「姉さん、そっちは……?」
「に、日記と自由工作と算数ドリルと読書感想文……梅くんは?」
「(思ってたより多かった……!)か、漢字の書き取りドリルだけ……!」
「は、はうぅ~~~~! 今年こそは、今年こそはちゃんとしようと思ってたのにーー!」
「せやからワイも事あるごとに宿題大丈夫かて言うとったやないか~。これはお姉ちゃんとして失格やなぁさくら」
「はうぅぅぅぅぅぅ!」
いよいよ長かった夏休みも終わる、八月三十一日。
今年はクロウカードの事もあり、俺たちの夏休みはいっそう濃いものとなったけれど……過ぎてみれば楽しい時間はいつもあっという間だ。
俺は机の上にべしゃりとつっぷして嘆く姉さんを前に「たはは……」と苦笑するしかない。
我が家には夏終わりに風物詩というべきものがある。それがこれ、姉さんの宿題が終わらない問題だ。
俺は昔から体調のせいで家にこもりがちだったから、本を読むのも好きだし書き物を淡々と一日ごとに進めていくってのはわりと得意。今年は色々あったから漢字ドリルだけ最後まで残ってしまったが、それもあと少しで終わる。
今年は裁縫の腕もあがったから、自由工作もクロウカードのぬいぐるみ作りの傍ら早く終わった。今回作ったのはケロ吉の掛布団を作った時の経験を活かした、パッチワークキルトの手提げカバン。学校での展示が終わったら姉さんにあげようと作ったからめちゃくちゃ張り切ったぜ! 我ながら可愛い出来だ! ナイス俺!
……でも、その。
姉さんはどうにもこういったことが苦手みたいで、夏休みの最終日にため込んだ宿題を一気に片付ける。
これに関しては俺が手伝うと言っても「わたし、お姉ちゃんだもん。だから大丈夫!」と、俺の手を借りようとしない姉さん。そこはどうも姉として譲れないところらしいんだけど、兄貴や親父は頼ったりもするから毎年の俺のもやもやポイントだ。
いやでも、今年はクロウカードのこともあったし姉さんも疲れていたはず。今年くらいは俺も手伝って……!
「梅くんは自分の分を終わらせてね。わたしの方は気にしなくていいから……」
すかさず先回りされた。そりゃないよ姉さん! そんなにしょんぼりしてるのに!
「で、でも俺、算数得意だしさ! 他のは人がやったらバレるかもだけど、算数ドリルなら早く終わるし……」
筆跡も無問題だ。この俺が姉さんの字を真似られないはずがない! 数字も完璧!
が、張り切っている俺に水を差す声が。ケロ吉だ。
「でもなぁ梅。姉としての威厳を少しでも保ちたいっちゅうさくらの気持ちも、分かってやったらどうや?」
「うっ」
訳知り顔でモノを言うケロ吉に少々イラっとするが、その内容はまさに姉さんが思っている事だろうだけに言い返せない。
俺が姉さん姉さん言って甘えるから、双子だけど姉さんのお姉さん意識って結構高いからな……。俺はもっと頼ってもらって、姉さんの助けになりたいのに! ……かといって、俺がお兄さんぶってみるのはなんか違う。うぐぐ。
俺がもやもやしていると、ケロ吉がどんっとその小さな胸を小さな手で叩いた。よくドンって音出たな。見た目からすると「ぽんっ」なのに。
「……ちゅうわけで、や。ここはさくらや梅より何っ倍も長生きしとるこの物知りで賢い封印の獣、ケロべロス様に任せてみるんはどや! こないな簡単な問題、わいならちょちょいのちょいっ、やで! 半分はやったるわ!」
「その代わりに?」
「菊屋の芋羊羹が食べたいな~て……あっ」
「やっぱり……」
何か交換条件があるんだろうなとカマをかけてみれば案の定だ。ケロ吉の食い意地の張りようと甘いもの好きを考えれば、まあ想像できた内容だったけど。
「姉さん、この甘党ぬいぐるみのために姉さんの貴重なお小遣いを使う必要ないよ! やっぱりここは俺が!」
「甘党ぬいぐるみてなんや梅倖! 失礼なやっちゃな!」
「本当の事だろ!?」
「なんやて~!?」
「あー、もう! 二人とも、静かにぃ!」
額を突き合わせて俺とケロ吉がいがみ合いを始めると、姉さんのストップがかかった。
「時間無いし、うう……! ここはケロちゃん、算数のドリルお願い……!」
「ね、姉さん? だから俺がやるよ? ね?」
「梅くんは自分の分の宿題を終わらせなさい! お姉ちゃん命令です!」
「そ、そんな~!」
「…………大好きなお姉ちゃんのためとはいえ、自分のもんやない宿題できなくてここまで嘆く小学生珍しいでほんま。まっ、でもそういうこっちゃ梅! 算数ドリルはまかしときぃ。ふっふっふ~。芋羊羹、芋羊羹~」
「よーしっ。じゃあ、わたしは日記から! お天気は昔の新聞見ればいいし、まずは内容を一気に書いちゃう!」
張り切る姉さんとケロ吉を尻目に、俺は肩を落としてすごすごと自室に退散した。
……漢字ドリル、終わらせちゃうか。
そのあと無事に残っていた漢字ドリルを終わらせて、念のため宿題を一通り見直した後。部屋の扉がコンコンっとノックされる。返事をすると、どこか嬉しそうな表情の姉さんがひょっこりと顔をのぞかせた。
「梅くん、これから知世ちゃんと図書館でお勉強するんだけど一緒に行かない? 知世ちゃんはあと算数ドリルだけなんだって。わたしも算数ドリルの残りの半分、一緒にやろうと思って」
「図書館で? 自由工作の方とか、もう終わったの?」
「う、うん! それはもちろん! バッチリ!」
姉さんの目が泳いでいる。……確か今日は兄貴が家に居たし、これは当番数回分と引き換えにお願いしたかな……。
でもそれならやっぱり俺を! 俺を頼ってほしかったよ姉さん!
けどそうなれが日記は終わったっぽいし、残りの宿題はケロ吉が半分終わらせた算数ドリルと読書感想文か。なるほど、それで図書館ね。
「うん、行く行く! ちょうど読みたい本もあったんだ~」
「なら準備できたら声かけてね」
「わかった。……そういうわけだからお出かけだぞ、
俺が呼びかけた先に居たのは窓辺で日光浴をしていた、今日のお供の
「♪」
「行くところは図書館だから、静かにな」
しーっと人差し指でジェスチャーすれは、小さな手で口元を押さえてコクコク頷く
うむ、素直なのはいいことだぞ!
いつぞやの強制ダンスパーティや花吹雪を思い出すと賑やかで楽しいものが大好きな
それこそ
まあすぐに動こうとする
それにしても、今日が終われば二学期か。李みたいに突然転校生が来たりしてな~! なんて、そんなこと滅多にあるはずないか。ははっ。
「梅く~ん! 準備できたー?」
「あ、ごめーん! 今行くー!」
階下から響く姉さんの声に、俺は荷物を掴んで階段を駆け下りた。
もうすぐ、俺たちの夏休みが終わる。
ペンギン公園で大道寺と合流してから図書館に行くと、どうもみんな同じ魂胆というか、同じ穴の狢というか……いや、これ使い方あってるか? まあ何が言いたいかと言えば、俺たちと同じで夏休みの宿題を終わらせんとする学生たちで図書館はそれなりに賑わっていた、ということだ。
小学生、中学生、高校生。あと多分大学生の人。大学生にも宿題ってあるのかな? と思いつつ、成長しても夏休みの最終日に追い込みをかける人は後を絶たないんだなぁと、世の無常を見た気分だ。全員が全員そうじゃないだろうけど。
そして学生で賑わっているという事は、限られた学習スペースも早い者勝ちである。すでにほとんどの席は埋まっており、唯一空いていた場所ではなんと李に出くわした。といっても奴は「今朝の占いで、女に関わると災いが起こると出たんだ」とか言ってあっさり引き下がって、何処かへ行ってしまったが。……あいつも宿題か?
それにしても魔術師の家系だから当たり前なのかもしれないけど、なんとな~くのイメージであいつが占いとか信じるタイプなのはちょっと意外。でも李は羅針盤とかも使うし、その占いってのは本格的なものなんだろうなきっと。俺が知る占いっていうと朝のニュースの星座占いくらいだから、上手く想像できないが。
まあ、席を譲ってくれたのはラッキーだ! あとは姉さんの読む課題図書を借りてくれば、そう時間はかからず宿題は終わるだろう。そしたら姉さんも寝不足にならずにすむぞ! 毎年新学期、寝不足の姉さんを見るのはつらいのだ。
……と思っていたら、ケロ吉め……。
本を探す前に算数ドリルの残りを片付けることになったんだけど、ケロ吉が任せろと胸を張って図々しくも芋羊羹と引き換えに要求し請け負った分が、全部間違ってるときた!
お前なー!? 千円払ってお釣り貰えばいいって……そういう問題じゃねーから!
「ケロちゃん……芋羊羹、無し!」
「なんでや~!?」
「当たり前だろ! ああもう、姉さんの貴重な時間を……!」
当然間違っていた分を直す羽目になり、当初予定していた時間を大幅に過ぎてから、姉さんはやっと読書感想文にとりかかることになった。
「あ、それ俺も同じの読んだ!」
「まあ、奇遇ですわね」
本を探す途中で姉さんが大道寺に課題図書の何を読んだのか聞けば、なんと大道寺が指さした本は俺が読書感想文用に選んだものと一緒。そして「面白いなら、わたしもそれにしようかな」とのほほんと言っていた姉さんは、件の本を見て口の端を引きつらせていた。
「ほ、ほえ~……。梅くんもこの厚いやつ、読んだの……?」
「うん! すっごく面白かった! ネズミとカワウソが頑張るお話なんだけどさ……それが結構過酷で……」
「手に汗握りましたわ……!」
「だよな!」
「き、気になるけどわたしはやっぱり仔豚さんにしよう……かな。あはは」
う~ん、まあ今日で読み切るのはちょっと量あるしな。課題図書の中で一番薄い"仔豚物語"が、今の姉さん向きだろう。でも面白いから今度是非読んでもらいたい! ネズミ側が主役の同シリーズもあるんだ!
ともあれそうなれば、次に探すのは仔豚物語。
……しかし残念ながら、五冊もあったにかかわらず四冊が貸し出し中。残り一冊は館内で誰か読んでいるかもしれないというのが、本棚になかった仔豚物語を求めて司書のお姉さんに尋ねた結果だった。
「はうぅ~。まさか読書感想文を書くための本が見つからないなんて……」
「だ、大丈夫だよ姉さん! 館内で読んでる誰かを探して、次に貸してもらえばいいんだから!」
「そうですわよ、さくらちゃん。一緒に探しましょう」
「二人とも、ありがとう……!」
がくっと項垂れる姉さんを励まして、俺たちは今度は館内の何処にあるとも知れない仔豚物語を探し始めた。司書のお姉さんが言うには、誰かが間違った場所に返した可能性もあるらしいから本棚を含めての探索だ。
姉さんが本を読んで感想を書く時間を考えると、早めに見つけないといけないな。読んでるかもしれない誰かが、ちょうど読み終わっていたらいいんだけど。
そう思って気合を入れていると、ふいにくいっと服を引っ張られた。ぎょっとして下を見れば、俺の図書館袋から顔をのぞかせている
「ふ、
……いやでも、何か伝えたいことでもあるのかな? わざわざ俺の服を引っ張ったんだし。
その可能性に気付くと、少し怒ったような言い方になってしまった事を謝ってから改めて「どうした?」と聞く。すると
視線をあげて見てみれば、そこには薄い厚さの赤い本。背表紙のタイトルは……。
「仔豚物語だ! サンキュー
仔豚物語が収まっている本棚の他の本は、図鑑や辞書などの分厚い本。……要するに滅多に誰も読まなくて、高い場所までいっぱいに詰め込まれていても問題なさそうな本の棚だ。
見上げた本棚の背は高く、それの一番上となると脚立か何か使わないとダメっぽい。こりゃ大人の人にとってもらった方がよさそうだなー。司書のお姉さんに頼んでみるか。
……そう思って踵を返そうとした時だ。
「今度はなんだ?」
早く姉さんに本を届けてあげたいんだけど……。
しかし
「な、無い!? え、なんで!?」
少々声が大きくなってしまい大学生っぽいお兄さんに煩そうに見られてしまったが、俺の戸惑いは大きい。周りがお堅そうな本ばかりだったから余計目立っていた、あの赤い本がない。さっきまであったのに!
その後手分けして本を探していた姉さん達と合流すれば、なんと姉さん達も仔豚物語を見つけては見失ってを繰り返しているそうで。
この不思議現象は、毎度おなじみ……?
「クロウカード……なのかな? もしかしてそれで
「
「うん、俺に最初に本の場所の教えてくれたのが
「梅の言う通り、こりゃクロウカードやな。おそらく
ケロ吉の言葉に「そうなの?」と問えば、何やら今にも花びらをまき散らしそうな雰囲気の
何しろそのクロウカード、俺たちに加えてケロ吉いわく最初に仔豚物語を読んでいたらしい李まで振り回している様子。ケロ吉はそのカードを重いものは運べないし、移動距離もそこそこ……物を動かすためのカードらしいが、あまり大したこと出来ないみたいな評価をしていた。けど李の身体能力から逃げられるって、捕まえるの結構たいへんなんじゃないか? と、俺は思うわけで。
人が多いから姉さんも大っぴらにクロウカードを使うわけにいかないし。……てこずりそう。
だけど俺たちは、あまり時間をかけていられないのである。姉さんのためにも早く捕まえなければ。
(でも、そうとくれば……!)
…………ふっふっふっふっふ! まさに、まさに今こそキャプターサポーターの出番!! 宿題が手伝えなかった分、今俺が頑張らないでどうする!
「力を貸してくれ、
「? ♪♬」
ぐっと拳を握ってお願いすれば、一瞬きょとんっとしたものの
「梅くん、どうするの?」
「ええとね、上手くいくか分からないけど……早くて捕まえられないなら、目印をつければいいと思ってさ」
そう言って俺は、
でもそうなるとまず
「姉さん、俺たちも追おう!」
「うん!」
すぐさま俺たちも図書館を出て仔豚物語もとい
その俺たちの目の前で李がもう少しで本を掴みそうだったが……
「
集中するためのなんちゃって呪文詠唱は今日は無し! 要は、あれだ。雰囲気出して集中力あげるためにやってるが、俺とクロウカードの意志が一致すればなんちゃって詠唱とかなくてもクロウカードは力を貸してくれるのだ。
そしてわりと仲良くなれた
そこから現れた一輪の薔薇が……
「よし!」
「梅くん、あれは……?」
「香りの道しるべさ」
相手がすぐ何処かに行ってしまうといっても、物を動かすカードという事はワープとかじゃないんだと思う。た、多分。
きっと、すっごく早く動いてるんだ。ならそれに目印がつけば……?
「いやお前……。そんな微かな香り、追えるのか」
「………………」
李の言葉に膝をついた。ああああああああ! いい案だと思ったのになぁぁぁぁぁぁぁ!?
「だ、大丈夫だよ梅くん! 梅くんと
「弟を甘やかしすぎなんじゃないか?」
「そ、そんなことないもん!」
「小僧、黙ってみときや! さくら、クロウカードの気配分かるようになったやろ? 今梅が
「うん!」
落ち込む俺を見て姉さんが奮起してくれたのが、嬉しいんだけど少し恥ずかしい。ケロ吉のアドバイスもあり、姉さんが目を閉じて集中し始める。
そして。
集中していた姉さんがぱっと目を見開くと、ある方向に一直線に駆けていく。駆けて……ちょ、姉さん!?
「姉さん、そっちは!」
手を伸ばして動こうとした俺だったが、それより速く俺の横をすり抜けて走っていく影が一つ。思わずそれを見送ってしまった俺は、つんのめってたたらを踏んだ。
「見つけた! 汝のあるべき姿に戻れ、クロウカーーーード!」
瞬く間に鍵を杖に変え鋭い風切り音と共に、姉さんの杖が仔豚物語を……
そこまでは良かった。良くなかったのは、カードを封印したその場所で……。
「ほえ?」
本とカードをキャッチしてカードキャプターの鋭く凛々しい表情から、ほっとしたように顔を緩めた姉さん……の前には、公園の池。姉さんの体勢は斜め。
その後どうなるかなんて、分かり切っていた。
「姉さぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?」
「ほええええ~~~~~~!?!?」
「!」
叫ぶだけしかできない俺と違い、さっき俺の横を通り過ぎて行った李が姉さんの手を掴む。が、すでに傾き始めていた姉さんを支え切ることは出来なかったのか、あえなく二人で大きな水しぶきをあげた。……落ちる直前、大道寺に本を投げた姉さんの瞬発力はさすがだけど、姉さん場所はもうちょっと確認しよう!? 何もできなかった俺が言えたことじゃないけど!
李の「災いは、このことだったのか……」という声が妙に印象深かった。
夏とはいえ水にぬれた服では冷えるし、これから夕方だ。秋に近い今、夜が迫ってくる時間の風はつめたい。このままでは姉さんが風邪をひいてしまう。明日から新学期だってのに、そんなことになったら姉さんがかわいそうだ! ここは読書感想文のことは後にして、まず家に帰ってすぐに着替えを……!
しかし俺の焦りは、李の意外な提案で消えることとなった。
「うちに来るか? 着替えくらいなら、貸すが。それにお前もこの本が必要なんだろう。俺はあと少しで読み終わるから、……」
「え?」
「ほえ?」
「まあ」
俺、姉さん、大道寺の意外そうな顔に見つめられて居心地が悪くなったのか、李がそっぽを向いた。
「……別に、無理に来なくていい」
「いや、行く! というか、たのむ! 姉さんこのままじゃ風邪ひいちゃう! いやそれはお前もか!」
意外過ぎて呆けてしまったが、その申し出はありがたい。
ここ最近思うけど……。変わったのもあるだろう。でも李の本質って、こっちの方なのかな? 最初のころのツンツン具合はクロウカードを集めなきゃいけない使命感とか、別の国に来た緊張とかいろいろあったのかもしれない。
家族と離れてお付きの人と二人きりで、異国の地。背負った使命。
…………最初に姉さんにしたことはやっぱり許せないし、今だってむかつくことがいっぱいだ。でもこうして助けてくれることもあって、渋々とはいえ俺に魔術の事を教えてくれた。
俺もこいつに何かしてやれることはあるだろうかと、そんな事をふと思った。
が、そんな殊勝な気持ちが吹っ飛ぶようなインパクトがこの後やってくるわけで。
「你好、小狼!会いたかったわー! ……あら、お客様?」
お団子から垂れ下がるツインテールを翻して、李の家に飛び込んできた女の子。その視線が俺たち(正確には李に服を貸してもらった姉さん)を捉えた時、ぎゅっと眉間に皺が寄る。そして放たれた言葉に俺の眉間にも皺が寄った。
「なんで女の子が三人もいるの!? それにその子が来てる服、わたしが小狼にプレゼントしたやつじゃない!」
「俺は女の子じゃねえ!!」
夏休みの終わり。
俺は香港からまた、新しい台風が上陸したことを察するのであった。