61話
〜クロエ、マドカ(クロエ視点)〜
「ちぃ!!なんでISがこんなにいる!?面倒臭い!!」
「M、無駄口を叩く暇があるなら早く落としてください」
「分かっている!!お前は余裕そうで良いな!?」
む、失礼ですねマドカ。私だって結構辛いのですよ?
……おっと、失礼しました。クロエ・クロニクルと申します。現在、女性権利団体イギリス支部の破壊任務の途中でして。15分ほど前に襲撃を始めたのですが、なんとIS が出現したのです。それも5機も。ただの民間組織であるはずの彼女達が5機もISを持つことは確実にありえないはずなのですが……何にせよ、突破しなければ任務は果たせません。そこで私達は戦闘を行っています。Mは近接装備を積んでいないので遠距離支援を主にしてもらい、私が前線で戦っています。
「捕えました」
不用意に突っ込んできた一機をアームドアーマーVNのクローで掴みました。こうも抵抗されると面倒ですね……潰しましょう。
「いやぁぁああああ!!!」
クロー元来の能力を使います。超振動させることで標的をシェイクさせることが出来ます。振動に影響でどんどん減っていくシールドエネルギー。この間も2機ほどのIS が私に向かって銃撃してきていますが、ここで私はワールド・パージを発動させることにより掴んでいるISごと姿を消しました。こうなるとMにも見えないので誤射が怖いです。
回避している間にいつのまにか掴んでいたISの機能が停止していたようです。コアだけ抜き取って人と装甲は捨てましょうか。束様にも変な物を拾っちゃいけませんと言われていますから。
「えっ……ッ!?」
「ひっ!?」
おや、何やらドチャっと変な音がしました。敵ISのパイロットの方々も恐怖の表情を浮かべています。いっくん様には無理をするなと言われましたが、元々なんとも思いませんので悪しからず。あの方の前ではつい意地を張ってしまいます。何故でしょうか?
「戦場で止まってはいけませんよ?」
「「ッ!?!?」」
右腕のアームドアーマーBSを拡張領域へと戻し、二つ目のVNを代わりに装着した私はお二人の後ろでワールドパージを解除。姿を現すと同時にお二人をVNで掴みました。頭部を掴んでいますが、SEに阻まれて握り潰せません。このままでは両腕が使えませんし……ああ、そうですね。
『M、今大丈夫ですか?』
『ああ、思っていたより弱くてな。そろそろ片付きそうだ』
『分かりました。終わったらまた言ってください』
どうやらまだのようです。仕方ありません……
「死にたくない……死にたくなぁい!!」
「だったら早く撃ちなさいよ!!」
……うるさいですね。先ほどからゼロ距離でアサルトライフルを連射してきているお二人ですが、全身装甲となった黒鍵には効きません。いくら撃ったところで無駄です。
そのままお二人を拘束したまま射撃を受け続けること20秒ほど経つと、Mからようやく連絡が来ました。
『待たせたなK。意外としぶとくてな……今から狙い撃つ』
どうやらMの方は終わったようです。私は両腕を広げました。
「な、何する気!?」
「クソ……早く離しなs……」
「……は?」
私の右腕で更にもがいていたラファール・リヴァイヴの方がISごと閃光の中へと消えていきました。リミッターを外したMのスターブレイカーによる長距離射撃です。少なくなっていたシールドエネルギーでは攻撃に耐えきれなかったようですね。
「あぁ……なんで……」
おや、汚いですね。こんな空中で失禁されては下の方々に迷惑が……誰もいませんでしたね。
「申し訳ありません。ISに乗っている以上こちらとしても逃すことはできないです……それでは」
「いやだ!!なんで私が……なんで私がぁぁぁあああああ!!!!」
改めて両腕のVNでISを握りグッと力を込め装甲の歪む音と悲鳴が聞こえなくなった頃、最後の1人の処理も完了しました。とりあえず落ちているであろうISコアを全て回収しましょう。話はそれからです。
「上出来だK……うっ……予想通りだが、エグい光景だな」
「そうでしょうか?」
「あー……いや、お前はそのままでいいか」
「どう言う意味です?」
少なくとも褒められていないということはわかりました。最近、Mがズバズバと言ってきている気がします。いえ、変に遠慮されても困るのでいいですけどね。
「とりあえず建築物の破壊だ。一思いにな?」
「分かりました」
Mの指示でVNを戻しもう一度BSに換装した私は女権団イギリス支部の真上からBSを放ちます。現行ISの火力を優に超えた必殺の一撃が建物を消滅させました。
「えっと……ぶい?」
「いや、ピースしながらあの天災っぽく言われてもな……第一、VNのクローでピースを作っても恐ろしいだけだぞ?」
むぅ……昔の束様を真似てみたのですが、Mには不評でしたか。帰還したらいっくん様にもやってみましょう。どんな反応をするのか楽しみです。
「ISコアの回収は終了したし、一旦日本に戻ろう。K、ブースターを渡す」
「分かりました」
Mから受け取ったブースターを背部に接続。ほんの少しだけ吹かせ確認を完了した私とMは瓦礫の山となったこの地を振り返る事なく、イギリスを後にしました。
「クーちゃんお帰り!!どこも怪我してない!?」
「た、束様……大丈夫です……大丈夫ですから……」
一旦帰還した私とマドカはISを整備班に私補給待ちです。なのですが……ISを渡した瞬間、束様が背後から現れて抱きついてきました。柔らかな感触は安心感を覚えますが多少苦しいです。
「ごめんね……本当にごめんね!!」
「……なにがですか?」
急に束様が謝ってきました。どうしてでしょう?何か不祥事を起こして後処理を私に頼むのはいつもの事ですが、普段はここまで涙ぐみながら謝ってきたりはしません。
「私が……私がくーちゃんにちゃんと教育しなかったら……」
「あ、あの束様、本当になんのことでしょうか?」
「ごめんねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「えぇ……」
何のことか分からない私がもう一度聞くと、さらに力を強めて大号泣しました。そして、このカオスな現場に救世主が来てくれました。
「あー……少しの間そうさせてあげて。束博士は自分の教育不足に嘆いているだけだからね」
「教育不足?」
そう、レイ様です。作業用のゴーグルを外しながら私の元へとやってきました。束様はまだ私に抱きついています。ISスーツは元々露出が多いので束様の長い髪が素肌に当たって少しくすぐったいです。
「うん一夏君に聞けば、博士は元々他人には興味がなかったそうじゃないか。でも今は違う。博士は博士なりに常識を学びしっかりした大人に近づきつつある。そんな時、気づいてしまったんだよ」
「束様が努力していることは知っていましたが……気づいたこととは何でしょう?」
「クロエ君は遺伝子強化試験体……持っている知識や常識には偏りがあるし、何よりは戦闘用として作られた。そんな君が、
「…なるほど?」
「あんまり分かっていないみたいだね。まあこれから学んでいけばいいさ。今でこそ『天災』なんて呼ばれてるけど、博士だって人の子さ。まだ幼く、自我が確立していなかった頃に親御さんから学んだ事……人殺しとかの常識は知っている。だから、常識人になりつつある博士は、娘のように思っている君に
「……なるほど、そういうことですか」
つまり束様は私の事を心配してくださっている、という事ですね。
「まあ、中国への出撃までまだ30分はあるんだ。しっかり休憩しておくといいさ。あ、黒鍵を展開してもらえる?バンシィパッケージの調整が終わったからね」
「分かりました」
一旦束様に離れてもらい、調整されたパッケージをインストールして装着……はい、大丈夫そうですね。レイ様にお礼を言おうとしましたが、いつのまにか姿が消えています。そういえば、レイ様はいっくん様とサラのオペレーターも兼任していましたね。過労で倒れなければいいのですが……
「束様」
「ひっぐ……どうしたのくーちゃん?」
どうやらまだ泣いていたようです。珍しい光景にまだ見ていたい気持ちを抑えながら、私は束様に言葉を続けます。
「敵を排除することが、私の存在意義です。
「ッ…でも……」
「ですが、束様が望むなら……無闇な排除はしません。あくまで任務ですので、必要最低限に留めます。それでも嫌だというのなら……」
「い、言うのなら……?」
「いっくん様に物理的説得をお願いします♪」
「ひぃぃぃぃ!?!?くくく、くーちゃん!?そんな……そんな恐ろしいことを言うようになるなんて……ああ、誰だよこんな風に育てたの!!……私だぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ガツンガツンと頭を床にぶつけながら絶叫している束様。見ていて面白いですが、いっくん様はどれだけ恐れられてるのでしょうか……
「束様」
「うぅ〜……どうしたの?」
「心配してくれてありがとうございます。私は束様に想って貰えるだけで十分幸せ者です。あの時、私を連れ出してくれたから……今のクロエ・クロニクルがあるんですよ?」
「くーちゃん……うん。こちらこそ、何も言わずに私に……束さんについて来てくれてありがとうね」
私から抱擁をすると、束様はこれ以上ないくらいの笑顔で私を抱きしめて返してくれました。
「…………私が最初からお兄ちゃんと一緒に織斑千冬の元にいたら、また何か違ったのかな?私は最近、クロエが羨ましい」
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