機動戦士ガンダムビルドファイターズ ーRemind you- 作:無紙 みぞれ
ジェガンが敵をやっつける!?
キャラクター紹介
陽菜乃ユウコ
搭乗MS ジェガン
ガンダム大好きの生粋のガンダムオタク。富野節がよく出る 元気でウルサイ
村町キナ
本作のセイくんポジ、作る専門でありレイジポジ(ガンダムを全く知らない)
ガンプラバトル― それは普段は動かないガンダムのプラモデルにプラフスキー粒子なる特殊な粒子を当て、自由自在に動かすだけでは無く、アニメのようなビームなどを再現することを可能とした次世代競技である―。
その秘めたる熱はすぐさま世界に広がり燃え上がった。誰かが言う「燃え上がれ!ガンプラ!」と。
そしてその熱に充てられた人間はここにもいた。
____
ショーケースの中のプラモデル。
それはより美しく作られたプラモデルで、言わばお手本。
プロのモデラーが腕によりをかけて作られたそれは、時に多くの人の心を射止めるものだ。
そしてそれはここにも一人。
ショーケースに貼り付くようにじっと見詰める少女が一人。
「んんっ…」
「あ、あのお客様…」
「むむむ…」
「あの…」
「何よ!煩いわね!あ、…」
文字通り頬をショーケースにくっつけていた少女は噛み付く様に吠えるも我に返る。
苦笑いを浮かべる店員とショーケースについた跡に思わず赤面しながら気まずそうに頬をかいた。
「あ、あはは…ゴメンナサイ。」
「余り指紋等をつけないでください?ショーケースの掃除だって大変なんですから…」
愚痴をボヤキながら店員が立ち去ろうとしたとき。少女は動いた
「 …あー、待って!待って!ねえ!この作品じーっくり見たいんです!ショーケースから出してもらっても…?」
「はぁ… まぁ、ショーケースにくっつかないで頂かないなら…」
「や、やったー!」
縋るような少女の勢いに負けて店員はショーケースの中のプラモデルを取り出す。
「しかし、何故?ジェガンなんでしょう?」
店員の掌に収まるMS。機動戦士ガンダムに登場するMS。量産機の決定版とまでされ、多くの作品に触れられる量産型MS、RGM-89。ジェガンだ
ジム系とネモ系の融合、地球連邦軍で百年は活躍した…とされているが、劇中はやられ役がお約束のさえないMSだ。
それは逆襲のシャアが放映されてから今に至るまで全く変わらない…様なものだ。
少女は目の前に来た大本命に鼻息を荒くする。目の奥を輝かせ…この年頃の少女なら綺麗なバックやブランドの飾りをもらったときの様な反応だろう。
「おお…」
思わず声が漏れる。
関節部の動作のチェック、パーツ間の粗探し。墨入れされた箇所に目をやる。
薄緑色のMSを隅々まで観察する。そして横目で
「乗りたいなぁ…」
「ダメですよ。飾りのMSなんですから…」
「ですよね」
審判は下った。
「じゃあ、じゃあ作ってる人!教えてください!同じ学校の人の作品っていうのはつかめてるんですよ!」
「んー、わかりました。なんだか悪い予感はしなさそうだしね」
そういって店員は店の奥へと消えていく。
そして暫く時を置いて。慌ただしく走ってくる音がする。
時間にして約一時間ぐらいの出来事だ。
「こんにちは、あの。私の作品で何か?」
現れたのは紺色のショートヘア。銀色と薄紫色の小さな花柄の髪留め。髪に合わせた紺色の縁のメガネをかけた少女だった。
「ああキナちゃん!よく来てくれたね。あっちのお客さんなんだけどこの前作ってくれた作品に…」
「なにか不備でも?」
「ああいやそういうわけじゃないんだ」
刺すような言葉を受け流しながら店員は先ほどの少女を指をさす。
「あの子、連絡してからずーっとキナちゃんの作品を見てるんだ」
「は、はあ…」
そこには一時間ほどから様々な方向からジェガンを見つめる少女の姿があった。キナと同じ高校の制服に身を包んだ少女は、茶色く長い髪を大雑把に結った髪を揺らしながら相も変わらずジェガンにくっついていた。
そしてキナにようやく気付いたように顔を向けた。
「あ…あなたが…? あれ?」
「あ…」
二人の間を永遠にも等しい刹那が…流れた気がした。
このお互いを知らないのに知っている感じは…と
「隣の席の陽菜乃さん?」
「村町さん!?」
その日二人は意外な接点を見つけるのであった。
「こ、こんな凄い作品、村町さんが作ってたの!?凄い!」
陽菜乃ユウコ。彼女は隣の席の村町キナがジェガンを作ったと知り犬の様に飛び跳ねた。その手をぎゅっと握ると顔を近づけた。
「あ、えっと…有難う。でもそんなこと…ないと思う。私ガンダム?のプラモデル初めて作ったし…それに…」
「え?!初めて!?」
「ほとんど素組…みたいなものだよ…?」
「え!?そんなに手を加えてないの!?」
「説明書見て、色の指定があったからそれの通り塗っただけ…なの。その…お小遣い欲しくて作っただけだから…」
ぽつぽつと話しが苦手な彼女は謙遜の言葉を述べる。確かにお金がもらえる様に作ったのは確かだが言ったことも間違っていない。
「それって…」
「うん、あんまり凄くな…」
「すっごいじゃん!」
「え?」
しかしユウコは加速してきた。それもキナにとっては殺人的な加速だ。
「凄いよ!私と同じ歳で、初めてで、墨入れも出来て、塗装も出来て!すごいよ!」
「それはお父さんが教えてくれたから…」
やや下がりながらキナはユウコに眩暈を覚える。
「あ…そうだ、忘れてた… あのムラマチさん」
「は、はい…」
改まったユウコの態度に更に眩暈を覚える。
表情も声音もコロコロ変わるユウコは、キナにとってかなり眩しい存在だ。
「私と一緒に、ガンプラバトル…しませんか⁉」
「…えっと…」
頬をかきながら目をそらす。ユウコは喜々した目線のままキナをとらえてはなさい。正しく目標を狙い撃つスナイパーの様に。
「嫌です。」
陽菜乃ユウコはその日初めて玉砕を経験した。
_____________________
次の日。朝礼の時間が始まる。
キナは何の気なしに隣の席を見た。窓際の自分の横。クジで引いたが為の隣人になった陽菜乃ユウコの席は空いている。
昨日のことは鮮明に覚えている。「嫌です」の一言を折りに陽菜乃ユウコは物言わぬ石像になった。どうしていいかわからずにそのままユウコを放置して帰ったが。どんよりとした背中でトボトボと夕日に消えていくユウコを遠目に見た気がした。
(陽菜乃さん…私があんなこと言ったから…?)
担任が教室に入り出席を取り始める。
やや罪悪感に見回れながら朝が始まる。キナはあまり良い気分ではなかった。
もうすぐ陽菜乃の名前が呼ばれる。ああやっぱりあの子は来ないんだ。そう思ったときだった。
「陽菜乃ー」
「はいはいはい!はーい!!!」
バンっと勢いよく扉があいた。クラス全員が驚いた表情で視線を釘付けにする。
「遅いぞ。遅刻ギリギリだ!さっさと席につけよ!」
「ふぁい」
目線を集めた緊張のせいか気の抜けた返事をすると静かにキナの隣にユウコは着席した。ばらばらと視線が掃けていくのを感じるとユウコはため息を一つついた。
(昨日の今日だから…気まずい…)
キナは顔をしかめた。キナは友人作りが全く得意ではない。それなのに入学早々、あんなに必死で絡んできた人をないがしろにして、もしかしたら虐められるのでは?と被害妄想が炸裂し妙な吐き気を覚えたが…。
「村町さん、村町さん…」
ひそひそと横から声がした。ユウコだ。
「村町さん、あとで渡したいものが…」
「村町ー」
「え、あ、…はい」
「しゃべってるなよ陽菜乃。遅刻ギリギリなんだから自重しろ?」
「はあい」
不満そうに口を尖らせながらユウコは身を潜めた。
朝礼が終わると例のごとくユウコはキナに話しかけてきた。
「いやあ、今日は寝坊しちゃってねぇ」
「そう…なんだ…」
「それでね、それでね!もうチャイムのなる15分前だったからぶわーって走ってきちゃったよ!」
「そう、なんだ…」
特に当たり障りのない会話だ。しかしキナはそれさえも割と苦手な部類だ。
人見知りが激しく会話が弾まない。いつもそうしているうちにキナは割と独りぼっちになってしまう類だ。
ユウコは難しそうに顔をしかめては、一つ思い切ったような顔をした。
「ねえ、村町さん」
そう呼ばれて顔を上げるが彼女の頭の中では「私の話つまらない?」と言って冷めた目を向ける人だ。それは彼女にとっては大きなトラウマで、ユウコもきっと…。
「は、はい…」
恐る恐る顔を上げる。震える目線を合わせた。
「キナちゃんって呼んでいい?ムラマチさんって言いにくくって」
其処にはひまわりの様に大輪の笑顔を向けて微笑むユウコがいた。
「え、あ…」
思わず反応に困って息がつまる。思考が乱れてなんて答えればいいかわからない。
「あ、嫌?嫌なら…」
「い、いいよ!キナで…いいよ…」
モジモジと目を逸らしながら出た言葉は自分でも想像していない言葉だった。
「あ、あの、陽菜乃さん…」
「ん?」
ユウコは昨日のことを気にしていないだろうか?それを聞こうと思った矢先にチャイムが鳴った。
一限目は国語だ。担当の教員が着て授業が始まる。
陽菜乃ユウコは潜水艦がごとく眠りの海に沈んでいた。暖かな春の陽気と窓際から二番目とは意外と日光が当たって心地が良いものだ。
「うっ… ハンドアンカーが…」
彼女はアクアジムにでも乗っている夢でも見ているのだろうか。
キナはユウコの寝言の意味が全く分からないが
「村町、陽菜乃を起こしてやれ」
「敵襲… ゼー…ズー…ル…」
と言われた以上。
「陽菜乃さん、先生見てるよ…?」
そういって彼女のおなかをペンでつついた。
「ゾゴ!…ック…?」
びくっと体を揺らしてユウコは飛び起きた。
「授業中に寝るな」
「は、はひ」
ユウコは唾液の付いた口を拭うと気の抜けた声で着席した。
しかし陽菜乃ユウコは、また深い眠りに落ちた。結局午前しかない日の学校を寝通したのだ。案の定。
「キナちゃ~ん、ノート映させてぇ…」
「は、はい…」
机をくっ付けて真正面。ユウコはだらだらとノートを写す。
「あ、あの…陽菜乃…さん」
「なあに?」
目線だけをユウコはキナに向ける。
「昨日の事、気にしてないんですか?」
ピタっとユウコの手が止まる。
「ん?ああ、うん!気にしてない!…といったら嘘になるけどさ。」
「私ね、こんな性格でしょ?思い切り正面から当たる性格だから、キナちゃんみたいな人は嫌だなって思っただろうし。それにさ」
ノートを写す手が動き出す。
「嫌なこと、無理強いなんてできないし!」
ユウコは笑いながらそう言い切るとシャーペンをしまった。
「おっわり!ねえ良かったらご飯食べに…」
「嫌いに」
ユウコの言葉をキナが遮る。
「嫌いになったりしないんですか…?普通、見切って話しかけてこなかったり…邪見にしたり…」
その言葉を聞いてユウコはしばらく考える様に天井を仰ぎ見る。
「なんで?」
逆に首を傾げられる始末だった。
「え?だって、その…貴方のやりたいことを嫌だっていって、一時間ぐらい待たせて、それに黙って帰っちゃうし…」
「ああ、そういう… 考えすぎだよキナちゃん!キナちゃんはさ、やりたくないことをやりたく無いって言っただけでしょ?それって良いことだよ!」
「え?」
「好きじゃないことって無理に続けても続かないでしょ?」
「う、うん…」
「好きじゃないこと続けてても楽しくないでしょ?」
「うん…」
「ならそれでいいじゃん!それが答えだよ!無理に付き合う必要なんてないよ!」
屈託無く笑う彼女が本当に眩しかった。苦しいとさえ思えるほどに。
「それにさ!折角クラスも一緒で隣の席なんだし、仲良くしたいって思っただけだよ!じゃあ行こ!」
そういって立ち止まるキナの手をユウコは掴んで走り出した。
ユウコの勢いに負けてキナは踏み出した。そして人の手の温かみというものを改めてキナは実感した。
___
昼食を食べ終えるころにはキナも自然とユウコに笑いかけれるようになっていた。
「ごちそーさま!」
「ごちそうさまでした」
手をぱちんっと鳴らすユウコと静かに箸を置くキナ。
「あ、ねえ…一応聞いて良い?」
「…うん」
「どうしてガンプラビルダー、嫌なの?」
食後のお茶を飲む手が止まる。
「…私ガンダムを知らないのが一番大きいんだけど… その、壊れちゃうから…、大切に大切に作った模型がね、壊れちゃうの。私嫌なの。」
ガンプラバトル。それはガンダムのプラモデルを媒体にして行われる疑似戦闘の様なもの。ダメージの度数は決めれるが、公式戦などで行われる場合は戦闘後には無慈悲に壊れてしまうというものだ。やられた傷をそのまま残して。
「ああ、そうなんだ… それなのに私ごめんね、そういうことも聞かないで誘ったりして」
「ううん、いいの。」
「そっかー知らない人でもガンプラが壊れるのは知ってるもんねえ… 嫌だよね、丹精込めて作ったものが壊されたら。」
「それにね、私プラモデル専門じゃないんだ、模型が主だから…」
「へえ!どんなの作ってるの?」
「ちょっと恥ずかしいしまだできてないけど…」
キナはそういって携帯の写真をいくつか見せる。
「え、凄い!凄すぎない!?」
「そ、そうかな…?」
和気藹々として二人は昼食を終え、店を出る。しばらく歩いていると
大きなショッピングモールに差し掛かった。
「あ、ねえ…」
思い出したかのように立ち止まるユウコにキナは首を傾げた。
「どうしたの?」
「プラモデル…見てきていい?」
GUNDAMそう大きく書かれた向こうには無数の箱が見える。ガンダムのプラモデル専用のコーナーだ。
「うん、いいよ」
「えへへ、有難うッ!」
ユウコは微笑むと駆け足で店内へと向かっていった。
続いてキナも入店する。プラモデルの箱の匂い。遠くで組み立てるときのパチパチとした音。プラスチックが切断されて組み合わされる音。
指先にじわりと。あの時の感触がよみがえる。少し痛いけど、ちょっと楽しい。
指先の痛みと共に思い出す。
「…少しだけ。」
キナはゆっくりと腰を屈め、一つの箱を手に取る。
「機械なのに…羽が生えてる…?」
不思議だ。と顔をしかめる。なぜガンダムなのに。機械なのに羽が生えているんだろうか。と
「あ、これはちょっとかわいいかも。」
そういって手に取ったのはアッガイだった。女性人気がやや高いとされているが真偽は定かではない。ただキナのお眼鏡には少し適ったようだった。
そして一方のユウコは
「エコーズジェガン!欲しかったんだよねえ… このバイザー、あーっ!かっこいい!超ほしい…! 買おうかな…悩むなあ… ここが知っている…自分で自分を決めれるたった一つのパーツだ…無くすなよ… 。…あれ?ダグザさんってロトじゃなかったけ…」
はたから見れば彼女は危険な人間だろう。精神情緒の乱れやすい強化人間でもここまでひどくないと。生粋のガンダムファンすら思うだろう
「ひ、陽菜乃さん…大丈夫…?」
「はっ…」
赤面したままユウコが凍る 「つい癖で…」 と盛り上がった自分をとがめる様に顔をそむけた。
キナはこういったときなんて返せばいいか考える。そうこういう時は少し笑いながら
「陽菜乃さんって、変わってるね」
「やめて!そんな風に思わないで!」
逆効果だった。しかしそう捉えてしまうあたり陽菜乃ユウコには常識が備わっているようだ。
「コホン、 キナちゃんは気になるMSとかあった?」
「うーん、特に無い、かな。買うまでは行かないというか…ユウコちゃんは?」
ユウコはかなり真剣な面持ちで口を開く
「ジェガン…エコーズジェガン…スタークジェガン…どれにしようか迷ってるの」
「…全部一緒じゃないの?」
「違うのよ!MSV(モビルスーツバリエーション)ってやつ!スタークジェガンは確かにジェガンD型に追加装甲と機動力を上げるためのスラスターとかが増えてるけど…エコーズジェガンはエコーズっていう特殊部隊の専用ジェガンなの!」
そういってユウコはエコーズジェガンを手に取る。
確かにキナが作ったジェガンとは違い、全体的に黒く。頭部には見慣れないバイザーが付いている。
「まあここまで説明して、あれなんだけどさ。うん、私やっぱり普通のジェガンを買おう!」
「え?どうして?」
「そりゃもっちろん!キナちゃんとこうして遊ぶきっかけを作ってくれたようなものだからだよ!」
「変な話だね」
「本当ね」
奇妙な合縁奇縁を感じながら二人は笑った。そしてユウコは軽い足取りで会計を済ませると。
「あ、ねえ良かったら一緒に作っていかない?」
「うん、いいよ。私もまだ時間大丈夫だし。」
二人は空いている席に座るとキットを広げる。説明書を広げ、袋の中を確認する。
一つ一つ袋から出し。順番に組み上げていく。
「あ、切りすぎちゃった」
「最初、慣れないと大変だよね。貸して。」
ユウコに代わりプラモデルの作ったことのある経験から手慣れた手つきでパーツをカットし、時には器用で刃先で粗を落とす。
「お、おお…プロの技…!」
「アマチュアだよ。もっとすごい人たくさんいるもの」
真剣な表情のキナは顔にかかる髪をかき上げながら時折、鑢を使って削る。
粉をティッシュなどで拭きながら汚れを広げない配慮までしていた。
と、そんな時
「なんだあ?女がガンプラかよ」
「色気ねえよなあ」
素行の悪そうな声が響く。ユウコは顔をしかめて睨み返す。
「何よ。月並み。女のビルダーだって大勢いるのにそれはないんじゃない?」
「はっ、俺らは認めねーから。出てけよ。ここ、俺らが牛耳ってるんで。女の人は受け付けてませーん」
「なにが牛耳ってるよ。ここあんたの店じゃないでしょ?イキがってると痛い目見るわよ」
引かないユウコに顔をしかめる悪漢たち。月並みに対しては常々厳しい陽菜乃ユウコは真っ向から食って掛かった。
「調子乗ってんじゃねえぞ…?」
「どっちが。井の中の蛙さんでしょ?」
一触即発だ。そんな緊張感のある空気の中。
「できた。」
緊張感の無い声が響く。キナだ。
「あ、え?キナちゃん?」
「陽菜乃さん、できましたよ!墨入れもしてみましたけど、如何でしょう?」
状況がわかっていないのではなく、気が付いていたら戦争が起きていた。なんてとても言えないユウコは思わず凍る。
この子の耳には外野の声なんて一切入っていないのだ。
「なんだなんだ?ジェガンだってよ!ひょろっちいMSだなあ!量産機のやられ役なんて、誰が使うんだよ!」
「あーむかつく…!」
「ひ、陽菜乃さん…?」
ようやく状況が読めてきたキナは少し怯える様にユウコの袖を引く。
「しかも素組に墨入れだけかよ おままごとで作ったガンプラなんて情けねえや」
「近所のガキと一緒一緒!」
カチン。とキナが頭に来る前にユウコが動く。
「あったま来た。何?そこまで言うならやってやろうじゃん。」
「陽菜乃さん…?」
「…ごめんね。キナちゃん。私ちょっと許せないや。」
諭すような優しい表情の中に燃えるような怒りがあった。
「私の好きな物をバカにするならいざ知らず。私の友達を馬鹿にするようなら…」
「あんたらのご自慢、全部スクラップにしてやる!」
ユウコは声を大にしてタンカを切った。
「上等じゃねえか!やってやるぜ!」
しかし、ユウコの脳裏にある言葉がよぎる「その、壊れちゃうから…、大切に大切に作った模型がね、壊れちゃうの。私嫌なの。」と。
しまった!と頭を抱えるころにはやや遅かった。まして自分ひとりで悪漢3人を相手取るというのはやや分が悪いどころの騒ぎではない。
完全に不利だ。自分がアリーアル・サーシェスならまだしも。
そんな風に悩むユウコを知ってか、キナが白く細い指を伸ばして肩に触れた。
「ユウコちゃん」
悩むように目を伏せる。彼女は本当嫌だ。
こんな面倒ごとに巻き込まれて嫌だし、でも。ユウコは自分を友達と呼んでくれた。それだけで彼女には十分だった。
だから
「使って」
そういってユウコの掌にジェガンを乗せた。
「え!?でも!?」
「二人で作ったものだから、二人で決めよ? 一緒に戦おう?」
その一言で目頭が熱くなるのを感じた。
「…うん、わかった。勝てる気がしてきたよ!」
「応援してる」
そしてユウコはジェガンを連れて。
「逃げるなら今のうちだぜ?」
と煽る様な声。
「どっちが!三人がかりで勝てなかったらここにはもう二度と近づかないほうがいいんじゃない?」
「ほざけ!三人に勝てるわけねえだろ!」
4人はガンプラバトルを行うためのGPベースにつく。そしてそれぞれがMSをスキャニングが始まり、疑似的なコックピットが形成される。
MSを取り囲むように形成される。カタパルトが形成され。発進権限が受託される。
「陽菜乃ユウコ… 行きます!」
「俺たちの実力を見せてやるぜ!OOクアンタ!」
「ストライクフリーダム!」
「ユニコーンガンダム!」
それぞれ4機のMSが発進される。
それらは多くの作品で知られる主人公の最強と名高いMS達だ。ジェガンでは到底手も足も出ない。
「…確かに性能は良さそう…でも。まけてられないな…だって。」
このMSは一人だけの物じゃないから。
「自分勝手な奴には負けたくない…」
フィールドは宇宙だ。デブリが浮くこの宙域はユウコはよく知ってる。
「ア・バオア・クー…」
カタパルトから投げ出されたジェガンは宙を駆ける。
「調子は良好…?ううん、凄い、今まで乗ってきたやつで一番すごい!これならいける…!」
スラスターを大きく吹かせて索敵する。あの手の類は慢心しているか意外と小心者で小さくなっているかだ。
「バルカン、サーベル、ミサイル、ビームライフル…。標準装備ね。」
その時遠くで赤くきらめく閃光を見る。
「いた!」
機体を上に動かしてその光から大きく反れる。バウゥンっと腹に響く音が遅れて聞こえてくる。ユニコーンガンダムのビームマグナムだ。
「最初にクアンタから潰したかったのに…!」
「見つけたぜ!俺一人でヤってやるぜ!」
既に角が割れているから察するにHGのユニコーンをそのまま組み立てただけの機体だろう。赤いサイコフレームが黒い宇宙に赤い線を描く。
かなりの速度だ。これは標準スペックが高いガンプラにある常に強いという現象だ。そして再びマグナムが炸裂する。狙いは甘い。
「ふふん。そんなエイムじゃ私は捉えられないわ!」
ユウコはミサイルの標準を合わせて打ち出す。瞬間
「なに!?」
ミサイルが爆ぜる。盾で爆風を抑えながら後方に揺れる。
「フリーダムのビーム!誘い込まれたの!?」
「邪魔すんじゃねえよ!」
「…そういう訳じゃないのね…」
ユウコはガクっと項垂れながら落胆する。
「うるせえ!獲物を一発で仕留めれないお前が悪い! ドラグーン!」
八基のドラグーンが一斉に襲い掛かる。
素早く囲まれた八か所からのオールレンジ攻撃。
ユウコは機体を揺らして避けるとジェガンの盾をビームが掠める。
そのあとすぐにユニコーンが切り込んでくる。ユウコはたまらずビームサーベルで応戦する。
バチンっと鍔吊り合う。しかし大きさのハンデもありかなり分が悪く押される。
「こんの!」
ユウコはバルカン砲をうならせた。発射されたバルカンが胸部のサイコフレームを砕きユニコーンの片目を破損させる。
「な!カメラが!ぐわっ」
ユニコーンのコクピットに蹴りを入れて距離を取る。蹴った勢いで機体がそれると同時に足先にドラグーンのビームが落ちていくのが見えた。
「何!?」
「狙ってんのバレバレだっつの!」
ユウコは盾のミサイルに狙いをつけさせてドラグーンに相殺するように打つ。
反応が遅れた敵のドラグーンは格納される前に破壊される。
しかし潰せたのは僅か一機だ。
「こいつぅ…」
「落ち着け!三人なら余裕だ!」
遅れてきたクアンタが姿を見せる。最初にユウコを煽ってきたやつだ。
クアンタは尽かさずソードビットを射出し。それに合わせてドラグーンも射出される。
ソードビットとドラグーンが乱舞する。射撃と剣撃が襲い来る。
ジェガンは身を落とすように下に逃げ延びながら大きく回る。巨大なア・バオア・クーを背にして距離感覚をズラす。
「クソ!当たんねえ!ジェガンなのにどうしてあんな!」
「舐めるなよ…舐めるなあ!」
ユウコは機体を回旋させ一気に間合いを詰める。全力のスラスターが空に糸を引く。
「う、うわああ!」
クアンタはビットで盾を作ろうとするも、遅い。
ユウコはジェガンのシールドでクアンタのコックピットを突いた。
ブッピガンッ!と鈍い音を立ててコックピットをえぐる。
「ク、クソ!」
慌てたユニコーンがマグナムを乱射する。
「待ってました!」
マグナムの斜線を見切るとクアンタに刺さった盾を抜き土台にするように蹴飛ばす。ぐるんとジェガンは大きく回転しながら上に逃れる。
「うわああああ!」
断末魔も虚しくクアンタに味方のマグナムが直撃する。
クアンタの爆発によって当たりが緑色の粒子が宙を漂う。そしてユウコはライフルでユニコーンを狙うも打たない。
フェイントだ。そしてすぐに狙いをつけずにミサイルを上弦に打ち込む。
「なに!?フェイント!?うわあ!」
安心しきったストライクフリーダムにミサイルが刺さる。が大したダメージにはならない。
「流れはこっちにある…!」
ユウコは確信し、機体を滑らせる。ユニコーンガンダムに真っ向から向き合う。
「格闘戦なら!」
ビームトンファーとサーベルの4つを滾らせ猛攻の姿勢を示す相手に対して。
ジェガンはユニコーンに対してグレネードを投げつけた。
「クッ!」
ユニコーンはそれをバルカンで応戦し破壊する。グレネードが爆ぜて煙が舞う。
「や、奴は何処に?!」
ピピっと敵接近の音を知らせる音が鳴る。
「後ろ!?」
すぐ真後ろにはサーベルを滾らせて突進を仕掛けてくるジェガンの姿があった。思わず突進を避けようと試みるも間に合わない。
そこまで来たジェガンのサーベルがユニコーンの肩を切断する。
「卑怯だぞ!…ぐわっ!」
機体が大きくよろける。縦横無尽に空を駆けるジェガンに対してマグナムで応戦しようとするが狙いが全く定まらない。標準を合わせるカメラをつぶされたからだ。
が、それだけじゃない
「玉切れかよ…!?ぐわあっ!?」
そんな茶番をしている間にジェガンの2撃目は襲い来る。マグナムを持っていた手を叩き落とされ。ユニコーンはついに丸腰になってしまった。
「クソ!クソ!こんなはずじゃ!」
ピピっと熱源接近のアラームが響く。無数のビームが往来する。
ストライクフリーダムの一斉射撃、ハイマットフルバーストだ。
「さすがに…!」
ジェガンの盾でそれを受け止める。盾はあっさりと切断され半身だけになってしまう。
思わず冷や汗をかく。少し油断していたところに水をかけられたような気分だった。シールドが半壊し。多くの狙撃武器を持つストライクフリーダムと真正面からやるのは最悪だ。せめて盾を温存したかったがと思考する。
思わず苦悶の表情を浮かべる。
「盾無じゃあ…あ…あった。」
目についたソレは最も優秀な盾だった。
ストライクフリーダムのビームが打たれるのを見るとユウコは下へと落ち延びる様に滑空させてから。真正面に向き合った。
「行くよ…!」
ユウコが盾に選んだのは
「俺かよぉ!!!」
ユニコーン背中にシールドの半身を突き刺して一気に突貫する。
「クソ!?ロックできない!」
味方の信号と混ざりロックオンできないためかビームを乱射する。ユニコーンの頭や足が破壊される。
「吹っ飛べ!!」
ユウコはシールドミサイルをユニコーンに密着させたまま引き金を引いた。
「ちくしょおおおお!」
爆散するユニコーンと逃げるストライクフリーダム。爆煙の中から飛び出してきたジェガンは展開されたビームの一斉射を肉薄しながら突貫する。
「とどめだあああああ!!!」
ユウコは叫びながらサーベルを突き出す。
「くそおおおおお!」
そしてそのまま勢いのままデブリに叩きつける。ストライクフリーダムは後翼は大破し。コクピットにはジェガンのサーベルが刺さっていた。
「…私たちの勝ちだ!」
ジェガンは大きくその手を掲げる。
「おおおおおお!!!」
とバトル終了のアナウンスと共にあたりから歓声が聞こえる。知らない間に人が集まってきたようだった。
多くのギャラリーから歓声を浴びるのは初めてだった。三人を相手取って。一歩も引かず。負ける気もしなかった。こんなの初めてだった。
「やったよぉ!キナちゃん!」
ユウコは思わずキナに飛びついた。キナはそれを受け止めると少し苦しそうに笑いながら
「うん、カッコよかった!」
「さて…と」
ユウコは負けた悪漢たちに目をやる。ばらばらになったプラモデルを前に暗い表情を浮かべていた。
キナは目を少し細め、ユウコもまたどこか居たたまれない様な表情だった。
ユウコはキナから離れると男たちに向かっていった
「楽しいコトって大事だよ。楽しむコトも大事だよ。だけどね。誰かを否定したり、その人を傷付ける様な楽しみ方って。最低だよ。 だからさ」
「一緒に楽しめる様に、一からやり直していこうよ」
ユウコは微笑みながら手を伸ばした。
「お、お前…なんで…そんな…」
「俺たちは…」
「約束。」
「もうこんなことしない、OK?」
差し伸べられた手を握り立ち上がりながら男たちはうなづいた。
「うん、そしたらまた今度、正々堂々真正面から戦いましょ!」
「ああ!」
「悪かった…」
「改心するよ…!」
男たちは口々に言いながら去っていた。
ユウコはそれを見送るとキナと共に店を去っていった。
夕暮れ。水平線に太陽が沈み。空を橙色が染め上げる。眩しい光に思わず顔をしかめるほどに。
「今日はいろいろあったねぇ」
「うん、いっぱいあったね」
二人は小高い場所から町を見下ろす。風が頬を撫でる感触と木々がざわめく音さえも遠巻きの喧噪の様にすら思える。
「楽しかった?」
「うん、人生で一番楽しかったかも」
「私も!」
屈託なくキナとユウコは笑いあう。
「ねえどうして戦ったの?最初から勝てる見込みがあったの?」
「ううん。それが全然。むしろ奇跡だと思ってるよ」
「じゃあどうして?」
キナは首をかしげる。ユウコはずっと遠くの夕焼けを見たまま重い口を開いた。
「言っちゃったけど。私ね、本当にキナちゃんを馬鹿にするような言い方したのが頭に来たんだ…。だってキナちゃんは本当はすごいし、もっといいの作れるの私が知ってるんだもん。たまたま目先の物で物事を決める人、私は嫌いなんだ」
「だからね、なんていうか…恥ずかしいんだけど、私の大事な人にあんなコトいったのが…なんていうか…うう、なんていうんだろう…」
「ふ…」
「ふふ…」
キナは思わず吹き出した。
「昨日今日あった人に言う台詞じゃないよ、ユウコちゃん」
「そ、そうだね…え、今なんて」
「あ…陽菜乃さ…」
「い、いいよ! ユウコでいいよ!」
「じゃあ、ユウコちゃん。」
「キナちゃん…」
「ふふ、なんだか不思議ですね。」
「立場が逆転してるよぉ…言われると結構恥ずかしいんだね…」
コホンと、咳ばらいを一つ。キナは一つ打つ。
「ユウコちゃん。私ガンダム知らないんだ」
「う、うん?、そう…だね」
「それでもいい?」
「え?」
一陣の風が吹く。永遠にも思える刹那だ。夕暮れが二人の目に映る。その目を真っ直ぐ見つめ合う。
「いいの…?」
「ビルダー専門だけど。貴方の大切なプラモデルを私に作らせて!私の大切な 陽菜乃ユウコさん!」
それはまるで愛の告白のようだった。キナは人生で一番の笑顔で陽菜乃ユウコにそう告げるのであった。
こうして二人の物語は始まりを告げる。
如何でしたでしょうか?
え?改造MS出てこないじゃん!って思ったそこのあなた
次から出てきます
まずはユウコとキナについて触れてほしかったので日常シーンをほとんどにして書かせていただきました。
そのうちバルバトスの改造機とか出てくるので待っててね
最後に
ガールズラブと言ったな。あれは嘘だ。