再び前後編です。
後編も急ぎ書き上げます。
「……っていうかお前ら、いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」
「そりゃまあ、なあ?」
「共通の話題があれば、ねえ?」
「……さようで。」
ニヤリと笑みを浮かべながら顔を見合せる二人に、俺はそう言いながらため息を一つ吐いた。
ちなみに、共通の話題の中身は聞かないでおく。
なんとなく想像はつくんでな。
「…まあ、お前と真の友にまた一歩近づいたし、お前に友達が増えたのだから、ここは喜ぶべきなんだろうな。」
「真の友?」
「……ああ、あれか。
まだそんな恥ずいこと言っているのか?」
「恥ずい言うな!
別に間違ってないだろ?」
「……ごめん、意味がわからないから、説明お願い。」
「ん、こいつの持論でな。
【本音を言えん間柄は、真の友に非ず。
喧嘩し、仲直りして、判り合ってこそ、友なり。】なんだと。」
「……どんな格好つけだ?」
「格好なんてつけてねえよ。
本音を言えない仲なんて、ただの馴れ合いだろ?
そりゃ、お前みたいに言えないこそあるかもしれないけど、普段の会話位は本音で言って欲しいし、お前ともっと判りあいたい。
だから、今回最悪なことが起きたけど、お前のことをまた一つ知れたことは、素直に嬉しいと思っている。」
「……はぁ~、まったく。
なに馬鹿なこと言っているんだよ、お前は。」
ニヤリと笑って見せる俺に、生助は困った様な笑みを浮かべていた。
「……さて、いい加減行くとしよう。
本気でそろそろ人が来そうだ。」
「だな。
だれかさんが犬を愛でてなければ、もっと早かったんだけどな。
今更言ってもしょうがないが、な?」
「そうだね、もっと早く行けたよね。
今更言ってもしょうがないけど、ね?」
「~~だぁぁ!悪かったって言っているだろ!」
そう言いながら扉に向かおうとした、その時だった。
「へ~、ずいぶんと仲が良いんだね。」
『!?』
突然扉の向こうから聞こえた言葉に俺達が身構えると、クスクスとの笑い声共に中学生位のメイド服の少女が、扉を開けて現れた。
「あなたは!」
「お前は!」
「久しぶり、犬正。
あの時以来かな?」
「え?」
「……知り合いなのか?」
「ああ、二度と会いたくなかったけどな。」
そう言いながら睨む神無月を、俺は戸惑いの目で、生助は驚きの表情で見ていた。
「……なんでお前がここにいるんだ、孔月(こうげつ)。」
「そんなの、ご主人様の指示に決まっているでしょ?
大きな音が響いているから、見て来てくれ。って、“わ、た、し”、に命令されて来たの。
わたしや周りは、ただ珍走族が走り回っているだけだと思っていたけど、的確な指示のおかげで、こうして反逆者達を見つけることが、出来たんだもの。
流石はご主人様よね~。」
そう言いながら笑顔で、誇らしげに胸をはる少女。
それだけを見るなら、多分微笑ましい光景なのだが、
「……なあ、二人。
一つ聞きたいんだが、良いか?」
『なんだ?』
「……こいつ、何者なんだ?」
そう言いつつ俺はひきつった笑みを浮かべ、背筋に冷たい汗を感じながら、孔月と呼ばれた少女を睨み続ける。
一見、無防備に自分の主人の自慢話をしている様に見えるが、其の実一分の隙も見当たらないのだ。
表情も満面の笑みを浮かべているが、目は獲物を狙う狩人の様に鋭かった。
「……この組織、ルートキットは、ボス直属部隊とその下の7つの部隊で構成されている。
そして、彼女は7つの部隊の一つ、ルシファーの部隊長だ。」
「……なるほど、道理でな。
まったく、一番上が直々に来るとは、ご苦労なこって。」
今までの敵と違う雰囲気に気圧されそうになりながらも、俺は軽口を言いながら真っ直ぐ少女を見上げた。
「………へ~、いが~い。
犬正と一緒にいるぐらいだから、てっきりただのお人好しか、超絶なお馬鹿さんかと思っていたけど、思ったよりもしっかりとした目をしているんだね。
見直しちゃった。」
「は、はぁ。
そりゃ、どうも。」
「……もっとも、ほとんどはその通りだけどな。」
「僕について来たのも、半分は勢いだったみたいだしね。」
「……うるさい。」
……まあ、実際その通りだから、強くは言い返せないんだけどな。
「ふ~ん、そうなんだ~。
……ねえねぇ、そういうことなら私達の仲間にならない?
もし仲間になるのなら、命は助けてあげてもいいよ?」
「ほ、本当ですか!?」
「うん、もちろん。
君のしたことも不問にしてあげる。」
彼女の言葉に反応した生助に頷き、笑みを浮かべながら言う彼女に、俺はいぶかしげた。
「……ずいぶんと気前が良いな?
普通、こういう風に反抗した奴って、問答無用で殺されるもんじゃないのか?」
「まあ、普通はね。
でも、その人物が優秀で組織に忠誠を誓うなら、許す場合もあるんだ。」
「………へ~、なるほどね。」
そう言いつつ俺は、右手の人差し指の先を額につけながら、彼女を見つめ続ける。
「……ちなみに、下手な抵抗は止めておいた方がいいと思うかな?
私、強いよ?」
彼女がそう言った瞬間、彼女を中心に風が舞い、それと同時に凄まじい殺気を感じた。
その殺気に今すぐ逃げ出したい衝動に駆られるが、膝が震えて動くことが出来なくなっていた。
「……っ、…みたいだな。
………ところで、神無月。」
「……なんだ?」
「仮にあいつと戦ったとして、勝つ自信はあるか?」
俺のその問いに神無月は答えず、孔月を黙って睨み続けていた。
「……なるほど。
それはちと厄介だな。」
神無月の無言の返答に、俺は左手を腰に当て、右手で頭をガリガリと掻きながらため息を一つ吐いた。
「……まあ、しょうちゃんと同じ組織に入るわけだし、命がそれで助かるのなら、それも悪くないかもな。」
「ふふ~ん、そうでしょ、そうでしょ~。」
と、俺の言葉に上機嫌に頷く彼女だったが、
「だが、断る。」
「……へ?」
「……は?」
次の俺の言葉に、その場に居た全員が、口をポカーンと開けながら固まった。
全員そのまま数秒間固まっていたが、生助がいち早く動き出した。
「いやいやいやいや、お前なに言っちゃってんの!?
ふざけるタイミングを考えろぉぉ!」
「ん?
いや、別にふざけてはいないぞ?
至極真面目に答えていたが?」
「今の受け答えのどこがふざけてないと!?」
「ん~、そんなにふざけている様に聞こえたか。
まあ、なんにしろ落ち着け。」
「落ち着いていられるか!
せっかくお前が助かるチャン「はい、ダウト。」……す?」
「お前はそれ、本気で言っているのか?
この世界の秘密を知ってしまった奴を野放しにする様な、そんな甘い組織だと、お前は本気で思っているのか?」
「そ、それは……。」
そう言いながら生助は、俺から目を反らした。
まあ、すがりたい気持ちはわからなくもないんだけどね。
だけど、
「………俺はこの目で見たんだ。
役にたたないから。という理由で、躊躇なく殺す奴らをな。
それにな、彼女が保証したのは命だけであって、俺の身は保証はしていない。」
「………?
同じじゃないのか?」
「普通ならな。
だが、相手が世界的秘密結社なら、別に考えた方が無難だろ。
例え四肢がもがれ、身体も内臓はぼろぼろで植物状態であったとしても、命があることには違いないからな。」
「それはまた、随分と極端で物騒な例だね。」
「そうか?
これでも想定する中では、一番マシだぞ?」
「え?それでか?」
「ああ、意識がない分、痛みも苦しみも感じないからな。
他のやつよりは、幾分かマシと言える。」
「他のって、例えばなにが考えられるんだ?」
「うーん、まず二度と逆らえない様に洗脳するのは第一前提として、あとは用途によって改装手術。と言ったところかな?」
「用途?」
「ああ、例えば戦闘要員なら使い捨てのきく戦闘員にして、最前線に送り出すだろうし、慰安要員なら性転換させて、昼夜問わずに使わせるだろうな。
まあ、慰安用なら需要と供給の少ない男娼にする可能性も、なきにしもあらずだな。」
「そ、それはエグいな。」
「いやいや、自分の意思で動ける分、まだこれの方がマシさ。
想定する中で一番最悪なのは洗脳処置はせず、手足の腱を取り除かれた状態で再生能力特化に改造され、永続的に拷問地獄。
足を噛み砕かれ、内臓はえぐり出され、股間は握り潰され、胸は引き裂かれ、首は不自然に折れ曲がり、顔はタコ殴りにされ、目は潰され、口を引き裂かれても、心臓と脳さえ無事なら次の日には元通りになる仕様なので、ぼろ雑巾の様になるまでボコされる毎日。
洗脳されていないから、思考がまともな故に苦しみが続き、狂おうとしても再生能力特化のせいで、次の日には元通りになっているという生き地獄。
しかも、時々道具を使ってくるのだが、それもエグい。
爪と指の間に鉄串を刺し、ピーラー(皮剥き器)で肉を少しずつこそぎ取られ、卸し金で肘や膝をゴリゴリとし、時に粉砕器で下半身を削り取「ストォォーーーップゥゥゥゥ!」……ん?どうした?」
「もういい!
もう止めてくれ!
聞いてるだけで痛くなってくる!!」
「ぞわぞわが止まらないんだが。」
そう言いながら二人して腕を擦っていた。
うーん、そうは言っても、
「これからが本番なんだけどな~。」
「なんでお前がノリノリなんだよ!
お前がやられることを言ってんじゃないのか!」
「そんなにやられたいのか!?
Mか?M男なのか!?」
「んなわけあるかぁ!!
……まあしかし、………そういう話だったのを、すっかり忘れていたよ。」
『おいおい。』
「あはは、わりぃ、わりぃ。
だけど、お前達はそうするつもりだったんだろうが!」
ガクッと肩を落とす二人を尻目に、俺はそう言いながら彼女の方を向きつつ、ビシッと指をさすと、
「い、いや~、流石にそこまでは~…。」
「あ、あれぇ~?」
両腕を擦り、表情を引きつらせ、ドン引きしながら彼女はそう答えた。
…というか、なんでやる側がドン引きしているんだろ?
「……と、とにかく俺はお前達を信用できん。
だから、組織に入る気もない!」
俺がキッパリと言い切った後、少しの間沈黙が辺りを包んだ。
「……そう、なら覚悟は出来ているよね?」
そう言いながら彼女は、重なり合った孔雀の羽根を取りだすと、扇の様に広げだした。
そして、半月状にまで広げた、その時だった。
「お待ちくださいませ、天慢寺(てんまんじ)様。」
後ろから聞こえたその言葉に、彼女はピタリと動きを止めた。