二話目。
最初に下ネタが入ります。
苦手な方はすみません。
扉をくぐり抜け、約束の場所に少し早めに着くと、既に生介がそこに立っており、青々と生い茂った葉桜の隙間から見える満月を見上げていた。
「よう、待たせたか?」
「ん?いや、俺も今来たところだ。
なにより、珍しく今回は時間5分前に来たんだ。
文句なんてないさ。」
「珍しく、は余計だ。」
「本当のことだろ?」
そんな会話を互いに苦笑をしながら、俺は生介の元に歩み寄った。
「……おじさんとおばさんのこと、……なんて言えばいいのか。」
「……お前が気にすることはないよ。
全部俺のせいだ。」
「……本当になにがあったんだ?
なにをしたってんだ?
後ろにいる奴と、なんか関係あるのか?」
そう言いながら生介は、後ろにいる神無月を指さしながら睨み付ける。
「ん~、まあ関係はあるが、そんなにこいつを睨むな。
こいつも俺の友人なんだから。」
「友達!?君に?」
……おい、それはどういう意味だ、こら。
「はじめまして、彼の友人になった神無月 犬正だ。
会って数時間しか経ってないけど、彼とはそれなりに深い関係だ。」
「…大津 生介だ。
深い関係って、どういうことをこいつとやったんだよ。」
「生死を共にくぐり抜けた仲さ。」
「精子を共「チェストォォォォ!」にゃびゃぁ!!」
気味悪そうに顔を歪めた生介に対して、勢いよく脳天チョップを叩き込んだ。
我ながら会心の一撃だった。
そのせいか、生介は頭を抑えながら、うずくまっている。
「今お前、ものすっっっごく気色悪いこと考えただろ。」
「…うん、ごめん。
考えていた。」
「……すまないが、そっちの趣味は僕には無いよ。」
「俺だって無いわぁぁ!!」
俺が力一杯叫んだ魂の叫びが、夜の街にこだました。
閑話休題
「…で?
その生死の境がって話も、話してくれないのか?」
「……まあ、お前なら話してもいいかもな。」
『え!?』
「……いや、なんで二人して驚くんだよ。」
目を見開きながら驚いた顔をする二人に、俺は眉をひそめた。
「いや、急にOKしたからな、びっくりしちまって。」
「僕は、……なあ?」
そう言いながら神無月は良いのか?っと不安そうにしながら、俺のことを見た。
まあ、こいつに関しては大丈夫だろう。
……俺の想像通りだったらだけど、ね。
「それはそうと、少し歩かんか?生介。」
「良いけど、警察には行かんのか?」
「え?」
「行くけど、別に警察は逃げんだろ?
なら別にゆっくり行ったって、問題なかろうさ。」
「え?え?えぇぇ?」
俺達の会話にひどく狼狽する神無月を無視して、俺達はゆっくりと歩き始めた。
……そう言えば、あいつになにも説明してなかったな。
悪いことしたな。
そう思い、少しだけ神無月の方にに目を向けた。
その視線からどれだけのことを伝えられたかはわからないが、神無月はなにか言いたげにしながらも一つ頷くと、黙って俺達の後ろをついて来た。
「……俺達さ、会って何年ぐらいかね?」
「ん~、小2ぐらいだから、もう12年ぐらいじゃないか?」
「そっか、もうそんなに経つのか。
なら今年で一周年だったんだな。」
「ん?なんの一周年だ?」
「干支が一周するだろ?」
「おー、なるほど。
そういう意味か。」
「干支といえば……、」
「ああ、それあったな。
そういえばさ……。」
満月が照らす中、俺達はとりとめの無い会話を続ける。
最近の話しだったり、昔話だったり、今日のことが嘘や冗談だった。と言わんばかりに、本当に普段と変わらない会話を続ける。
しばらく歩き続けていると、広い原っぱにたどり着いた。
そこは近くの大きな自然公園の一角で、昼間は家族連れやピクニックをする人達でにぎわっている。
かくいう俺もこっちにいた頃は、ぷー助の散歩の途中に寄っては、彼相手にボールやブーメランを投げて遊んでいた。
「……しかし、変わらんな、ここも。」
「まあ、ここは環境保護指定地区だしな。
…田舎臭くて嫌か?」
「いや、大好きさ。
ここで生まれ育って良かったよ。」
「……そ…っか。
……うん、そうだな。」
そう言いながら、俺達は空に浮かぶ満月を見上げる。
錯視っといっただろうか?
やけにでかく見えるが月が、きらきらと光っている。
「……月が綺麗だな。」
「そうだな。」
「なんかさ、月を見てたら叫びたくならないか?」
「……そうかな?」
「そうだよ、現に俺叫びたくなったし。
こんな風にな、ワォォォォォォォン!」
俺の似ていない犬の遠吠えが辺りに響いていく。
「…相変わらずたまに訳のわからないことをするよな、お前は。」
「たははははは。
……遠吠えで思い出したんだけどな、今日事件現場に行ったって言っただろ?」
「ああ、言ってたな。」
「その時さ、俺見ちまったんだ。」
「なにを?」
「狼男。」
「……お前な、おじさん達を殺されてショックなのはわかるけど、そんな下らないじょ「冗談じゃないよ。」…。」
「本当に俺は、この目ではっきりと見たんだ。
狼男を、な。」
俺の言葉に生介は呆れた様な表情をするが、その目は俺の真意を探ろうとする、とても鋭い目付きだった。
「……そうか、それならその内、吸血鬼とかフランケンシュタインとか出てくるんじゃねえか?」
「かもな。
っていうか、実際のところいるのか?そいつら。」
「俺がわかるわけないだろ?」
「本当に?
知り合いにいないのかい?」
そう言いながら、俺はゆらゆらとゆっくり歩き出す。
「いるわけないだろ!そんな知り合い!」
「本当か~?」
「…っ、さっきからなにを言ってんだ、お前は!
ふざけてんのか!!」
「……いや、至極真面目だぞ?」
歩みを止め振り向き、生介と真っ直ぐ向き合う。
俺の真剣な目からなにか感じたのか、生介の表情も引き締まる。
「……なら、質問を変えてやるよ。
お前、ルートキットのなんなんだ?」
「…っ、…ルートキット?
なんだよ、それ?
初めて聞く名前だぞ?
それに、それが今日のこととなんの関係があるんだよ!」
友よ、嘘をつくならもう少し上手くつこうぜ。
その反応じゃ、モロバレだぞ。
しかし、そういう反応をするということは、やっぱり奴らとお前は無関係ではないんだな。
「…今日のことと奴らは無関係ではない。
そして、お前もな、生介。」
「……どういう意味だよ?」
「なぜならば…、」
「……なぜならば?」
「……なぜならば。」
そこまで言って、俺は言葉を紡げなくなる。
今から言おうとしていることの、答えを聞くのが正直怖かった。
今まで信じていたものを否定される様な気がした。
でも、全てを見届けると決めたから、ここで立ち止まるわけにいかないから。
そう思い腹を決めると、生介の刺すような視線を真っ向から受けながら、俺は意を決して口を開いた。
「なぜならば、あの時いた狼男はお前なんだろ?
生介。」
俺の言葉に二人は異なった反応を見せた。
神無月は驚いた表情をしながら生介を見つめ、生介は一瞬顔を歪めたが、すぐに目に力を入れて俺を睨みつける。
「いきなりなにを言ってんだ、お前は?
そんな根拠もないこ「根拠はある。」とっ!?。」
「なあ、生介。
さっき電話で話していた時、お前はこう言ってくれたよな、『今日珍しく青いシャツを着ていたな。』って。」
「ああ、言った。
それがどうかしたか?」
「……あり得ないだよ。」
「え?」
「お前が俺の青いシャツを着ている姿を見ることは、絶対に不可能なんだよ。」
「……どういう意味だ?」
「簡単なことだ。
俺が昼間着ていたのは、この服だからだ。」
そう言いながら上着のボタンを外すと、中からオレンジ色のシャツが顔を覗かせた。
「……いや、それ嘘だろ。」
「なんでそう思う?」
「そのシャツ、昼間から着ていた割には汗の匂いや着ていた感が無さすぎる。
だからそれは、俺を嵌める為に着替えてきたんだろ?」
「……残念ながら、お前はいくつか勘違いしている。」
「勘違い?」
「ああ、まずこのシャツのことだが、今日一日これだけを着ていたわけではないぞ。」
「え?」
「とある事情で埃と汗まみれになってな、神無月の屋敷で今着てる服を洗ってもらって、青いシャツをお借りしたんだ。
ちなみに、これがそのシャツ。」
そう言いながら俺は、懐に入れていた青いシャツを取り出した。
「……それ、どこにしまってたんだ?」
「クリーニングのバイトした時に教わった折り方と、マジックの手伝いをした時に教わったしまい方の応用で、膨らみや違和感が無い様に閉まっていた。」
「君はもうなんでもありだね。」
得た技術は活用してこそだしね。
「でだ、また汚れたから見てわかる様に、今はオレンジのシャツに着替えてたんだ。
つまり、俺が青いシャツを着ていたのはほん一、二時間程度。
しかも、俺はさっきみたいに上着のボタンを上まで閉めていたから、普通なら中の色なんてわかるはずがないんだ。」
「ん?
なら、こいつもわからないんじゃないか?」
「ああ、“普通”なら、ね。
ただ、今日は数十分間だけ、中のシャツを見ることができた状態があったんだ。
そして、その姿は神無月も見てるはずだぞ?」
「僕も?
………!もしかして、あそこから戻る時の姿か?」
「ああ、偶然上着が破けたせいで、中に着ていた青いシャツが見えるようになったんだ。
あの時、体勢が崩れて慌てて起き上がった俺を、お前は一瞥してから去って行ったよな?
その時にお前は見たんだ。
上着の隙間から見える青いシャツを、俺が青いシャツを着ている姿を。」
青いシャツを突きだしながら真っ直ぐ見つめる俺に対し、生介は俯き押し黙っていた。
「でも、そのオレンジのシャツは着替えたばっかりだとわかったのに、なんで青いシャツは着替えていた物だとわからなかったんだ?」
「それは走ったのと汗のせいだろ。」
「汗?」
「さっきあいつはこう言ったろ?
『汗の匂いや着ていた感が無さすぎる。』って。
俺はこのシャツを風呂上がりに着たんだが、どんなに綺麗に拭いても、汗っていうのは気づかない内にかいていくもんだ。
更に、俺の実家まで全力疾走したから、なおさら汗が出たし、服もぐしゃぐしゃになったんだろ。
それが、こいつが勘違いした理由だ。」
「なるほど。」
「……だけどさ、俺自身信じられないんだ、こんなこと。
だからさ、違うって言ってくれよ。
いつもみたいさ、『なに馬鹿なこと言ってんだ?』って、苦笑しながら言ってくれよ。
………違うって根拠を並べて否定してくれよ。
……頼むよ、……親友。」
最後は絞りだす様に、懇願に近い状態になりながら、俺は生介に言葉を投げ掛ける。
それに対して生介はなにも言わず、ただ俯き続けていた。
5分ぐらいそのまま黙っていただろうか。
「ふぅ、どうやら友達ごっこも、これまでのようだな。」
そう言いながら生介は顔を上げた。
その瞳は寒気がするぐらいに暗く濁って見えた。
「…ごっこって、どういうことだ?」
「聞いた通りさ、俺は今まで組織の命令に従って、お前と友人のふりをしていただけさ。」
「なぁ!?」
驚く俺に生介はふっと笑いながら、言葉を続ける。
「なかなか大変だったんだぜ?
付き合いたくもない場所に一緒に行ったり、聞きたくもない話や冗談を聞いたりさ。
退屈で、嫌でしょうがなかったよ。」
「……ずっと、……騙してたのか?」
「ああ、その通りさ。
お前の両親の最後も、なかなか見物だったぜ?」
「……てめえ。」
自分の声が低く、冷たい声色になったのがわかった。
少なくとも、親友と呼ぶ人間に対して向ける声色ではなくなっていた。
「睦月、偽りでも友と呼んだ仲だ。
最後の慈悲をやる。
このまま俺と大人しく一緒にこっちへ来るか?
それとも、」
そう言った瞬間、生介の体が毛に覆われ始め、肉体も筋肉が膨れ上がっていく。
「……ここで死ぬか、どちらが良い?
選ぶと良い。」
完全に狼男の風体となった生介は、そう言いながら俺を睨み付けてくる。
「……どちらもお断りだ。」
「…なに?」
「どっちもお断りだと言ったのさ。
てめえらに従うのは死んでもごめんだし、死ぬのはもっとごめんだ。」
「…この、相変わらずの我が儘野郎がぁぁぁ!!」
大地を蹴り、一気に距離を縮めてくる生介。
それを俺はひどく冷めた目で見続ける。
あと数センチで俺にその手が届く。
その時だった。
「…!」
突然生介は跳びはねると、俺から距離をとった。
その直後、神無月の飛ばしたプラグがその場所を通り過ぎる。
「…っ、くそ、外したか。」
「……わりぃ、助かった。」
「気にするな、この程度どうってことないよ。」
駆け寄って来た神無月に笑みを浮かべながら礼を言うと、彼も笑み浮かべ返してきた。
「っ、俺の邪魔をするなぁぁぁ!!」
「断る!!」
再び距離を詰めてくる生介に、神無月はプラグを飛ばして応戦する。
プラグはまるで意志があるか如く、上に下にと飛び回る。
「くっ、煩い!」
飛び回るプラグから逃れる様に、生介は神無月から距離をとる。
その瞬間、神無月はハッカードライバーを腰に当て、素早く装着するとスイッチを押した。
「変身!!」
中のディスクが高速で回転する音が響き、彼の周りを無数のウィンドウが包む。
『仮面ライダーハッカー ディスプレイフォーム。』
ウィンドウが弾け、変身した神無月が現れる。
彼は再びドライバーのスイッチを押し、出てきたドライブにディスクを二枚並べて挿入する。
『仮面ライダー一号』
『ライダー、変身!』
『仮面ライダークウガ』
『変身!』
「数多の技と歴戦を越えた巧手(こうしゅ)、使わせていただきます!!」
『ミクストール!
仮面ライダーハッカー アルト オブ サウザンドアーツ!』
再び無数のウィンドウが包み弾けると、彼は緑色の体に赤いプロテクターの戦士に様変わりしていた。
「……そうか、…お前が例のやつだったのか。」
「例のやつ?
なんのことだ?」
「……お前がそれを知る必要は、…ない!」
「っ、速い!」
「まだまだ行くぞ!!」
その言葉と共に、先ほどの倍以上の速度で動き、こちらを翻弄する生介。
あちらの攻撃を避けようとするが、速度が速い上に光源が月明かりしかないため、神無月は避けきれずにダメージを蓄積していく。
「っ、くそ!
スピードにはスピードだ!」
そう言いベルトに両手を添えると、ディスクが高速回転する音と共に、青いプロテクター姿に変わっていた。
「行くぞ!!」
「こい!」
駆け出した神無月は、現出させたドラゴンロッドを振るい、生介に肉薄するが、
「はっ!」
「ふん!!」
ーガキッー
「な!?」
「うおぉぉぉぉ!」
「わわわわわわ!?」
「うりぃやぁぁ!!」
「だあああ!?」
振ったロッドを捕まれ、逆に神無月ごとロッドを振り回され、投げ飛ばされてしまった。
「ぐはっ!!」
「どんどん行くぞ!!」
「くう、ならば!」
再びベルトに手をやると、今度は緑色に変化し、ペガサスボーガンを現出させる。
「これでどうだぁぁ!!」
「そんなの当たらないぜ!!」
超感覚で生介の場所を的確に掴み撃ち込むが、撃った瞬間には既にそこにおらず、予測して撃ち込んでも、すぐさま方向転換して避けられてしまう。
「う、うぅぅぅぅ。」
そうこうしている内に、リミットである30秒が近づいてくる。
「く、そ!」
ベルトに手をやり、素早く紫に変化するが、
「うあぁぁぁぁ!」
装甲が厚くなった分スピードが殺され、逆になぶりものされてしまう。
「ぐ、くそ!」
「そんな鈍い攻撃なんで当たらないぜ!!
くらえぇ!!」
「ぐわぁぁぁ!!」
なんとか反撃しようと攻撃をするが、避けられカウンター気味の蹴りに、蹴り飛ばされてしまう。
「神無月!!」
こちらに蹴り飛ばされて来た神無月を、俺は慌てて受け止める。
勢いが強く、若干後ろへ飛ばされてしまうが、なんとか止めることに成功した。
「あったたた、大丈夫か?」
「うぅぅぅ、…なんとか。」
そう言いながら彼は立ち上がるが、ダメージが蓄積しているのか、若干ふらついていた。
「やれるのか?」
「やれるけど、正直このままだと厳しい。」
そう言いながら彼は、ギリッと歯ぎしりをさせながら生介を睨む。
「パワーが強い上にスピードも速いとか、インチキだろ。」
「……多分、身体能力に特化しているからだろうな。」
「特化?」
「ああ、特殊なことが出来ない代わりに、狼的なことや肉体が強化されてんだろ。
お前のそのフォームはまんべんなく戦える代わりに、ああいう特化型には弱いとみた。」
「なるほど、そうかもね。
なら、どうし「いつまでも喋ってんじゃねえぇぇ!!」って、うわぁ!」
「うぉっと!」
距離を一気に詰め、こちらに襲いかかる生介をかわしながら距離をとろうとするが、そうはいかないとばかりの猛攻を神無月に対して仕掛けてくる。
「おらおらおらおらおらおらおらぁぁぁ!!」
「くっ、そ!
こ、ん、な、の、どうしたら、良いん、だぁぁぁぁぁ!」
なんとか避け続けていた神無月ではあったが、鋭い蹴りを食らい、再び蹴り飛ばされてしまう。
俺は急いで駆けると、先ほど同様に神無月を受け止めた。
「よぉぉぉっと!
……まだ動けるか?」
「………ああ、……まだ、…いける!」
「そうか。
なら一つ確認する。
他のディスク、組み合わせはわかっているのか?」
「わかっているのもあるが、なぜ?」
「今、あいつに対抗しようと思ったら、全体の能力をアップさせるか、あいつ同様に、なにかに特化させるかの二つしかない。
前者は厳しいはずだから、後者しかなく、そしてそれは、残りの組み合わせに賭けるしかないんだ。
どうだ?ありそうか?」
「……それなら一つだけやれそうなのがある。
だけど問題は、「これで終わりだぁぁぁ!!」時間がない!」
猛然と駆けてくる生介に対し、神無月は焦りの声をあげる。
「ああ、それは安心しろ。」
まあ、そこまで焦る必要もないんだけどな。
なぜなら、
「数秒程度なら、俺が時間を稼いでやるさ。」
そう言いながら俺は、神無月を庇う様に彼の前に立った。
「ちょ、なにを!?」
「ちょ、馬鹿!こうちゃん!!」
俺の突然の行動に、二人して驚きの声をあげる。
飛びかかりながら、勢いよく降り下ろされる生介の右手。
速度の乗ったその手に対し、俺は一歩前に右足を踏み込んだ。
その足を軸に右に半回転しながら背を向ける形で彼の懐へ入り込み、その流れの中で左手は彼の右手首に、右腕は彼の肘を極める様に絡ませて、抱き込む様に彼の腕を引き寄せ、一本背負いの要領で彼を投げた。
ちなみにこの技、勢いよく来ている相手にやる時は、しっかり腕を掴んであげないといけない。
でないと腕を引き寄せた際、腕を支点に慣性の法則で円を書く様な動きをしつつ、勢いよく動き続け、
ースポーンー
と、勢いで腕が抜け、
「うぎゃあぁぁぁぁ!!??」
背中から勢いよく落ちながら、数メートル転がることになるのである。
これは打ち所が悪いと、本当に死ぬ事もあるので、良い子のみんなはマネしちゃ駄目だぞ?
睦月お兄さんと約束だ!
そんな風に頭の中でボケている横で、神無月は投げ飛ばされた生介の方を見ながらポカーンとしてた。
「……おい、いつまでぼーっとしているつもりだ?
言った通りに時間を稼いだんだから、早くフォームチェンジしなよ。」
「あ、ああ、そうする。
……しかし、ここまでやれるなんて、君は本当に凄いね。」
「あいつが知らなかったから上手くいっただけだ。
次はこうはいかないし、俺自身上手くできると思えない。
二度目はないから、なんとかしてくれ。」
「わかった、任せてくれ!」
神無月はそう言いボタンを押してドライブを出すと、中に入っていたディスクを素早く取り替え、再び挿入した。
ディスクが高速で回る音が周りに響き渡る。
『仮面ライダー二号』
『変身!』
『仮面ライダー響鬼』
『
ーキーンー
』
「困難打ち砕く力と鍛え抜かれし鬼の力、使わせていただきます!」
『ミクストール!
仮面ライダーハッカー パワー オブ サウンド!』
無数のウィンドウが弾け、中から紺色の体の戦士が現れる。
その戦士は体にベストみたいのを付け、白いスカーフに赤い手袋をし、大きな目の上の方には一対の角が生えていた。
「……それが次の手、ってわけか。」
そう言い、頭を掻きながら生介が戻ってきた。
「…まだやるのかい?」
「当然だ。
もうさっきの様にはいかないよ。」
「あっそ。」
まるで興味がない、といった返事を神無月に返しつつ、生介は俺の方を見た。
「相変わらず無茶ばっかりをするね、お前は。」
「無茶でもなんでも、必要ならやるさ。」
「………なあ、好子。
俺と一緒に組織に来ないか?
お前ぐらいの実力があれば、幹部だって夢じゃない。
お前を馬鹿にしていた奴らだって、見返してやれる。
力が足りないなら、欲しいなら、俺がお前の力になったって良い。
だから、だから一緒「断る。」…っ。」
「別に、あいつらことなんてどうでもいい。
あいつらなんて言おうと、知ったこちゃない。
俺は俺の目指すものに向けて頑張るだけだ。
それに、別に偉くなりたいとも思っていない。
大事な人達がいてくれる日常がそこにあれば、それで十分だった。
きっかけは俺だったとしても、奴らはそれを奪ったんだ。
なにより奴らは、俺の信念からも外れた行動をしている。
そんな奴らを、俺は信用なんてできない。
だから悪いが、何度誘われようとも断らせてもらう。
お前と一緒に行ってやるつもりはない!」
そうはっきりと断言してやると、生介は体を震わせながら俯いてしまう。
それから数分間、全員なにも言わず、時さえ固まってしまった様に、無音の時が流れた。
「………わかった。
お前は変なところ頑固だからな、なにを言っても聞かないだろうさ。
だから、だから力づくで連れて行く!!」
バッと顔を上げ、殺気のこもった目で俺を睨みながら、猛然と駆けてくる。
「そんなこと、僕がさせるわけないだろ?」
「っ、俺の邪魔をするなぁぁぁぁぁ!!」
俺と生介の間に阻む様に立つ神無月に、生介は先ほどの一撃より速い一撃を降り下ろす。
「……やれやれ、君も案外安直な奴だね。」
今までのどの一撃よりも威力がありそうなその一撃を、彼はなんでもないように左腕で受け止めると、一歩踏み込んで生介の胸に一撃をいれた。
なんのへんてつもない、ただのパンチだった。
少なくとも俺にはそう見えた。
だが、
「うぐわぁぁぁ!!!」
しかし、ただそれだけで俺が投げ飛ばした時よりも勢い良く、遠くへすっ飛んでいく。
「言っただろ?
さっきの様にはいかないよ、って。」
「いやいや、変わり過ぎだから。」
思わずツッコミを入れてしまうぐらいの変わり様に、今度は俺が呆然とする番だった。
「うん、これなら行けそ「……けるな。」…ん?。」
「ふざけるなぁぁぁ!!」
「うお!」
叫び声を上げながら、生介は猛烈な勢いで爪を振るう。
その一撃は大地をえぐり、空を裂き、全てを切り裂く勢いだった。
「……でだ。」
「ん?」
「なんでこうちゃんの隣にいるのが、お前なんだぁぁ!」
「はい?」
「ずっと、ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっと隣にいたのは俺なのに!
なんで少ししか過ごしていないお前の隣なんだ!!」
「え?え?」
そんなことを叫びながら攻撃を続ける生介に対し、俺も神無月も困惑した顔になっていく。
「お前が、お前さえいなければ、おじさんも、おばさんも、狙われる必要はなかった!
こうちゃんだって、危ない目に遭う必要もなかった!
俺だってこんなことをする必要はなかった!!
お前の、お前のせいでぇぇぇぇぇ!!!」
凄まじい速度の蹴りが神無月めがけて飛んでいき、蹴りが当たった瞬間、ものすごい音が辺りに響いた。
たが、
「なあ!?」
神無月は微動だにせず、悠然と驚きで固まった生介の足を掴んだ。
「……君がどんな思いを抱えているかは知らないし、知る気もない。
だけど、」
「え?うえぇぇぇ!?」
「僕の初めての友達を傷つけたお前を、僕は絶対に許さない!」
そう言いながら神無月は、左腕の力だけで生介を持ち上げていく。
これには流石の生介も驚いたのか、手足をバタバタさせている。
「くらえ、烈火豪響撃(れっかごうきょうげき)!!」
そう叫び、右手に炎を纏わせながら生介の足を放ると、左足を強く踏み込んで、それを生介に撃ち込んだ。
「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!」
撃ち込まれた生介は、凄い速度で吹っ飛び、近くの森の中にある廃ビルまで飛んでいくのが見えた。
「逃がさない!」
そう言いながら神無月はものすごい速度で走り出し、あっという間にビルに続く森へと入って行った。
「………って、俺を置いて行かないでくれよ!」
そう言い、俺も駆け出しながらビルの方を見上げる。
その廃ビルはかつて何かの観測所だった様だが、老朽化が進み危険になったので、今までは使用されていない建物だ。
そこまでは直線距離で500mぐらいなのだが、傾斜が30度ぐらいの少し小高い丘の上に存在し、その周りも木々に囲まれているのため、非常に行き辛い。
一応そこまで続く舗装された道はあるのだが、ここからだと反対側にあるので、時間が掛かり過ぎてしまうのだ。
「……しょうがない。
久しぶりだから自信ないし、素手ではあまりやりたくないけど、背に腹は変えられないしな。」
そう言いながら加速し、木々の近くまで近づくと、手近の枝に向かって飛び跳ねる。
その枝を掴みながら振り子の要領で勢いをつけ、少し先にある枝に向かって更に飛ぶ。
放物線を描く様に飛び、体勢を整えながら枝に飛び乗ると、しなりを利用してその先の枝へ飛んでいく。
だが目測を誤り、手を伸ばしても枝に届かず、手前の方で落ちてしまう。
が、
「っと!危ね~。」
たまたまその下にも枝があり、それに掴まり勢いをつけ直し、移動していく。
このフリーランニングの技術は、小さい頃に祖父のところへ遊びに行った時に培ったものなのだが、最近やってなかったせいか、少々技量が落ちてた様だ。
とはいえ、自転車をしばらく乗ってなくても、少し乗ればコツを取り戻せる様に、これも汗水たらし、傷だらけになりながら得た技術なため、大分勘は取り戻していた。
そんなわけで、少し余裕が出始めた俺は、先ほどからあることについて考えていた。
それは、
「あいつ、なにを考えているんだ?」
神無月に対して言っていた言葉、あれは本心で言っている様に感じた。
だけど、それじゃあまるで…、
「…それじゃあ、…まるで?」
そう呟いたのと同時に、乗った枝がボキッと折れ、俺は枝から滑り落ちてしまう。
素早く体勢を立て直しながら、頭の中では今までの疑問が、まるで糸がほどけた様にするすると解けていくのを感じつつ、俺は着地した。
「……たく、そうだとしたら、俺達は本当に馬鹿者だよな。
少しは素直に本心晒せよ、馬鹿野郎。」
そう言いながら顔を前に向けて、俺は駆け出した。
大分移動できたはずだから、もうすぐたどり着けるはずだ。
「急がなきゃ!」
足に力を入れて走ると、急に木々が途切れ、古びた5階建ての建物の前に出た。
建物は広い平地の真ん中に存在し、その建物の入口付近で、
「卍放旋火(まんじほうせんか)!」
そう叫びながら生介を屋上まで投げ飛ばす、神無月の姿があった。
「生介!!神無月!!」
俺の声が聞こえなかったのか、神無月はわき目もふらずに屋上へと壁を駆けながら登って行った。
「だあぁぁぁ!
このぉぉ!!」
急いで建物の入口に向かうが、鉄の扉は厳重に鍵がかけられており、開きそうにも無い。
ただし、老朽化も大分進んでいるため、周りの壁はぼろぼろである、と。
俺はそう判断して、扉から距離を少しとると、
「…管理会社の皆さん、すみません!!」
数歩踏み込むと、扉に向けてドロップキックをぶちかました。
派手な音をたて、建物の中に瓦礫を撒き散らしながら、扉はぶっ飛んでいく。
俺は建物の中に入ると、破片を踏み鳴らしながら、急いで階段を登っていく。
とはいえ、先ほどまでフリーランニングをやってからの階段ダッシュなので、流石に大分息が上がり、足も上がらなくなってきていた。
だけど、急がなければ。という一心で、足を無理矢理動かし登っていく。
やがて、ようやく登りきった俺は、目の前の扉を勢いよく開けると、神無月がトドメの一撃の準備に入るところだった。
「…………って。」
止めようと声出すが、酸欠と口が乾いて、声が上手く出すことができなかった。
「これでトドメだ!」
そう言いながら神無月は、ベストみたいなところからなにかを取り出し、生介に投げ、
「…てっ…、言……んだ……!!」
ースッパコーンー
「へぶぅぅぅ!!」
ようとしたところを、俺が彼の後頭部に掌底を一撃食らわせた。
「……ぃったいじゃないか!
なにするんだ!」
「…お前が!…全然!…止まんない!…からだろ!!」
「え、あ、あ、うん。
ごめん。」
息も絶え絶えにし、肩で息をする俺の怒気に圧されたのか、神無月は謝りながら引いていく。
「で?なんで止めたんだ?」
「…全部、…わかったからだ。
…こいつがやったこと、…やらなかったこと、…真意まで、…全部な。」
震える体を無理矢理起こし、荒い呼吸をしながら、俺は真っ直ぐ生介を見つめた。
一応、理由があってですが、この章は推理小説ぽくやってみよう。と思って色々とやってみたのですが、いかがでしたか?
暇があり、お付き合いいただける心広い方がいましたら、私が書いた謎を解いてみてください。
謎は大きく分けて三つ。
誰が誰を殺したのか?
なぜ行動がちぐはぐなのか?
大津 生介の真意は?
ヒントは、この章にちりばめさせて、いただいています。
次回は解答編です。
需要が無いのは重々承知なのですが、どうかお付き合いください。