キャプターサポーターうめゆき   作:丸焼きどらごん

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二話 うめゆき、盟友を得るの巻

 色々誤魔化されるような形で、カードキャプターである姉さんを助け、支える存在……キャプターサポーターとなった俺、木之本梅倖。一晩寝て起きて、冷静になってから。目が覚めるなりこう叫んだ。

 

「語呂悪ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず俺はノせられた事実には目を瞑り、具体的な話を煮詰めるために俺をノせた張本獣であるケロ吉に話を聞くことにした。なので今日は姉さんに先に学校へ行ってもらい、俺は遅刻ギリギリまでこいつに話を聞く心構えである。やると決めたからには漢・梅倖。全力でやるつもりだ。

 

「な~ケロ吉ー。魔法教えろよ、魔法ー。俺にも魔力あるんだろー?」

「いい加減その呼び方やめんかい! わいはケルべロスや、ケ・ル・ベ・ロ・ス! さくらといいお前といい、かっこいい名前を縮めおってからに……」

 

 ぬいぐるみチックな見た目の黄色い獣は、本来もっと格好いい姿をしているらしい。しかし今は何処からどう見てもぬいぐるみ以外に見えないため、俺の対応も自然と雑になる。柔らかそうな頬っぺたをつつきながら魔法を教えろと強請れば、まずは呼び方をどうにかしろと怒られた。しかしもう俺の中でケロ吉はケロ吉で固定されてしまった。どこぞのTシャツにくっついてしまったカエルのような名前だが、よくお似合いだと思う。

 でもこのまま怒らせては魔法を教えてもらえないな。…………よしっ、こういう時は賄賂だ。

 

「プリン食べる?」

「食べるー!」

 

 このぬいぐるみもどき、どうも食べ物に弱いようだな。ふっふっふ、いい事を知った!

 プリンなら家にある材料でだいたいいつでも作れるし、姉さんも好きだから俺の得意料理なのだ。これからもケロ吉の懐柔に使おう。

 

「それで、魔法! 教えてくれよ。見てたら何か出来るようになるかもじゃ不確定要素強すぎだろ。俺は今すぐ姉さんを手伝えるようになりたいんだよ!」

「う~ん、そうは言うてもなぁ……。わいはクロウによって作られたクロウカードの守護者や。クロウカードの事はよく知っとるけど、誰かに一から魔術を教えられるような存在とちゃうねん」

 

 俺が持ってきたプリンを頬張ってからケロ吉が口にしたのは、俺の期待を大いに裏切る返答だった。

 

「ええ!? なんだよ、役に立たないなー」

「なんやて!? し、失礼な。そもそも魔法……ちゅーか、魔術な。魔術いうてもいろいろあるんや! わいが知ってるんは世界最高峰の稀代の魔術師、クロウ・リードが使う魔術。カード無しで使うんは至難の技やで。もし教えられたとしても、小学生のお前さんにいきなり大学レベルの問題解け言うようなもんやわ」

「それでも基礎はあるだろ、基礎は。いきなり凄いの教えろとは言わないけど、とっかかりくらいくれよ」

 

 魔法を覚えられないかもしれない。そう思ったら急にテンションが下がって、情けなくもちょっと涙目になってくる。するとケロ吉がプリンのかけらをほっぺたにくっつけたまま慌てだした。

 

「せ、せや! 昨日も言うたけど、ほんのちょびっとやけど梅倖の魔力はさくらがカードを捕まえるたびに強くなっとる。双子の神秘ちゅーやつで、きっとそこにヒントがあるはずや!」

「双子っていっても二卵性だし。だからかは知らないけど、よく聞く双子の神秘とか、実はあんま感じたこと無いし。……ぐすっ」

「な、泣くなや梅倖! 男の子やろ!?」

「そうだよ男だよ。……俺、生まれるなら女のが良かったのかな」

「うわこいつめんどくさいやっちゃな……! ほら、鼻かみぃ」

「うわっ、ティッシュ押し付けるなよ! 痛いだろ!」

 

 くそう、不覚。なんか急にセンチメンタルな気分になってしまった。ぬいぐるみになぐさめられるなんて、格好いい男のイメージからはほど遠い。反省しよう。

 

「まあ、そう気落ちせんと。まずはさくらが魔法つこうてるとこ見せてもらいやー」

「……分かった」

「ところで、学校はいいんか? もういつもの時間結構過ぎとるけど」

 

 ケロ吉に促されて時計を見れば、確かにそろそろヤバい時間だ。とりあえず魔法に関してはケロ吉が言うように、実際に姉さんに魔法を見せてもらってから考えよう。

 

 

 

 

 

 

「あ、やっと来た! もうっ、遅刻ギリギリだよ」

「おはようございます、梅倖くん。さくらちゃん、心配していましたわよ?」

 

 チャイムが鳴る直前くらいに教室に滑り込めば、姉さんがほっとしたような表情で声をかけてきた。その隣には姉さんの親友である大道寺が居る。

 俺、前に一人で登校した時貧血でぶっ倒れた事あるからなぁ……。あの時はアスファルトが冷たかった。

 遅れるとは言っておいたけど、心配させてしまったみたいで申し訳ない。ごめん姉さん。

 

「ご、ごめん姉さん。よっす大道寺。おはよー」

 

 体力ないくせに急いだから、呼吸の乱れ方がやばい。それでもなんとか整えて、挨拶を返す。

 そういえば、大道寺は姉さんがカードキャプターやってること知ってるんだよな。昼休みの時にでも話を聞いてみよう。

 

 

 

 

 そして昼休み。

 俺は大道寺の手を熱く握っていた。

 

 

 

 

「大道寺。いや、大道寺大先生!! あなた最高です!!」

「まあ、お褒めいただけて嬉しいですわ」

 

 優雅に笑う大道寺大先生。それとは裏腹に、姉さんは顔を真っ赤にして俯いている。そんな姉さんも可愛い。

 

 何故俺が大道寺大先生の手を握っているかというと、感動したからだ。何に感動したって、彼女が作ったコスチュームと彼女が撮影した映像にだ!!

 どうやら大道寺大先生は、姉さんがカードキャプターとして活動すると知った時に「特別な事をするときは、特別な格好をしなければ」という持論を展開させたらしい。素晴らしい。クリエイターの鑑だ。そして彼女が姉さんのために用意したコスチュームの素晴らしさといったら無い。それも手作りというんだから恐れ入る。

 

 

 昼休み、俺は姉さんと大道寺大先生を誘って人気のない所でお弁当を広げた。その時に俺も姉さんの秘密を知ったことを話し、大道寺大先生に客観的に見た姉さんの活躍を聞くことにしたんだ。すると大道寺大先生は、おもむろにひとつのビデオカメラを取り出した。そして「見た方が早いですわ」と言って、それを再生する。

 そこには赤いマントを翻し、日常ではけしてみる事が出来ないであろう大きなリボンとベレー帽のような丸い帽子が特徴的な、可愛らしい衣装をまとった姉さんが夜の学校で凛々しく戦う姿が映っていた。俺はもう釘付けである。

 どうやらこの間学校中の机と椅子を積み上げた犯人は、「(シャドウ)」というカードだったらしい。黒い影が魔法の杖で空を飛ぶ姉さんをしつこく追い回してついには杖を絡めとったが、大道寺大先生の機転で学校中の電気をともし、(シャドウ)の奴が操っていた生徒の影を消したことで(シャドウ)は弱体化。そこを姉さんが無事に捕らえた、というのが事の顛末らしい。

 

 なんてことだ。俺がキャプターサポーターとして活躍する前に、すでに大道寺大先生が見事に姉さんのサポートをしているじゃないか。

 

 そんな機転と行動力、そして衣装制作能力に撮影能力を併せ持った女の子。もう大先生と呼ぶほか無い。でも、俺も負けてはいられないな!

 魔法が使えたら確かに役立つだろう。だけど目の前に、魔法が使えなくても姉さんを助けた実績ある人がいるのだ! めそめそ落ち込んでいる場合ではない。ようし、やる気が出てきた。何をどう頑張ればいいかまだ分からないけど、めげずに頑張るぞ!

 

 

 

 けどその前にとりあえず。

 

 

 

「よければ衣装作り手伝わせてください! 家庭科は得意です!」

「! ……ちなみに梅倖くんは、こういったコスチュームに興味はおありですか?」

「場合によります!」

「さくらちゃんとお揃いなら?」

「着たいです!」

「承知いたしました、歓迎します! ではこれから二人でさくらちゃんをより輝かせる衣装づくりに励んでいきましょう! もちろん梅倖くんのコスチュームもお作りいたしますわ!」

「光栄です!」

 

 この間約一分にも満たない。そして先ほど一方的に俺が両手を握っていたのとは違い、互いに差し出した手でガシッと力強く握手をする俺と大道寺大先生。そこに同年代の男女と手を握る恥じらいは存在しない。あるのは盟友を手に入れた喜びだけである。

 ビデオを見られるのが恥ずかしかったらしい姉さんが俺たちのやり取りに気づいた時は、すでに話は終わっていた。

 

 さあ、これから忙しくなるぞ! 繕い物は得意だけど服作りなんて初めてだし、大道寺大先生には色々教わらなくては! いや、服は大先生に任せて俺は小物を担当するっていうのも有りだな! その分大先生にはメインとなる服に専念してもらうのだ。

 

 

 

 

 

 姉さんの可愛らしい姿に目が眩んだ俺が魔法を見せてもらう事を思いだしたのは、その日の夜になってからだった。

 いっけね☆

 

 

 

 

 

 

 

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