仮面ライダーハッカー   作:六界の魔術師

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思った以上に長くなったので、前後編になりました。
後編も急ぎ書き上げます。


DISK17 力の戦士と音撃の戦鬼(前)

「食らうが良い!!」

そう言ってドマーは、鞭を連続で振る。

「はぁぁぁ!!」

神無月はそれを避けながらドマーの懐へ入り、強く踏み込んで、一撃を腹に入れた。が、

「ふん!!」

「おわ!?」

彼の攻撃は固い腹筋に阻まれ、逆に弾かれてしまう。

「食らえぇ!!」

「うわぁぁ!!」

弾かれてたたらを踏んでいるところを、ドマーの鞭が襲いかかる。

「おらおら!!

どうしたどうしたぁぁ!!」

「くっそ!!」

なんとか体勢を立て直し、再び避け始めるが、攻めのチャンスを作れないでいた。

そんな彼の横では、

「うおっと!」

「この!」

睦月と大津は襲いかかる犬達を蹴ったり、弾いたりしていた。

怪我をした犬は数匹いたが、死んでいる犬は皆無だった。

本来、大津が本気を出せば、ここにいる犬など、ものの数分で片付けられるのだが、彼は殺さぬ様に気をつけながら弾いていた。

それというのも、

「…っ、こうちゃん!

どうしても殺しちゃいけないのか!?」

「こいつらは操られているだけだ、こいつらに罪は無い!!

だから殺すな!!

殺したら、友達辞めるからな!!」

そんな縛りをした為、犬達は未だに現在だった。

しかし、相手はそんなことお構い無しに殺しにかかってくる為、徐々に劣勢に追い込まれてしまう。

「……っ、その前に俺達が殺されるぞ!!」

「そうならない様に、踏ん張れ!!」

「無茶苦茶言うな!!」

「知ってか?

無茶が通れば、道理も通るもんなんだぜ?」

「そんなの知るかぁぁ!!」

 

そんなことを言いつつも、律儀に弾くことを止めない辺り、彼の本心が見えてくるものである。

「……とはいえ、確かにやり辛いよな。」

睦月はそう呟くと、すたすたと犬達へ歩み寄って行く。

「ちょ!?こうちゃん!?なにやってんの!?」

「ん?なにって……。」

そう言いながら睦月は、目の前の犬に蹴りを一撃、そのまま回転しながら水面蹴りで二匹を蹴り飛ばす。

「蹴り飛ばしているだけだぞ?」

その回転はその後も止まらず、ブレイクダンスみたいにアクロバティックな動きをしながら、襲いくる犬達を蹴り飛ばしていく。

だが、中にはその蹴りを見切り、詰め寄ってくる犬もいた。

そういう犬に対し、睦月は体を起こしながら素早く膝を曲げて正座すると、チワワみたいな小型犬は胴を掴んでは放り投げ、ドーベルマン等の中型犬はクマ手(指のみを曲げた手の握り方)に握った手で裏拳や、掌底を横面にかます。

また、大型犬は膝を使った体捌きで攻撃を避けながら、後頭部やお腹に手刀や掌底で一撃をいれる。

襲ってくる数が増えてくると蹴りを加え、再び近づけさせない様に回転を始めた。

「……お前とは長い付き合いだから、そこまで驚きはしないが、本当になんでもありだよな。」

「ん~、そうでもないぞ?

経験したことがないのはできないし、経験してもできないこともあるぞ?

そのことは、お前だって知っているだろ?」

「まあね。

ちなみに、おっと…、今回のネタはなんだ?」

「ネタ言うな、っと!

……この蹴り技はカポエイラっていう、蹴り主体の武術だ。

このカポエイラっていうの…は、奴隷として捕まった黒人達が、手枷を付けられた状、態、でーも!戦える様に、編み出された技なんだぞ。」

「なるほ…ど!

だから蹴り主体なのか。」

「ああ、これは音楽に合わせて踊ったりも…するん、だ、が、それはかつて彼らが奴隷として囚われた頃、踊りの練習と称して鍛練を積んでいた頃の名残だったりするんだよ、…ね!」

「なるほど、…ね。

この前言ってい…た、じゃんけんと同じ、ってわけ…か!」

「そういう、こと!

あれも、邪拳っと呼ばれていた頃…に、遊びと称して鍛練をしていたんだしね。」

「だったな。

で、その正座のやつは?」

「これは柔術の型の一つだよ。

日本では世界にはない、正座という文化、作法があり、無防備になるこの状態でも対応できる様に編み出された技が、…これ、…なの、…さ!」

そう言いながら睦月は、襲いかかる犬を掴んでは投げ、掴んでは投げを繰り返す。

ちなみに、先ほどから途中、途中で会話が途切れたりしたのは、そのタイミングで犬達を弾いたり、攻撃を避けたりしていたからである。

「……しかし、さすがに疲れてきたな。」

「誰かが変な縛りを作ったせいで、数が減らないからな。」

「限られた条件化でも、しっかりと結果を出していくのが、プロだぞ?」

「なんのプロになれってんだよ!」

「ん~、……犬弾き?」

「そんなプロになりたくないわ!!」

「やり抜いて極めれば、新たな道が開けるかもしれないぞ?」

「ふざけるな!

そんな道、開きたくも「ふざけるなは、こちらのセリフだ!!」うわっと!?」

「よっと。」

 

降り下ろされた鞭を二人は左右に別れて避け、ドマーの方を見ると、怒りで頭のてっぺんまで真っ赤にした彼の姿があった。

「おいおい偽筋、本当に茹で蛸みたいになってんぞ?」

「なんだと!!」

「うぉっと!」

睦月は再び振られた一撃を悠々と避けると、観察する様にドマーを少しの間見つめる。

「……おいおい神無月、そっちの方は任せてんだから、さっさと倒してくれよ。」

「……君も大概無茶を言うね。

あんな筋肉の塊、そんな簡単に倒せるわけ「倒せるに決まっているだろ?」……へ?」

「お前は本当になにを言っているんだ?

お前は仮面ライダーなんだぜ?

そんな偽筋、ど楽勝だろ?」

「……随分と簡単に言ってくれるけ「それに、」……ど?」

「……俺は、こいつなら出来る。って、思った奴にしか頼まんよ。

お前なら出来る。

間違いなく、な。」

自信満々な表情をしながら断言する睦月を、神無月は数瞬呆けるが、

「……まったく、君という人は、本当に人をのせるのが上手いよ。」

そう言いながら彼は苦笑をし、ベストから一枚のステッカーを取り出すと、

「それなら、期待に沿わなきゃね。」

そう言いながら、ドマーへ向き直った。

「ふん、そんなステッカー程度で、この私をどうにか出来る、と?」

「ああ、出来るさ。

それを今、お前で証明する!」

そう言いながらステッカーをドマーへ投げると、ステッカーがどんどん大きくなり、太鼓大の大きさになったそれが、ドマーの体に貼り付いた。

「ぬ!?それがどうした!」

そう言いながら振ってくるドマーの鞭を、神無月は全て避けて懐へ入り込んだ。

「いくぞ!百火両乱(ひゃっかりょうらん)!」

そう叫びながら強く踏み込み、炎の宿した両手で、先ほどのステッカーを強く殴りだした。

 

ードドドドドドドドドドドドドドドドー

 

神無月が殴る度に太鼓の打音を鳴り響き、鳴る度にドマーの体が揺れる。「はぁぁぁぁ!!」

ードドンー

 

最後のニ撃に、今まで以上の力を込めて打ち込むと、より一際高い音が辺りに響いた。

ぐらりっと揺れるドマーの体。

やったか?と神無月が思った瞬間。

「…ぬぅ!!効かぬわぁぁぁぁ!!」

「うわぁ!!

…っ、嘘だろ!?」

ドマーは直ぐに身体中に力を入れ、筋肉を膨張させて体制を立て直しつつ、その時の衝撃を使って神無月と身体に貼り付いたステッカーを弾き飛ばした。

相手が直ぐに立て直したことに驚きつつも、神無月も直ぐに体勢を立て直し、ドマーを真っ直ぐ睨む。

ドマーは笑みを浮かながら立っていたが、さすがに多少のダメージがあったのか、身体が少々ふらついていた。

「……なら、何度でもやるまでだ!」

そう言って踏み出そうとした、その時だった。

「ーーーー!」

叫び声が聞こえた気がして、ふっと、後ろを振り向くと、

「君はなにやってんだ!?」

目に入った光景に、思わず叫んでしまった。

彼がなにを見たのか?

それを語るためには、少し時間を巻き戻すことになる。

 

丁度神無月がドマーへ攻撃を仕掛けたその頃、睦月と大津に犬達が猛攻を仕掛けていた。

「…なあ、こうちゃん?」

「なんだ!?」

「こいつら、さっきより激しくねえか!?」

「ああ、確かに、な!

……あいつを煽り過ぎた、か、な?」

「…だと思うぞ?」

「すまん。」

犬達を弾きつつ、そんな会話を続ける二人。

一見まだ余裕がありそうだが、共に荒い息を吐き始めていた。

そんなことお構い無しに、二人に猛攻を続ける犬達。

二人が同時に犬を弾いた、その時だった。

 

ードドドドドドドドドドドドドドー

 

神無月の方から太鼓の打音が響き、大津は数瞬の間、そちらの方に気をとられてしまった。

だが、それは、

「っ、しょうちゃん!!」

獰猛な狩人である彼らに対して、

「っ!しまった!!」

けして見せてはならない隙だった。

 

大津の意識の隙間を突き、一気に三匹の犬が駆け寄ってくる。

「っそ!!」

慌てて追い払おうと腕を振るが、一匹はそれを逃れ、大津の首もとに飛び付いてくる。

急所を狙う牙を、大津は咄嗟に腕を出して防ぐ。

「っぉぉぉ!!」

噛みつかれた腕からは鋭い痛みが走るが、それも構わずに腕を振り、噛んだ犬を無理矢理引き剥がした。

引き剥がされた犬は宙を舞い、屋上のへりまで飛ばされる。

かつてはフェンスが張られていただろうが、老朽化でぼろぼろになり、今はフェンスがない状態だった。

ここで止まらなければ、死あるのみ。

犬は爪を立てて、必死に止まろうとする。

そのおかげか、勢いは減速していき、ぎりぎりのところで止まることができた。

そして、彼が再び二人に襲いかかるために、足に力を込めた、その瞬間。

 

ードドォンー

 

と一際高い音が響いたのと同時に、彼の足場がぐらぐらと揺れる。

恐らく、老朽化で脆くなっていたところが、今までの戦いの振動で更に脆くなり、今の振動で限界を越えてしまったのだろう。

がらがら、っという音と共に、足場が崩れ落ちていく。

犬はなんとか前足を崩れて無い所へ置くことができたが、崩れる速度が速かったために後ろ足は間に合わず、宙ぶらりんの状態になってしまう。

しかも、上手く爪を引っかけられず、自重でずるずると落ちていく。

必死に爪をかけようと、何度も前足をバタバタとするが引っ掻からず、遂に手が離れてしまった。

空を切る前足を、もう一度伸ばした、その時だった。

「うぉぉぉ!!」

駆け寄って来た睦月が、彼の前足を掴んだ。

睦月は足を止め、その反動を使って、ハンマー投げの要領で犬を放る。

宙を舞いながら帰還する犬と入れ替わる様に、今度は睦月の身体が徐々に落ちていく。

『お前(君)はなにをやってんだ!!』

声をハモらせながら駆け寄る大津と神無月。

「手を伸ばせ!こうちゃん!!」

その声にぎりぎりで体勢を残していた睦月が反応し、必死に手を伸ばす。

足が滑り落ちる寸前に伸ばした二人の手が届き、二人はギリギリのところで留まることができたが、ホッとする間もなく、二人を襲うために犬達が駆け寄ってくる。

「させるかぁ!」

後ろを走る神無月が、そう叫びながらベストからステッカーを取り出すと、床に向かって投げた。

「痺振波(ひしんは)!!」

広がり、手のひら大になって張り付いたそれを、神無月はおもいっきり踏みつけると、それを中心に振動が広がり、その場にいた全員が痺れて動けなくなった。

だが、

「ぬぅおぉぉぉ!」

ドマーは痺れる身体を無理矢理を動かし、神無月達に向けて鞭を振った。

三人に向け、音速を超える一撃が迫る。

「なんの!!」

それに対し、神無月はもう一枚ステッカーを取り出すと、鞭に向けて投げた。

空中で太鼓大に広がりながらその場に留まるステッカーへ、鞭がおもいっきりぶつかった。

 

ぶつかった場所がへこみ、ステッカーが砕かれるかと思われた、その瞬間。

バイ~~ンという間抜けた音と共に鞭が跳ね返り、そのままドマーに襲いかかる、

「ぬおおぉぉ!?」

なにが起こったのか分からず、困惑するドマーを他所に、神無月は痺れて動けない犬達を追い抜き二人の元へたどり着くと、踏ん張り続けていた大津ごと睦月を引き上げた。

「二人共、大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ。

ありが「ふざけんな、馬鹿野郎!!」とぉぉ!?」

「なにが大丈夫だ、だ!

危うく死にかけてんじゃねえか!!

お前は馬鹿か!馬鹿なのか!馬鹿だったな、この大馬鹿野郎!!」

「あ゛~、耳元で叫ぶな、耳が痛い。」

怒鳴り散らす大津に、睦月は目を細めながら耳を塞いでいた。

「だけど、僕も大津の言葉通りだと思う。

なんで、あんな無茶をしたんだ?」

「なんでって、俺はしょうちゃんの友達を辞めたくなかっただけだけど?」

『…………はい?』

睦月の言葉の意味が分からず、二人は揃って首を傾げた。

「言っただろ?

一匹でも殺したら友達辞める、って。

だけど、別に俺は友達を辞めたいわけじゃない。

だから助けた。

それに信じてたしな。

仮に落ちそうになっても、お前か、神無月が助けてくれる、ってな。」

真っ直ぐ見ながら伝えてくる言葉に、大津は顔をしかめながら目を反らしてしまう。

「……でだ。」

「ん?」

「なんで、そこまでできるんだ?

なぜ俺を信じられる?

俺はお前を騙していたんだぞ?」

「……昔じいちゃんに言われたんだ。

『信用して欲しいのなら、まず自分が相手を信用すること。』ってな。

まあ、誰しも人に言えんことなんて、一つや二つはあるもんだ。

今回は、たまたまそれがかなり重かっただけさ。

それにお前は、俺のために命を賭けてくれたしな。」

「命を賭けてって、どういうことだ?」

「さっきドマーが言っていたろ?

反逆者には死を、ってさ。

組織に属していたこいつが、組織に歯向かえばどうなるかを知らないわけがない。

なのにこいつは、俺を救う為に組織に歯向かってくれたんだ。

その後どうなるかを、半ば承知の上で、な。

そんなお前を信じない選択肢は、俺には存在しないよ。」

「……こうちゃん。」

そう言いながら笑って見せる睦月を、大津はなんとも言えない表情で見ていた。

「……さてと、神無月の方はどうだ?」

「………筋肉が鎧の様に硬くて、単純な打撃じゃダメージは与えられなかった。

ただ、音撃は効いていたから、それで攻めればいけると思う。」

「…なるほど、ね。」

 

そう言いながら睦月は、右手の人差し指を額に付けながらドマーを見つめる。

見つめる先にいるドマーは、先ほどのダメージが抜けたのか、しっかりと立ちながらこちらの様子を伺っていた。

「……しかし、意外と律儀な奴なんだな、あいつ。」

「ん?なんでだ?」

「なんでってあいつ、僕達が話終わるのを待ってくれたりするだろ?

だから、律儀だなって。」

「ん~、そんな奴だったかな?」

「そんなわけねえだろ。」

『え?』

「残念ながら、あの偽筋が仕掛けないのは、そんな理由じゃないよ。

もっと個人的な理由だ。

そしてそれが、俺があいつを偽筋と呼ぶ由縁だ。」

「……嫌味じゃなかったんだな、それ。」

「最初は嫌味だったよ。

でも、あることに気づいてからは、マジで言っている。」

「あること?」

「ああ。

ある意味、当然と言えば当然のことをな。」

 

そう言いながら、睦月は嘲笑を浮かべてドマーを眺める。

その視線に気づいたのか、ドマーは再び顔を真っ赤にするが、さっきと違い、鞭を振ろうとしない。

「……ふむ、煽りに耐性がついてきたか。

もう一振りさせられるかと思ったが、中々上手くはいかないか。」

「後が大変なんだから、あまり煽んなよ。」

「勝つ為にうてる手をうっているだけだ。

それはそうと、神無月に一つ聞きたいんだが、良いか?」

「ん?どうかしたかい?」

「お前が今さっき出した鞭を跳ね返したあれ、複数だせるか?」

「反射板のことか?

ああ、ステッカーは四枚までなら同時に、自由な組み合わせでだせるよ。」

「そうか。

……なら、頼みたい奴の倒し方があるんだが、頼めるか?」

「…できる範囲内で良いのなら。」

「安心しろ、そんな無茶は言わないから。」

そう言いながら睦月は、不敵な笑みを浮かべた。

 

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