DISK1 真夜中と侵入者
-カタカタカタカタ、カタカタカタカタ-
草木も眠る丑三つ時。
-カタカタカタカタ、カタカタカタカタ-
誰もが身体を休め、夢の世界に旅立っている時刻にも関わらず、休まずに巡回する警備員がいる、ある建物の一室。
-カタカタカタカタ、カタカタカタカタ-
その部屋には、何か重要な物が保管されているのか、鍵穴の無い重厚な鉄の箱を中心に、周りには幾重にも赤外線が張り巡らされ、床には電流が流されるという、非常に厳重に警護されていた。
-カタカタカタカタ、カタカタカタカタ-
その部屋の片隅で、青年をノートパソコンのキーボードを黙々と素早く打ち込んでいた。
彼の打ち込むノートパソコンからはケーブルが伸び、近くのパソコンの端末に繋がっており、彼のノートパソコンの画面には、数字や文字の羅列が並んでは別のウィンドウが開き、また並んでは別のウィンドウが開き、を繰り返していた。
しばらくして、
「……ふぅ~、できた~。」
そう言いながら彼は、ぐぐっと身体を伸ばす。
「ん~~~、ふぅ~、良し。
あとは、こ~れ~で~、終わり♪っと。」
そう言いながら彼は、最後のボタンを押した。
周りにカタッと、音が短く響いた、その数秒後。
-ピピ-
という電子音と共に、画面に『ALL GREEN』と浮かぶ。
それとほぼ同時に、鬱陶しいほどに張り巡らされた赤外線と、床を走っていた電流が解除され、青年はそれを確認すると、ノートパソコンを閉じ、ゆっくりと鉄の箱に近づいていく。
彼があと数センチまで近くと
-プシュー-
という音と共に箱が4つに割れ、中に保管されていた物が姿を現した。
中には一枚のディスクが入っており、青年はそれを持ち上げると、満足そうに笑みを浮かべながら頷いた。
「良し。
いただく物はいただいたし、とっととずらかると…。」
そう言いながらディスクを、横にかけてあるディスクケースに入れた瞬間。
-ヴゥーー、ヴゥ――ヴゥ――-
いきなり建物全体に響き渡るほどの大音量で、警戒音が鳴り響いた。
「……あ゛~、解除されちまったか。
やれやれ、面倒なことになったかな?
うーん、わりとえげつねえのを送ったんだけどな~。」
そう言いながら彼は、四隅にある四つの監視カメラの内一つに目を向けた。
青年が箱を開ける少し前、
-カタカタカタカタ、カタカタカタカタ-
同じ建物の別の一室、管理室で一騒動起きていた。
-カタカタカタカタカタン-
「状況はどうなっている!」
「警報器のシステムはあと少しで解放できそうです!」
「開閉システムの方は!」
「申し訳ございません、まだもう少しかかりそうです!」
「く、おのれ~~!!」
男は苦虫を噛み潰した様な表情をしながら、目の前の大画面を見つめる。
本来ならそこに監視カメラの映像が映っているのだが、今は『残念賞!』と言いながらアッカンベーをする顔文字が映っていた。
「えぇい!とにかく、さっさと解除するのだ!急げ!」
怒鳴り声をあげる男横で、その部下達は急ピッチで作業を続ける。
彼らが相手しているのは、とても強力なウイルスではあったが、彼らとて様々企業から引き抜かれてきた精鋭であった。
なので、暫くすると
「ウイルスに侵された管理システムの80%奪還しました。」
「警報器復旧しました!
警報器を鳴らします!」
-ヴゥ――、ヴゥ――、ヴゥ――-
と、次々とウイルスを駆逐し、コントロールを取り戻していく。
「監視カメラのコントロールを取り戻しました!
画面映します!」
そう言いながら部下がボタンを操作すると、さっきまでの画像は消え、開放された箱と、一人の青年が映しだされた。
「な!…っ、通信システムはまだ復旧せんのか!」
「通信システム、ほぼ復旧完了しました。
警備班と通信繋ぎます!」
そう言いながらボタンを押すと、ピッ、と音と共に通信が接続される。
「警備班!今どういう状態だ!」
「こちら警備班、只今機密室の前で、突入準備中です。
あと1、2分で突入できます!」
「良し!中の奴は絶対に逃がすな!
逃がしたら我々の命は無いと思え!」
「っ!はっ!!
おい!準備を急げ!」
警備隊の慌ただしい声を聞きながら、男は再び画像に目を移した。
「……奴はなにをやっているのだ?」
男の視線の先で、青年は左腕からプラグを4本垂れ流していた。
そして、無造作に左腕を振ると、まるで意志があるかの様に、四隅の監視カメラに向かって四つのプラグがそれぞれ飛んでいき、監視カメラと接続した。
突き刺さったのではない、比喩的表現でもない、文字通り監視カメラのシステムと直接接続されたのだ。
『なっ!?』
これには管理室の面々も驚きのあまり絶句する。
それを知ってか、知らずか、青年は軽く笑みを浮かべながら、流れる様に左腕に着いている装置を操作すると、
-プツン-
という音と共に画面が切れる。
「なにが起きた!?」
「またウイルスです。
どうやら画像を送れなくしたようです。
とはいえ、この程度なら直ぐに直せます!」そう言いながら部下達は素早く復旧作業に入る。
「こちら警備班、管理室応答願います!」
「どうした!」
「こちら突入準備完了しました!
いつでも行けます!」
「扉の開閉システムも今解除完了しました!」
「良し!
突入しろ!!
必ず捕まえるんだ!!」
その言葉と共に扉が開き、警備班が突入する。
「監視カメラのシステムも取り戻しました!
画面映します!」
その言葉に頷きながら、男は画面に再び目を移した。
そこには、先に突入した警備班に銃を突きつけられた青年が映っていた。
そう思っていたのだが、
「…なん…だと!?」
「繰り返します、目標ロスト。
部屋の中には誰もいません!」
「そんな馬鹿!!
本当にどこにも居ないのか!?」
「……残念ながら、影も形も。」
警備班の言葉に男は顔を青くしながら、椅子に座り込む。
画面には青年を探す警備班と、空の鉄の箱だけが映っていた。
そんな訳で、初ライダー小説でした。
バトルも怪人もライダー出てこない話でしたが、必要な話ではあった(と思う)ので、お付き合いください。
ちなみに、次の話も、ライダーも怪人もバトルも無しです。
ですが、必要な話なので、どうかお付き合いください。