キャプターサポーターうめゆき   作:丸焼きどらごん

30 / 32
三十話 うめゆき、不思議な先生に出会うの巻

 姉さん偽物事件のあと、俺は早速(ミラー)の依り代を作り始めた。

 今までなんとなく雰囲気でクロウカードの気持ちを感じとっていたけど、(ミラー)のカードは姉さんの姿を借りてる時も、そうでない時も言葉を発していた。つまり言葉で会話が出来る貴重なカードなのだ。

 この間言われた意味深な言葉が気になって、俺は優先してこのカードの依り代を作ることにしたのである。 

 

「うん、いい感じ」

 

 (ミラー)が持っている鏡の部分は、姉さんが昔おままごとに使っていた人形遊びのもの。姉さんがわざわざ物入れから引っ張り出してくれたから、それを使っている。材料足りないなって頭を悩ませていたからとても助かった。

 巫女さんっぽい服には苦戦するかと思ったけど、意外となんとかなった。ここにきて大道寺の元で鍛えた成果が出たのか、前に比べて多少複雑な服でも作れるようになっていたのである。大道寺さまさまだな。

 といっても、さすがにその大道寺大先生みたいに姉さん等身大の服を作るのはまだ無理なんだけどな。……というか俺のお小遣いが依り代ぬいぐるみ作りの方でぎりぎり……というのもある。うん。

 大道寺がたまに材料分けてくれるんだけど、さすがに甘えっぱなしになるわけにもいかないよなぁ。今度なにかお礼しないと。

 

 

 っと、今は金欠に頭悩ませてないで(ミラー)(ミラー)

 

 

「契約者の弟、梅幸が願い奉る。汝、我が依代に宿りて力を貸したまえ」

 

 少し緊張しながら、言葉を紡いでぬいぐるみに魔力を注ぐ。するとさほど抵抗もなく、クロウカードから依代へ意思が繋がったのを感じとった。どうやら成功のようだ。

 

『…………』

「ええと、久しぶり? でいいのかな。本体のクロウカードは姉さんが持っているから、言い方これでいいのかわからないんだけどさ」

 

 ゆっくり持ち上がるぬいぐるみの頭。我ながらもとの雰囲気に近く作ることが出来た、神秘的な目の部分が俺を見つめる。透き通った薄緑色のビーズからは、確かな意思を感じ取れた。

 

『ええ、大丈夫ですよ。こうして言葉を交わすのは、実際久しぶりなのですから』

 

 柔らかい声色。これだけ聞くと、とても姉さんの姿でイタズラを繰り返していたカードとは思えない。とってもおしとやかな雰囲気だ。

 俺の気持ちが伝わったのか、(ミラー)は焦ったような照れたような、いたたまれないような……そんな仕草でビーズの粒で作られた瞳をさまよわせる。

 

『そ、その! 先日は、色々と失礼をしました! ごめんなさい!』

「……まあ、それについては姉さんも兄貴も許してるみたいだから、俺は何も言わないよ。むしろ俺に限れば助けてもらった? 立場だし」

『お兄さん……も?』

「うん、あのあと……ちょっと話聞いたんだ。どうも兄貴は昔からそういうもの見えるからか、君のこと幽霊だと思ってたっぽいけど」

『そう、ですか……』

 

 (ミラー)は再び複雑そうな雰囲気だ。今度は申し訳ないような……でもちょっぴり嬉しいような。そんな気配。

 封印される前にずいぶん反省していたようだから、兄貴が許してくれたと知って安心したのかな?

 

「改めて名乗らせてもらうな。俺は木之本梅倖。君たちの主であるさくら姉さんの弟だよ。……ところで、聞きたいことがあるんだ」

 

 あいさつをすませると、俺は本題に入る。これを直接聞くためにこうして依代を優先して作ったのだから。

 姉さんに直接(ミラー)を使ってもらってもよかったんだけど……。場合によっては幽霊うんぬんの内容も出るかと思って、こうして自分の部屋で(ミラー)を呼び出した。

 俺も出来ればその事についてはあまり触れたくないけどな。でもこの間はちょっと危なかったようだから……今後見ないふりは、しないほうがいいと思った。

 今まで妙な気配を感じることはあっても、はっきりと"いる"って感じたことはなかったんだけどな。もしかして魔力を使えるようになったから、とか?

 

 

 (ミラー)は俺が問いかけると、顔を左右に動かしたり髪の毛部分や鏡をいじくったり、目に見えてそわそわしはじめた。

 

『ええと……! ええと、ですね! あれは……!』

 

 それだけ言うと、あとは数分もごもごしていて……だんだん可哀想になってきた。こんな様子の相手に無理に話させるのはちょっと……。

 

「えっと。言いたくないなら、無理に言わなくてもいいよ。そりゃ教えてくれたら嬉しいけど、困らせたいわけじゃないから」

 

 そもそもこうして話してくれてるとはいえ、まだ出会ったばかり。他のカードたち同様、これから仲良くなっていけばいいのだ。そしたらいつか教えてくれるかもしれない。

 (ミラー)はそれを聞くとほっとしたように肩を下げると、ぺこりとお辞儀した。

 

『ごめんなさい。あの、今はまだ、私の口からは……』

「だから、いいって。……あ! そしたら今日この後なんだけどさ、このまま俺と一緒に来てくれないか?」

『いっしょに?』

「うん! 出かけよう! へへっ、君ともっと仲良くなりたいからさ」

 

 せっかく依代に入ってもらったのだし、このままお散歩でもどうかなと誘う。すると(ミラー)はちょっと驚いた様子を見せながらも、ぬいぐるみの顔をにこやかにして頷いてくれた。

 

 ……うん! 焦らず、一歩一歩。友達みたいに、仲良くなっていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 こうして普通じゃないことを体験しながらも、それを含めた俺たちの日常は進んでいく。

 その中には新しい出会いもあるわけで。

 

 

「観月先生、綺麗な人だったね〜! はにゃーんてなっちゃうよ」

 

 姉さんほにゃほにゃだなぁ。ああ、そんな姉さんが可愛い……!

 

 今日から長期休みに入る前任の先生に変わり、算数を教えてくれることになった観月歌帆先生。

 姉さんは学校へ行く前もたまたま会っていたらしいけど、俺は日直で先に学校へ行っていたので教室で紹介された時が初対面。確かに綺麗で優しそうな先生だったけど……。

 

「でも、なんで李は気をつけろなんて言ったんだろう? かなりの力の持ち主だからってことらしいけど……」

 

 先生の紹介が終わったあとの休憩時間。俺と姉さんは昼休みに李に呼び出され、忠告をされた。

 観月先生が自己紹介しているとき李の視線が妙に強くて……。それこそ最初姉さんに向けていたような顔をしてたから、妙だとは思ってたんだけどな。まさか忠告までしてくるとは。

 

 俺も姉さんほどでないにしろ、赴任初日からすでにクラスのみんなの名前を憶えてくれていたっぽい観月先生には好感をもっていたから、忠告の内容には首をひねった。わざわざ李が呼び出してまで忠告くれたって事も驚いたし。……けど、それはちょっと、嬉しかったりする。

 相変わらずクロウカード集めのライバルではあるけど、多分俺たちの間にある感情は最初の頃に比べるとだいぶ変化したのではないだろうか。(ミラー)の時もすぐに力を貸してくれたし。

 だからこそ首を傾げながらも、李の忠告は受け取っておきたい気持ちはあるんだけど……。気をつけるって、具体的にどう気をつければいいんだろう? 算数の先生だから学校で会うのは仕方が無いし、逆に言えば学校でしか会わないわけだ。うーん?

 ……ま、せっかくの忠告だし観月先生に「はにゃ~ん」な姉さんに代わって俺が警戒しておけばいいか。

 一応な、一応。

 

 

 そんな日の帰り道、俺たちはちょっとした寄り道をしていた。綺麗で優しい観月先生に憧れる姉さんに、柳沢奈緒子がおすすめのお守りを教えてくれたのだ。幽霊以外にも詳しいからすごいよな柳沢……。

 で、そのお守りを買いにここ……月峰神社にやってきた。といっても俺は姉さんについてきただけなんだけど。

 

 ここのお守り、恋愛によくきくってことらしいので俺にはまだ無縁なんだよな。

 

 けどこうして「恋愛にきく」と聞いて目をキラキラさせている姉さんや、「私と小狼の恋愛は完璧に成就しているけどね!」と学校で胸を張っていたくせに、話を聞いてしっかり買いに来ている李苺鈴を見れば恋ってすごいものなんだろうなぁと興味はある。

 試しに李苺鈴がしっかり成就してる! と豪語していたお相手……無理やり神社につきあわされたっぽい李に「恋ってどんな感じ?」と聞いてみたら、答えの代わりに特大のため息をもらってしまった。

 ……ああっと……これは李苺鈴、確かにお守り買った方がいいかも……。李は李苺鈴を大切には思ってそうだけど、やっぱり恋とかではないよなぁ。

 李にとって恋する相手といえばやっぱり月城さんなのだろう。頑張れ、李苺鈴。

 

 そんなことをぽやぽや考えていると、それを叱咤するように李の鋭い言葉が飛ぶ。

 

「今はそんなことを話してる場合じゃないだろう! ……お前たち、何か感じなかったか?」

「なにかって……あれかな? 姉さん」

「李くんも感じたの?」

「さきほどお二人が感じたという、妙な気配の事でしょうか」

「え、え。なになに? なんのこと?」

 

 真剣な雰囲気になった李に、俺と姉さんの背筋が伸びる。うん……そうなのだ。この月峰神社の敷地に入った時、なにかこう。ぐにゃりと歪む様な変な気配を感じた。李が言っているのはそのことだと思う。

 魔力の無い大道寺や李苺鈴が感じていないって事は、おそらく。

 

「!!」

 

 俺たちが推測を口にする前に、"相手"が動いた。神聖な静寂さに満ちていた月峰神社の境内が空間ごと歪み、地面からなにかにょきにょき生えてくる。それが何かわかったのは、俺たちが"カードの空間"に閉じ込められたあと。

 

「な、なんだこれ! 壁!?」

 

 俺たちを取り囲んでいるのは向こう側が見えない背の高い壁、壁、壁! こういうの遊園地で見たことがある。もしかして……。

 

「迷路……(メイズ)のカードだ」

「あ、やっぱこれ迷路なんだ……」

「閉じ込められてしまったようですわね」

 

 いつか遊園地で挑戦した巨大迷路。ひとりふらふらっと別の道に入って家族とはぐれたことがある俺にとって、この空間はあまりいい気持ちになれない。早く抜け出したいところだけど……遊園地の迷路とは規模が違う。なんたってここは魔法の迷路だ。

 姉さんが(フライ)で飛んでみたり(ソード)で切ってみたり、色々試してくれたんだけど……。ずるは許さない、とばかりに(メイズ)はそれらすべての邪魔をした。俺も頭を悩ませてはみたけど、最適解と思われた姉さんの選択が失敗してしまったからなかなか他の案が出ない。……あ、(ウッド)に根を這わしてもらって、出口を探るとか?

 そう思って口を開こうとしたんだけど……それはちょっとばかり、遅かったらしい。

 突然前後左右、全ての場所がぐにゃぐにゃと動き出したのだ!

 

「うわっ! じ、地面が……あわわわわわ!?」

「くっ、迷路が別の形に変化しているんだ!」

 

 李の言葉に納得はするも、だからといってこの急な変化にすぐ対応できるはずもなく……。

 

「ど、どこだここ!?」

「なんでこんな遠いところに!」

 

 迷路が波打つように変化したあと、俺は李苺鈴と共に姉さんたちから遠く離れた場所に立っていた。遠くと言っても平面じゃない。上下に遠く離されていたのだ。

 姉さん、大道寺、李の姿は見えるが、より複雑になった迷路ではすぐに合流できそうもない。思わず頭を掻きむしりそうになるが、それで迷路がどうこうできるわけでもないので落ち着く。落ち着こうとする。

 冷静さを失ったら、それこそこそ迷路から脱出なんて出来ないだろうから。

 

 ……とにかく今は姉さんたちとの合流が最優先だ。よし、すぐにたどり着いてみせ……!

 

「苺鈴、こっちから行く! そこから動かず待っていろ!」

「梅くんもだよ! 私たちの方から行くから、待っててね!」

 

 ……と思ったら、姉さんたちに先を越されてしまった。そう言われては両方動いても仕方が無いし、待つしかないか。

 そうして姉さん達が迷路を進む様子を見ていたのだが……途中、トンネルのような道に差し掛かり視界が遮られる。俺たちの存在を見失わないようにと、こちらから大きな声で目印として数字を数えることになった。 

 

「ねえ、みんな見えなくなっちゃったわ……」

 

 交互に大きな声で数字を数えていると、李苺鈴が不安そうに話しかけてくる。ちょっと意外だ。

 

「李のこと信じてるんだろ?」

「と、当然よ!」

「俺も姉さんや大道寺を信じてる。大丈夫だよ」

「あのね! 別に不安だとか、そういうんじゃないわよ! ちょ、ちょっと確認したかっただけよ!」

「その顔で?」

「どんな顔よ!」

「眉毛が八の字」

「〜〜〜〜!!!!」

 

 軽口を叩きつつ、お互い数字を数えるのを忘れない。姉さんたちへ届ける目印だ。

 

 ……でも俺もちょっと気になってたんだよな……。トンネルみたいな道に姉さんたちが入ってから、結構経つ。考えてみれば、あの通路の先が素直に続いているとは限らない。……それを口にしたらいつもの調子を取り戻した李苺鈴がまた不安がりそうだから言わないけど。

 

「う~ん……。俺たちに出来る事、他になにかあるか……?」

 

 俺は少し考えてから、ぽんっと手を打った。

 

「! そうだ! なあ(ソング)。力を貸してくれないか?」

(ソング)?」

 

 声をかけながらカバンを開ければ、依り代in(ソング)がひょこっと顔をのぞかせた。今日のお供だったんだけど、人の気配に敏感らしくてカバンの外に出るのを嫌がったのだ。だからキーホルダーとかでなく、カバンの中に居てもらっていた。

 

「改めて見ても、所有者が決まったクロウカードを式神みたいに使えるなんて変わってるわよね。小狼も不思議がっていたわ」

 

 どうやら俺の力を李から聞いていたらしい李苺鈴が、指の腹でソングの小さな頭を撫でる。まあ(シールド)を使った時とか実際に見たこともあるわけだし、気になって李に聞くわな。

 

「その辺俺もよくわかってないんだけど……。ともかく! (ソング)の歌なら魔力がこもるだろう? ……多分。だったら(メイズ)に邪魔されても、きっと姉さんたちに届くはず!」

 

「! なるほど~! あなたにしてはいい考えね!」

「俺としてはってなんだよ!」

 

 そんなに俺って頼りなく見え……ああいや、見えるか。一回家までぶっ倒れたところ運ばれてたわ……。

 

「とにかく! やってみよう」

「なら私も一緒に歌ってあげるわ!」

「……え?」

 

 まかせて! とばかりに控えめながら胸を張った(ソング)の真横で、李苺鈴が良い笑顔で仁王立ちしていた。満面の笑みである。

 

「いや、いいけどさ……。(ソング)の邪魔はするなよ?」

「いちいち失礼なのよあなたは! 私、歌は得意なのよ!」

「そういえば前にも言ってたな」

 

 それこそ(ソング)の時に歌おうとしていたけど、結局聞かずじまいだ。あれから特に合唱の授業とかも無かったし、こいつの歌聞くの初めてかも。

 少し興味もあったので、そのまま(ソング)を促す。すると以前聞いた大道寺の声を真似た(ソング)の美しい旋律が、迷宮にこだまし始めた。……そして少し間をおいて、別の声が重なる。

 

「おお……!」

 

 李苺鈴、なるほど。自分で豪語するだけあって上手い。

 柔らかく透き通った大道寺の歌声とはまた違って、ぴんっとよく通る張りのある歌声だ。同じ歌でも歌う人によって印象ってかわるもんだなぁ……。というか李苺鈴、大道寺の歌ってた曲覚えてたのか。

 

『♪』

 

 お、(ソング)もなんだか楽しそう! おかげで張り切ってくれたのか、さっきより歌声が響いている気がする。……これを目印に、姉さん達が見つけてくれるといいんだけど。

 

「素敵な歌声ね」

「!?」

 

 (ソング)に魔力を送りながら即興のデュエットに耳を傾けていると、突然背後から声がした。しかもその声は大人の声……姉さん達じゃない!

 声の方に目を向けると、そこに居たのは見知らぬ誰かではなく……昼間に会ったばかりの、観月歌帆先生だった。

 

「み、観月……先生!?」

「な、なんで先生がこの中に……!」

 

 慌てて(ソング)を後ろ手に隠しつつ李苺鈴と共に素っ頓狂な声をあげれば、観月先生は俺たちと正反対の落ち着いた笑顔で口を開いた。

 

「うちの神社の境内で変な気配がするなーと思って……来てみたらこんな様子でしょう? 誰か迷子になっていたら困ると思って、見回っていたのよ。ふふっ、すぐ見つけられてよかったわ。綺麗な歌声のおかげね」

「自分から入ってきたんですか!?」

「ええ」

 

 当たり前のように頷かれてしまったけど、普通こんな訳が分からないところに一人で入ってくるか!? ……李が言う通りこの先生、只者ではない。

 

 ん? というか……。

 

「うちの神社?」

 

 首を傾げると観月先生はこくりと頷いた。

 

「私ね、ここの神主の娘なのよ」

「へえ〜」

 

 神主の娘さん! そっか、なら霊力とかそういうものが高かったりするのかな? で、こういった怪奇現象にも強いとか……!? いやいやいや、それにしたって動じて無さすぎるけど。……はっ! もしや悪霊と戦ったりとかそんな経験が!?

 つい膨らむ想像に好奇心がうずいていると、観月先生は俺と李苺鈴の肩に手を置く。

 

「ともかく、今はここを出ましょう? もう外も暗いし、きっとご家族が心配しているわ」

「あっ、でも! 中にはまだ小狼たちが……」

「姉さんと大道寺もいます! それに観月先生、ここから出る方法あるんですか? この迷路って……」

 

 壊しても直ってしまうし、飛んでも邪魔される。そう言おうと思った時……透き通った鈴の音がしたかと思うと、続いてどかーん! と乱暴な音が辺りに響いた。でもって俺たちの目の前には、見事に破壊された(メイズ)の壁。

 

 ……は?

 

 それをやってのけてみせたのは、にこにこ笑みを浮かべている美人教師。手にはいつの間にか変わった形の装飾具を持っている。

 

「ふぁ!?」

「え、ええー!? で、でもでも! すぐ直っちゃうんじゃ……」

 

 しかし俺たちの心配をよそに壁は元に戻らない。壊れたままだ。

 

 目を白黒させる俺たちの背を押して「さ、木之本さんたちを迎えに行きましょう」と歩み始める観月先生。……心無しか周囲の(メイズ)の道がたわんで、道が大きくなったような気がする。こう、怯えたみたいに。

 

(つ、つえええ〜〜!)

 

 俺の中で観月先生歴戦の悪霊バスター説が濃厚になった瞬間である。

 

 

 

 

 その後無事に姉さんたちと合流し、先程と同じ方法で(つまり観月先生がまっすぐ壁を破壊して)進み出口にたどり着いた俺たち。

 封印しようにも観月先生が居るため姉さんは迷っていたようだけど、そこは観月先生自ら背を向けて見ないようにしてくれたのでクロウカードの封印には成功した。

 でも見ないふりしてくれたってことは、姉さんが何するか分かっていたってことだよな? 当然のように迷路を攻略した先生の元に(メイズ)は飛んで行ったんだけど……それも姉さんに渡してくれたし。

 

 

 綺麗で優しくて、でもとっても不思議な観月先生。

 いい人だとは思うけど、李の忠告通り気を付けていた方がいいのかも? ……今回は助けてくれたけど、すごく強いって事はわかったんだし。

 

 う~ん。でもなぁ……。

 

(ま、これからもっと先生の事知っていけばいいよな!)

 

 警戒したり怖いと感じたりする心って、分からないから、得体が知れないからってことが原因だったりする。ならまずは情報収取! でもって、よく知ってから信頼するなり警戒するなりすればいいんだ。

 うんうん、そう考えたら気分が軽くなってきた。そうだよな、これもまたキャプターサポーターの頑張りどころってやつだ!

 

 

 俺は「むんっ」と気合を入れると、迎えに来てくれた兄貴の姿を見つけて姉さんと一緒に駆け寄るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。