帝国魔将ゴルベーザ!   作:RIN

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第4話の投稿です。
まずはクレマンティーヌのファンの皆様に土下座。
そして何故かうちのスカルミリョーネがかっこよすぎて偽物疑惑が起こっている。理不尽な…。

今回の一言
「クレマンさん星になりました。」byRIN


数の力

――月明かりが照らす中、そこには二人の姿が見える。大柄な者と小柄な者が抱き合っているようだ。今夜の綺麗な月をバックに逢瀬を楽しんでいるのだろうか。影だけを見るのならばきっとそう見えるのであろう。

 

 そして月が雲に隠れてしまう。逆光になっていた影が無くなり本来の姿が露わになる。

 

 

 

 

 

 

―――そこには血まみれの女性とそれを抱き込んでいる偉大なる死の王がいたのだった。

 

 

 それは逢瀬できっと間違いは無かったのだろう。その女性との最初で最後の逢瀬は死の王の腕の中で眠る揺り籠であった。

 

 

 

 

 

――アインズSIDE――

 

「言い忘れていたな。…私は非常に我が儘なんだ。」

 

 静かに返答も返さぬクレマンティーヌの死体に語りかけ手向けの挨拶とした。

 

(吐瀉物の処理で身体が濡れてしまったが…まぁどうにかなるだろう。)

 

 戦士としては非常に手強い女性であった。事実私の魔法で作った武器や鎧をかなりへこませるほどの力を有していた。レベルはおそらく40~50程度はあっただろう。この世界の住人にしてはかなりの強さであった。

 

 これほど強いのであれば実験として死体を持っていくのも良いかもしれん。要件が終わり次第死体が残っていれば回収も視野に入れよう。

 

 とりあえずここでの騒動は終わりだろう。あとはンフィーレア君を開放して依頼は終了だ。ナーベラル達も探しておきたいが少し霧が深くなってきたようだ。

 

(この霧では探すのは少し大変かも…ん?霧?)

 

 

 

―――この霧…何かおかしい。アンデットの身体では詳細はわからぬが()()()()()()()()()する。

 

 

 

 待て!私の身体に異常を訴える霧などただ事ではないぞ!そういえばナーベラルの方も静かだが…まさか!

 

(ナーベラル!ナーベラル!返事をしろ!)

 

 メッセージでナーベラルに飛ばすが返事がない。どうなって…―――…っ!

 

 足元に()()を感じ見てみると、そこにはクレマンティーヌの死体がアンデット化をして私の足を掴んでいた。

 

(なっ…早すぎる!自然発生のアンデットではないぞ!それに()()…?まさかこれは…!)

 

 

―――()()がある。それは()()()()()()()()ということ…!

 

 

「この…!はなせ…!」

 

 動揺が態度に出てしまう。クレマンティーヌの死体を蹴り飛ばしその状態を確認すると…

 

「スカルナントだと!?なぜこいつがこんなところにいる!?」

 

 スカルナントはデスナイトの下位の存在である。ユグドラシル時代では自然発生で存在しないモンスターで、スキルによってのみ作り出すことのできる存在だ。

 

 耐性面では1回だけ物理的な致死ダメージを受けた際に耐えることが出来るのはデスナイトと一緒だ。しかしこいつは魔法には耐性はなく、挑発も使えないので盾にもならない雑魚である。

 

 しかしこいつの厄介なところは別にある。まずデスナイトに比べ大量に召喚できること。デスナイトが中位で1日12体に対し、スカルナントは中位1回で4体作れるため1日で48体まで作り出すことが出来る。また専用スキルにて召喚をすればさらに大量に作り出すことが出来る。

 

 また攻撃面でも厄介で、こいつの攻撃力は非常に弱いが防御やスキルを無視して攻撃する<貫通攻撃>のスキルを持っているのだ。先ほどダメージが通ったのは自身の防御と<上位物理無効化Ⅲ>を無視して攻撃されたせいである。

 

(ただの雑魚ではあるが…問題なのはこの存在を誰が作り出したかだ…!)

 

 スカルナントはネクロマンサーでもある自分にも作り出せるが、作り出すにはネクロマンサーの職業レベルを10レベル以上取得しなければならない。つまりスカルナントはこの世界では明らかに高レベルの存在であり、ここにいていい存在ではないのである。

 

『フシュルルル…なるほど…!それが貴様の正体か…!』

 

 そうして考えていると、スカルナントであるクレマンティーヌの口からおどろおどろしい声が出てきた。明らかにクレマンティーヌの声ではない。

 

(これは…《アンデススレイブ/不死の奴隷》でこちらに話しかけているようだな。)

 

 《アンデススレイブ/不死の奴隷》はアンデッドと視界や聴覚を共有したり、言葉で話しかけたりできる魔法である。遠隔にいる相手を確認したり話しかけたりできるので、私も使っていた便利な魔法だ。

 

「ああ…興が乗ったので姿を現させてもらった。それで…貴様は誰だ?」

 

『フシュルルル…。よかろう…私の名はスカルミリョーネ…。土のスカルミリョーネだぁ…。』

 

(スカルミリョーネ…。聞いたことは無いな。)

 

 もしかしたら偽名かもしれないが、有名な人物なら後で調べればわかることだ。それよりも…

 

「そうか…ではスカルミリョーネ。貴様何が目的だ。」

 

『フシュルルル…。答えてもいいが…そんなに悠長にしている時間があるのかぁ?連れの女…いやドッペルゲンガーだったかぁ!そいつと連絡は取れたのかなぁ…?』

 

 …!ナーベラルとメッセージにて連絡が取れないのはまさか…!!

 

「貴様!ナーベラルに何をした!」

 

『おおっとぉ…?そんなに怒らんでも、まだ殺しちゃいないから安心しろぉ…!』

 

 どうやら生きてはいるようだが…口振りからだと時間は残されてはいないようだな…。シャルティア辺りに連絡をして応援を…

 

『ああ…言い忘れていたぁ…!疎通魔法や転移魔法を感じたら即こいつを殺す…!』

 

 ぐっ…!何かしら感知をする手段を持っているのかもしれん…!迂闊な手は打てない…!

 

『フシュルルル…少しやる気を出させてやろう…!もしここから逃げるようであればそれでもかまわんぞぉ…!その時はこいつを私のアンデッドにしてやろう…!ああ、そういえば言っていなかったなぁ…?』

 

 

―――私のアンデッドになった生者は蘇生できないらしいぞぉ…!!

 

 

 なっ…!!ナーベラルが蘇生できなくなる…だ…と…!!?

 

「き、貴様ぁぁぁぁぁぁ!!絶対に許さんぞぉぉぉぉぉ!!」

 

 精神安定化が何度も起こるがあまりの怒りで収まることがない。弐式炎雷さんの創造したナーベラルをこんな奴のせいで失うわけにはいかない!

 

『フシュルルル…やる気になったようだな…。霊廟の前で待っているぞ…。』

 

 最後にそう言い残しクレマンティーヌの身体は倒れ動かなくなった。

 

 霊廟か…確かカジット達がいたところだったはず。しかし確実にスカルミリョーネは罠を張っている。私を誘き出し確実に亡き者にしようとしている。

 

 スカルミリョーネが何者かもわからない。だがこちらのことを知っているような素振りでもあった。既にナザリックや別の部下達にも危険が及んでいるかもしれない。

 

 また目的もわからない。どうやらカジット達の計画に賛同していたようだが協力をしていたわけではないらしい。もし協力していればカジットやクレマンティーヌもナーベラルを捕らえた程の実力を持つスカルミリョーネを当てにするはず。

 

 くそっ!!わからないことだらけだ!!しかしこのまま手をこまねいていてはナーベラルがアンデッドにされ、二度とナザリックに戻れぬ身体にされてしまうかもしれない!

 

「今行くぞナーベラル!《飛行(フライ)》!」

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 私は《飛行(フライ)》で急ぎ霊廟前まで向かった。そこまで距離は離れていなかったため時間はかからない。

 

 霊廟に辿り着き屋根の付近まで移動した。その場所からから周囲を見渡し探してみると、ナーベラルは最初に私たちがカジットと話していたところで倒れていた。

 

 地上に降りその姿を確認するがどうやら生きていることは間違いない。しかし呼吸が荒く何かの状態異常に掛かっているのか身体を動かせないようだ。

 

「ナーベラル!今治してやるからな!」

 

 アイテムの中から全状態異常を治す万能薬を取り出しナーベラルに使おうとするが…ナーベラルが必死に声を出そうとしている。

 

「あ…イン…ズさ…ま…逃げ…」

 

 

―――その時…不快な『(うた)』が周囲に響きだす。

 

 

 アンデッドの私でもこの『(うた)』は不快に感じた。ナーベラルもこの不快な『(うた)』に顔をしかめ苦しそうにしている。しかし私はこの『(うた)』をユグドラシル時代に聞いたことがあった。

 

(まずい…!!この『(うた)』はまさか…『のろいのうた』か…!!)

 

 スキル『のろいのうた』は使用者の攻撃力と防御力が激減し動けなくなる代わりに、周囲に魔力阻害と回復阻害を巻き散らすネクロマンサー系の最高レベルで覚える捨て身スキルだ。

 

 魔力阻害は魔法を始めとしたマジックアイテムや装備の魔力を必要とするものは全て使用できない。またフィールドに作用するものなので耐性スキルを持っていてもこの効果を無効にできないのだ。

 

 デメリットとして自身も同じ効果を得てしまうため、こちらと同じように魔力を帯びた魔法やアイテムを使用できない。またスキルなどはその場で使用できるが、動かされてしまったり集中が途切れると『(うた)』が止まってしまう。

 

(だからまずは本体に攻撃を加えればいい…!やつはどこにいる!)

 

 このままでは回復阻害のせいでナーベラルに万能薬を与えることが出来ない。早く奴を探し出さねば…!霊廟側に身体を向け奴を探していると…

 

『フシュルルル…うれしい…うれしいぞ…!お前らを葬ることが出来て…。』

 

 後ろか!霊廟とは反対側の森の方面から声がしたので振り向くと…

 

 

 

―――そこにはおぞましい化け物のような巨大な魔物がいた。

 

 

 

 顔は半分ほどが腐っており片目付近の骨が露出して白くなっている。巨大な身体全体を大きめのローブが覆っているがその異形な部分は隠しきれず全体がごつごつとしている。腕も非常に長くその途中から皮膚がなく筋肉が露出してしまっている。最も特徴的なのが脇から肋骨付近にかけて出ている角のような巨大な骨が手前の方に大きく飛び出していることだろう。骨だけの私が言えることではないがここまで規格外の外見をしたアンデッドは見たことがなかった。

 

『私は死の水先案内人…。さる御方の四天王の一人…土のスカルミリョーネ…!さぁ…私の可愛いアンデッド達の餌の時間だ…!』

 

 そしてその言葉と呼応するかのように、周囲に大量のスカルナントと少数のデスナイトが地面から現れ、それらの混成アンデッドの軍団が40、50体ほど…いや、まだ増え続けている。

 

 スカルミリョーネの周りにデスナイトが二体張り付き、それ以外のスカルナントの群れが霊廟を囲むように一斉にアインズの元へ歩いてくる。

 

(こ、これは…まずいぞ…!)

 

 『のろいのうた』によって魔法が使えず、さらにスカルナントの物理耐性でダメージを必ず一回は食らってしまう。加えてその攻撃は<貫通攻撃>でこちらの防御を無視したものだ。もしこれだけのスカルナントに組み付かれでもしたら確実にこちらが持たない。

 

(ならば…!)

 

「<上位アンデッド創造>蒼褪めた乗り手(ペイルライダー)!」

 

 ペイルライダーは位相をずらして飛行でき、実体でのダメージを受けなくなる。飛行自体も能力の一端であるため魔力に依存しない。これならばスカルミリョーネの『のろいのうた』を解除できるはず…!

 

「行けペイルライダー!攻撃を行いスカルミリョーネのスキルを解除しろ!」

 

 ペイルライダーはその言葉に頷き、非実体になってスカルミリョーネの元へ向かう。

 

『フシュルルル…考えたな…!しかしこれならどうだぁ…<上位アンデッド創造>蒼褪めた乗り手(ペイルライダー)…!』

 

「なんだとっ!?」

 

 非実体で飛行していた自身のペイルライダーがその動きを止める。なんとスカルミリョーネの作り出したペイルライダーが非実体になってその行動を邪魔していたのだ。

 

『お前と同じだけ私もアンデッドの召喚ができるぞぉ…。周囲のアンデッドは私が既にここで用意をしたアンデッドだぁ…。さぁて…同じだけ召喚したらどちらが勝つかなぁ…?』

 

「ぐっ…!」

 

 こいつは私が持っている職業レベルと似たような構成をしている。それがスキル寄りか魔法寄りかであるだけだ。そのため自身の持つスキルでは有効打がない。そして得意の魔法が封じられている以上こちらの状況は絶望的だ。

 

(とにかくこのスカルナントの群れの進行を遅らせなければ!)

 

「<中位アンデッド創造>死の騎士(デス・ナイト)!」

 

 周囲にHPの高いデスナイトを4体配置しスカルナントの攻撃に備える。

 

 そうするとスカルミリョーネがこちらに対してさらなる絶望を諭してきた。

 

『そうだぁ…いいことを教えてやろう…!その女の状態異常は『神経麻痺』と『致死毒』だぞぉ…!急いで治療をしないと死んでしまうかもなぁ…フシュルルル…!』

 

(なっ!『致死毒』だと!)

 

 もし本当に『致死毒』を受けてしまっていた場合、スカルミリョーネに会ってから換算してナーベラルのHPでは…

 

 

(夜明けがタイムリミットか…!)

 

 

 

 

 アンデッド達による夜明けまでの『死の舞踏会』が始まった。

 

 




<原作を知ろう!>
スカルミリョーネ
出典:FF4
容姿:腕の長く身体に巨大な角が生えたアンデッド
○原作では
 ゴルベーザ四天王の一人。ゴルベーザ四天王とはゴルベーザ直轄の強力な4人の腹心。スカルミリョーネは四天王の『土』を冠しており、原作では試練の山にて登場。プレイヤーが最初に戦う四天王ではあるが、第一形態はローブを身体全体に被った猫背の男と共にスカルナントが4体出てくる地味な形であり、初見プレイヤーはどこに四天王要素があるのか疑問に感じる。地味なのは戦い方も同じでカウンターで出してくるサンダーにさえ気を付ければまず誰でも勝てる。しかし、戦闘が終わりホッとして橋を渡ったところで急変。スカルミリョーネが再度バックアタック状態で戦闘を仕掛けてくる。その姿は正にアンデッドの親玉然とした姿でBGMも通常ボス曲からゴルベーザ四天王との闘いに変更され四天王の一人だとやっと認識できる。強さは分かっていれば問題ないが、初見では状態異常と通常攻撃力の高さで苦しめられるプレイヤーも多い。
 ただこいつはネタ要素がたっぷり詰め込まれておりネタキャラとしての方が有名。例えば『土』を冠しているのに土要素がゼロ。バックアタックするのはいいが登場台詞で1ターン使うので陣形崩し程度しか意味が無い。ガスを吸って生きる屍になるがいいと言いながら出してくるのはのろいのうた。こののろいのうたもスロウ効果しかないのでどこが呪いなのかわからない(鈍いの歌ではないのか?)と台詞も含め書ききれないほどに突っ込みどころが多すぎる。
○この小説内では?
 主人公直々に創られた元NPC。設定を詰め込んだため主人公の性格はほぼ反映されていない。またのろいのうたやスカルナントは筆者が魔改造して設定した必殺技。アインズ様が強すぎるのがいけない。

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