久しぶりに書くので、満足して貰えれば幸いです。
『仮面ライダーハッカー アルト オブ サウザンドアーツ!』
その電子音と共にウィンドウが弾け、中から深緑色の戦士が現れた。
その戦士の体を纏うプロテクターと目は炎の様に赤く、首にオレンジ色のスカーフを巻いき、額にはクウガの様な金色の角がついていた。
「……これが神無月の言っていた、ミクストールってやつなのか。」
目の前で変身を終えた神無月を見ながら、俺はそう呟きながら、先ほどの会話を思い返していた。
―ーーー
「……ふぅー、よし!
これで戦える。」
パスワードを解き、鉄の箱からディスクを取り出しながら、神無月は安堵のため息をついていた。
「探し物はあったのか?」
「ああ、あったよ。
いや~、合うのがあって良かったよ。」
「合うの?
どういう意味だ、それ?
そもそも、そのディスクってなんなんだ?」
「さっき僕が変身した時に言ったこと、覚えてる?」
「ん?仮面ライダーと呼ばれてた、と言っていた辺りか?」
「違う違う、情報のことを話した辺り。」
「ああ、正しい情報も、悪い情報も入っている。ってやつな。」
「そうそう、蜘蛛男達みたいのを造る悪の情報と対となる、正の情報。
仮面ライダーの情報が入っているのが、このディスクなんだ。」
「へー、このディスクがねえ。」
そう言いながらマジマジと見てみると、恐らくそのディスクに入っているライダーなのだろう。
ディスクに何かの顔が浮かんで見えた。
「そして、その情報を引き出すのが、これ。
このハッカードライバー、ってわけさ。」
そう言いながら、彼はおなかの機械を指差した。
「へ~。」
「でも、誰かの陰謀なのか、はたまたそういう仕様なのかわからないけど、これ一枚だけでは使えないんだ。」
「ん?どういうことだ?」
「この一枚と対となるディスクがそれぞれあって、2枚揃わないと、力を引き出すことができないんだ。
今まで何枚かディスクを手に入れていたんだけど、どれも合わないディスクでね。
今回手に入れた、この3枚のディスクのおかげで、漸く力を引き出すことができる様になったよ。」
「へ~、そりゃ良かったな。
…………って、おい。
もし、今回も対となるディスクが手に入ってなかったら?」
「ん~、ちょっと不味かったかな?
まあ、結果オーライってやつだよ。」
あはははっと、彼は笑いながら言っているが、まるで笑えない。
勝算が無いにも程がある。
道路には歩道がある。
………うん、ボケられるぐらいには冷静だな。
今すぐこいつを殴りたいけどね。
「……ありがとう。」
「へ?」
「睦月さんが居なければ謎が解けず、こうしてディスクを得ることはできなかっただろうし、もしかしたら、途中で捕まっていたかもしれない。
君が居たから手にできたんだ。
本当にありがとう。」
「……別に、気にすることはないさ。
好きでついてきたことだし。
それに、得たのはほとんどお前の実力だ。
俺はほんの少しだけ、手助けしただけだ。」
「それでも、それのおかげで得られたんだ。
君のおかげだよ、睦月さん。」
「呼び捨てで良い。」
「……へ?」
「だから、睦月って呼び捨てで良い。
俺もお前のことを呼び捨てにしてたし。
何より、さん付けだとむず痒くてしょうがないんだ。」
「……うん、わかったよ、睦月。」
「…おう。」
我ながら現金だと思う。
今の言葉で怒りが大分ひいている。
あと多分、今頬赤いだろうな。
ちょっと恥ずかしいし、何より神無月の奴、なんか意味ありげに笑み浮かべているしな。
まあ、いいけどね。
「ん?どうやら奴らが出てきたようだよ?」
「ふぅ、遂に来ちまったか。」
「……なあ、睦月。」
「ん?」
「あいつらのこと、少しおちょくりたいんだ。
付き合ってくれないか?」
「いいけど、滅茶苦茶怒らないか?それ。」
逆の立場なら、ブチキレる自信があるぞ?
「いいから、いいから。」
「あんま良くないと、思うんだけどな~。」
そんなことを言っていると、扉が開き、蜘蛛男達が部屋へと入ってきた。
ーーーー
まあ、そんなことがあったわけなんだが、……やっぱりおちょくらない方が良かったんじゃないか?
当然ながらあいつ、滅茶苦茶怒ってるぞ?
「ふん、姿形変わったぐらいで、なんになるというのだ!
行け!戦闘員共!」
「イィー!!(ハッ!)」
神無月に向かって襲いかかる戦闘員達。
それを見ながら俺は、
「あ。
あんた(蜘蛛男)は、襲わないのね。」
そんなことを一人ぼやきつつ、戦闘の邪魔にならない様に神無月から離れていった。
「かかれぇぇぇ!」
「イィー!(ハッ!)」
蜘蛛男の号令に従い襲いかかる5人の戦闘員達。
それを見ながら、蜘蛛男は勝利を確信していた。
姿形が変わった程度で、劇的に強くなるわけがないと思っていたし、よしんば強くなっていても、エリート戦闘員達が複数で襲いかかっている。
彼らの強さは自分を含む怪人達だって、彼らを複数で相手すると手こずるくらいなのだ、無事で済むわけがない。
エリートの名は伊達ではないのだ。
そうこう思っている内に、戦闘員達と神無月の距離はすぐ近くまで詰め寄り、飛び掛かろうとしていた。
その時だった。
「ライダー……、」
神無月が左足を一歩踏み出しながら、右手を引いた。
今から殴りますと言わんばかりの構えに、蜘蛛男はにやりとする。
そんなテレフォンパンチ、当たるわけがない。と思っていた。
事実、戦闘員達は既に回避の準備していたし、当たっても大したことはないと思ってもいた。
「パンチ!」
そう言いながら重心移動をし、腰を振り、右腕が消えた。
それと同時に
-バキッ-
鈍い音が辺りに響き、それと共に神無月の前の方にいた戦闘員が、真っ直ぐこちらへぶっ飛んできた。
「くっ!」
蜘蛛男が素早く避けると、戦闘員はそのまま開いていた扉から部屋の外へ飛び出し、白い通路の途中まで転がっていった。
「なあ!?」
「イィ!?(なあ!?)」
突然のことに驚きを隠せず、蜘蛛男と戦闘員達は飛んでいった方を見る。
睦月でさえも口を開けて驚いていた。
だが、
「ライダー…、」
それは戦いの最中に晒してはいけない隙だった。
「チョープ!!」
「イ゛ィー!(ギャー!)」
逆袈裟に振られた一撃に、さっきと同様のコースを通りながら、戦闘員が飛んでいく。
「イィー!(一斉に行って押さえつけろぉぉ!)」
ショックから戻った戦闘員達が、一斉にに飛び掛かる。
神無月はそれを転がりながらかわし、ベルトに向けて両手をかざした。
すると、ベルトから高速回転する音が響き、それと同時に神無月の目の色とプロテクターが海の様な青に変わる。
「ドラゴンロッド!」
そう叫ぶと、彼の手に蒼色の根が現れた。
そして、再び襲ってくる戦闘員達を薙ぎ、透かし、払っていく。
そして、
「まず一人。」
「イ゛ィー!(ぐぁー!)」
「二人!」
「イィー!(うわぁぁ!)」
「これでラスト!!」
「イ゛ィ―!(ギャー!)」
一人目はバッティングの要領で打ち飛ばし、二人目を服に柄を引っ掛けて投げ飛ばし、最後は槍投げの要領で根ごと戦闘員を投げ飛ばす。
「これで、あとはお前だけだね。」
全ての戦闘員を廊下まで飛ばしたのを確認しつつ、再びドラゴンロッドを出した神無月は、そう言いながら蜘蛛男へ構えた。
これで引いてくれると助かるんだけどな~。
俺は神無月と蜘蛛男を見つめながら、そんなことを思っていた。
まあ、残念ながら多分ないだろうけど。
「………ふん、所詮は戦闘員か。
使えぬ奴らめ。」
そう言いながら蜘蛛男は、パチンと指を鳴らした。
すると、先程のトラップの壁が落ちてきて、戦闘員達を閉じ込めてしまった。
って、いやちょっと待て!!
「なんでトラップを発動させてんだ!!
中にお前の部下が!!」
「ああ、居たな。
それがどうした?」
「な!?」
蜘蛛男の言葉に絶句する俺を尻目に、蜘蛛男は言葉を続ける。
「私は言ったはずだ。
使えぬ者も消す、っと。」
「そんな、……そんな勝手なこと、……そんな勝手なことが許されてたまっかぁぁぁぁぁ!!!」
「その通りだよ、睦月。
こんなこと、許されてはいけないんだ。」
「ふん、貴様らが許そうと、許すまいと関係ない。
この世界は我々の物だ、所有物をどうしようと、我々の勝手だろ?」
「ふざけんな!!
俺の命は俺の物だ!
神無月の命はこいつの物だ!
さっきの戦闘員達の命は、そいつらの物だ!
好き勝手に奪って良い物じゃねえんだ!!」
「うるさい!
戦うことの出来ぬ弱い犬が、キャンキャン吠えるでない!
文句があるなら、力強くで止めろぉぉ!!」
そう言いながら蜘蛛男は左手を口の前にやる。
その数瞬後、無数の白い小粒の塊を口からこちらに向け、マシンガンの様に吐き出した。
「うおわぁ!」
「はっ!!」
俺は必死に避け、神無月はロッドを回して塊を弾こうとするが、
「…!
これは!」
塊はロッドから離れず、回せば回すほどに塊から糸が伸び、周りにくっついて神無月の動きを邪魔する。
これ以上やると自分に糸がくっつくと判断したのか、神無月は素早くロッドを捨てた。
「ぬぅぅぅ、はぁぁ!!」
「チィ!!」
蜘蛛男から再び吐き出された塊を、再び現出したロッドで弾くが、しばらくやるとまた糸が絡まりそうになり、神無月はそれも投げ捨てた。
「くっ、このままじゃ、じり貧だ!」
「ふふふ。
さあ、どうする?
このまま繰り返して、やがて捕まるか?
自ら投降するか?
どちらが良い?」
そう言いながら蜘蛛男は、再び左手を口の前に持っていく。
「……どちらも、ごめんだね!」
そう言い神無月はベルトに両手をかざすと、目とプロテクターが今度は緑色に変化する。
「それがどうした!
くらえ!!」
「ペガサスボーガン!!」
左手にペガサスボーガンを現出させ、超感覚による正確無比の射撃で白い塊を全て撃ち落とす。
「触れたら不味いなら、触れなければ良い。
全て撃ち落とすまでだ。」
「おのれぇ!」
有効だった攻撃を無にされ焦ったのか、蜘蛛男は一気に距離を詰めてきた。
それを見ながら神無月は、再びベルトに両手をかざした。
再び高速回転する音が響き、今度は紫色に目とプロテクターが変化する。
「くらえぇぇ!!」
そう言いながら左手をかざしていた口から、今度は塊ではなく、蜘蛛の巣状の糸を吐いた。
「これで避けられまい!」
そう言って蜘蛛男は、右手を口の前にかざす。
迫り来る蜘蛛の巣。
避けることのできない攻撃を前に、
「……読めてたよ、それ。
そして、避ける気もない!
タイタンソード!」
そう言いながら上弦に構えた剣で、真っ直ぐ下へ一閃。
切り裂かれた糸を目にし、蜘蛛男は少々驚くが、関係ないと言わんばかりに紫色の液体を吐き出した。
こちらに真っ直ぐ飛んでくるそれを前に神無月は、
「それも読んでいたぁぁ!」
そう言いながら彼は、何もない空間をおもいっきり蹴った。
「なあ!?」
凄まじい力と速度で出された蹴りにより、前方に暴風がまきおこる。
その風に押され、紫色の液体は蜘蛛男の方へ帰っていき、
「ぐわぁぁぁぁぁ!!」
帰ってきた液体をもろにかぶり、蜘蛛男は苦悶の悲鳴をあげる。
「ふぅ、睦月、君の予想通りだったね。」
「ああ、正直冷や汗が止まらんかったけどな。」
そう言いながら俺は、先程の会話を思い出していた。
ーーーー
「あ、わかっていると思うけど、あいつの右手には気をつけろよ。」
「……え?なんでだい?」
パスワードを解き、箱へ向かう途中で、俺はそう話かけた。
「なんで?って、お前気づいてないのか?
あいつ、あの紫色の液体を出す時は、必ず口を右手でおおうんだぞ?」
「……確かに、言われてみればそうだ。」
ちなみに、白い塊に捕まった時も、奴は右手で口をおおったのを視線の端に見えた。
「でも、なんで?」
「多分だけど、右手にある物質Aと口にある物質Bを合わせて、初めて溶かせるんじゃねえか?
最初から溶かせたら、くしゃみとか咳とか大変じゃねえか?」
「…たしかにね。」
俺の言葉に、神無月は苦笑しながら頷く。
「まあ、射程距離は短そうだから、離れていれば、そんなに危険はないと思うよ。」
「……ごめん、理由は?」
「……もし、奴のそれが遠くまで飛ばせるなら、そもそも糸の塊を吐かず、その液を吐けば良かったのさ。
それで全部終わっている。」
「なるほど、ところで糸の塊ってなんだい?」
「……俺達にぶつけられた白い塊のがあっただろ?
あれだよ。
多分遠距離なら固め、近距離ならほぐして使っているんだろうさ。」
「?なんのために?」
「捕らえ方が違うのと糸の特性状からだろうな。
糸は風の影響を受け易いから、固めることで、遠くまで飛ばすためだろうな。」
「ふむ、なるほどね。」
「多分下手に逃げられて、液体が自分にかからないようにするためだろうな。
だから慎重なんだろうさ。」
「ん?
別に彼はかかっても大丈夫なのでは?」
「いや、多分あいつ自身には耐性はない。
でなきゃ、あんな不確かな吐き方をせず、近くに立って嘔吐の用途でかければ良い。」
「……それはそれで、嫌なかけられ方だね。」
「ああ、そうだな。
俺もごめんだ。
まあ、液体だから、強い風が吹けば跳ね返せそうだけどね。」
「……たしかに。
もしかしたら使えるかもしれない、覚えておくよ。」
「まあ、参考程度でな。」
苦笑しながら答えると、俺達は箱の目の前にたどり着いた。
ーーーー
「……さてと、決めますか!」
そう言いベルトに両手をかざすと、彼は再び赤色に変化する。
「蜘蛛男、さっきお前は睦月を戦えない弱い犬と言ったね。
それは間違えだ。
睦月が居たから僕は戦えるんだ。
睦月が居たから、お前をここまで追い詰められたんだ。
戦うのに必要なのは、力だけじゃないんだ!
そして、強大な敵を前にしても立ち向かう彼は、けして弱くない。
本当に弱いのは、強い者にかしづき、自分より弱い者をないがしろにするお前の方だ!
もし、戦う必要があるのなら、僕が代わりに戦ってやる!
何故なら僕は、仮面ライダーだからだ!!」
そう言って彼は右足を僅かに下げ、構えた。
「ハァァァァァァ!」
そして、深く息を吸ったのち、空手の息吹きの様な吐き方をしながら気を溜める。
やがて、それが最高潮になった時、
「ハッ!!」
彼は数歩駆け、跳躍して、ある技へと移行する。
それは1号から始まり、様々なライダー達に受け継がれていった技。
全ての始まりの技。
その名は!
「ライダーキーック!!」
「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」
必殺の蹴りを喰らい、吹き飛んでいく蜘蛛男。
数回地面を跳ね転がりながら、いつの間にか壁が上がった白い廊下の途中まで飛んでいく。
「うぅぅ。」
よろよろと立ち上がる蜘蛛男だったが、蹴られた所になにかの紋が浮かびり、そこからヒビが広がっていく。
「ぐぉぉぉぉぁぁぁ!!」
蜘蛛男が最後の雄叫びを上げた瞬間、白い壁が上から落ち遮断する。
それと同時に壁の向こうから爆発音と、激しい振動がした。
「……終わったのか。」
「ああ、終わったよ。」
そう言いながらサムズアップをする彼に、俺もサムズアップで返した。