仮面ライダーハッカー   作:六界の魔術師

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また前回より半年かかってしまった(汗)
努力します。


DISK40 逃走と別れ(中)

「……なんでお前が?

まだ動けるはずないのに!」

「おいおい、さっき大声でお前の危機を伝えてただろ?」

「っ!

あれはお前だったのか?」

「ああ、さすがに多少ぐらついていたから、変な声色になっちまったけどな。

とはいえ、あんだけの時間があれば、動けるぐらいには回復するさ。」

そう言いながら大津は、ニヤリと睦月に向かって笑って見せたが、次の瞬間には険しい表情に変わり、睦月を脇に抱えながら横に駆けた。

その直後、その場所を激しい炎が焦がし、熱風が睦月達を襲う。

通常時の大津ならば耐えられただろうが、調子が万全でなかった上、睦月という荷物を抱えていたため、大津の態勢が崩れてしまった。

「逃がすかぁぁ!」

そこへ、右手に白炎を纏わせた天慢寺が怒りの形相しながら、ものすごい勢いでで迫ってくる。

纏わせた白炎の熱で服を焦がしながら迫る彼女からは鬼気迫るものがあり、態勢を崩した大津は完全に呑まれて、動けなくなってしまった。

「はあぁぁぁ!!」

「っ!!」

だがそこへ、神無月がガルルセイバーを咥えながら、身体ごと突っ込む様にフレイムセイバーで突きを放つ。

それに気づいた彼女は、素早く反転しながら左手に羽根を出し、右手を炎を纏わせたまま素早く羽根に添えると、炎が羽根に吸いとられる様に消えていき、それと同時に羽根が炎を思わせる様な形の剣へと変化した。

その羽根でガキンっという金属音をたてながら、フレイムセイバーを真っ正面から受け止めるが、さすがに神無月の渾身の突きの威力を全ては受け止められなかったらしく、今回は弾かれる様に後ろへ飛ばされていった。

「二人共、大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ。」

「すまない、助かった。」

大津はそう言い、睦月を脇に抱えながら態勢を立て直すと、先ほどいた場所に目をやった。

「…しかし、本当に凄い火力だな。」

「だな。

当たっていたら、瞬間的に消し炭になっていたな。」

炎に焼かれ、炭化した床を見ながらしかめっ面をした二人は、彼女の方へ顔を向けると、彼女はムスッとした表情でこちらを睨んでいた。

「……明らかに不機嫌だな、あいつ。」

「そりゃまあ、殺れると思ったら二回も邪魔されたからじゃねえか?」

「…普通、邪魔した人が言うかな?」

怒気を孕んだ声でそう言う彼女の目はとても恐ろしく、三人の背中に冷や汗が流れて止まらないでいた。

「……凄い目付きだな。

寒気がするぞ。」

「……そうだな。

俺もあの目で見られていると、背筋がゾクゾクしてきたよ。」

「……目覚めたのか?」

「そんな酔狂な趣味はねえよ!!」

「……こんな状況下で、君達はよくボケる余裕があるね。

というか、睦月はいつまでそのままでいるつもりなんだ?」

「それは俺が聞きたい。

さっきから抜け出そうとしているんだが、さっきからこいつが腕でガッチリ挟んで、放してくれないんだ。」

「そうは言うがな、こうちゃん。

お前今怒ってんだろ?

怒っている時のお前はなにするかわからないからな。

そんなお前を解放するほど、俺は迂闊ではないぞ?」

「……誰のせいで怒っていると?」

「神無月、なにやってこいつを怒らせたんだよ?」

「違う!!

神無月じゃねえ!!」

「そうか、なら残るは天慢寺か、じいちゃんか。

じいちゃんとは考え辛いから、そうなるとやはり、彼女がこうちゃんをここまで怒らせたんだな!」

「んなわけあるか!!

お前だよ!!お・ま・え!!」

「……本当に君達、余裕だね。」

漫才を繰り広げる俺達を、神無月は横目で見ながら、呆れた声色でツッコミを入れつつため息を一つ吐いた。

「本当にね。

まあ、片方は組織に歯向かってきた馬鹿で、もう片方は周りの気持ちを考えずに行動するする馬鹿。

お互い馬鹿同士だから、気が合うんだろうけどね。」

「まあ、俺が馬鹿なのは否定しない。

だがしかし、自慢じゃねえがテストの点数で赤点はおろか、常に平均点より下を取ったことはない!!」

「本当に自慢にならねえよ!!

むしろ当たり前のことを胸張って言うな!!」

「……平均点以上取っているのなら、そこまで馬鹿ではないんじゃないか?」

「いやいや、実はいつもテスト前に勉強を見てもらっていてな。

それが無かったら、ほぼ確実に赤点だらけだった!」

「そんなことを威張って言うな!馬鹿たれ!!」

「ああ、そうさ、馬鹿さ、馬鹿だとも。

馬鹿だからこそ、お前が考えてくれていたことも、じいちゃんがやろうとしたこともわからない。

周りがなにを思おうと、それによって起きることなんて知ったことじゃない。

……俺はただ一人、お前を助けることができれば、それで良かった。

それが出来れば、俺はどうなったって構いはしなかったのさ。」

「……それで、自分の命を賭けることになってもか?」

「当たり前だろ?

考えるまでもないさ。」

「…ちょっとは躊躇しろよ、アホたれ。」

自分の問いに即答しながら胸を張る大津に、睦月は頭を抑えながらため息を一つ吐くと、頭をガリガリと掻き出した。

「……はあ~、ったく。

好き勝手言いやがって。

こっちはお前のために、色々と考えていたんだぞ?」

「それは悪いとは思っている。

だが、さっきも言ったが、俺はお前がなにを考えているかわからん。

だから俺は、俺が思う様に動くだけだ。」

「本当に勝手な奴だな。

フォローするこっちの身にもなれ。」

「……むしろ、俺の方がフォローしている気がするんだが、気のせいか?」

「気のせいだ。

なんにしろ、逃げ切ったら説教くれてやるから、そのつもりでいろよ。」

「……それは勘弁したいな。」

そう言いながら肩をすくめ苦笑いを浮かべる生介に、睦月もニヤリと笑みを浮かべて見せた。

「……終わったかい?

で、説教は良いけど、ここからどうやって逃げるつもりなんだ?」

「本当だよね。

馬鹿もここまでいけば、大したものだね。

で?

君は孔月から逃げ切れると、本気で思っているの?

今だったら悪い冗談だったって、笑って聞き流してあげるけど?」

「本気も本気、超本気。

逃げなきゃ死ぬだけなんだぞ?

なら、逃げの一択だろ。

そもそもの話、俺が逃げる算段をつけていないのに、こんな馬鹿なやりとりをしている。と、本気で思っているのか?」

『……!!』

肩をすくめながら答えた睦月の言葉に、大津以外の全員が、驚きの表情を浮かべながら彼の方を見る。

「生介、悪いが降ろしてくれ。」

「……ああ、わかった。」

ようやく生介の脇から解放され、地に足を着けた睦月は、数歩前に出ながら話を続けた。

「色々と思うことはあるだろうが、まず前提として、俺はただの人間だ。

それは間違いない。」

「間違いないのか?」

「違ってないよ!

俺は上から下までまんべんなく、どこからどう見たって、ただの人間だぞ!?」

「……ただの人に、鉄の扉を蹴破れないと思うが?」

「犬と話す芸当も無理だと思うけど?」

「強化人間である戦闘員や、人狼を倒せるのも変じゃない?

むしろ、改造人間であった方が、しっくりくるんだけど?」

「………い、いや、だって俺は、ほら、昔から鍛えているし、色々な技術を学んできたからさ。

っていうか、そもそも俺、改造手術とか受けた覚えがないぞ?

それに、さっきしょうちゃんだって、俺のことをただの人間だったって言ってただろ!?」

「……ああ、確かに言ってたね。

しかし大津、なんで君はそう言いきれたんだ?」

「……昔、あいつがあまりにも人間離れし過ぎてたから、組織に調べてもらったことがあったんだ。

それで調べた結果、改造手術などの外的要因も、遺伝子などの内的要因もない、ただの人間である。ということがわかったんだ。」

「……成る程ね。

確かに組織が調べたのであれば、間違いないね。

信じがたいけどね。」

「ああ、納得するしかないな。

信じがたいけどな。」

不承不承、という表情をしながら頷く二人を、睦月は苦虫を噛んだ様な表情を見た後、ため息を一つ吐いた。

「………のんびりしている暇はないから、話しを戻すぞ。

俺はただの人間、それが大前提だ。

だが、イコールなにもできない。というわけではない。」

「……どういうこと?」

「床を焦がし、人を燃やし尽くす炎は、さすがにどうにもならんが、あんたなら如何様にも出来る、って話さ。

そもそもの話、本当に俺が、なにもできずにただ逃げ回っていただけだと思うか?

むしろ、仕掛けを準備していたからこそ、逃げ回っていた。とは思わないのか?」

そう言いながらニヤリと笑みを浮かべる睦月の言葉に、その場の全員がはっ、と息を呑んだが、孔月だけはすぐにニヤリ、と睦月に笑みを見せてきた。

「へ~、なかなか面白いことを言うんだね。

でも、そんなハッタリは通用しないよ?」

「おやおや、ハッタリとはまた手厳しこった。

ま、こちらとしては、そう思ってくれた方が仕掛けやすいから、その方が好都合だがな。」

そう言いながら不敵な笑みを返す睦月に、天慢寺は笑みを引っ込め、鋭い目付きで睦月を睨み付ける。

「…煽るのは別に構わないけど、そろそろ止めないと後悔するよ?」

「踏み潰そうとした虫が反撃してきたから、腹がたったてか?

みっともねぇな。」

「………あんた今、なんて言った?」

「みっともねぇ、って言ったんだよ。

あんた、耳悪いのか?」

そう言いながら、睦月が薄笑いを浮かべた瞬間、天慢寺の両手から、凄まじい勢いで炎が溢れ、彼女の両腕を覆う様に燃え広がった。

その勢いを、睦月は少し冷めた目で見ながらため息を一つ吐いた。

「……ぬかしたよな、お前さん。

全力で俺を殺す、って。

なんだよ、まだまだ全然余力残してんじゃん。」

「当然でしょ?

最初から敵に手の内の全てをさらけ出すほど、孔月は馬鹿じゃないよ。

それとも、怖くなって、降参する気になった?」

今だったら、聞いてあげてもいいよ?」

「けっこうだ。

命乞いなんて、まっぴらごめんだね。」

「そう、それは残念ね。」

そう言いながらニヤリと笑みをを浮かべる彼女を、睦月は特に気にすることなく大津の方へ顔を向けた。

「以上だ。

神無月の誘導は任せたぞ?」

『……はい?』

睦月の言葉に怪訝な顔をする一同だったが、その中でただ一人、

「わかった。

神無月、こっちだ!」

「うおっ!?」

大津だけが素早く動き出していた。

彼は返事をするのとほぼ同時に神無月を掴むと、ひきずる様に駆け出した。

「なにを…っ!?」

その行動に当然反応する天慢寺であったが、彼女が反応したその瞬間、睦月が彼女に向けて、なにかを投げつけてきた。

彼女は反射的に、それを炎を纏った腕でそれを払って消滅させた、その瞬間。

「っ!?

うごっへほ!?」

彼女の目と鼻を、凄まじい刺激が襲った。

「ごほっ!

これは…、ごほっ!

アンモニア!?

ごほっ!」

自身を襲う激しい刺激臭に僅かに怯みながらも、彼女が投げられた物がなんだったのかを理解するまでにかかった時間は、僅か二~三秒。

だが、

 

ードゴーンー

 

「!?」

その間彼女は、彼ら三人のことを完全に意識から外してしまっていた。

そのことに内心焦りながら音の方へ目をやると、三人が崩れた床と共に下へ落ちる所だった。

「くっ!!」

それを見て、天慢寺は素早く火の玉を飛ばすも間に合わず、三人は下の階へと消えて行った。

「二人共、ほほろうけいち、みろつごる!」

『へ?』

「降りたら、もう一回下へ、だ。

そのまま床をぶち壊せ!!」

「っ!応!」

「わ、わかった!」

「っ!

逃がすかぁぁぁ!!」

睦月達の言葉に、天慢寺は床を凹ませながら飛ぶように駆け出すと、両腕の炎を右手に集中させ、バスケットボール大の火玉を作りだした。

そして、二~三歩で彼らが開けた穴にたどり着いた彼女は、彼らの頭上から叩き込む為に駆ける勢いのまま、地を蹴ろうとしたその時、ポーンっと、穴の中から筒状のなにかが、彼女の目の高さまで飛び出してきた。

いつもの彼女ならば、躊躇なく火で消し飛ばしていたのだが、先ほどのアンモニアが脳裏を掠め、

一瞬躊躇してしまった。

 

 

 

 

その一瞬が、彼らの命運を分けることになった。

 

 

 

 

次の瞬間、下の階で床を壊す音と同時に筒が炸裂し、爆音と強烈な閃光が辺りを包み、闇夜に慣れた目を眩ませた。

特に目の前で炸裂したため、モロに閃光と爆音を食らってしまった天慢寺は、光と音のダブルショックで一瞬意識を失い、豪快に土埃をたてながら横転してしまった。

直ぐさま意識を取り戻すも、身体は既に加速の勢いのままに転がり続けていた。

「くっあぁぁぁ!」

このままでは落ちる!と感じた天慢寺は、素早く左腕を床に突き刺し、下の階の天井を掴んで回転を無理矢理止めようと試みた。

「ぐうぅぅぅ!」

当然そんなことをすれば、左腕に凄まじい力がかかり、その痛みにさしもの彼女もうめき声をあげた。

しかし、そのお陰で回転を止めることに成功し、彼女は屋上からの転落は免れた。

「かぁっ!…くっ!……くあぁ!」

だが、その代償に左腕を痛めたらしく、彼女は痛めた左腕を押さえながら、いまだに引かない目と耳の痛みに耐える様に、のたうちまわっていた。

 

 

 

 

一方その頃、

『よっと。』

床を壊して落ちた三人は、なんとかに下の階へと着地していた。

「……ふぅ、やれやれ。

上手くいって良かった。」

「あいたたた。

あぁ、そうだな。

まあもっとも、僕達も無傷ではなかったけどね。」

「み、耳が、ガンガンする~。」

「文句言うな。

命あるだけマシだろ?」

口々に文句を言ってくる二人に、睦月はため息を吐きながらそう返す。

「いやまあ、たしかにそうだけどさ。

さっきのを使うなら、もっとわかりやすく言ってくれよ。」

「…っていうか、なんでフラッシュグレネードなんて物を持っているんだ?」

「下手に喋れば感付かれる可能性があるし、なによりあれを見せながら言ったんだ。

雰囲気で察しろ。

フラッシュグレネードは、お前対策で用意しておいた物だ。

どうやって用意したかは、後で説明してやる。

とにかく、上手くいったとはいえ、そんなに長くは足止めできないだろうから、とっとと逃げるぞ。

神無月、前みたいに扉を出すことはできるか?」

「いや、ここでは無理だ。

恐らく外に出ないと繋げられない。

もう一回下へ降りるのか?」

「いや、壁を壊して、そこから出よう。

神無月、すまんがそこの壁をぶっ壊してくれないか?」

「わかった。」

神無月はそう言って頷くと、素早く壁へと駆け寄り、一撃で壁を壊して大きな穴を作ってみせた。

「おぉう、流石。

よし、あそこから飛び出すぞ。

あ、二人共念のため言っておく。

なるべく遠くへ跳んだ方が良いぞ。」

「なんで?」

「……なるほど、たしかにそうたね。」

「…どういうこと?」

「外へ出ればわかるさ。

いくぞ!」

そう言いながら睦月は駆け出し、躊躇なく外へ飛び出すと、それに続けて神無月も僅かに下がった後、助走をつけて飛び出した。

「ちょ、ちょっと待てよ!!」

そう言って大津も慌てながら駆け出し、勢い良く飛び出した。

外へ飛び出すと、先に跳んだ睦月は下の方で五点着地を決めた後、すぐに立ち上がって駆け出し、神無月は森の近くまで跳び、丁度着地を決めるところだった。

それに続く様に大津も無事に着地して振り返ると、丁度睦月が駆け寄ってきた。

「大丈夫か?」

「ああ、問題ない。

問題はないが…。」

「ん?

どうかしたのか?」

「いやな。

あれを見て、遠くへ跳んでよかったな。と思っただけだ。」

そう言って、遠くを見つめながら大津はため息を一つ吐いた。

大津の視線の先には、先ほどまでいた建物があったが、良く崩壊しなかったな。っと思うぐらい、ぼろぼろに半壊していた。

所々壁が壊れ、瓦礫が入口を塞いでいる上、辺り一面にも散乱していたため、中途半端に跳んでいたら、痛い思いをするところだったのだ。

「しかし、本当にぼろぼろになったな。」

「そりゃまあ、あんだけ激しく戦えば、ああなる…。」

「なにやってんだ、二人共!!

早く逃げるぞ!」

「おっと、すまん!

すぐに行く!

「のんびり話している暇はなかったな。

さっさと行こうぜ!」

「ああ、そうだな。

急ごう。」

睦月の言葉に大津は頷き返すと、二人は直ぐ様林に向かって駆け出した。

それを見た神無月も駆け出し、三人は次々と林の中へ消えて行った。

 




今回は二つ謎解き入れてますので、良ければ解いてみてください。
答えは次回の後書きで。
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