影と僕   作:源 腐卵

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影と僕

 

あ〜終わりだな。これで楽になれる。

 

そう心の中で呟いて結んだロープを首に掛けた。

 

椅子を倒し体が宙に浮く。

 

これまでの人生を振り返り何もいいことなんて無かった事を再確認する。

 

これで本当に終わりなんだな。

 

意識が遠のいていく………。

 

 

「やぁ?何でここにいるんだい?」

 

目を覚ますとそこはいつもの汚い部屋にいた。

そして、目の前には人間の言葉を発する黒い影がポツンと一人すわっている。

 

僕が何故ここにいるのかは把握出来ていないが、何となくここが別の世界なのはわかった。

 

「何もいいことがないからかな…」

 

「君が思ういいことってなんなのさ?」

 

影は冷静に痛いところを付いてくる。

確かにいいことは無かった。

でも、不幸な人はもっと不幸だ。アフリカの子供たちは毎日食料に困り、スラムでは子供でも兵士として使われるような世の中で僕の不幸なんてちっぽけに見えてくる。

 

「僕おばあちゃんと母とお姉ちゃんと暮らしててさ。おばあちゃんは僕の話なんて聞いてくれない……口を開けば説教ばっか。バカだ。使えない。必要ない。邪魔。そんなことばっかり…それで全部お前が悪いんだって。育ててきたのは誰だよって話だよね。」

 

「それで?」

 

「母も僕を子供なんて思ってない。世間体だけ気にして生きてるようなもんだから僕が使えないことをずっと世間に隠して生きてるんだ。姉も僕が弟なのが恥みたいでいつも睨んでくる。きっと僕は必要ない存在なんだよ。」

 

「そんな事ないよ〜そういう時は友達と遊んでぱ〜っと忘れちゃえよー」

 

影は目の前にいてあいずちをするがちょっと頭にくる。

 

どうせ僕の話なんて聞いちゃいない。

 

「友達も僕を友達としては見てない……ただのパシリだし。みんなからおかしい奴おかしい奴って言われて疲れちゃうんだ。」

 

「それは君が無理してキャラを作ったからだろ〜?自業自得じゃないか〜」

 

「そうかもしれないね。でも、家族に好かれない分友達が欲しかったんだ…だだ誰かに愛されたかったんだ。だから、無理して笑って、無理してふざけて、たまに1人になった時に考えるんだ…僕は僕として好かれてるんじゃなくてキャラの僕が好かれているだけ本音を言ったらみんなすぐ離れていったよ。それがすごく辛くて悲しくて関わることをやめたんだ。」

 

「キャラは大変だね〜ピエロは笑うことしか許されないってことかな~?」

 

「そういう事だよ。笑って大道芸してる所しか人間見ようとしないからそれ以外に興味ない。」

 

ピエロはステージ裏で泣いている。

自分がうまくできない事に悩み情けなくなり。しかし、ステージでは辛かろう、悲しかろう笑顔(かめん)を被る。例え最愛の人を失った時でもね。

 

そんな人たちよりは不幸ではないだろって?

確かにそうだけどそう考えても結局自分の不幸は消えないんだよ。

 

「じゃ〜恋人は?それこそ癒し求めて作ったろ〜?若いね〜」

 

「家族の女に好かれてない僕が他の女に好かれることがあるわけないだろ。」

 

「それはちがうよ〜君は愛されたいっと思ってるだけで努力しなかったんだ。若者の草食系気取ってただ待ってただけだろ?寄ってくるのをさー」

 

影はまた痛いところを付いてくる。

 

彼女は欲しかった。女は好きだった。

でも…周りからあいつやばくね?って言われるのが嫌だった。

振られて傷つくのが嫌だった。

友達関係がなくなってしまうのが嫌だった。

結局誰からもする好かれたいあまりいけなかった。

 

世間のいう草食系に便乗して僕も草食系って便乗して寄ってくるのを待ってた。

 

「でも〜寄ってくる女は好きじゃないってな〜」

 

「大体ブスだから」

 

「それはハッキリ言うんだ〜面白いね〜君も対してかっこよくないくせしてね〜ハハハハ」

 

「そうかもしれないけど自分の顔ってやっぱりかっこよく見えちゃうんだよ。だからこれくらいの人なら釣り合うかなって人を探してるんだ。簡単に言うと心が汚いんだ。」

 

「女の子も結局ブスだし〜って言ってもかわいいって思ってるって事?それは偏見だろ〜」

 

「偏見?人間なんてみんなそうだろ?服装がダサかったらダメ、顔がブサイクだったらダメ、お金持ってないとダメ、車持ってないとダメ、友達多くないとダメ、全部偏見じゃん外面だけで判断してもう内面は見ようとしないだから僕もそうするだよ。」

 

「ねじ曲がってるね〜」

 

そうだろ?お前らは人間どこで判断する?性格じゃないだろ顔、服装、人間関係とかからだろ?

 

僕もそうして何が悪い。

 

「そうだよ世の中みんな曲がってるからそれが普通になったんだよ。」

 

「自分の正義すら忘れてってか〜いいもんだね〜人間は」

 

影から思いもしない言葉が出てきた。

この人って人間じゃなかったの?

 

「お前は人間じゃなかったの?」

 

「そう見えるかい?君が作り出した物だもん〜そりゃ人間じゃないさ〜」

 

「どういう事だよ?」

 

「君が人に話せないことを聞いて欲しいからって作り出した自分の言いなりになる人形として作ったんだよ」

 

え?俺にそんな力があるのか?

 

「だから君が死んだら僕も死ぬ」

 

「何で急に?お前が出来たりしたんだよ?」

 

「人間の頭の中は自由だろ?」

 

確かに子供の頃から頭の中で色々考えてたりはしてけども…だからといってこんな薄気味悪い奴を僕は作ったのか?不思議過ぎる。

 

「考えてるよりも今まで辛かった話を聞いて上げるよ〜」

 

「何で聞いてなさそうなこと言ってるのに…」

 

「君が言って欲しい言葉が決まってるからだろ〜」

 

あ〜こいつは確かに僕が作ったみたいだ

 

「大丈夫よく頑張ったね。」

 

その言葉で涙が溢れてきた。

よく分かんない涙だったけど止まんなくて今まで流せなかった分が急に溢れ出てくる感じ

 

あれ?言ってることよくわからなくなってきたーーー。

 

「あれ?止まんない。なんで?」

 

「ただ誰かに認めて欲しかったんだよね?」

 

「うん。」

 

「だだ誰かに必要とされたいだけだったんだよね?」

 

「うん。」

 

「君がいてよかったって」

 

「うん。」

 

僕はあーだこうだ言ってるのはただ誰かに…誰かに…

 

吹いても吹いても流れてくる涙は裾を濡らし床を濡らし今までの辛さを洗い流しているようだった。

 

影が僕を抱き寄せてくる。

 

黒いのにとっても温かい。

 

この温もりが今まで生きてきた中で1番欲しかったものだったんだな…

 

「ありがとう……ありがとう……会えてよかった。」

 

「いえいえ僕も君に会えてよかったよ。また…いや、もう来ないか。」

 

「うん…でも、大丈夫。もう、頑張れるから。」

 

「これからずっと見守るよ。影はいろんな視点でさ。」

 

「本当に…本当に…ありがとう…」

 

涙で言葉が詰まったけど言うことが出来た。

産まれて初めて会えてよかったって言われた。

産まれて初めて愛情の意味を知った。

 

 

産まれて初めて…

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「あれ?」

 

再び僕の部屋に戻ってきた。

 

けど、黒い影はいない。

 

首には切れたロープがぶら下がっていて失敗したことを伝えてた。

 

良かったのか悪かったのか分からない。

けど、必要とされる喜びを知れただけで僕は生きていける。

 

それからも生き地獄だった。

 

でも、前よりも気が楽になった。

 

「影はいろんな視点で見るからね」

 

そういう事だったんだな。

 

今日君はどこからみてるのかな。ちょっと気になった。

 

 

 

 

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