仮面ライダーハッカー   作:六界の魔術師

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始めに
予定日より大幅に遅くなってしまい、大変申し訳ありませんでした。
色々とありまして、遅くなってしまいました。
今後、このようなことが無い様にしっかりやっていきます。
では、本編にどうぞ。


DISK31 積み重ねたものと決着(前)

「………ほぉ。」

「うっくぅ。」

顔面に向けて降り下ろされた一撃を、大津は身体と首を無理やり捻って避けていた。

だが、やはり完全に避けることは出来ず、肩口から鮮血を流しながら大津は梅沢を睨みつけていた。

感心した様に呟きながら梅沢は、手首まで埋まった右手を引き抜き、身体を起こした。

「まだ足掻くか。

だが…、」

「……っぅおぉぉぉ!」

「…いつまで続くかな?」

大津は左手で梅沢の左足を掴み、足首に一撃を与え様と右の拳を振るが、梅沢はなんでもない様に足を持ち上げてかわし、右腕ごと胸を再び踏みつけた。

「ぐはっ!」

強い衝撃に肺から空気が強制的に排出され、更に圧迫されているために息を吸うこともままならないために、脳が酸欠状態に陥り、大津の頭はぼーっとなりはじめていた。

だが、霞む視界の先で降り下ろされる右の抜き手が見え、もう一度身体と首をひねって避ける。

「……ふむ、これも避けるか。

しかし残念だが、俺の手は二本ある。」

そう言いながら梅沢は、反対の手も抜き手に構える。

「……これで終わりだ。」

その言葉と共に降り下ろそうとする梅沢に対し、大津は口を大きく開けながら、首を反対側に向けて梅沢の腕に噛みつこうとする。

それを察知した梅沢は、素早く右手を引き抜きながら左の抜き手を放つが、それに合わせて大津も反対側に首と身体を捻り、梅沢の一撃を避けた。

「……しぶといな。」

「当たり前だ!

なにもしないで、むざむざ殺られて堪るか!」

「……それもそうだな。

ならば、どこまで耐えられるか、見せてみろ!」

そう言って梅沢が両手を抜き手に構えた、その時だった。

「…せ、…月!」

「……だ…て、……てん…ろ!」

言い争う声が聞こえ、不審に思った梅沢は後ろを振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し遡り、梅沢が大津の胸を踏みつけた頃。

「大津!」

「っ!待て!」

大津のピンチに駆け寄ろうとする神無月を、睦月は彼の左腕と右肩を掴みつつ、左足で左足を踏んで動きを止めていた。

「離せ!」

「嫌だね。

離したら、助けに行っちまうだろ?」

「当たり前だろ!

黙って見てられるか!」

「なら駄目だ。

ここで俺達がでしゃばったら、あのじいちゃんが今までしてきたことが、全て無駄になる。」

「そんなこと知るか!

命あっての物種だろが!

死んじまったら、なにもかも意味をなさないんだぞ!」

「ああ、そうだな。

その通りではあるが、これは駄目だ。」

「なんでだよ!」

「……言わなきゃ駄目か?」

「当たり前だろ!

むしろ、なんで言わないんだよ!」

「気分!!」

「ふざけるなぁぁぁぁ!!」

そう言いながら動こうと、じたばたする神無月だったが、身体が動く気配はなかった。

「離せ!

っていうか、なんで身体が動かないんだよ!」

「そりゃそうだ。

そういうツボを押しているんだし。」

「随分と便利なツボだな!おい!」

「ん~、そうでもないぞ?

ピンポイントで押せなきゃ意味ないし、わりと全力で押さなきゃいけないから、けっこう疲れるんだな、これが。」

「……だったら離せよ。」

「ん~、そうしたいのは山々なんだが…。」

「……これ以上は暴れない、約束する。

だから、頼むよ。」

「……ふむ、俺も疲れてきたし、そろそろ良いかとも思う。」

「なら「だが断る!」…うおい!」

「そんなこと言ったって、お前がさっきの言葉の意味は、「これ(今暴れている力)以上は暴れない。」っていうことだろ?

今はツボを押しているから動けないけど、本当はけっこうな力で暴れているからな。

離したら、その力で割り込む気なんだろ?」

「わかってんなら離せよ!」

「だから、駄目なんだって!」

そんな会話をしている内に、梅沢が大津に両手で抜き手を放った。

それをなんとか避ける大津だったが、圧倒的に不利な状況は変わらなかった。

「っ!くそぉぉぉぉぉ!」

「っぅぅぅ!!

あ、ば、れ、る、なぁぁぁ!」

「っっっ、離せ、睦月ぃぃぃ!」

「だから、嫌だって言ってんだろぉぉぉ!」

必死に拘束を外そうとする神無月を、睦月は更に力を込めて押さえ込む。

「大事な友達の危機なんだぞ!

それなのに、なんで邪魔をするんだぁぁ!」

「必要がねえから、止めてんだろうがぁぁ!

それぐらいわかれぇぇぇ!!」

「………必要ない?

どういうことだ?

なにを根拠に君は言っているんだ?」

「……別に言う必要はねえだろ。」

「そう言うな、俺も聞きたいんだ。

だから言ってくれ。」

突然の声に二人は驚きながら声の方を向くと、梅沢が大津に足を乗せたままにしながら、睦月達の方を向いていた。

「ここまで圧倒的な不利な状況下で尚、こいつが勝つと言い切るお前の根拠が知りたいな。」

「……敵であるあんたの目の前で言わなきゃ駄目か?」

「ああ、駄目だ。

………それとも、急に怖じ気づいて、適当な理由を付けているだけ、か?」

梅沢のその言葉に、神無月と大津は睦月に目を向けた。

睦月には二人の表情はわからないが、不安や疑惑の念を抱いているのを雰囲気で感じ、一つ大きなため息を吐いた。

「……わかった、言えばいいんだろ。

っていうか、神無月はともかく、しょうちゃんにまで疑われるとはな。

そんなに信用ないか?」

「いや、信用してないわけではないんだが、お前は冗談が過ぎたり、勢いで言ったりする節があるから、あんまり信用出来ん。」

「失礼な!

俺がいつ度を越えた冗談を言ったり、勢いで物事を言ったってんだ!」

『自分の胸に手を当てて、今までの自分の行動を鑑みろ!』

「なんで全員(敵含め)ハモってんだよ!!」

人間、普段の行動が物を言う。

 

ー閑話休題ー

 

 

「……で?

お前はなにを根拠に、そこまで言い切るんだ?」

「根拠は三つ。

一つ目は、勝ち筋が未だに健在であること。

これが残っている限り、ある程度の勝機はある。

二つ目は、しょうちゃんが未だに諦めていないこと。

勝機はあっても、やる奴にその気が無ければ無いのと同じだ。

……そして、最後の三つ目は…。」

そこまで言って一度言葉を切り、睦月は大津に目を向けた。

「……未だに俺があいつが、しょうちゃんが勝つと信じているから、だ。」

なんの淀みも迷いもなく言い切った睦月の言葉に、一同は言葉を無くし、辺りに沈黙が漂った。

「……ふ、…ふふ。」

「ん?」

「ふわっははははははは!!」

突然笑いだした梅沢に、一同は驚きながら彼を見つめる。

梅沢はひとしきり笑うと大きく息を吐き、キッと睦月を睨んだ。

「どんな大層なものが出るかと思えば、それが根拠ぉぉぉ!?

笑わせるなぁぁぁ!」

先ほどと真逆にそう言いながらぶちギレる梅沢を、睦月は不思議そうな顔をしながら見つめる。

「ん~、そんなに変なこと言ったか?

俺としたら、真面目に答えてたんだが?」

「…まあ正直なところ、最初の二つはともかく、三つ目のを根拠に挙げるのは、僕としてもどうかと思う。」

「う~ん、そうか?」

「ああ、むしろ君がなんでそれを根拠に挙げたか、僕にはわからないんだけど?」

「もっともな意見だな、貴様はなにを考えてそんなことを言った!」

そう言いながら犬歯を剥き出しにする梅沢に、睦月は人差し指を額に付けながら片目を瞑る。

「……なあ、梅沢……さん?」

「………なぜ疑問系なんだ?」

「いや、敵だから呼び捨てにしようかと思ったけど、年上を呼び捨てにするのは憚れるし、なんか収まり悪くてな。

呼んで欲しい呼び方があれば、そっちにするが?」

「………好きに呼べ。」

一同が呆れ半分脱力半分的な表情をする中、若干毒気を抜かれた梅沢はそう言いながら大きなため息を吐いた。

「そうか。

なら、梅ちんに聞「それは止めろ。」……オッケー、ふざけ過ぎたことは謝ります。

すみませんでした。

だから、そんなぐるぐると唸らないでいただきたい。」

歯を剥き出しにしながら唸る梅沢に対し、睦月は両手を挙げながら詫びを入れていた。

「んじゃまあ、気を取り直して梅沢さんに聞きたいんだが、あなたは信用していない奴に、自分の命を預けられるか?」

「………そんなもの、答えなんぞわかりきっていると思うが?」

「まあそうだろうけどさ、一応答えてくれると助かるかな?」

睦月のその言葉に梅沢はもう一度ため息を吐くと、ゆっくりと口を開いた。

「…なにを考えて聞いたかは知らんが、そんなことあり得んな。」

「うん、まあそうだよね、普通。

仮に信用があったとしても、命を預けるということは、それ相応の覚悟がいることだ。」

「ああ、その通りだ。

それがどうかしたのか?」

「……あんたの足元にいる男はな、あんたと戦えと言った時、戸惑いこそすれど、否定も拒むこともせずに戦うことを決意してくれた。

あんたと戦うことが、どれだけ困難で危険なことは生介自身もわかっていたはずだ。

それでも尚、こいつはあんたと戦うことを選んでくれた。

だから、俺はどんな状況になったとしても、こいつを信じ続ける。

それが、俺を信じて戦うことを選んだこいつに対する礼儀だからな。」

「……危険とわかっている割には詰めが甘かったり、油断して隙が多かったりするがな。

それに、それが根拠にどう繋がる?」

「まあ、そんなに焦るなよ。

俺はあいつが勝つと信じている。

だから一つ、あんたに約束しよう。」

「約束?」

「ああ、もしあんたがあいつに、生介に勝ったら、次は俺が一人であんたに挑む。

他の誰にも邪魔はさせない。

小細工無しの、正々堂々真っ正面から挑んでやるよ。」

「…ほぅ、随分と面白いことを言うな。」

「そうかな?」

「ああ、そうとも。

つまりお前は、親友の仇を討つため戦い、そして勝つ。と言うわけか。」

そう言いながらニヤリ笑って見せる梅沢だったが、その目には憤怒の色が灯り、今にも爆ぜそうであった。

しかし、

「いや、全然違う。

そもそもの話、俺があんたに勝てるはずがないだろ?」

「………ならば、なんのために戦うのだ?」

睦月のその言葉に、先ほどまで見せていた憤怒の色は潜め、逆に困惑の表情をしながら問う梅沢に、睦月はため息を一つ吐いた。

「……生介は俺を信じて戦たかってくれた。

自分の命を賭けてな。

もし生介が敗れ、命を失ったのなら、次は俺が命を賭けて戦う番だ。

それが俺を信じて戦ってくれた親友に対して出来る、俺の唯一のことだからな。」

「…こうちゃん。」

「…睦月、君は。」

「……しょうちゃん、俺はお前が勝つって信じている。

だからこそ、こんな無謀なことを言えるんだ。

だからこそ、命を預けられるんだ。

だから負けるな、勝ってみせろ!」

そう言いながらニヤリと笑って見せる睦月に対し、梅沢はふんっと鼻で笑うと、大津を踏む足に力を込めた。

「……その程度で勝てるなら苦労はしない。

そんなに死にたいなら、こいつを始末して、直ぐに相手してやる!」

そう言って右手を抜き手に構え、大津に降り下ろした。

大津の利き手である右手は未だに足の下。

狙う大津は満身創痍。

逆転できる要素はなく、梅沢はこれで終わった。と、思いながら肉を貫く感触を感じた。

だが、

「~~~っ!」

「な!?」

次の瞬間、梅沢は自分の目を疑った。

梅沢は確かに肉を貫いていた。

但しそれは大津の顔ではなく、直前に割り込ました大津の左腕であった。

しかも、指の第一関節まで貫いたその瞬間に大津が左腕に力を込めたため、梅沢の右手は筋肉と骨に絡み取られ、それ以上進むことも、抜くことも出来なくなっていた。

ならばと、貫いた指先で大津の顔を左腕ごと貫こうと力を込めるが、大津は貫かれたその左腕に噛みつき、それ以上近づけない様にする。

また、無理に動かそうとすると、素早く口を放して腕を使って指を逆関節に極め、動きを妨害する。

「っ!

まだ足掻くか!

まだ諦めないのか!」

「当然!

あの馬鹿はな、俺を焚き付けのが昔から得意なんだよ!

あんなこと言われたらなぁ!

意地でも負ける訳にはいかないんだよぉぉ!!」

貫かれた腕と肩からは血が滴り、大津と梅沢を血で濡らしていく。

しかし、大津は諦めることなく足掻き続ける。

「っっ!

忘れている様だな!

さっきも言っただろ!

手は二本あると!」

そう言って梅沢は、大津の右手を踏みつけながら左手も抜き手に構える。

「~っ!」

「……行くなよ。」

「わかってる、わかっているけど!!

この状況は……!」

「……そう悲観することはない。

むしろ、チャンスでもある。」

「チャ、チャンス?」

「ああ、下手したら一発で形勢が変わるぐらいの、な。

大丈夫、勝機はまだあるよ。」

「……なんでそんなに自信満々に言えるんだ?」

「信じている、って言っただろ?

大丈夫だ。

あいつに有って、梅沢に無いものが、あいつが気付いていない勝ち筋に導いてくれるから。

あいつはそれに気付けるはずだから。

だから、ここであいつが勝って戻ってくるのを、待っていよう。」

そう言いつつ睦月は神無月から手を放し、飄々とした態度で彼の横に立つ。

「……ああ、わかった。」

横に立つ睦月の手が、ギュッと強く握られているのを神無月は見ない振りをしながら、静かに頷いた。




次回は11/9予定です。
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