「あいつらにか?」
「ああ。
俺の推論より、本人達に語ってもらった方が良いだろ?」
肩をすくめ続けながらそう言う俺の視線につられ、一同は扉前にいる人狼達を見つめる。
一方扉前の三人は、突然自分達に視線が集まったことに驚き、傍目からもわかるぐらいに困惑していた。
「な、なんだ!?」
「い、いったいなんだってんだ!?」
「ん?
いや、なんでもないぞ?
ただお前らが考えている目論みについて話をしていたら、丁度お前らが姿を現しただけで、それ以上の意味はないんだが?」
なんでもない様にさらりと言った俺の言葉に、彼らは目に見えて狼狽をし始める。
「も、目論み!?
い、いったいなんのことだ!?」
「おいおいお前ら、自分達の組織を舐めすぎじゃないか?
初対面の神無月や、関わりが少なかった生介はまだしも、この世界を牛耳る組織の部隊長や、お前らの一族の長が気づいていないと、本気で思っていたのか?」
ややオーパーに肩をすくめながら言う俺の言葉に、やつらはギョッとしながら件の二人を見るが、二人はなにも言わずに俺の方を見続けていた。
特に天慢寺の方は、興味深そうな視線を俺に送っていた。
その視線を受け流しながら、俺は言葉を続ける。
「ま、なんにしろ、それの続行はもう諦めた方が良い。
何故ならば、お前達のトップである第二位の男は生介が、お前達が出来損ないと言った男に倒され、あそこで大の字にのびているんだからな。」
三人は俺の言った言葉を一瞬理解出来ず、ポカーンと呆けた表情をするが、次の瞬間には驚愕という表情をしながら、俺が指差した方と生介の方を交互に見ていた。
「………う、嘘だ!!!
あの人が、梅沢さんが負けるわけがない!!」
「いやいやいや、嘘もなにも、そこに倒されてんだろって。」
「……っな、なら、ならきっと卑怯な手を使ったんだ!!
そうに、そうに違いない!!」
梅沢が倒されたことがあまりにショックだったのか、頭を横に振りながらそう叫ぶ男の隣で、顎が砕かれた男が壊れたオモチャの様に激しく頭を上下していた。
「失礼な奴らだな。
そんなに疑うのなら、お前らの長に聞いてみればいいんじゃね?」
「………どうなんですか?長。」
「……どうもなにも、二人共に正々堂々と戦っておったよ。
でなければ、ワシが止めておる。」
呆れ顔で返すおじいさんの言葉に、二人は完全に言葉を無くしていた。
そんな中、先ほどから一人黙って腕組みをしていた男が、腕組みを解きながら口を開いた。
「……ふん、十狼士の面汚しが。」
「な!?
貴様、なんてことを!!
冗談も大概にしろ!」
口を開いた男に対して反論する男にの横で、顎を砕かれた男が何度も頷いていた。
「大概にするのはお前らの方だ!!」
『っ!?』
「いつから俺達は、あいつの腰巾着になった!!
いつから俺達は、あいつらの御用聞きになった!!
俺達の上下関係は力による物だ。
だからこそ、一度でも低い奴に負ければ全てを失う。
あいつらは、あそこにいる奴らに破れた以上、その順位は失われた。
なのに、貴様らは今なおあいつの下のつもりか!?
もう一度言うぞ、貴様ら大概にしろ!!」
男の言葉に二人は思うところがあったのか、なにも返せずに押し黙っていた。
「あいつが、上の連中が負けていなくなったのなら好都合だろうが!!
俺達で奴ら三人を倒し、その勢いのまま全てを俺達の物にしようじゃねえか!」
犬歯を剥き出しにしながらそう言う男に対し、俺は内心好意的な反応をしていた。
言っていることは漁夫の利丸出しの最低な発言ではあるが、これぐらいがつがつしていた方が個人的に好ましい。
……ただ、問題があるとしたら、
「……俺にも勝てなかった奴らが、第三位や他の二人に勝てるとは到底思えないんだが?」
「我々はけして負けていない!!
それに、我々があそこまで追い込まれたのは、貴様が卑怯な戦い方をしたからだろうが!!」
「だから、あれが俺の戦い方なんだって言ってんだろ?
そもそも、お前ら相手にマジな戦い方したら、命いくつあっても足んねえよ。」
「だから、ああいう戦い方をしても、しょうがないと?
……ふん、自分の行いを正当化させるために理屈をこねるとはな。
これだから下等な奴らは困る。」
そう言いながら男はため息を吐くが、こいつは気付いているだろうか?
自分が今、盛大にブーメランをかましていることを。
「……ま、いいや。
なんにしろ、お前ら三人が束なってかかってきた所で俺達を倒すことは出来やしないんだ。
無謀なことは止めておくんだな。」
「……ふっ。」
「…ん?」
「俺がいつ、三人でと言った?」
その言葉に怪訝な表情をする俺を他所に、男は声高らかに遠吠えを始めた。
それは数秒間続き、その間地面と大気をビリビリと震わせた。
やがて遠吠えが終わり、辺りに静寂が戻ったかの様にみえた、その時だった。
複数の気配を感じたかと思うと、それらは一気にこちらに近づき、十人程の人狼達が先ほどの人狼達の同様に壁を登って姿を現すと、俺達を囲う様に横に広かる。
「………こやつらは?」
「我々と志を共にする者達です。
こいつらが逃げようとした時に、逃さぬ様に山の中に散ってもらっていました。」
「……わしは有事に備えて、十狼士の面子以外は残る様に言ったはずじゃぞ?
そんな指示を誰がした?」
「こちらに来る際に、我々が募ったのです。
こいつらを逃がした場合、我々人狼族にとって災いの種になることは間違いありません。
なので皆、命令違反になるとわかっていても、もしもがあってはいけないと、人狼族の為に集まってくれたのです!」
手をグッと握りしめ、そう力強く言いながらおじいさんを見つめる男に対し、おじいさんはなにも言わずに睨み続けていた。
周りの人狼達も肯定する様にうん、うん、と頷いていた。
しかし、そこに異を唱える人狼が一人いた。
そして、それは意外にも
「………それ、変じゃないか?」
おじいさんを毛嫌いしていた生介だった。
この小説を書き始めて、お陰様で一周年になりました。
この場借りて、お礼申し上げます。
ありがとうございます。
あと、活動報告でお知らせを書かせていただいていますので、そちらもどうぞ。
次回は2/16の予定です。