俺は魔法もどきを使えるようになってからというもの、毎日カード達との交流に励んでいる。というのも、俺が人形を通じてクロウカードから借りれる力は単純に俺の魔力以外にもカード達との友好度が関係してくるからだ。
今のところ一番力を貸してくれるのは
比較的仲良くしてくれるのは
普通というか、あまり俺に興味が無さそうなのが
嫌われてたり、惰弱とみなされてるのかまったく力を貸してくれないのが
とりあえず俺がクロウカード達の力を借りるには、もともとの自分の魔力を依り代である人形に込められる量を増やすこと。力を貸してくれるカード達と仲良くなること。この二つが必要だ。
焦って複数体の人形を動かそうとすれば、集中力の問題なのかそれぞれに込められる魔力が極端に減ってしまう。だからあまり長時間動かすことは出来ないし、魔法の威力もそれだけ落ちる。だからまずは一日に一体と決めて、魔力を込める練習と、それを通してカード達と仲良くなることを、俺は当面の自分の課題に定めた。
だから最近の俺の日課は、まず朝起きてから人形に魔力を込めるところから始まる。
「梅くん、朝ご飯の時間だよー。あ、今日は
「おはよう姉さん! うん、今日は外の風が温かくて気持ちいいから、
俺が人形に魔力を込め終えると、朝ご飯に呼びに来てくれたのか姉さんがひょこっと部屋の入り口から顔を見せる。ああ、今日の姉さんも可愛い。毎朝思うけど俺幸せ。姉さんの顔を見ないと一日が始まらない。
そして朝日をも後光に変える姉さんの神聖な愛らしさに満足している俺の膝の上で、人形に宿った
そして人形に宿したマスコット
……ちなみに最初は男がマスコットをカバンにつけていくなんて、と思って恥ずかしかったけど、それはもう慣れた。慣れたというか、普通に受け入れられてしまった。「その人形可愛いね」とか「え、お前が作ったの? 相変わらず手先器用だよなー」とか言われたくらいで、まったく馬鹿にされなかった。クラスの奴らがいい奴らな事を差し引いても突っ込まれなさ過ぎて、つい大道寺に何故かと聞いてみたら「梅倖くんは可愛いですから。可愛らしいマスコットとセットでも、違和感が無いからでは? むしろとてもしっくりくるといいますか、お似合いですわ」と、満面の笑顔で言われてしまいへこんだ。
ううっ、俺なんかより百万倍可愛い姉さんに似合うように作った人形なのに……! いくら顔が似てるからって、俺は男なのに! なんで違和感ないとか言われてしまうんだ。もうちょっと仕事しろ違和感。みんなに悪気が無いのはわかってるけどさ!!
そういえば俺が魔法を使えるようになったきっかけである李小狼。あいつに俺が魔法少年デビューしたことを披露するのは、次にクロウカードが現れた時に華々しく……と思っていた。
が、速攻でばれた。
初めてマスコットをカバンにつけていった日の朝めっちゃ人形凝視された。そしてその時連れて来ていたのが
仕方が無いから自慢もかねて放課後に奴を捕まえて事情を話せば、李は「すでに主を定めたカードが他の人間に手を貸す? いくら身内とはいえ、そんなことがあるのか……?」と、思った以上に考え込んでしまった。俺としてはクロウカードに詳しい李が知らない方法を使えたことに、ちょっと嬉しくなったもんだ。
しかし、何故だろうな。
なんで俺は今、李にどやされながら公園の外周を走っているんだろうな。
「新たな力と喜ぶのはいいが、外にこぼれる魔力が前より増えているのはどういうことだ! 邪魔だ! ものに込めるだけじゃなく、まず自分の体に留める事を覚えろ!」
とは、李に俺の魔法少年事情を話した後で言われた事である。こぼれた余分な分をモノに込めて消費してるってのに、そのこぼれたものが増してるってなんぞ!? と聞けば、物に込めた後も締まりの悪い蛇口みたいにぽたぽたと俺の魔力はこぼれていたらしい。俺としては余分な魔力を使ってスッキリ! だったけど、俺の魔力を感じられる李としては物凄く邪魔だったっぽい。
それでも俺に制御が出来ないのは分かっていたから何も言わないでいてくれたらしいが、俺がすでに魔力を消費する方法を見つけていて……更にそれが原因なのか、前より李の探知を邪魔する魔力が増えていることを知った李はそれはもう怒った。怒りのままに、俺に魔力の蛇口を締める方法を教えてくれるぐらいには怒った。本当に邪魔だったらしい。
俺としちゃあ魔術のエキスパート的存在である李に魔術関係の事を教われるなら、それを逃す手は無い。二つ返事でOKした。
けど李の教え方が予想以上に体に叩き込め方式でツライ。
「な、なあ。ちょっと休憩……」
「五分だ」
「短ッ!」
「これでも合わせてやってるんだ。文句を言うな」
「……鬼」
「なにか言ったか?」
「言ってません!」
以上、教えてもらっている時の主な会話である。
李が言うには、余分な魔力を消費して自分の魔力の器に納まる範囲まで落とせているなら、蛇口を締めるのはそう難しい事ではないらしい。ただ一朝一夕でうまくいくかと言えば、そこまで簡単でもない。だって俺は魔術のド素人。0からのスタートだ。
しかし李としては、余計な時間をとられないために正に一朝一夕で俺に叩き込む気でいやがる。いや、ありがたいけど。教えてもらえるだけ、ありがたいけど!! でも俺の中で李のあだ名は完全に鬼教官になった。しかしいくら鬼教官が短時間で教え込もうとしたってやっぱり簡単には行かないわけで、今日で李教官の魔術訓練(脳筋ver)三日目だ。お腹痛い。走りすぎてお腹痛い。
しかも李の奴、本当に合わせてくれてるっていうか、今までの体育の授業や運動会で俺の体力の上限を見極めたのか、俺が出来るギリギリで訓練を設定してるらしい。だから俺としてもやれないわけじゃないんだけど……鬼教官が一緒に走って背後からいちいち走り方の指導までしてくるこの状態が辛いぜ……!
でもなんで俺走ってるの? 今さらだけど、なんで走ってるの!? 魔術の制御的な訓練ならもっとこう、どっちかといえば太極拳とか瞑想とかの方じゃないか!? イメージ的に! 何で俺走ってんだよ! いや、体力増し増しで筋肉ムキムキなかっこいい俺を目指す俺としてはこんな訓練もやぶさかではないが、でも何で走ってんだよ! 疑問のループが終わらねぇ!!
しかし五日ほどの訓練を終えてみれば、俺はただ走っていただけにも関わらず李から合格を言い渡された。結局走っていたどの部分が魔力制御の訓練に該当するのかチンプンカンプンだったので、ただ走り損な気がしないでもない。あれか、やっぱり魔術関係は秘伝だからちょっとの事でも部外者に漏らさないぜ的な処置か。なんてカモフラージュだ。教えてもらったのにまったく教えてもらった内容が分からないとかマジか。
だけど訓練を終えたその日。訓練のお陰なのか、俺は
でもなぁ……。嬉しいけど、ライバルにどんどん借りだけが増えていく現状マジ遺憾。が! この経験を活かして、あいつに敵に塩を送ってしまったと悔しがらせるくらいの活躍をきっとそのうちして見せる! 見てろよ鬼教官! 俺は魔法少年キャプターサポーターうめゆきとしていっそう羽ばたいて見せるぜ!
しかしその数日後、俺と姉さんは李小狼に初めてクロウカードの所有権を先にとられる事となる。
俺の活躍する日はまだ遠い。