「……ところで、お前の言っていた真実っていうのは、今の話のことなのか?」
「いや、違うよ。
今の話は、あくまでもこの世界のことを話しただけであって、君が知るべき真実は、今の話の先にある事柄だ。」
「今の話の先?」
打ち込みを再開して少したった頃、俺は気になっていた事柄を切り出したわけだが、彼の言葉に怪訝な表情をした。
今の話だけでも十分衝撃的だったのに、更に奥があると言われれば、怪訝な表情ぐらいする。
「……君は、今の世界が変だと思ったことはないか?」
「変って、なにが?」
「言い方を変えよう。
君はその端末をどう思う?」
「どう?って、あって当たり前の物。
便利だけど、不便な所もある物。かな?」
この端末は産まれた時に用意され、5歳になる頃に渡される様になっている。
そして、常にそれを持ち歩く様に義務化されている。
機能自体はとても便利で身分証明書にもなるし、財布代わりにもなるし、ネットにも繋げれるので、パソコン代わりに持っている人もいる。
防犯もしっかりしていて、機能は自身の指紋を読み取らせないと使えないし、ハッキングも出来ない様に多重にプロテクトが施され、仮に忘れそうになっても、100メートル離れたら大きな音がなる様になっている。
とはいえ、無いとなにもできないし、義務化もされているので、常に持ち歩かないといけないから、面倒な部分は結構あった。
とはいえ、端末自体に問題があるわけではないので、文句を言う人はほとんどいなかった。
「で、この端末がどうかしたのか?
まさか、これによって人々は悪の組織に管理されてるとか?」
「……よくわかったね、その通りだよ。」
「え?嘘、マジなの!?」
冗談で言ったことを肯定され、戸惑う俺を彼は至極真面目な顔で見ていた。
「君は、なにをするにも端末が必要になることを、妙だとは思ったことはないか?
そして、その理由を考えたことはあるか?」
「……いや、特に考えたことはないな。」
産まれた時からずっと一緒にあって、端末があることが当たり前になっていた。
そういうものなんだと、疑問にも思わなかった。
「義務化されているとはいえ、その端末はとても便利な物だ。
不便な所があっても手放せないほどにね。
でも、義務化されているのは、おかしな話なんだ。
携帯電話を思い浮かべると良い。
あれも色々と便利ではあるけど、義務化されることはなかった。
それは何故か?
理由は別に使わなくても大丈夫な人が存在したから。
だからこそ、義務化されなかった。
それゆえに奴らは、その端末がなければなにもできないシステムを作り出したんだ。
端末に様々な便利な機能をつけたのも、受け入れやすくするためだ。
やがてその端末は、全ての人に無くてはならない物になった。
それこそが奴の思惑通りと知らないでね。」
「いったい、いったいなんのために?」
「奴らが、自分達の管理しやすい世界を作るためさ。」
そう言って彼は、自身のノートパソコンのエンターキーを押した。
次の瞬間、今まで真っ暗だった画面がパッと明るくなり、色々な人の写真がズラリと並んでいた。
写真の横には名前の他、様々な情報が書いてあった。
「こ、これは!?」
「ここに集められていた、端末の情報の一端だ。
君達が持っている端末は、なにかを行動したり認識したりすると、自動的に情報を奴らのデータベースへ密かに送信しているんだ。
そうして奴らは危険分子を探したり、人々を効率よく管理しているんだ。」
彼の言葉を聞きながら、俺は体がブルッと震えていた。
自分の知らないところで、こんな恐ろしいことが起きていたなんて想像もしなかった。
そして、それを成す組織のデカさに、今更ながら若干の恐怖心を感じた。
「…なあ、お前の言う奴らって、いったい何者なんだ!?
どういう存在で、どんだけの規模なんたよ!?」
彼はしばらく黙ったまま画面を見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「……ルートキット。
それが奴らの組織の名前だ。
その組織は、元はWorld Compsehensive Intelligence Agencies。
世界総合情報機関、通称WCIAと呼ばれる組織の一部門に過ぎなかった。
そのWCIAっていうのは、表向きは世界のありとあらゆる情報を集め、無料又は、低価格で提示、提供する機関だったが、裏では個人情報に裏取引の情報、果ては国の機密すらも売買していたそうだ。
そしてルートキット、当時は違う名前だったらしいが、その組織の中で情報のデータ化、管理を司る部門だったらしい。
そしてある時、電脳世界を作る計画がうち出され、それにその部門が中心メンバーとして選ばれたんだ。
やがて、世界中の古今東西の情報をデータ化して、あいつらが情報をまとめる為作り出したシステムをベースにして、この電脳世界が産み出された。ってわけさ。
やがて、例のシステムが組み込まれ、奴らはこの世界を裏から支配し始めた。
まあ、ベースがベースだから、奴らも例のシステムを組み込むのも楽だったんじゃないかな?」
「うーん、でもさ、例えデカイ組織だったとしても、たかだか一部門なんだろ?
そんな大それたことなんて出来るのか?
そもそも、古今東西のありとあらゆる情報をデータ化、って簡単に言うけど、そんな簡単なことじゃねえだろ?
そいつらは、そんなに優秀な奴らだったたのか?」
「そう、そこが謎なんだよ。」
「…………は?」
「実は、電脳世界が産まれるまでの経緯や技術については謎が多くて、僕も全てを知り得てないんだ。
奴らの主要メンバーの名前も未だにわからないけど、どうやらそこまで優秀ではなかったみたいだ。
政府から優秀な学者や技術者も送られていたみたいだけど、彼らも違うみたいなんだ。」
「……謎だらけなんだな。」
「残念ながらね。
さて、話は一段落ついたし、そろそろ目的の物を取りに…。」
そう言いながら、彼が立ち上がろうとした、その瞬間
-ヴゥ~~~~~、ヴゥ~~~-
突然けたたましいサイレンの音が響いた。
「な、なんだ!?」
「馬鹿な、警備システムが作動している。
まさか、ウィルスを駆除しきったというのか!?」
「……もしかして、俺と話してたせいか?」
「いや、関係ない、油断した。
ウィルスは前回より強力にしていたから大丈夫だと思った、僕の慢心のせいだ。」
「と、とにかく、逃げよう!
いつまでもここに居たら、不味いだろ?」
悔しそうにする彼に、俺はそう言いながら扉へ向かおうとするが
「残念だが、そうはいかんな。」
その声と共に突然扉が開き、そこから骨のような柄がついた全身黒のタイツ姿の男達が、ぞろぞろと俺達を囲む様に入ってきた。
タイツ姿の男達が全員入った後、一人の男(?)が部屋に入ってきた。
男だと思ったのは、声が男の声だったから。
(?)を入れたのは、
「………蜘蛛?」
その姿が人に見えなかったからである。
はっはははは、おいおい、その姿、まるで映画や漫画に出てくる怪人みたいじゃないか。
冗談も程々にしてくれよ。
そうツッコミを入れ様と思っていたが、何故か声にできず、乾いた笑い声しかでなかった。
……いや、わかってんだよ。
この雰囲気が、嫌でも冗談じゃないって伝えてくる。
これは本当に不味いだろ!
「………久しぶりだな、会いたかったぞ!」
俺が内心慌てていると、蜘蛛男(仮)は神無月の方を見ながらそう言った。
いやいや、というか、
「…知り合いなのか?」
「いやいや、それなりに特殊な育ちはしているけど、さすがに蜘蛛の知り合いはいないよ。」
「そうか、だよな~。」
正直なところ、一瞬本気にしかけたが、本気で嫌そうな表情してる辺り、本当に違うようだ。
「まあ、知らなくて当然だろうな、私もお前のことは、画像でしか知らないしな。」
「どういうことだ?」
「私は、先日お前がディスクを盗んだ研究所の所長だ。
お前を逃がした責任をとらされ、こうして改造をされたのだ!」
「…改…造?」
「…さっき僕は、古今東西ありとあらゆる情報をデータ化した、っと言ったよね?」
「あ…、ああ、言っていた。」
「その情報は、残念ながら正の情報だけではなかったんだ。」
「…どういうことだ?」
「かつて現実世界では、闇より支配しようと企む者達がいた。
ショッカー、デストロン、ゴルゴム、バダンっといった秘密結社。
グロンギ族、アンノーン、オルフェノク等の怪人達。
そういった闇の者達の情報もデータ化され、この世界に組み込まれているんだ。」
「……闇の組織の見本市かよ。
っていうか、節操なさ過ぎだろ!」
「同感だね。」
俺のツッコミに、神無月は苦笑をしながら頷いていた。
「どんな経緯があったかは知らないが、私はその技術をもってこの体を得た。
そのせいで私は、
そのせいで私の妻は、
惚れ直されたみたいでな、昔以上にラブラブになってしまったわい!」
ぐわはっはははは!っと高笑いしながら、彼は嬉しそうに頭を掻く。
……うん、それって、むしろ。
「……改造されて、良かったんじゃないのか?」
「いや~、まったくだ。
人生なにがプラスになるか、わかったもんじゃないわい。」
そう言って、また嬉しそうにぐわはっはははは!っと高笑いする蜘蛛男。
さっきまでの緊迫の雰囲気はどこへやら?という感じである。
………うん、反応に困るな、これ。
「まあ、そういうわけで、私は少しだけ感謝している。
だから、本来なら侵入者は即死刑なのだが、選択させてやろう。
おい、奴らを連れてこい。」
『イィー!』
横にいた数人が足を揃え、右手を斜め上にビシッと挙げて返事をすると、扉から出ていった。
……揃ってやってると、意外と格好いいな、あれ。
「選択肢は2つ。
まず1つ目は、組織に入り、絶対服従を誓うこと。」
『イヤだ!』
「……まだ2つ目を言っていないんだが?」
「でも普通に考えて、服従はイヤだろ?」
「ん~、まあな。
だが、その場合。」
「イィー!」
「入れ。」
その言葉と共に扉が開き、さっきの出ていった男達が、す巻き状態に猿ぐつわをされた2人の男達を連れてきた。
男達が2人を乱暴に放ると、2人はうめき声をあげながら倒れた。
……ん?よく見たらあいつら、俺達に職質してきた奴らじゃねえか。
「コイツらは、その男の偽情報に踊らされ、ここまで潜入を許す結果になった。
このミスはけして許されない。
よって!」
そう言い右手を口で覆い、次の瞬間。
「カァァァァ、ペッ!!」
男達に向けて、口から紫色の液体を吐き出した。
吐き出された液体は放物線を描き、男達に降りそぞぎ、そして……、
………うん、今目の前で起きていることを、そのまま話すぜ。
さっきまでいた男達が、3分足らずで服、縄も残さずに、跡形もなく消えてしまった。
連れ去られたとか、逃げ出したとか、手品や魔術とかいった、そんなちゃちなもんじゃねえ。
というか、そっちの方が幾分かマシだ。
もっと恐ろしい、どす黒いものを感じるぜ。
「……大丈夫か?」
「……脳内でボケられる程度には。」
心配そうな表情で神無月が聞く辺り、俺の顔色は結構ヤバいんだろう。
まあ、あんなもん見せられたら、顔色も悪くなるわな。
むしろ吐いたり、失禁しなかったことを褒めてやりたい。
………あ~、そこで情けない奴だな~。って思った、あんた。
人間や色んな物が溶けていく様を、3分ばかりじ~~~~~っくりと見てみやがれ。
苦悶の表情とか、ぐもった悲鳴とか、肉の溶ける臭いとか、暴れてたのが段々弱々しくなる様とかetc
あんなの見てたら普通発狂するぞ!
「………本当に大丈夫なのか?」
「逆ギレが出来る程度には回復した。」
人間、時には怒りも必要だね、今実感したよ。
「さて、見てわかってもらった様に、我々は反抗する者、裏切り者、使えない者には容赦しない。
我々に忠誠を誓わないのであれば、次は貴様らがああなる。」
そう言って蜘蛛男は、2人がいた所を指差した。
「……このまま黙って帰してくれる。っていう選択肢は?」
「ない。
これでも大分譲歩してやった方だ。
さあ、選べ。
死か、服従か!」
まあ、だよな。
となると、死にたくなけりゃほぼ1択か~。
やれやれだな。
まあ、賢くやらなければ生き残れないし、生きてこその物種っていうしな。
だから、ここの答えは当然、「冗談はあんたの口臭だけにしておけ、オッサン。」
「……なに?」
「何度でも言ってやらぁ!
あんたの口臭が臭すぎて話になんねぇ!
人を誘いたきゃ、その口臭以上に臭え心を、叩き直してからにしやがれ!」
俺の罵倒に蜘蛛男は信じられない者を見る様にしながら、口をパクパクとさせていた。
「……それに、自分の心を殺して、あんたらに従いながら生きるのは、死んでいるのと同じ事だ。
だから、俺は絶対に従わない。
それが俺の信じる事だから!」
そう言いながら俺は胸を張った。
間違っていないっと、そう自信をもって言えたから。
まあ、もっとも、
「……そうか、良い覚悟だ。」
そう言う蜘蛛男の肩はプルプル震えている。
「ならば、その覚悟に殉じて死ぬがいい!」
そう言いながら右手を口元にもっていく。
まあ、そうなるよな~。
悔いは………、なくはないが、まあいいさ。
自分に殉じたんだ。
じいちゃんも、笑って許してくれんだろう。
生介、悪いな。
先に逝くぜ。
そう思いながら、俺は覚悟を決めた。
なるべく楽に死にたいな~。と考えていると、
「……ふふ。」
「ん?」
「ふふふふ。」
「んん?」
「あはははははははははは!!」
隣にいた神無月が急に大笑いをし始めた。
あまりに笑うので若干引いていると、漸く気がすんだのか、荒く息をしながら笑い止んだ。
「…なあ、なにかそんなに面白いことあったか?」
「ん?
ああ、嬉しかっただけだよ。
僕の直感は正しかったからね。
君も、どうやらこっち側の人間だったみたいだね。」
「こっち側?」
「ああ、こっち側。
そして…、」
そう言いながら神無月は、どこから出したのか、大きめのスマホ大のDVDプレイヤーのような物を取りだし、
「僕もお前達に従うつもりは無い!」
それを腰に充てた。
すると、それからベルトのような物が彼の腰に沿って伸び、反対側に繋がる。
「……なんのつもりだ?」
「…僕はさっきこう言った、正の情報だけではなかった、と。」
「だからなんだというんだ!!」
「わからないのかい?
つまり、正の情報もこの世界に組み込まれているってことさ!
そもそも、不思議に思わないのかい?
それだけの組織や怪人がいたのに、人が支配されたことはなかった。
それは何故か?」
そう言いながら神無月は、プレイヤーの丸いスイッチを長押しした。
するとプレイヤーから、ディスクが高速で回る音が辺りに響く。
「それは何時の時代にも、自由や人々の笑顔のために、戦い続けた人達がいたからだ!」
やや右半身に構え、肘を溝うち辺り、右手を左肩の前に構える。
「人々の自由と笑顔のために戦う彼らは自分達のことを、彼らのことを知る人達は、彼らのことをこう呼んだ。
仮面ライダーと!!」
そう言いながら神無月は、もう一度丸いスイッチを軽く押した。
「変身!!」
そう叫ぶ彼の体を無数のウィンドウが覆い、彼に漂着して弾けた。
弾けた所に残った彼は、今までの姿ではなかった。
腕と脚には白を基調とした装甲をつけ、胸の方ははキーボードのボタンのに様な凹凸がある装甲を、頭は白で覆われ、顔の方はパソコンのディスプレイ画面みたいになっていた。
ヴォンっという画面起動音と共に、画面に目の様な丸い物が浮かぶ。
「……僕はその系譜を受け継ぐ者の一人。」
『仮面ライダーハッカー ディスプレイフォーム!』
「仮面ライダーハッカーだ!!」
ビシッと構えながら神無月は叫んだ。
「さあ、行くぞ、外道共!!」
そう言って彼は拳を握りしめ、敵に向かって行った。
てなわけで、漸くライダーと怪人の登場です。
1章も半ばまで来ました。
お付き合いいただけると嬉しいです。
感想、誤字脱字報告などありましたら、お気軽にどうぞ。