機動戦士ガンダムビルドファイターズ ーRemind you- 作:無紙 みぞれ
朝の登校を時間終了を告げる鐘が鳴る。何時ものごとく滑り込んだ陽菜乃ユウコは、着くや否や机に伏せた。
「おはよう、ユウコちゃん。今日もギリギリだったね」
「うー、おはようキナちゃん。いやあもうさ、私自分の背中にプロペラントタンクが欲しいわ…燃料切れ、またノート映させて…。」
そういってユウコはスイッチを切ろうとした瞬間だった。
「はい、寝ない」
「いだいっ!」
通りすがった担任にボードの角で頭を叩かれる始末だった。
「ブーメランミサイル…、そうグラブロ…」
「またよくわかんないこと言ってる…」
何かを感じ取ったユウコにキナは苦笑いを浮かべた。あの日以来、キナはユウコと一緒にガンプラバトル、なるものに興じることになった。そのことはキナにとっても大きなことだったし、なによりもユウコは、はしゃぐにはしゃいだ。結局、「親御さんに挨拶するべきだよ!」といい始め、キナの父親に「結婚を申し込みに来たのかと思った」と言わせる始末だった。
しかし紐を解けば、父親と意気投合、遅くまでガンダム談義を永遠と聞かされたキナは、ガンダムを見たことが無いのに何となく話の流れを掴めてしまうほどになってしまった。
一限が中ほどまで進んだころ、すやすやと眠るユウコを見てキナはどこか心が温かくなった。高校生というのに無邪気で可愛い。多感な時期のそれを感じさせないユウコは、キナにとっては新しい、正しくニュータイプな人類だった。
「可愛いけど、もうちょっとほかの趣味も持ってほしいな…。」
親心か何心か、そんなことを思ってしまった。キナはこっそりユウコの頬をシャーペンの消しゴムでつついた。起きる様子はなかった。
「はいじゃあ、村町さん。そのまま陽菜乃さんを起こしてね」
「ッ!」
思わず顔が沸騰する感覚を覚えながら、キナはユウコの肩を優しくゆすって起こした。
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昼食の鐘が鳴る。教室中の生徒たちが思い思いに食事をとりに行く。それはユウコ達も例外ではなかった。
「キナちゃーんおベントたべよー」
そういってユウコはキナの机に机をくっ付けた。
「合体、ダブルゼータ…なんてね。あーっ!あと一人見つかんないかなあ…」
「そうだね、部活発足は3人からだもんね。」
キナとユウコはさっそくガンプラ部を作ろうと試みるも、それは当然の様に人数という壁に当たった。「部活は三人以上」というルールのもと、ユウコたちは儚く散ったのである。
「そうそう、ユウコちゃんが言ってた、ガンプラ部のポスター、一応考えてきたよ。」
「おおっ!キナちゃんやるね~!どんなのどんなの?」
キナはカバンからスケッチブックを取り出すと何枚かページをめくる。其処には
「νとサザビーですか!」
激突する二つのMS、赤いMSと白いMSの激しいぶつかりを描く。あまりにも有名な逆襲のシャアに出てくるνガンダムとサザビーのポスターだった。
火花散るビームサーベル接触シーンの横には簡単に描かれたジェガンも映っていた。
「お父さんが、絶対この構図がいいって言ってね」
「さすパパだよキナちゃん!絶対人ばーッ!って入るよ!」
ユウコは両手を命一杯広げながら喜ぶと一気に弁当を掻き込んだ。
「ごっちそうさま!私これ先生に頼んで印刷してもらってくる!」
「あ、うん」
勢いに負けて生返事をしたキナはそのページを切り取るとユウコに手渡した。ユウコはそれを受け取ると勢いよく駆け出し、教室を飛び出した。
「のわっ!?」
「キャッ!?」
どんっ!とすぐに鈍い音を立ててプリントが散乱した。その音を聞きつけてキナは足早に現場に急行した。
「いてて…。ごめんね!」
「もう!気を付けてください!」
甲高い声が響く。長い上品な金髪。日本人離れした顔立ち。村町キナのおよそ逆を行く美少女が其処にはいた。
「姫城(ひめじろ)さん…」
姫城ミズキ。学園の校長の孫であり。学園でもかなりの金持ちとして有名な人物だった。高飛車な態度で時には教員をも恐れ戦く、あの姫城”さん”だ。
「ホントごめん!でも私急いでるから!」
ユウコは手早く彼女の落としたプリントを纏めて、渡すとすぐさまその場を離れて行ってしまった。
「な!無礼者!ちゃんと誤りなさい!私を誰だと思ってるの!?」
ミズキはもう!と地団太を踏むと、一枚の紙が落ちた。それは、
「ガンプラ部」の部員募集の紙だった。
「ん…?ガンプラ…? ふぅ~ん…。」
ミズキはその募集用紙を見ると怪しく微笑んだ。
「私をコケにしたことを後悔させてあげるわ…。貴方、これ、A組まで届けて頂戴。」
ミズキは持っていたプリントをキナに押し付けると募集の紙を持ち高笑いをしながらユウコのあとを追いかけた。
「な、なんか大変なことになっちゃった…」
取り残されたキナは呆然とした表情でつぶやいた。
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「センセッ!印刷してほしいものがっ!」
「はいはい落ち着いてね陽菜乃さん。それでどうしたの?」
ユウコは担任の教員の席まで走ると持っていたプリントを渡した。
「これをたくさん刷って学園に張ってほしいんです!部員募集の紙なんだけど!」
「ふぅーん、…ン? ねえユウコさん。これはたくさん印刷できないなぁ。」
「え」
その言葉にユウコは固まった。まさか何がいけないのかと必死に考えていた。
「だってこれ、国語のテストだよ?しかも姫城さんの」
「は?姫…?」
そういってユウコはプリントを受け取るとそこには姫城ミズキと名の掛かれたテストが用紙だった。点数は52点だ。平均点は65点のテストとして先週返されたテストのハズだが、このテストの人物は平均点を取れていなかったようだ。さして恥ずべき点数では無いと、ユウコは思っていた。そんな時だった。
「ふふ、お探しはコレかしら?」
堂々としたふるまいで職員室に入ってきたのは姫城ミズキご本人だ。その手にはキナのかいたイラストが握られていた。
「あ!キナちゃんの絵!ごめん、先生、入れ替わっちゃったみたい」
頭を掻きながら先生に軽く謝罪の言葉を投げる。
「ごめん、ありがとね!」
ユウコはさっそくその募集用紙を受け取ろうとするが、ミズキはその手を弾いた。
「なっ」
「私をコケにした人の部活なんて作らせるわけないでしょ?」
「はぁ!?コケってなに?!ちゃんと謝ったじゃない!」
その言葉にユウコは噛み付いた。猛犬の様に睨みつけ、募集用紙に手をかけた。
「返してよ!私たちのでアンタのなんかじゃないんだから!」
「アンタ!?私を誰だと!」
「知らないわよ!」
白熱し思わずミズキも手に力が入る。その時だった。ビリッ!と嫌な音が鳴った。
「「あっ」」
募集の神は綺麗にサザビーとνガンダムで別れてしまい。虚しく舞った紙が地面に落ちる。それに思わず申し訳なさを感じたのかミズキはたじろいだ。
「あんた…ふざっけんな!?人の邪魔するだけじゃなくてキナちゃんが書いた絵を…!こんなにして!」
ユウコは思わずミズキの胸ぐらを掴んだ。思わずそれには教員たちが割って入って止めに入る。
「辞めなさい!陽菜乃さん!」
二人をなんとか抑えるも口は止まらない。
「っ!野蛮な人!」
「野蛮で結構よ!腐れ女!」
「なっ!腐れですって…!?オタクのくせに!」
教員を振りほどかんとする勢いを見せる二人にまた周りが慌てふためいた。そんな時だった。
「穏やかではないな」
リンとした声が響いた。その声一つで熱に満ちた空間はあっさりと冷えを見せた。
カツン、と音を立て黒いスーツに身を包んだ女性が其処には立っていた。ユウコはその姿を見て思わず
「ハ、ハマーン…カーン…」
「理事長ッ!」
その圧倒的存在感を前に誰もが一歩下がった。理事長、そう呼ばれた人は若く美しい見た目をしているが、圧倒的な存在感と、カリスマ性を沈黙したままでも放っている。スピリチュアルを強く感じる女性だった。
「おおよその話は掴めている。陽菜乃ユウコ。もう少し冷静になれ。暴力的になったらそれは負けだぞ。 姫城ミズキ。貴様は高飛車が過ぎるぞ。もう少し弁えろ。」
「は、はい」
その言葉一つでユウコは背が引き締まった。それはミズキも同じようだった。しかし二人はそれでもこの感情を処理しきれずにいた。
「…陽菜乃ユウコ、姫城ミズキ。お前たちが得意な事、共通していることがある。それを見つけ、自分たちなりに決着をつけるといい。」
理事長はそう述べると、キナのかいた絵を手に取りふっ、と笑った。
「よくかけているな。ふふ、昔を思い出す。懐かしい限りだ。」
そう述べると理事長は二人にその紙を握らせると、その場を去って行った。
「…ユウコさん。この借りはガンプラバトルで蹴りをつけましょう。」
それは意外な一言だった。まさか姫城ミズキがガンプラファイターとはユウコは夢にも思わなかった。
「ッ…!ええ、望むところよ!」
「私が勝ったら、部活は認めません。」
「私が勝ったら、好きにさせてもらうわよ?いいわね」
その言葉にミズキは目を細める。そしてぐっと手に力を入れた。
「望むところよ」
「では5日後、また会いましょう。…私は。かなり強いですよ」
二人はそれ以上言葉を交わすことなく職員室を去って行った。
「ハア…理事長来なかったらどうなっていたか…」
担任の教師がため息交じりに呟いた。それに対して数学の教師はメガネを直しながら呟いた。
「若いですねえ、若さゆえの過ちという奴ですねえ… それにしても姫城さんは、ファイターとしてはここら辺では有名だったような…」
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ユウコはむしゃくしゃしながら帰り道を歩いていた。
「ユウコちゃん…」
「ごめんキナちゃん!また一人で突っ走って!」
「ううん、いいよ、絵はまた描けばいいし。それより大丈夫?結構、大変なんじゃない?」
「うん…。でも私、勝つよ。アイツに邪魔されたくないし、ぜーったい許さないんだから」
ユウコは「うおーっ!」と空に向かって咆哮する。その光景は微笑ましくもあり、同時に不安に打ち勝とうとしているように必死で気張っている様にも見えた。
「…ねえ、そういえば姫城さん、名前を調べたら、ガンプラバトルの動画出てきたよ」
「えっ!?見る!」
ユウコは食い入るようにキナに見せられた動画を見た。そこには天才美少女ガンプラファイター現る!?の触れ込みで投稿された動画だった。姫路ミズキが乗っているのはバルバトスの様に見えた。
「これ…バルバトス?ちょっと淡いけど…」
「ルプス…レギナ?女王って意味らしいよ」
「バルバトス・ルプスレギナ…。」
その動きは、およそ天才だった。バルバトスルプスレギナは装備されたメイスで次々と敵を滅していった。無駄な動きは無い。綺麗とさえ思える戦い方だった。
「…これは… ”勝てない”」
ユウコは思わずつぶやいた。それはファイターのみにわかる直感だった。この動画を見ただけで分かる。いまのユウコでは絶対に勝てない。0.1%の希望すらない。
「…ねえ、キナちゃん。」
「うん、何となくわかるよ。ジェガンを強化するんでしょ?」
「うん。でもダメ。強化だけじゃ物足りないかな。…… 同じ系列の機体で、いいのがあるんだ!それのパーツを流用しよう!」
ユウコの言葉にキナは力強く頷いた。ユウコ達はプラモデルショップに駆け込むとすぐ様MSのコーナーに目を向けた。そして一直線に自分の求めるソレを探して歩き回った。
「……あった。」
ユウコはそう言って1つの箱を手に取った。そのMSの名は。
「スタークジェガン……?」