺達の力を示すことも忘れてはいけない。つまり普通に入って普通に壊して普通に殺して普通に逃げればいい。
「正面突破に決まっているだろう?幸い周りには誰も居ないからここでISを展開だ」
「了解よ」
そしてISを展開する。俺はユニコーン、先輩はブラスト・ガルスだ。
「身バレ防止のため一人称を変える。私がビームサーベルで入り口を開け、受付をしているであろう奴を殺す。Cはその騒ぎで外に逃げようとする者を殺せ。ハイパー・バズーカを2丁貸しておこう。中までは入ってこなくていい。ISが来たら報告しろ」
「ありがとう隊長。要は待機ね。分かったわ」
ハイパー・バズーカを二丁展開して手渡す。先輩はそれを確認し自分の拡張領域に入れた。そして俺は背中のバックパックに収納されたビームサーベルを取り出してスイッチを押し刃を出す。先輩が飛行を始めたのを見て俺は構えた。
「さてと……恐怖しろ、絶望しろ、貴様らの目の前にいるのは多少強い亡霊だ」
壁を切り裂き、中に入る。中では無駄にプライドの高そうな、ブランド物のバッグやらを身につけた女達が俺の姿に驚きながら見ている。
「あ、IS!?なんでこんなところにいるのよ!!」
『私は亡国企業。女尊男卑を助長する貴様らのようなクズゴミを処理しに来た』
ボイスチェンジャーで声を変えて宣言する。俺の言葉で中にいた女達が叫びながら一斉に逃げ出した。
あーあーあーあー……権力を傘に女は全てが許されると思っているゴミどもめ。ISが無ければ何もできないクズの分際で……
俺は左腕につけている盾のビームガトリングガンを構える。ユニコーンには手頃な火力の武装がないので今回は特別に威力を下げる調整をしている。
(ゴメンなユニコーン……本当はお前に人殺しをさせたくは無いんだが……今更だよな。恨んでくれて構わない)
『ううん……私は……マスターの力になりたい。だから……大丈夫』
そうか。いつもありがとうユニコーン。
『発射』
「「「「「ぎゃあぁぁぁああああ!!!!」」」」」
肉が千切れる音や汚い叫び声が聞こえる。それに続くように一階のフロアには大量の血が飛び散り白い床を赤く染めていく。
俺は薙ぎ払うように左腕を水平に動かしある物全てを破壊していく。植えられた木、階段、床、受付、PC、ソファ、etc……女権団の施設を念入りに、これでもかと言うほど破壊する。やがて弾が切れたのかビームが出なくなった盾を拡張領域に戻し、今度は両腕に新たな盾を装備した。フルアーマーパッケージにある盾を持ってきた。NT−Dを使えばファンネルとしても使える代物だ。
グチュグチュと肉塊となった女どもの死体を踏んで進む。原型を留めていない階段を飛んで登り次の階へ。
「何よあんた!!どうしてISが私達を狙うの!!私達のおかげであんた達IS乗りは……けぷ……」
ヒステリックに叫ぶ女をビームサーベルで両断し進む。どうやら現状は建物全体に知れ渡っているようで、色んなところから焦った声や悲鳴が聞こえる。ISの機能でサーモグラフィーを使うと、どうやらこの階にデータの保存場所の一つがあるらしい。
『隊長。周りの人達が爆音に驚いて野次馬してるわ。どうする?』
『絶対に傷つけないように威嚇射撃、ISがいる事をアピールすれば良い。確か、標準武装にアサルトライフルを入れていたはずだ』
『分かったわ。ボイスチェンジャーで避難勧告もしとく?』
『頼んだ』
外は先輩が上手くしてくれているらしい。俺も安心して虐殺出来る。
少し歩き、厳重に設置された鉄扉の前に着いた。天井にはちょっとした機関銃が設置されていたが難なく破壊。対IS兵装では無かったので全くダメージが無かった。
「ん……意外と硬いな。IS用の合成金属か」
ISの装甲を使うくらい大事なものが入っている。おそらくそういう事だろう。
とりあえずビームサーベルで壁を切り裂いて中に入ると出てくるわ出てくるわ、大量の書類が。あーあー……いや、全部燃やし尽くすんだけどさ。
「うーん……あ、ビームサーベルの出力を上げれば良いのか」
書類を焼き払うのに手頃な装備がないから仕方ないね。両手にビームサーベルを持って振り回すと次々に書類が消えていく。あらかた片付いたな。次だ。
『ねぇ隊長、どれくらい逃げさせる?』
『いや、もう良いだろう。女権団上層部の人間は逃げていないんだろう?』
『私が確認した感じ1人も居ないね。しっかりやってくれたまえ』
割り込みでレイさんが通信してきた。だったらもういいか。さっさと上まで行こう。俺はまた両腕にシールドを呼び出し、水平に向ける。そのまま少し浮いた後俺は回転を始めた。
『カーニバルだ。楽しく踊ってくれ』
そのまま上昇しながらビームガトリングガンを発射。360度に回転しながら発射されるビームの嵐は、壁を貫通しながら人間に風穴を空けていく。一階ずつ上昇していくたびにたくさんの悲鳴が聞こえやがて無くなる。そして気づけば血の匂いが建物中に充満していた。そんなところへ無粋な邪魔が入る。
「これ以上やらせないッ!!」
『むっ……?』
突如瓦礫の中から飛び込んできた影、天井の無くなり丸見えになった太陽の光で反射するそれは……銃口だった。そのまま俺に向かって発射された銃弾は全て俺の胴体を捉えていた。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇええええ!!」
今まで突っかかってきたどの女よりもヒステリックな叫び方をしながら銃を乱射するISは、次に左手に剣を携えながら突っ込んできた。
『まさか本当にISがいるとは……そして耳障りだ。吹っ飛べ』
生半可な攻撃じゃユニコーンにダメージは与えられない。全身装甲の利点として、人体全てを装甲が覆っているのでこの装甲を破らなければシールドエネルギーまでたどり着けないという事実がある。代わりに下手に装甲が歪めば全身の駆動に支障が出るけどな。
真っ直ぐ突っ込んできたISが俺のすぐ近くまで来た瞬間に俺は左腕のシールドで思いっきり殴り飛ばした。ISは別方向に吹っ飛び建物の壁を砕きながら墜落していく。
『隊長、すごい音がしたけど大丈夫?』
『ISが出た。標準的なラファール・リヴァイヴだが……乗っている人物が問題だ。しっかり確認したわけではないが恐らく支部長が搭乗している』
『ホントにISがいたの!?たかが民間組織になんでISが……誰かが横流ししている?』
『分からない。取り敢えず、支部長は確実に殺さなければならない。今外まで吹っ飛ばしたから任せていいか?』
『本当?一回くらいは実戦で戦いたかったのよね。援護はいらないわッ!!』
『分かった。私は引き続き建物の処理を行う』
先輩の戦闘見たかったんだけどなぁ……後でログでも見るか。
はい、じゃあ視点変わりま〜す。
『マスター……メタい』
俺はお前からメタいって言葉を聞きたくはなかったよ。
〜サラ視点〜
「あれね」
建物の一角が崩れている。隊長、結構派手にぶっ放したわね。
「さて、私もボイスチェンジャーを使おうかしら。…………あー。あら、結構変わるじゃない』
準備もできたことだし、あのISが復帰してくる前に軽く私のISの紹介でもしておこうかしら。
私のIS『ブラスト・ガルス』は開発者のレイさん曰く、
『サラ君の戦闘データを投影した結果こうなったのであり決してロマンに走ったわけじゃない。逆にどういう戦闘スタイルを取ればこの機体のコンセプトとマッチ出来るんだろう……』
ていう評価を頂いたわ。全く……失礼しちゃうわね。近寄って殴って離脱して撃ってまた近寄っての繰り返しなだけなのに。ああごめんなさい、話を戻すわ。
機体コンセプトはシンプルに超近接格闘型。カラーリングは全体的にネイビーよ。
両腕に装備されるL字のシールドの先にはトゲがついていてスパイクシールドとして殴りつけることができるわ。元々が盾だから耐久性も抜群で安心安全よ。
他には鞭のようにしなるバインダーに取り付けられた粘着式地雷の集合体、チェーンマイン。粘着式だから相手にくっつけることでゼロ距離での爆破を可能とするの。隊長のユニコーンに巻きつけた瞬間は本当にスカッとしたわね。
後は脇の近くに取り付けられている電磁式アンカー。射出することで相手のISを磁力で固定し、巻き取って強制的に敵ISとの距離を詰めることが出来る。相手を引き寄せるか、自分から近づくかは状況次第ね。
その他、アサルトライフルやバズーカとかの通常兵装も少し積んでるわ。今回はブースターを拡張領域に入れるために殆ど外したけど、相手との距離を詰めるのに苦労するようなら普通に射撃にチェンジするわね。でもコアとの相性が悪いのか銃器はロクなものが入らないわ。
浮遊ユニットが無いからスラスターを背部バックパックや脚部ブースターに依存してるのがネックだけど私にはちょうどいい。元々ISの浮遊ユニットは360度見渡すことができるハイパーセンサー使用時には視界の邪魔だったし。
まあ取り敢えずこんな所かしら。あ、見た目はレイさん曰く色変えたシュツルム・ガルスだそうよ。元ネタがあるのにも驚きだけど、再現できるレイさんが一番おかしいと思うの。ガンダムって言う作品らしいけど、今度見てみようかしら……?
「クソッ!!私の城が……」
瓦礫が崩れ、中から隊長が吹っ飛ばしたであろうラファール・リヴァイヴが出てきた。装備は標準的なものね。
『ここから先は私が相手になるわ』
「ッ……2機目のIS !!なんでよ、なんでISが私達を狙ってくるの!!」
『あら、理由は貴女が一番分かってるはずよ?』
「……それの何が悪いっていうのよ!!篠ノ之博士は、今まで虐げられてきた女性達に復讐のチャンスをくれた!!女性をアクセサリーとしか思ってないような男共なんて要らないわ!!」
暴論ね。こういう言い方はアレだけど、男性がいるおかげで私達は子供を孕めるし人類という種が続いていくことができる。男性の消えた人類なんて150年も有れば確実に滅ぶのに。
『何を言っても無駄なようね。まぁ……どの道貴女が生き残る未来はないのだし別にどうでも良いけれど……さあ、私と戦いましょうか!!』
「ッ……きゃあ!?」
足下の瓦礫を投げただけなのに大袈裟ね。さてと……やっちゃいましょうか。隊長に私の覚悟を見てもらわなくっちゃ。
『行くわよ!!』
スラスターを吹かして加速した私はラファールの懐に入り、両腕に装備したスパイクシールドで殴る。
「ちょっと……なんでちゃんと飛ばないの!?動きなさいよ!!このっ……!!」
吹っ飛んだ先で体勢を立て直そうとするラファールだけど、何やら挙動がおかしいわね。なんというか、初心者って感じが……
『ねぇ……貴女、ISの搭乗時間は?』
「はぁ?……5時間くらいよ。それがなんなのよテロリスト!!」
『…………』
本当にふざけてるのかしらコイツ女性をアクセサリーとしか思ってないような男?
まるっきり逆ね。ISをアクセサリーとしか思ってない女は訓練もすることなく、ただ持ってるから私は偉いだなんて……同じ女性として恥ずかしい。
『気が変わったわ』
「見逃してくれるのかしら?当たり前よね。私達のおかげで今は夜1人で出歩いても男なんかに襲われることもないs『黙れ』…ッ!?」
アイツの言葉を遮って私は近づいた。
『今から貴女を出来るだけ惨たらしく、屈辱的に殺すわ。こんなに殺意が湧いたのは初めてよ。苦しまないように一瞬で殺すつもりだったけど……はぁ、なんでこんな世の中になっちゃったのかしら』
私は二つのチェーンマインを取り出して両手に持った。そして歩いてさらにアイツに近寄る。まともに飛ぶこともできないのか、地面を擦って下がろうとするラファールに向けて電磁吸着式アンカーを打ち込む。
『逃がさない』
「ひぃ!?……やめて!!な、なんでもするから!!欲しいのは何?お金?男?それとも権力?知り合いでもなんでも使って用意してあげるからぁ!!」
脚部装甲にくっついたアンカーを巻き、くっついたラファールをアンカーごと持ってくる。
「いやだいやだいやだ!!まだ死にたくない!!私は……こんなところでぇ!!」
最後の抵抗と言わんばかりか、引き寄せられてる時に手に持ってる銃で私に向かって発射してくるラファール。ISの補助で真っ直ぐ歩いている私にほとんどの弾が当たるけど無傷よ。亡国製IS ってほんとに凄いわね。
『さよならまであと10秒くらいかしら?』
引き寄せたラファールにチェーンマイン二つを直接巻きつける。粘着式だから解けることなく装甲に張り付いた地雷達は、ピ…ピ…と起動音を発し始めた。
「ああぁぁああああぁぁあああああ!!!!」
ついに発狂、なまじ音がするし、視界のほとんどで地雷が確認出来るからもう助からないことは分かっているようね。そうよ、そんな生易しい物じゃないもの、コレ。
『爆発まで3……2……1……』
「あぁ…………しに……たく……n」
『ゼロ』
背を向けた直後、今までに類を見ないような爆発が起きた。爆心地であるラファールリヴァイヴの姿が見えないくらい凄い煙で目視では確認できないけれど、ハイパー・センサーを使うと……
『生命反応無し。ミッションクリア……さようなら、サラ・ウェルキン。表で生きた私。もう後戻りできないわ』
やがて煙が晴れると、肉片すら残っていない爆心地でボロボロになって焦げたラファールの装甲と光るISコアがあった。着地してコアを回収すると、すぐ近くでまたも爆音が聞こえてきたわ。
ああ……終わったのね。
『おめでとうC。仮入社は終わりだ。さようならサラ・ウェルキンと言ったな?では私からこの言葉を送ろう。ようこそ、我らが亡国機業へ。モノクローム・アバターの全員が、改めてC……君を歓迎しよう』
右手にビーム・マグナムを持ったユニコーンが静かに降りてきた。ふと視線を変えると、上空から貫かれ完全に破壊された女権団フランス支部があった。いえ、元ね。
『ありがとう隊長。コアも回収したから次に向かいましょう』
『ふっ……気配が変わった。迷いは無くなったな?』
『ええ、お陰様でね』
『それは僥倖』
ボイスチェンジャーを使ったままの会話はなんか変な感じがするわね。和やかな雰囲気なのが余計に。
『ではドイツに行こうか』
『了解』
私達はスラスターを点火して、ドイツに向けて飛行を始めた。
…………ごめんね、セシリア。貴女の憧れた先輩はもう死んでしまったわ。
パキン……
「あっ……先輩から頂いたティーカップが……先輩、どうして代表候補生をお辞めになったのでしょう?貴女ほどのIS操縦者が……どうして」
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