「………問題ない様なので、話を続けるぞ。
さっき生助は、周りの奴らを十狼士のメンバーだと言っていたが、ここには八人しかいない。
残りの面子はどこにいるんだ?」
「……答えんと駄目か?」
「いや、半分確認みたいなものだから、答えたくなければそれでも良い。」
「……そうか。
……いないのは第1位と第3位なのだが、第1位は今欠番中でな、今の十狼士は元々人数が少ないのだ。」
「欠番?」
「ああ、前の第1位はそやつの、大津の母でな、順夜祭の時はいつも圧倒的な力を見せつけておったよ。
だから、半端な強さでは私はもちろん、他の人狼も認めなかったから、未だに欠番なのだ。」
「へ~、お前のお母さん、すごい人だったんだな。」
「正直なところ、よくわからん。
なにせあの人、俺がガキの頃に死んだからな。
もう顔も覚えてないよ。」
そう言いながら生助は、ため息を一つ吐いた。
「んで、もう一人は?」
「3位の者にはなにかあった時の為に、他の一族の者を守ってもらっておる。」
「はん、あんな裏切り者、いない方がせいせいするぜ。」
「まったくだな。」
「裏切り者?」
「ああ、そうだ。
あいつは俺達に、人と争うべきではない、仲良くやってくべきだ。と、言ってきたのさ。
優れた力を持ちながら、その力を人狼族の為に使わないなんて、裏切り者以外のなんでもない!」
そう言い息巻く男に、同意する様に周りから頷いたりしていた。
「……ふーん。」
そう言いながら俺は、人差し指をおでこにつけつつ、周りを見渡した。
周りの人狼達がにやりと笑い、神無月達が周りを睨む中で、おじいさんは目を細め、天慢寺はなにかを考えているかの様に、怪訝な表情をしていた。
………うん、今の言葉に感じたものは気のせいじゃなさそうだ。
「………なあ、生助。」
「なんだ?」
「二つ確認、良いか?」
「良いぞ、なんだ?」
「一つ、お前以外の人狼って、普段なにやっているんだ?」
「……基本的に人間の中で、一緒に仕事したり、生活している。
だけど、上手く馴染めない奴もいて、そういう奴は仕事もしないで、他の人狼の稼ぎで暮らしている、とは聞いたことはある。」
「……まあ、要はヒモか。」
「ああ、そういうことだ。」
「へ~。」
そういう言いながらもう一度見渡すと、渋い顔をしている奴が何人かいた。
「……んじゃ、もう一つ。
お前、順位は何位?」
「……………まだ順位はない。
そもそも順夜祭には、二十歳を越えなきゃ参加出来ないんだ。
一応、来月から参加予定だったんだが、通常は見学位は幼い頃からさせているらしい。
まあ、要はずっと省かれていた、ってわけさ。」
「……ふむ。
…ちなみに、その他の交流は無かったのか?
」
「いや、満月以外の日の集まりには、何度か呼ばれたことはある。
もっとも、呼ばれた理由はただの給仕役だった上、俺や母さんの悪口ばっかり聞かされてたけどな。」
「……ひでえ話だな。」
「まあ、そうは言っても、主だってしてたのはここにいる十狼士の人達と一部の人達だけで、香(かおる)さん以外の人達は命令されて仕方なく、って感じだったかな。」
「香さん?
誰だ、その人?」
「……この場にいない第三位の方だ。
よく飲みに連れて行かれては、潰れるまで飲まされる。
給仕をやろうとしても、『俺の性に合わないから止めろ!
それよりも飲むのを付き合え!』って言ってくるんだ。」
「あやつらしいの~。」
「しかも、酔いが回ってヤバくなって、飲みのを拒むと『俺の酒が飲めないのか!』って、良く言われている。」
「それはまた、随分と強引な方だな。」
「ああ。
しかもあの人、寝る時は腹出して寝るから、こっちは風邪引くんじゃないか?って、心配になるし。
本当に困った方だよ。」
そう言いながら深くため息を吐く生助だったが、その表情はどこか優しかった。
「……なるほど。」
それを見ながら俺は、人差し指をおでこにつけたまま目を細めた。
そして、人差し指をゆっくりと離すと、俺はおじいさんに向き直って、深く頭を下げた。
「………なんのつもりだ?」
「……あなたの思いを、ふいにしてしまったことを含め、生助を巻き込んだこと、お詫びします。」
「……お前がしなくとも、いずれはこうなっていたのだろう。
だから、気にすることではない。」
周りに怪訝な表情で見られながら、おじいさんはゆっくりとため息を一つ吐いた。
「……そう、成るように成っただけだ。」
まるでおじいさんは、自分に言い聞かせる様に呟いた後、目を静かに閉じてしまった。
「………さて、確認も聞くことも終わったし、やるか。」
そう言いながら数歩前に出る俺を、その場の全員が怪訝な表情で見てくる。
「ん?なんだよ、やるんだろ?
早くかかって来いよ。」
そう言いながら誘う様に、人差し指をクイクイとやると、周りがざわっと殺気だった。
「……てめえ、ふざけているのか?」
「ふざける?
雑魚相手には勿体ないくらいに、誠実に言っているつもりだけど?」
「ちょ、お前、止めろって!
マジで落ち着けよ!」
不敵に笑う俺に、周りが更に殺気だっていく中、生助がそう言いながら俺の肩を掴んだ。
「落ち着け?なんでだ?」
この時俺は、いったいどんな顔をしていたのだろうか?
生助は俺の表情を見て、酷く驚いた表情をしていた。
「あのな?
これでも俺、今相当頭にきてんだぞ?」
「な、なんでだ?」
「そんなもん、自分の大事な親友や、敬意を払うべき人を馬鹿にされたからに決まってんだろうが!
それ以外に理由あったら、逆に俺が聞いてみてえよ!」
「え、あ、うん、ごめん。」
俺の逆ギレに引きぎみに謝る生助だったが、俺は気にせずに奴らに更に数歩近づく。
「いいか、もう一度言うぞ!
てめえらは、俺に一番やっちゃなんねえことをやったんだ!
お前らの覚悟の有無を聞く気は一切ねえ!
その下らねえプライドごとぶっ潰してやるから、さっさとかかって来やがれ、三下共ぉぉ!!!」
その言葉を受け、俺に一斉に飛びかかる人狼達。
それに対して身構えた、その瞬間、四本のプラグが飛び交い、コードが奴らの足を引っ張り、手を払い、重心をずらして、奴らを遠ざけた。
「…………なに余計なことをしてんだ、お前は。」
そう言いながら俺は、プラグを戻しながら静かに近づいてくる神無月を睨み付ける。
「誰が助けろなんて言った!!」
「ん?いや、誰も言ってないよ?」
「じゃあなんで手をだした!!」
「友達が友達を助けるのに、特に理由がいるのかい?」
「…………………はい?」
「頼れよ、僕達は友達だろ?」
「い、いや、で「それに、だ。」も?」
「友達を馬鹿にされて怒っているのが、君だけと思ったかい?」
そう言いながら鋭い目付きになる神無月を見て、俺は頭を掻きながらため息を一つ吐いた。
「……引かねえんだな?」
「勿論だよ。」
そう言いながら神無月はベルトを取り出し、腰に装着してスイッチを押した。
「変身!!」
『仮面ライダーハッカー ディスプレイフォーム。』
「……そっか。
なら、一つだけ言っておく。
こいつらは…。」
「大津と同じ組み合わせにする必要はない、だろ?
彼と組み合ったのは僕だよ?
わからないわけないだろ?」
驚きの表情をする俺を見ながら、神無月はイタズラに成功した子供の様に笑みを浮かべていた。
「……わかっているなら良い。
さっさとフォームチェンジさせろよ。」
「無論だよ。」
そう言いながら神無月は、ディスクを二枚ドライブに挿し込んだ。
『仮面ライダーアギト!』
「変身!」
『仮面ライダーキバ!』
「
ーカプ、チューー
変身!!」
「未来の可能性と闇の王の力、使わせていただきます!!」
『ミクストール!
仮面ライダーハッカー シャイニング “ロード” オブ ザ ダークネス!』
ウィンドウが弾けると、中から赤のプロテクターの上に黒のベスト、額に左右対称に広がる金色の角を持つ戦士が現れ、隙無く構えた。
「さて、やろうか?」
「ああ、じゃあそっちの三匹は任せた、こっちの四匹は俺に任せ「ちょっと待て。」……なんだよ?」
「なんで君の方が数が多いんだ?
普通は変身している僕に比重を寄せるだろ!?
僕がこっちの五匹をやるから、君はあっちの二匹にしておきなよ!」
「なんだよ、それ!
ズルいじゃん!
別に俺の方が多くても良いだろ!?」
「良くはないよ!
僕の方が君より戦えるんだぞ?
それなのに、君に戦わせてどうするんだ!
5:2は譲らないぞ!!」
「4:3!!」
「5:2!!」
「ごちゃごちゃうるせえぇぇ!!」
『ん?』
疑問符を浮かべながら声の方を見ると、一人の人狼が飛び掛かってきた。
降り下ろされた一撃を難なく避けた俺達を、唸りながら睨み付けていた。
「好き勝手言いやがって、あいつを倒したから調子に乗っているんだろうが、残念だったな!
あいつの順位は第10位、つまり我々の中で一番最弱!
お前の技はあいつに効いたかもしれないが、第5位の俺に効くと思うなよ!
死にさらせばぁふぁだあああぁぁぁぁぁ!」
叫び声を上げながら男は、俺達に再び襲いかかろうとするが、音もなくその間に割って入った人物の強烈なアッパーを受けて、男は奇声を上げながら宙を舞い、そのまま縁を越えて落ちていった。
「……まったく、なんで人の問題に、こうも首を突っ込むかね~。
おかげで俺も参加するほかないじゃないか。」
ほとほと呆れたという表情をしつつ生助(人狼Ver)は、俺達にそう言いながらため息を一つ吐いた。
「よく言うよ。
本当はやりたくてしょうがなかったくせに。」
「まったくだ、人を言い訳の材料にするなんて、なんて奴だんだ!」
「はて?
俺にはなんのことだか、さっぱりと?」
そんなことを言いながら互いにニヤリと笑い合うと、互いに背中合わせになって襲撃に備える。
「…しかしさっきの奴、色んな意味でテンプレ通りの奴だったな。」
「たしかに。
っていうか、あいつ大丈夫なのか?」
「まあ、人狼族は基本的に頑丈だから大丈夫だよ。
もっとも、頭から落ちればその限りではないけどね~。」
『おいおい。』
「大丈夫大丈夫。
混ざりものって言われた俺でも、体勢を整えるぐらいは出来るんだ。
生粋の人狼が出来ないわけがないよ。」
「…まあ、そうだよな。」
「だよな~。」
乾いたと笑いをしながらそう答える生助に、俺達は若干引きながら頷くしかなかった。
「さて睦月、相手にする数は3:2:1で行こう。
さっき君は一人倒しているんだ、それで良いだろ?」
「………わかった、それで良いよ。」
「うし、決まりだな。
なら俺は、目の前の二人を『なに言ってだ、お前(君)は?』………へ?」
『お前(君)の相手は、あいつだ。』
俺と神無月が声を揃えながら指差した方を生助が見ると、怪訝な表情をした第2位の男がそこにいた。
「……いやいやいやいやいやいや!!
二人してなに言っているんだ!?」
「ん?
俺達、なんか変なことを言ったか?」
「いや?
そんなことはないだろ?」
「いやいや!言ってんだろ!
相手は一族の第2位なんだぞ!?
わかっているのかよ!?」
「そんなのさっき教えてもらったよ。
それで?
それがどうかしたか?」
「……へ?」
「……君があいつのなにを恐れ、どれくらい強いかは僕達にはわからない。
けど今の君の強さなら、さっき戦った僕達が一番わかっている。
その上で、君ならいけると思っているよ。」
「今夜は満月なのだから、本来なら順夜祭なんだろ?
せっかくなんだから、あいつとの上下の格付けを済ませて来いよ。
……まあ、どうしてもやりたくないと言うなら、俺がやるからそれでも構わんよ。
あいつの顔に、グーパンチを入れたいんでな。」
「ちょっと待て。
そういうことなら、僕にやらせて欲しい。
僕自身、あいつの言動には腹がたっていたんだ。」
「いや、俺が!」
「いや、僕が!」
「俺!」
「僕!」
「い、いや、ちょっと待て!
誰もやらないなんて一言も言って『じゃ、任せた。』……うぉい!」
まるでコントの様なやり取りに、俺と神無月は意地の悪い笑みを浮かべながら忍び笑いをする。
「……大丈夫、君ならやれる。」
「あいつとは、色々と思う事があるんだろ?
しっかり決着をつけろよ。」
「君の邪魔はけしてさせない。」
「周りの三下の相手は、俺達に任せろ。」
『だから、しっかり勝ってこい(きなよ)!
生助!』
「こうちゃん、神無月。
……わかった、背中は任せたよ!」
「おう!」
「任せろ!」
その言葉を受け、駆け出す生助を背中越しに感じながら、俺は安堵のため息を一つ吐いた。
「……ふぅ、これでお膳立ては済んだかな?」
「ああ、大丈夫さ。
あとは彼次第かな?」
「……その様子だとおじいさんの本当の目的、お前も気づいたみたいだな。」
「まあ、あの会話を聞けば、なんとなくはね。
しかし、君はなかなかの演技派だね。」
「ん?なんでだ?」
「なんでって、さっき奴らの前で大見得きったのは、大津を参加させるためだったんだろ?」
「……一応はな。」
「へ?一応?」
「ああ、あの時は既に八割方キレていたからな。
成るように成れば良い、とまで思っていたから、悪いがそこまで深く考えてなかった。」
「………じゃあ、あの時君は……。」
「半ば本気で一人でやるつもりだったが、なにか?」
「………おいおい。」
若干呆れた声色の神無月を他所に、俺は気を取り直して構え直すと、周りの人狼達がじわじわと距離を詰めていた。
「…さて、奴(やっこ)さんもやる気だし、俺達もやるか。」
「ああ、そうだな。」
そう言いながら神無月は左半身になり、左手の人差し指と中指を揃えて、相手に向けた。
「……なあ、神無月。」
「ん?なんだい?」
「それ、俺も一緒にやって良いか?」
「それって、これ?」
そう言いながら神無月は自分の左手を指差すと、俺は頷いて肯定した。
「別に構わないけど、なんでだ?」
「そんなもん、格好良かったからに決まっているだ「本当か!?やっぱ、そう思うか!?」…ろぉぉ?」
「いや~、俺も格好良いとは思っているんだけど、なかなかみんなわかってくれなくてさ~。」
共感してもらえたのが、よっぽど嬉しかったのだろう。
敵の目の前にも関わらず、こちらを向きながら笑いかけてきた。
……まあ、その気持ちはすごくわかるけどね~。
とは言え、いつまでもこうしているわけにも行くまい。
「……で?
やって良いのか?」
「ああ、良いよ。」
「悪いな、ありがとう。
代わりと言ってなんだが、助けが必要ならば、いつでも呼んでくれよ?」
「いや、ちょっと待て。
どうしてそうなる。」
ジト目で睨む神無月に俺はニヤリと笑って見せると、素早く右半身になり、右手の人差し指と中指を相手に向け、二人同時にこう言った。
『Are You Ready?』
次回よりバトル回。
次のアップは8/4(土)を予定しています。
謎解き解答。
解る方は速攻で解ったと思いますが、それぞれのはいの数は、五十音の横の列、縦の列に対応しています。
例えば、一番最初は1、1なので、あ。
次は11、1なので、ん。
この要領で解くと、この様になります。
「あんた、アホなのか?」
「いや、アホなのか。」
「しらんよ、そんなこと。」
と、なります。
お付き合いいただき、ありがとうございました。