「♪」
よく晴れた空の下、風を切りながら鼻歌交じりでキックボードを蹴る。手提げ袋に入ったあるもののおかげで、俺は今とっても気分がよいのだ!
先日の
悩んだ結果、普段着にも合わせて使えるうさ耳を開発することにしたのだ! ふふん、俺天才!
作るにあたって助けを求めたのはもちろん大道寺大先生! 俺がその話を持ち込むと「素晴らしいですわ!」と大道寺は快く指導を引き受けてくれた。さすがは俺の師匠にして姉さん好きの同志……! 頼りになる。
そういうわけで大道寺に助けてもらいつつ、初めて帽子を作ったんだけど……。落ち着いた赤色でカジュアルな服装にぴったりの耳付き帽子は、我ながら会心の出来。かわいい! これなら姉さんの普段着に合わせやすいぞ!
(姉さん、喜んでくれるかな~)
もちろん喜んではくれると思う。ただここで気を遣わせず、スマートに渡すのが俺の手腕ってもんなんだよな! さてさて、どう言って渡したものか。
そんなことをつらつら考えつつの、大道寺の家からのうきうき気分な帰り道。そんな俺の進行方向に……ふと、人影が横切った。
遠目でその姿を視界にとらえた俺は、キックボードをとめて首を傾げた。
「姉さん……?」
よく似たシルエット。けど今日姉さんはチア部の活動で遅くなると言っていたし、学校から家までの帰り道はこことは逆。人影はすぐに走り去って見えなくなってしまったので、結局見間違いで片付けたのだけど……。
後日、俺以外の目撃者の話を聞くことになる。それも妙な誤解と一緒に。
「姉さんがいたずらぁ!?」
休みが明けた月曜日。
学校に行くといつも姉さんと仲の良い三原千春、柳沢奈緒子、佐々木利佳ら友達三人や、李苺鈴から姉さんが悪戯する姿を見た……なんて話を聞いたもんだから驚いた。
もちろん姉さんがそんなことをするはずが無いし、何より昨日は姉さん、ほとんど家にいた。休みだったしな。
昼食用のパスタを買いに出かけたけど、それには俺もついていってる。しかもその後は月城さんに髪を切ってもらうという、姉さんにとって最高に嬉しいイベントもあったわけで……。
つまり証人複数、アリバイ完璧! な姉さんなのだ。寝耳に水にもほどがある。
いや、でも……。姉さんのそっくりさんって。
「……あ!」
「梅くん、どうしたの?」
「もしかしたら俺も見たかも……! 姉さんにそっくりな女の子!」
「ほえ!?」
俺は大道寺の家からの帰り道で見たそっくりさんの事を話す。すると姉さんと同じチアリーディング部の三原と柳沢が、「その日はさくらちゃん、クラブの練習で残ってたもんね」と証言してくれた。
「そっか〜。やっぱり、さくらちゃんじゃなかったんだね」
「でもすっごく似てるから、びっくりしちゃった」
「そんなに似てらしたのですか?」
「うん。明るいところで、結構近くで見たんだけど……。それこそ双子の梅幸くん並にそっくり」
「まあ」
大道寺が口元に手を当てて驚く。
……そういえばさっき、姉さんが髪を切った事にもすぐに気が付いて「爪を切っただけでもわかりますわ」とさらっと言ってのけた大道寺なら、どんなにそっくりさんでも姉さんじゃないって一目で見抜けそうだな。
ま、まあ俺だってすぐ姉さんじゃないってわかったけど!? ……でもさすがの観察眼の大道寺に、姉さん好きの同志とはいえ侮れない物を感じて唾を飲み込んだ。さ、さすがだぜ大先生……!
そういえば件の子が俺かどうか聞かれなかったのは、髪の色が違ったのに加えて女の子の服装をしていたから……らしい。で、……服装で特徴的だったのは"うさ耳"つきの帽子。昨日の姉さん、俺がプレゼントした帽子をさっそく身に着けてくれていたんだよな。
(俺が作ったものと、似た帽子を被ってる……?)
服装がそこまで似ているとなると、単なるそっくりさんで済ませるにはちょっとおかしい。さっきすれ違いざまに李が姉さんに「気をつけろよ」と言っていたのも気にかかる。
これって、もしかして……。
「ドッペルゲンガーかもしれないって、もう一人の自分で、見たら死んじゃうって……!」
(柳沢ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)
チア部の練習を終えた姉さんが青い顔で柳沢から聞いた話を口にするので、俺は内心頭を抱えた。柳沢に悪気が無いのはわかってる! わかってるけど、姉さん怖がりだからそういう話はやめてくれー!
「だ、大丈夫だよ姉さん! そんなの迷信だって。それに、これってもしかして……」
言いかけた時、学校の時計が目に入り慌てる。習い事の時間が迫っているのだ。
「姉さん、帰ったらケロ吉入れてもっかい話そう! ごめん、俺ちょっと急ぐ」
「あ、今日はスイミングスクールだもんね。気を付けていくんだよ?」
「はーい!」
「頑張ってくださいね、梅倖くん」
「おう! サンキュー!」
慌ただしく手を振りながら、俺は姉さん達とそこで別れた。姉さんと大道寺はこれからアイスを食べに行くという。甘いもの食べて、ちょっとでも姉さんが元気になるといいんだけど。
「ドッペルゲンガー……かぁ」
見たら死ぬもう一人の自分。その言葉に思わずぶるりとすくみ上がるが、振り払うように早足で歩を進めた。
普通に考えれば、最近の普通じゃない出来事はみ~んなクロウカードが原因なんだよな。うん。だから多分今回もそれなんじゃないかと、俺は睨んでいる。ケロ吉にクロウカードであることを前提に尋ねればなにかしらわかるだろう。
となると、姿を真似るカード……?
あれは俺たちの考えを読み取ったからだけど、母さんの姿で現れたりしたから。
(けど今回の場合。目撃者は共通して姉さんの姿で見ている)
探偵になった気分で頭を悩ませる。クロウカードだとするなら、いったいなんのカードだ?
「変身のカード、とか? うーん……でもそれだと漢字二文字だよな。変、だけだと幅が広すぎてなんか違うし……ううん……」
クロウカードに使われている漢字は全部一文字だ。変身の能力を持つとしても、いまいちしっくりくる文字が思い浮かばない。
そんな風にぶつぶつ推理を口にして、首をひねりながら歩いていると……ふと道横の林が目に入る。草木が深く生い茂っていて、昼間なのに薄暗い。林というよりは森に近いかもしれないな。
中には崖もあるからと、危険区域として学校で配られたプリントに乗っていた場所だ。いつもはすぐに通り過ぎるんだけど……何故か今日は妙に気になる。
まるで林が「おいで」と言っているような……。
「…………」
意識がぼんやり、薄れる。
「待って」
「!?」
聞きなれた声に、手首を掴まれる感覚。それのおかげで、いつの間にかぼやけていた意識がはっきりした。そこでようやく何故か林へ足を踏み入れようとしていたことに気が付く。
(なん……え? いつの間に……俺……)
困惑しながら俺を踏みとどまらせていた相手を振り返る。止められなければ、俺はきっと自分でも訳が分からないまま林に入っていた。
けど俺を止めてくれた相手の姿に、俺は二度困惑する。
「ね、姉さん? ……いや」
姉さんと同じ姿、同じ声。けど直感的にわかる。……いくらそっくりでも、姉さんじゃない。
となれば、どう考えてもイタズラしていた偽物である。
でも俺は自分が無意識に林に入ろうとしていた事。それは多分良くない"なにか"だった事。それを止めてもらった事。相手が偽物とはいえ、姉さんに本当にそっくりな姿をしている事。……それら全部が頭の中でまぜこぜになって、思わず体が固まった。
すると偽物はそのまま俺の手を引いて林の外へ出る。…………その当の本人もまた、困惑しているような表情だった。
「……同じなのね、あなた。それに、招かれやすくなってる」
「え? ちょ、それってどういう……」
「…………今回、だけ」
林を出るなり金縛りが解けたように動けるようになった体。引かれる手を今度は俺からも掴もうとしたら、するりと逃げられた。そして意味深な一言を残したまま、止めるまもなく偽物は走り去る。
は、早い! 走る速さも姉さん並み……!
「ああ、もう! なんだったんだ!?」
一人残された俺はスッキリしなくて頭を掻きむしるが、背筋がゾクッと冷えて背後の林を振り返った。
昼間の林だと言うのに木々が生い茂るその場所は暗く、冷たそうで……そして何かが手招きしているかのよう。そういえばさっき、偽物が「招かれやすくなってるって……」
「……!」
気味が悪くなって、俺は林の前から逃げるように走り去った。
林が見えなくなる場所につくまで、なにかの視線が俺の背中に張り付いていた。……きっと、気のせいだろう。うん、そう、絶対にそう。絶対!!
その後しばらく、体の震えは止まらなかった。
変な体験をしたからか体調がすぐれなくて、これは今日体力使わない方がいいなと判断した俺は、スイミングスクールを休むことにした。けど家に帰ったら帰ったで……玄関からすごい勢いで駆け出てきた姉さんに出くわした。何事だ!?
「ね、姉さん!?」
「! 梅くん! お兄ちゃんが……お兄ちゃんが、もしかしたらカードに狙われてるかも!」
「!?」
姉さんの言葉に俺は自分の体調なんて知るか! と意識を切り替えると、姉さんに並んで走り出す。家族が狙われてるなんて聞いちゃあ、へばってなんかいられるか!
……とはいえ体力を顧みるにすぐバテそうだったから、カバンからぬいぐるみ……今日のお供にしていた
(こ、こいつ……! 寝てやがる!)
依り代はカードと繋がってるけど、実際にカードの意識が全部入ってるわけじゃない。だってのにぬいぐるみの体で器用に寝てやがるこいつなんなの!? 今日は大人しいなって思ってたらこれだよ!
俺は
「そ、それで。兄貴が狙われてるって、どういう」
さっそく息切れしそうになりつつ問えば、ぴゅっと飛び出てきたケロ吉が答える。
「クロウカードを使ぉた占いで出たんや! さくらの偽物はおそらくクロウカード。そしてそいつには、さくらがカード集めとることが伝わっとる! んでもって、そいつがいまねろうとるもん。それが……」
「……! 姉さん、こっちの道のが、近い! 多分姉さん、が、向かってる先……俺分かる!」
「え!?」
「さっき、俺、そいつに、会った、から」
息切れしながらも、さっきの林近くの道へ出るショートカットコースに姉さんを導く。スイミングスクールからの帰りによく使う道だ。……そしてこの道は。バイト先の一つから帰る時に使うと兄貴に教えてもらった道でもある。
確か朝、兄貴は忘れ物をしたからそのバイト先によってから帰ると言ってた。だからこの時間、あの林近くの道を通っている可能性は十分。そして偽物についさっき会ったのも、あの林近く!
多分姉さんはカードの気配を追って一直線に向かってるのだろうけど、最終的な到着地点があの林だとしたら、まっすぐに向かうと住宅地の関係で遠回りなんだ。昼間だから軽率に
さっき俺を何かから助けてくれたっぽい姉さんの偽物。
悪戯を繰り替えず行動から考えるとちぐはぐな気がして妙なんだけど、これまでの行動の側から考えたら悪戯の延長で兄貴に手を出すことは考えられる。……と思う。
そして今まで無差別に繰り返された悪戯が、ピンポイントで兄貴一人に向かうとなると……。
「急ごう、姉さん」
「……うん!」
嫌な予感がした。多分姉さんも同じように感じてる。
俺たちは頷きあうと、林へと向かった。
「……だめ! カードの気配が、わからなくなっちゃったの!」
「なんやて!? さっきまで分かってたやないか!」
林に入ってから途中までは姉さんの導きで迷いなく進んでいた。が。途中まで来ると、それが不可能になる。
「うん。でも、なんかここ……いっぱい人の気配がして……! でも誰も居ないし。あと、よくないものもいる感じなの」
「よくないもの? ……ああ! そりゃゆうれ……ごほんっ! え、ええとやな! そのよくないもんのせいで、カードの気配が消されてしもうとるんや!」
「梅くんは?」
「俺も、感じる。今は近寄ってこないけど……」
「近寄ってこない?」
「! い、いや! なんでもないよ姉さん! ともかく気配が分からないんなら足で探すしかない!」
「そうだね……! はやく、お兄ちゃんを見つけなきゃ!」
せっかくケロ吉がごまかしたのに俺が言ってどうするよ! と、慌てて取り繕った。
……うん。わかりたくないけど、ケロ吉が言わんとしていることは分かった。そして俺がさっき、どういった危ない状況にあったのかも。
(ううう。招かれるって、招かれるってそういうことか!? うぎゃー!)
……この林、はっきり考えたくないけど"嫌なモノ"のたまり場になっているんだ。そして何故かさっき俺はそれらに引き込まれかけた。今は取り囲んでこそいるけど、近寄ってこない感じ。
(姉さんの……おかげかな)
なんとなくそう思う。もし悪いものを冷えた空気に例えるならば、姉さんの周りは温かい。それが悪いものを遠ざけている感じだ。カードの気配を探れないのは不便だけど、姉さんが居る限り悪いモノは手を出してこないだろう……という、確信がある。
なら、あれらを気にすることなく兄貴を探すことに専念できる!
何故だか俺を助けてくれたらしい、あのカードを疑いたくはないけど……。俺をわざわざ引き留めたのに、危険と分かっているこの場所に兄貴を逆に引き入れた。いい予感はしない。
姉さんと頷きあって林の中を駆けだす。
一人じゃ俺も姉さんも怖かったかもしれない。でも、俺たちは二人だ。ケロ吉も入れたら三人! 林は俺たちの歩幅にとって広いけど、絶対に兄貴を見つけ出すぞ!
そう意気込んだ時だ。
茂みからがさっと葉のこすれる音がして、同時に足を止めてばっと振り返った俺と姉さん。……その視線の先に居たのは、俺たちの勢いに少々驚いた様子の李小狼だった。
「李くん!?」
「李!?」
「小僧!? 何しにきたんや」
「クロウカードの気配がしたから追ってきたんだ」
当然と言えば同然の答えだったが……李が持つもの。羅針盤に、俺と姉さんの目が釘付けになる。
「り、李くん。それ、クロウカードを探すためのものなんだよね!?」
「あ、ああ」
「ナイス! よく来てくれた!」
「はあ?」
ぐいっと距離をつめた姉さんと俺に李が困惑するが、俺たちにとって今この場でこいつはまさに救世主といってもいい。勢いも良くなるってもんだ。
「李くん、お願い! それでお兄ちゃんを探して!」
「はっ……はっ……!」
「おい、大丈夫か?」
「梅くん、無理しないで」
「だい……じょうぶ! 俺の事はいいから、先にいって。早く兄貴を!」
「! わかった。ケロちゃん、梅くんをお願い」
「まかしとき!」
林まですでに全力疾走していたから、俺の体力は限界だった。けど今は闇雲に探さずとも李の羅針盤による道しるべがある。ここは先に行ってもらった方がいいなと促すと、姉さんは頷いてさらに足を速めた。
「李! 姉さんと兄貴を、頼む!」
「……! ああ」
膝で息をしながら李に頭を下げると、頷いてくれた事に安堵する。そのまま林の奥に消えていく二人を、速度を緩めながらも追った。方向さえ分かっていれば、いずれ追いつく。
「梅、大丈夫か?」
「あんま、だいじょぶじゃ、ないけど、へいき。ぜんぜん、おっけー! はあ、はあ」
「無理せんときや。兄ちゃんやったら大丈夫や。さくらが行ったし、癪やけど小僧も実力のあるやっちゃ」
俺を安心させるようなケロ吉に、わずかに笑顔が浮かぶ。……姉さんが離れたことで急に例の気配が距離を狭めてきたけど、一人じゃなければ怖くはない。
だから俺は気合を込めて叫んだ。
「来るな!! 俺はお前たちと行けない! 行かない!」
「!?」
急な大声にケロ吉が驚いた様子だが……腹の底から叫んだ途端、近づいてきていた気配が遠ざかったことに息をつく。……多分これでもう、大丈夫だ。
「ど、どないしたんや梅……」
「いきなりごめん。ちょっと……な。ケロ吉」
「なんや?」
「あとで、ちょっと聞きたいことがあるんだ。今回のカードのことで」
それだけ言うと、ケロ吉の答えを聞かずに再度走り出す。
駆ける脚は、少し軽くなっていた。
「お兄ちゃんに怪我をさせたな!」
ようやく姉さん達に追いついたけど、どうやらその場所は崖の下のようですぐに降りられない。気を付けながら崖の淵から下を覗くと、ひやっと体の芯が冷えた。
林の気配に怯えたわけでも、思ったより高低差のある崖が怖くなったのでもない。……下に倒れて崖に背を預けている、兄貴の姿が見えたからだ。
(まさかこの高さから落ちたのか!?)
驚く俺の眼下で、姉さんが
しかしいつもならば何かを捕まえることに効果を発する
「な!? さっきは触れて……」
「! もしかしてあのカード……! 悪い梅、ここで待っとき!」
「あ、おいケロ吉!?」
その様子を見たケロ吉が小さい羽を動かして素早く崖下へ向かった。俺はそれを真似できるはずもなく、仕方がなく再び崖下を覗く。
拘束できないカードに対し、姉さんはそばに来たケロ吉の指示で次に攻撃カードである
「呪縛のカードも攻撃のカードもきかん……! やっぱりこいつ、特殊カードや!」
「特殊カード!?」
「普通の方法じゃ元に戻せないカードだ」
そんな会話をかろうじてききとるが、どうにもこうにもここからじゃ遠すぎる! どうにかして俺も下に……。
「おい
俺は先ほど諦めた
……そんな場合じゃないけど、こいつ仕草がおっさんっぽくないか?
「ありがとう!」
ともかく協力してくれるなら気まぐれでもなんでもいいや!
俺が後ろから
「はわあああああああああああああああ!?」
お願いしたはいいけど、悲鳴を上げないのは無理! せ、世界が回るーーーー!
「ふぎゅ」
「お、おい」
どうやら衝撃を殺すために
どうやら俺が来なくても、姉さんはカードの正体をすでに見破ったらしい。
「あなたは
カードに集中していたからか、けっこう派手に降りてきた俺に気付かなかった様子の姉さんの凛々しい声が響く。すると今まで姉さんの姿をしていたカード……
胸元に鏡を抱えた、どこか巫女さんを思わせる服装でで長い髪をゆらめかせる女の子。……あれが
彼女は傷ついた兄貴に「ごめんなさい」と言葉を届けると、その後は特に抵抗することもなく姉さんに封印された。
「……あの子。いや、今は兄貴だ。兄貴!」
「お兄ちゃん! ……って、梅くんいつの間に!? あとその傷は!?」
「俺は大丈夫! 今は兄貴だよ!」
茂みにつっこんだから細かい擦り傷が出来てしまったけど、今はそんなのどうだっていい。兄貴の方が重傷だ。
そのあと俺たちは李にも手伝ってもらって、気絶した兄貴を連れて林から出た。案の定兄貴は結構な怪我をしていた様子で、骨は折れてこそないもののしばらくは安静に……という診断結果。
倒れてる兄貴を見たときはひやっとしたけど、よかった……!
落ち着いてから姉さんに
「封印される前、なんや反省してたみたいやしなぁ……。そういえば梅、わいに
「え、そうなの?」
「あー……うん」
部屋で安静にしている兄貴のためにホットケーキを焼く姉さんから
内容が内容だけに姉さんにあまり詳しく聞かせたくないな……。ちょっとだけ、ぼやかすか。
「林に行く前、俺も
「助け……? 梅くん、なにか危険な目にあってたの!?」
「い、いや! 危険なことになりそうなのを止めてもらったというか! とにかく大丈夫だったんだけど!」
林の幽霊に呼ばれました、なんてとてもじゃないが姉さんに言えない。俺もはっきりそう認識したくないし。今ちょっと考えちゃったけど!!
「……でも、そっか。梅くんを助けてもくれたなら、悪いカードさんではないんだね」
「悪戯の内容がやりすぎだけどな」
「うん、それは本当にそう!」
ぷんぷんと頬を膨らませる姉さんだけど、兄貴も無事だったしカード自身に対してはもう怒ってないんだろう。ちゃんと兄貴にあやまってたしな、
「えーとさ。それで、その時
「妙なこと?」
「あなたも同じなのね、って。どういう意味だと思う?」
招かれやすくなってる、という方は意味が分かりすぎてしまったのであえて言わない。幽霊関係は姉さんにあまり聞かせたくないんだよ……!
でも最初に言われたことについては、何のことやらさっぱりだ。何が同じなんだろう?
姉さんもケロ吉も首を傾げる。
「いっそ
「あ、それもそうか。ならせっかくだし、依り代作ってから聞いてみようかな」
あっさりそう言われてしまい納得。そりゃそうだ。そうも
そのあと兄貴のお見舞いに来てくれた月城さんと大道寺を迎えるなどして、
俺に、ほんの少しの謎を残したまま。