『みんなから馬鹿扱いされても、だからといって自分の信念をあきらめてはいけない』
―浅田次郎―
「なにしてんすか」
空いてしまった口が閉じきらぬ間に、俺はコーヒーを呷った。こうして一杯飲むだけで落ち着くのだ。
週末の昼下がり。今日は季節外れの暖かさだというのに、全く予報を無視した室内のエアコンの音が轟く店内。この店は、レトロなBGMがお洒落で、客の年齢層はそれなりに高い。JKとかJDが来るような、そういうスター○ックス系ではない。
けれど、今日は違った。
学校帰りス○バでアゲアゲ卍系女子が店を訪れていたのだ。
ワンピースに、深くかぶった麦わら帽子。いくら季節外れの暖かさだからって、普通ここまで大胆な格好は出来ないだろう。彼女は店内から奇妙なものでも見るような視線を注がれていた。
……ったく、誰かの連れか?
ちらと目の端で見ただけなのに、この店と一線を画すオーラをまとっていたのがわかった。皆の視線は、彼女を追い続けていた。仲良くなりたいとか、羨望とかそういうのではない。こういう店でこういう雰囲気の子がいれば、意図せずとも排他的な空気が、店内で起こる。
かかわり合いになりたくないから、俺は席に勢いよくもたれかかって、読み差しの本を開いた。
コツコツとヒールの音が耳に障る。しかし、ようやくその音は落ち着いた。
……俺の目の前で。
はあ、このパターン、慣れてきました。
これ次、俺の中でかかわり合いになりたくないランキングで覇権を争っている
○ノ下陽乃か、一色い○はが出てくるパターンだ。
大穴で折本が出てくる可能性も、それあるー! な。
「こんにちは、先輩」
ふっと視線をあげれば、いつものように含みのある笑みを浮かべる「陽乃」さんがいた。
「……ども」
「えー……無視した。私から先輩って言われるなんてレア中のレアだよ?」
「呼ばれただけで告られてそうです」
「ははは、さすがにそれはねー……。四・五回しかないかなあ」
「多いよ、多い」
差し込む陽射しはどこか優しさがあって、まるで神でも崇めるように彼女を照らす。どうやら陽乃さんは天から完璧に愛されているらしい。
「ふう」と一息ついて、彼女は麦わら帽子を膝の上に置く。その洗練された所作と、しなやかながら厳かな雰囲気に、周りは皆圧倒されているようだった。
横目で見ているだけでも、周囲の動揺がわかった。
新聞に穴を開ける老紳士。
そっと店を出るマダム。
客の紅茶を飲む店長。
陽乃さんに向き直れば、彼女はにこっと微笑む。あー、早く帰りたい。この人が笑ってていいことあったことないもん。
俺は、店長と客がもめている間に店をそっと出ようと画策するがそうはいかないらしい。
店長が店の出口にいるのだ。あいつ、謝りながらちょくちょく陽乃さんを見ている。どうやら陽乃さんを見やすい出口に移動したようだ。
なんて肝が据わっているんだ……。
あの白衣の怒っている客も視線に気づいてはいるらしい。だってちらちら見てるもん。
…………俺のことを。
てんちょぉぉぉぉ!
「……ガヤ」
「え」
「……裏切り……」
「あ、いや」
意味不明な言動を繰り返した後、その客は俺の方に近づいてくる。俺は座った姿勢から見上げたまま身動きが取れなくなってしまった。
その姿、もはや生気は感じられず、顔を見れば修羅である。そろそろ千本の手が見えそうだ。
白衣の化け物は、動けぬ俺を見て嘲笑うかのごとく笑みを浮かべた。半開きの口、もはや妖怪である。
あ、妖怪のせいなのね、そうなのね!
ふと俺の前に座る妖怪を見れば、なにやらにこにこしていた。どうやら状況がわからないようである。しかもよく見てみれば、見ているのは俺ではない。もっと先の、小説かなんかで言う、僕を通して何かを見てるみたいな。
と、彼女の視線の先を追ってみる。
徐々に振り返ってみれば、ショーウィンドウがあった。
街中を眺めれるように、街も俺らを見ているのだろうか。ただ、俺はそんな単純な疑問が浮かんだ。
ショーウィンドウ越しにこちらを見てくる一色いろはは、きっと俺たちを見ているんだなあ。
……全て妖怪の仕業ですよね神様。
久しぶりすぎますね。大学生になっちゃいました。
高二から書いていたssも気づけば2年?3年目? 計算できないからわからないけど笑
僕なんかを覚えててくれた人がいれたら嬉しいなってとこでもう寝ますね!!!