62話
〜一夏、サラ(一夏視点)〜
やぁ、フランスとドイツの国境付近で立ち往生している俺だ。何故かって?ハハハ……俺も予想外だったんだけどねぇ……
「そこの所属不明IS 2機に警告する。武装を捨てて投降しなさい!!」
『それは出来ない相談だな。フランス代表候補生……シャルロット・デュノアといったかな?』
『隊長……これどうするのよ……?』
知らん。俺だって早く逃げたいんだ。
俺とCの目の前にいるのはフランス軍所属だと思われるラファール・リヴァイヴ2機とオレンジに塗装されたラファール・リヴァイヴが一機……シャルロットだ。いつのまに帰国していたのか、思い当たることといえば……父親との和解が
『…………やるしかないな』
『了解』
俺はビーム・マグナムとシールドを、Cは両手にスパイクシールドを持ち構える。シャルロット達もアサルトライフルを取り出して待ち構えているようだ。
『次はこちらが警告させてもらおう。このライフルはラファールの装甲ならば容易く貫き絶対防御ごとIS を消滅させる。死ぬ覚悟は出来ているか?』
いやだよなんでシャルロットと戦うんだよはぁマジで帰りたい……どうせC1人でも勝てるだろうし俺だけブースターつけて帰って良いか?
『……Cさん、泣いちゃうよ?頑張ってマスター』
……だよなぁ。ありがとうユニコーン。
「絶対防御が効かないわけないわ。そんな脅しでここを通れるとは思わないことね!!」
随伴のラファールが何か吠えている。Cの方を向くと、仕方ないといったように首を振っている。ガルスシリーズの顔面で首振ると滑稽に見えるな……なんの恨みもないけど君に犠牲になってもらうかー
『では味わっていただこう』
「ッ!?危ないッ!!」
宣言してすぐにビームマグナムを先ほど吠えたラファールに向けて撃つ。圧倒的な熱量がラファールの装甲を飲み込もうとしたところで……シャルロットが投げたシールドが行手を阻み、しかしそれすら消滅させてラファールに命中した。
「え……うそ……」
『む……防がれた分足りなかったか……』
大気圏内ということもなって威力減衰するのは分かっていたが、シールドに阻まれたことによって多少威力が落ちたのか、ラファールの装甲を全壊させるだけに留まった。しかしそれでも威力は充分。絶対防御によりエネルギーの尽きたラファールは待機形態へと戻り操縦者は真っ直ぐ落下していった。あーあ、この高さじゃ死ぬな。
「そうはさせんッ!!」
『…………マジかよ』
急に落下していた女がその場に停止した。この方を向けば黒いISがこちらに向かって手を伸ばしているではないか……ラウラの『シュヴァルツェア・レーゲン』だ。シャルロットのそばにいたもう一機が急いで女を回収し下がった。おいおい……ラウラとシャルロットの両方相手にするのかよ……やりにくいったらありゃしないな。
「ありがとうラウラ」
「ああ、間に合ってよかった」
『ドイツの遺伝子強化試験体……ラウラ・ボーデヴィッヒか。C、アイツが連れてくるであろう量産機達の相手は任せた。私は候補生2人をやる』
『仕方ないわね……私だってあの2人とやりあってみたいけど今日は譲るわ。手を抜いて負傷したら私が殴り飛ばすわよ』
『ははっ、こいつぁ手厳しい』
さて……シャルロットとラウラから帰国したという連絡は受けてない。諜報部からもそう言った報告は上がってないし。ったく、雑魚しかいない簡単な任務だと思ってたのにさぁ……
『さて、会話を楽しんでいるところ悪いが私たちにも任務がある。退いてもらおうか』
「ほう……1対2か、舐められたものだな」
『
「ッ!!貴様、それをどこで……まあいい、捕縛してから聞くだけだ!!」
『無駄だ』
ラウラがAICで動きを止めてくる。俺は一切抵抗することなく効果を受け、機体性能で無理矢理引きちぎる。
「なに!?」
『終わりか?ならばこちらから行こう』
「ラウラ下がって!!あのライフルはまずい!!」
「わかった!!」
俺がビームマグナムを構えると2人はすぐに散開して俺から距離を取った。なるほど、狙いを集中させないつもりか。
『逃さん』
俺は背部スラスターを吹かしシャルロットへ向けて飛行した。カスタムされているとは言っても所詮ラファール。ユニコーン の加速とスピード、さらには操縦者の負荷(俺には丁度いい)を完全に無視した高速での旋回も合わさってすぐに追いつく。俺はランドセルの収納部を展開しビームサーベルを取り出しシャルロットに向けて振り下ろす。
「くっ……!!速いッ!?」
間一髪で回避したシャルロットだが、ビームサーベルの熱で浮遊ユニットが少し溶けている。流石に過剰な威力だな。
『どうした代表候補生、その程度か!!』
俺が斬りつける、シャルロットが躱すと言った攻防が何手か続くと、彼女は急上昇。俺が見上げた瞬間に正面から衝撃を受けた。
『……レールガンか』
「先ずは一撃……私達のコンビネーションを舐めてもらっては困る!!」
どうやら俺はシャルロットとラウラに直線になるように誘導されたらしい。やっぱ良いコンビだよなこの2人。俺がそう感動していると上空からアサルトライフルの銃弾が降り注いだ。
「よそ見してる暇はあるのかい?」
「このまま捕らえさせてもらうぞ!!」
両手に『ガルム』を持ったシャルロットが俺に牽制し、その隙にラウラがワイヤーブレードを展開して肉薄してきた。
『今日は武装をあまり積んでいないんだ……Eパックの残量も少ないのだから勘弁して欲しいな』
「「なっ!?」」
ワイヤーブレードが当たる瞬間に左腕の盾で弾きワイヤー部分をビームサーベルで切断。驚きの表情を浮かべているラウラを掴みシャルロットに向かって投げる。
「くっ、この程度……っ!?」
「ラウラッ!!」
やられたらやり返す……倍返しだ。ラウラがPICで体勢を立て直したときにはもう遅い。俺達は直線状にいるのでビームマグナムに持ち替え出力を落として発砲した。
「はぁぁぁぁぁ!!!!」
ラウラが両腕をこちらに向けている。どうやらAICで攻撃を受け止めようとしているらしい。隙だらけなので再度ビームサーベルに持ち替えてラウラを切り捨て……ずにシャルロットへと向かった。
「僕の方に来るの!?」
『貴様のほうが面倒だからな』
ラピッドスイッチでブレードに持ち替えたシャルロットは片手でグレネードを放りながら突撃してきた。へぇ、切り結ぶつもりか。通りざまにグレネードを払えば、爆薬ではなく煙幕が入っていたのか当たりが白く染まる。ジャマー付きのようでISの機能でも認識できない。
「はぁ!!」
『甘い』
「うぐぅっ!?」
俺の背後から上段で振り下ろしてきたブレードをビームサーベルで受け止め腹を思い切り蹴り付けた。しっかり膝を折って蹴ったのでそこそこ吹っ飛んだシャルロットは回転しながらPICで立て直した。だけど……
「強い……ッ!?」
『チェックメイトだ』
「うわぁぁぁああ!!!!」
シールドをシャルロットに向けてビームガトリングガンを発射。シャルロットは抵抗する暇もなく弾丸の雨に晒されて撃墜していった。瞬時加速を使い、落ちていくシャルロットを受け止めればどうやら気絶しているらしい、どうしたものか。
「シャルロットを返せテロリスト!!」
『ほう……耐えたか』
声の主、ラウラに振り替えると、所々装甲が融解しながらもギリギリ原型を留めているシュヴァルツェア・レーゲンがいる。ラウラ自身の表情も苦虫を噛み潰したようで相当無理をしたのだと見える。それにしてもAICだけでビームマグナムを止められるとは思っていなかった。出力を下げたとはいえ、第3世代機を舐めていたらしい。
『無論返すとも。殺すつもりは毛頭無い』
「なに……?」
なんで俺がシャルロットを殺さないといけないんだ。全く……はぁ、今からラウラを倒してからドイツ行くんだもんなぁ……めんどくせぇ。
『えー、こちらレイでーす。ボスからの勅令を伝えるよ』
『ッ……』
このタイミングでレイさんからの通信。しかもボスから直々に……?一体なんだ。
『亡国の存在は十分に実感出来たからもう撤退して良いってさ。女権団だけ狙われているって思わせれば、どの国の女権団も民衆からの弾圧で当分なにも出来ないだろうってね。それと優先度が変わった。一足先に帰還したKちゃんが持ち帰ったISコア数個、どうやら正式に登録されてない未確認のコアだったらしくてね。S君も確保したようだしそれを持ち帰ることを優先するようにとのことだよ』
『……了解した。敵ISを振り切った後、ブースターを接続して帰還する。C、通信を聞いたな?そちらはどうだ』
『とっくに終わってるわよ。コイツら……弱すぎて詰まらないわ』
『では帰るとしよう。私もすぐ終わらせる』
軽く通信を終えてラウラに向き直る。俺はシャルロットを抱えているから責めることができず、何故か急に黙ったからだろうか怪訝な顔でこちらを見ている。
『ああすまない。どうやら我々の任務は終了したらしくてな。シャルロット・デュノアを返す代わりに我々を見逃す……と言うのはどうだ?』
「…………私達に好条件すぎる気がするが?」
『それが理解出来ているなら十分だ。さあ、どうする?』
俺は交換条件として提示するが相手に有利すぎるのだ。少し悩んだ後苦虫を噛み潰したような表情でラウラは言った。
「…………分かった」
『賢明な判断に感謝しよう』
俺はゆっくりとラウラに近づき両手でシャルロットをラウラに渡す。
『さらばだラウラ・ボーデヴィッヒ。願わくば2度と戦場で出会いたくないな』
「こちらこそ願い下げだテロリストッ!!」
『……我々は亡国機業、世界に変革をもたらす者だ!!テロリストなどと言ってもらっては困るな。では失礼する』
怒髪天なラウラを横目に俺はブースターを取り付けフランス領空を離脱した。
『なんでアイツらと戦ってんだよ。何がしたいんだ俺はッ』
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