バトルパート 神無月編です。
睦月が戦っていたのと同じ頃、神無月もまた三人の人狼を相手にしていたのだが、
「おらおらおらぁぁぁぁぁ!!」
「遅い遅い遅いぃぃぃぃぃ!!」
「貧弱貧弱貧弱ぅぅぅぅぅ!!」
「くっ。」
素早い連携攻撃の前に、防戦一方になっていた。「はっ!」
「なんの!」
「当たるかよ!」
相手の攻撃の合間を縫って攻撃を仕掛けるが、全て空を切り、翻弄され続けてしまう。
「ほらほらほらぁぁ!!」
「どうしたどうしたどうしたぁぁ!!」
「うらららららぁぁぁぁ!」
「ぐあっ!!」
ヒット&アウェイを繰り返しながら、徐々に弱らせようとする様は、まるで猫がネズミをなぶって遊ぶかの様だった。
否、実際のところ、彼らにとっては遊びも当然だった。
それが証拠に、彼らの攻撃はチマチマと翻弄するだけので、決定的な一撃は与えないでいた。
「っ!」
「よっと。」
「当たらねえよ~だ。」
おどけながら神無月の攻撃を避け、距離をとったその瞬間、神無月はベルトに手をかざした。
ディスクが高速で回転する音が響いた次の瞬間、神無月の右腕と右目が赤色に、左腕と左目が青色に、プロテクターは赤と青のストライプに変化した。
勢いよく両手を振ると右手に長剣、フレイムセイバーが、左手にフランベルジェ、ガルルセイバーがそれぞれ握られており、無音の気合いと共に駆け出して距離を詰め寄ると、気合いと共に剣を降った。
「はっ!!」
「ハズレ~~!」
「どこ狙ってんだよ。」
だが、それらの攻撃は何度やっても空を切り、逆に振った後の無防備になった体に彼らの攻撃が襲う。
「そらそらそらそらぁぁぁ!!」
「ほれほれほれほれぇぇぇぇ!!」
「くそっ!!」
「これでもくらえぇぇ!!!」
「ぐぅぅぅ!!」
二人の攻撃を耐えていたところへ、もう一人が叫び声を上げながら鋭い蹴りが飛ばしてきた。
蹴り自体はなんとかガードできた神無月だったが、それでも屋上の淵まで飛ばされてしまう。
なんとか体勢を整えながら足に力を入れて踏ん張ると、手を再びベルトにかざした。
再びディスクが高速回転すると、今度は右腕と右目が緑色に、左腕と左目が濃い青に、プロテクターは緑と濃い青のストライプに変化する。
体が止まるのとほぼ同じタイミングに腕を振ると、右手に緑色の銃、バッシャーマグナムが、左手に両側に刃の付いた棍、ストームハルバードが握られていた。
それらを強く握りしめると、バッシャーマグナムの引き金を引きながら駆け出していく。
たが、
「よっと。」
「ほっと。」
「ちょろい、ちょろい。」
彼らはそれもドッチボールの球を避けるかの様に、ひょいひょいひょいひょい避けていく。
また、
「はっ!!」
「当たらねえっての!」
「どこ狙ってんだよ!」
「ぐぁ!」
接近してストームハルバードを振っても避けられ、先ほど同様になぶられるだけだった。
それでも神無月は武器を振るい続ける。
だがやがて、
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
荒い息を吐きながら、その場に止まってしまうのだった。
「………ふん、どうやらここまでの様だな。」
「やれやれ、仮面ライダーっていうのは、この程度の力しかないのか。」
「しょうがないよ、俺達相手では、誰だってこんなものさ。」
「それもそうだな。」
彼らはそう言うと、馬鹿みたいに高笑いを始めた。
そんな彼らを前に、神無月は数度深呼吸をすると、
「…う、…れ……分かな。」
そう呟きながら再びベルトに手をかざすと、目とプロテクターが赤色に変わる。
「ん~、どうした、どうした~?
最初の姿に戻るとは、いよいよ覚悟を決めたか~?」
「なんだ、やっと覚悟を決めたのか。」
「覚悟を決めんのが、遅いんだよ!」
口々に好き勝手言いながら、下卑た笑みを浮かべていた彼らだったが、
「………人の覚悟を問う前に、自身の覚悟を問いたらどうなんだ?
ヒモ共。」
神無月が静かに返したその言葉に、彼らは笑うのをピタッと止め、唸りながら神無月を睨み付ける。
「なんだい?
せっかくいい気分だったのに、突然現実に引き戻されて腹がたったかい?」
「うるさい!
そもそも、なにを根拠に我々をヒモと言ってきたのだ!!」
「さっき睦月達がヒモの話をしていた時、君達は顔をしかめていただろ?
更に君達は先ほど、仲間であるはずのドマーを馬鹿にしていただろ?
仲間でさえ軽んじる君達が、一般生活で他の人達と上手く仕事ができるとは、到底思えない。
故に、働かない君達は他の人達のヒモになるしかない。
と思っているのだけど、どこか違うかい?」
「うぬぬぬぬ!!
言わせておけば、好き勝手言いやがって!!
そもそも、なんで俺達がお前達下等生物達と一緒に仕事しなければならないんだよ!」
「その通りだ。
そういったものは、我々上位の者でなく、下の者達にやらせておけば良いんだよ!!」
「………で?
だから、君達は働かなくて良いと?」
「ふっ、それは少し違うな。
我々はあ、え、て、働かないでいてやっているのだ!!
我々とて、働くことはやぶさかではない。
だが、それでは下の者達の仕事を奪ってしまうことになる!
更に、我々に奉仕をする機会を無くしてしまうことにもなってしまう!
我々はゆっくりとでき、下の者達の我々に奉仕ができるというWinWinの状況になるのだ!
故に、我々は働かないでいるのだ、わかったか!」
「……ソウカイ、ソレハシツレイシマシタネ。」
「……感情が一切こもって無い様な気がするが、気のせいか?」
「キノセイダロ?
キニスル。」
「いやいやいやいや、今のは明らかにおかしいだろ!!
馬鹿にしているのか!?」
「そこ、疑問系じゃなくて断言系ね。」
「ふざけるなぁぁぁぁ!!!」
断言する神無月に対し、これ以上ないくらいにぶちギレた男は一気に距離を詰めると、神無月に向けて今日一番の鋭い左蹴りを放った。
迫り来る蹴りの前に神無月は特に焦ることもなく、ただ漫然と右腕を構えるだけだった。
その間も更に加速した一撃は、吸い込まれる様に神無月を襲い、
ーパァンー
という強烈な炸裂音が辺りに響き渡る中、男達は勝利を確信していた。
なぜなら、先ほどからこちらの攻撃は面白い様に入るのに、神無月は一撃もいれられていない上、息も既に切れていた。
そんな奴に負けるわけがない。
そう思っていた。
否、普通ならその通りなのだ。
だがしかし、
「…なぁ!?」
彼らは忘れていた。
「……さっき言っただろ?」
彼が、神無月が普通の戦士でないことを。
「もうこれで十分だな、っと。」
そう言いながら腕で足を受け止めた神無月に対し、男は困惑していた。
それはそうだろう、先ほどまで効いていたものが通用しなかった。
そのショックに、男の動きが完全に止まってしまった。
「ごふっ!?」
『うぉぉ!?』
その一撃だけで男の体は吹き飛び、後ろにいた男達に激突した。
男達はなんとか踏ん張って堪えたが、それでも数メートルを土煙を上げながら後ろの方へ下がっていく。
ようやく止まり、二人から離れた男がゆっくりと立ち上がりながら、怒りに燃えた目でこちらを睨み付けてきた。
「ぐぅぅぅぅ、おのれぇきさまぁぁ!!
さっきまで手を抜いてやがったなぁぁ!
舐めた真似するんじゃねえぇぇ!!」
「………勘違いをしないでほしいな。」
「なにぃ?」
「僕は一切手を抜いていないよ。
最初から今まで、常に全力だったよ。
だからこそ今の状況なのさ。」
「……どういうことだ?」
「残念ながら、僕は敵にべらべらと手の内を話せるほど、豪胆な性格はしてないよ。
でもまあ、強いて理由を上げるとしたら、それは僕があらゆる困難を真っ正面からぶつかり、努力を持って越えていく戦士、仮面ライダーだからだ。
あともう一つ、君達に言っておこうか。
今の僕は、かなり強いよ。」
そう言いながら神無月は、徐々に腰を落としていき、
「行くぞ!!」
とのかけ声と共に駆け出すと、目の前の敵に肉薄して一撃を放った。
「ぬぅぅ!!」
強く踏み込みからくり出されたその一撃は、相手を端の方まで飛ばすのに十分過ぎる一撃で、受けた男は危うくビルから落ちそうになるが、なんとか堪えてみせた。
追撃するために足に力を入れたその時、左右から殺気を感じた神無月は素早く後ろへ飛び退いた。
彼が下がった瞬間、彼の居たところへ爪が上から、横から通過する。
「ふう、危ない、危ない。」
そう言いながら構える神無月の視線の先には、唸り声を上げながらこちらを睨む二人の人狼がいた。
そこへ先ほど殴った人狼が混ざると、強く唸った次の瞬間、一斉に神無月に襲いかかってきた。
凪ぎに、袈裟に、払いに、唐竹に、あらゆる方向からくる一撃をかわし、払い、時に受けながら神無月は三人の猛攻に耐えていた。
そして、二人が同時に攻撃を仕掛け、避けた神無月にもう一人が襲いかかってきた、その瞬間。
神無月は襲いかかってきた男に向けてショルダータックルを敢行し、男ごとその場から距離をとった。
神無月が止まると慣性の法則で男は吹き飛び、ゴロゴロと転がっていくのを横目で見つつ、神無月はベルトに手をかざす。
辺りにディスクが高速で回転する音が響くと、赤と青の戦士、フレイムガルルに変化した。
両手に剣を現出させながら振り返ると、追いかけてきた二人が爪を振り上げながら襲いかかってきた。
だが、それに対しても神無月は焦ることなく、降り下ろされた爪を剣で受け止めた。
『な!?』
受け止められたことにショックを受け、僅かに止まってしまった男達の一方に前蹴りを入れて引き離すと、もう片方は剣で弾き返した。
そして、ガルルセイバーを口にくわえてフレイムセイバーを両手で持って構えると、剣で弾いた男へフレイムセイバーで右下から逆袈裟に切り上げ、その勢いで回転しながらガルルセイバーで右上から袈裟斬りに切り裂いた。
斬りつけた相手を見届けずに次の相手を見ながらベルトに手をかざすと、ディスクの高速音が響き緑と青の戦士、ストームバッシャーに変化して両手に武器を現出させながら右半身に構えると、ストームハルバートを水平に頭よりも少し高めの位置まで持ち上げた、その瞬間。
ーガキーンー
っという音が、後ろから襲いかかってきた男の爪とストームハルバートがぶつかりあって鳴り響く。
二人が力を込め、押し合う中、男は密かに戦慄していた。
神無月の今の反応速度や先ほどショルダータックルをかました力や、今押し合っている力は、先ほどまでの彼からは考えられない物だった。
それこそ、今まで手を抜いていたとしか思えないほどに。
もし彼がさっき言った通り、一切手を抜いていない状態からの今だとしたら……、と男がそう思いながらおののいた瞬間、バッシャーマグナムから放たれた一撃を腹に食らい、大きく吹き飛んで行った。
そして、前から襲いかかってくる蹴り飛ばした男へ、ストームハルバートで素早く三回切りつけた。
その攻撃で吹き飛んだ男へ、エネルギーを貯めた銃口を向けると、ふらふらと立ち上がった男へエネルギーを放ち、無防備な体に衝突した。
それを見た後、振り返ると、
「さてと、これで決めだ。」
そう言いながら手をベルトにかざすと赤の戦士、グランドキバへと変化し、右足を某野球漫画の主人公よろしく、高々と上げた。
「ウィークアップ!!」
そう叫ぶと右足の腿辺りの装甲が弾け、コウモリの形に広がる。
更に、それと同時に角から二対の角が出てきて、六本三対の角が展開した。
「はぁぁぁぁぁ、はぁ!!」
気合いを溜めると後ろにに金色の紋章が浮かび上がり、気合いと共に飛び上がった。
バッシャーマグナムで飛ばされた男はふらふらと立ち上がり、神無月を探す様に辺りを見渡すが姿はどこにも見えず怪訝な表情をしていると、ふっと上から気配を感じて上を見上げた。
そこには高角度で落ちてきた神無月が目前まで迫っており、なにをする間もなく強烈な蹴りを胸に入れられ、そのままの勢いで地面に叩きつけられた。
叩きつけた勢いで地面が大きく陥没したが、その形は翼を広げたコウモリに六本の牙が生えた形をしていた。
彼がそこから離れると、男の体がステンドグラスの様に成りながら硬質化していく。
周りを見ると他の二人も同様の状態になっていた。
神無月は黙ったまま指を鳴らすと、彼らの体に音もなくヒビが走り、そのまま崩れ去っていった。
「……さて、睦月達は大丈夫かな?」
神無月はその様を見届けると、そう言いながらその場から背を向けた。
次回は大津のバトルパートです。
アップは8/27の予定です。