帝国魔将ゴルベーザ!   作:RIN

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第7話の投稿です。この話で第2章も終了になります。
流石にこのスピードでの投稿は厳しいのでもう少し頻度を下げます。
でも出来上がったらすぐに投稿しますので次も待っててね。

今回の二言
「だからヴィクトールはあいつを倒せなかったんだ!」
「な、なんだってー!」


現在か未来か

 スカルミリョーネを倒したスキル<流し斬り>は、ソードマスターの高いレベルで覚える手加減系の剣技スキルだ。例えスキル<流し斬り>が完全に入っても、相手を倒すことは出来ず、ある一定のHP内になると状態異常『気絶』が入る仕様だ。

 

 スカルミリョーネが闖入者によって自爆魔法を止められ落下した後、アインズは上空からそのスカルミリョーネの前に立つ一人の男の姿が見えていた。どうやらスカルミリョーネの状態を観察しているようだ。アインズも地面に着地しその後ろ向きの男に問いかける。

 

「何者だ…!」

 

 闖入者はアインズの言葉に反応し、ゆっくりとこちらに振り返った。――そして、アインズは気が付いた…その姿をつい最近見たことを…。

 

 

「貴方達とは敵対したくはなかった…。そのまま冒険者として私達と関わらないでいて欲しかった…。」

 

 

 悲痛な言葉を発する者…それは『帝国の大英雄』であり、アダマンタイト級冒険者のノエルだった。

 

「ノエル殿…いや、冒険者ノエルよ。お前は私達のことを知っていたのか…?」

 

 アインズは言動からノエルがあちら側に付いていることを悟り、その言動の真意とどこまで関わっているかをこの言葉で問うた。

 

「ええ、貴方が私達と同郷の者ということはわかっていました。またスカルミリョーネを軽く倒す程の強者…貴方は我が偉大なる御方と同じプレイヤーなる者ですね?」

 

「…そこまで関わっていたか。」

 

 つまり、ノエルは完全なる黒…アインズとの敵対者側であった。しかもこの言動から察するに、おそらくノエルもまたその偉大なる御方に創られたNPCであることもわかった。

 

「何故この場に現れた。お前は表で顔の割れている名のある人物…相当のリスクを負うはずだ。」

 

 冒険者はおそらく仮の姿ではあるが、ノエルのアダマンタイト級冒険者は、この世界での地位としては最高ランクに位置する。それらを放棄する危険を犯してまで、なぜこの場に現れたのか。

 

「我が偉大なる御方からの御命令です。スカルミリョーネはこのままこちらで保護をします。」

 

「…どうやら情報漏洩を気にしての行動と見えるな。確かに、その御方とやらの判断は正しいようだが…私がそれを許すと思っているのかね…?」

 

 アインズが杖をノエルに向ける。ここでスカルミリョーネを逃してしまえば、この者達が一体何者で何を目的にしているのか…またその謎の偉大なる御方なる人物の手掛かりを失ってしまう。

 

「ええ…きっと許すと思われます。我が偉大なる御方は必ずこの状況を予知しております。」

 

「何?予知をするだと…?それはどういう…―――!?」

 

 その時、アインズに対してメッセージの魔法が届いてきた。非常にタイミングが良くも悪くもあり、何かに動かされている不気味な感覚が離れない。

 

「どうぞ。そちらのお話くらいでしたら、こちらは待ちますよ。」

 

 敵側から待ってもらう許可を得た…何か立場がおかしい状況ではあるが、許可を得たのならば出てもいいだろうとアインズは思い直す。

 

『どうした…何かあったのか?』

 

『アインズ様。緊急の要件があります。お時間はよろしいでしょうか。』

 

 エントマからのメッセージのようだ。緊急の要件と聞き嫌な予感しかしない。

 

『ああ…少々忙しいが簡潔に話せ。』

 

 

 

 

 

『はい。階層守護者のシャルティア様がナザリックに対し反旗を翻しました。』

 

 

 

 

『はぁ?!』

 

 アインズは激しく困惑する。

 

(シャルティアが?ナザリックに対して?反旗を?翻すぅ!!?一体何が…?!?)

 

『シャルティア様以外被害等は一切出ておりませんのでご安心下さい。しかし一度詳細をご報告致しますので、所用が済み次第急ぎお戻りいただきたく存じます。』

 

『ああ…わかった。ナザリックの警戒レベルを最大まで引き上げ、防衛に努めよ。』

 

『畏まりました。アルベド様にお伝え致します。では失礼致します。』

 

 そのままエントマからのメッセージは途切れてしまった。

 

「どうでしたか?こちらを見逃してくれる気持ちになりましたか?」

 

 待っていたノエルは、まるでこのことが起きることが予めわかっていたかのように振舞っている。加えて、必ず見逃してくれることを確信しているようでもあった。その姿にアインズは遂に我慢が出来なくなった。

 

「き、貴様ぁぁぁ…!どこまでこの内容について知っている!!」

 

 おそらくこのシャルティアの件は、故意的に引き起こされたものであることは間違いないだろう。しかし、どういった方法で何を起こしたのかがわからず、アインズは怒りで精神抑制をしながらもその内容の詳細についてノエルから聞き出そうとした。

 

「いいえ。私は何が起こっているかはわかりませんし、そちらの状況の一切を把握しておりません。」

 

 しかし、帰ってきた答えは『知らない』との返答だった。これだけ豪語しているにも関わらず、交渉の根幹となる内容を把握していないなど、考えられることではなかった。

 

「何だと…?お、お前はぁぁ!!さっきから!!ふざけた!!ことをぉぉぉぉ!!」

 

 アインズは完全に怒髪天を衝いている。怒りで空気が震え地団太で地面も軋み始めている程だ。ナーベラルの件もあり精神抑制も意味を成しているのか分からない。それでもノエルは淡々と事実を述べるように話をする。

 

「ふざけてなどいませんよ。我が偉大なる御方に掛かれば、このようなことはいつものことです。当然、そちらが()()()()()()()()()()()()()を起こせば…きっとあの御方は()()()()()()()()でしょうね。」

 

 

――この時はアインズも怒りを抑え、身体には無い喉で息をのんだ。

 

 

 つまり、ここでもしノエルやスカルミリョーネを見逃さなかった場合、今以上の策…――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とノエルは言っている。

 

 シャルティアの謀反でさえ只事では無いのというのに、もしこれ以上に何かの惨状を引き起こされれば、ナザリックに多大な被害が及ぶことは間違いない。

 

 しかし、このノエル達の謎の組織に情報のわからぬまま時間を与えることは、こちらの今後の活動で取り返しの付かない致命的なダメージを与える要因になるかもしれない。

 

 

 

 

―――アインズは決断をせねばならない。現在(いま)の危険を犯して未来を守るか、現在(いま)の危険を回避して未来に託すか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ぐ、クソッ!――よかろう…不本意だが…今この場ではスカルミリョーネを見逃そう。私の正体とお前の正体もここでは明かされず、この場ではお互い何もなかった…そういうことにしておいてやろう。」

 

 今後の冒険者家業を続ける以上、自身の正体が明かされるなども含め、現在(いま)の危険を犯すことは得策ではないと判断した。

 

 それに、未だンフィーレア氏の救出が完了していないこともある。これ以上時間を掛けることは、この街の人間に疑われる可能性もあり、難しいと言うのも判断要因だった。

 

 何よりもアインズは反旗を翻したナザリック内単体最強戦力であるシャルティアの状況が気になっていた。万が一にでも、スカルミリョーネのような蘇生不可の状態にできるような敵が相手の手の内にいた場合、取り返しの付かない最悪の展開が頭をよぎる。今は我慢をしてでも早急に確認をしなければならない。

 

「ありがとうございます。では私はすぐにこのエ・ランテルからは立ち去らせていただきます。あと…信じてはもらえないでしょうが、帝国に御寄りの際は是非とも私にお声がけ下さい。敵対者ではなく、あなた方の味方の冒険者として接しましょう。」

 

 ノエルはノエル達の所属組織に関係がなければ、冒険者モモンの味方になると言い残した。そしてゲートを開いて、巨体のスカルミリョーネを持ち上げながら、そのまま立ち去って行った。

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

――墓地騒動が解決したのは夜明け前のことだった。

 

 

 

 衛兵の話によると冒険者チーム『漆黒』はそれまでの間ずっと戦い続けていたそうだ。衛兵や応援に駆け付けた冒険者は門に出現した大量の謎のアンデッドに阻まれ、チーム『漆黒』の活躍は見ることができなかったが、彼らが捕らわれていたンフィーレア・バレアレ氏を救出したことによって終結したことを悟ったそうだ。

 

 その時は英雄モモンの姿は無く、()()()()美姫ナーベと森の賢王がンフィーレア氏を衛兵に引き渡したらしい。心配をした衛兵達がナーベにモモンの所在を聞くと、どうやら残党がいる可能性があり今も敵を追撃しているとのことだった。夜明けまでの死闘で疲れているはずなのに、英雄は最後まで抜かりは無かったようだ。

 

 

 

 ただ、美姫ナーベの話を聞いていた衛兵達は一つ気になることがあったらしい。

 

 

 

 

 

――美姫ナーベは何故か()()()()()()()()()()()()()()()、話が聞きづらかったと…。

 

 

 




<原作を知ろう!>
流し斬りが完全にはいったのに…
出典:ロマサガ2
使用者:ヴィクトール
 皇帝レオンの息子である長男ヴィクトールが帝都アバロンに襲撃してきたクジンシーを撃退するために単身挑み、敗れたあとに駆け付けたレオンと次男ジェラールに言った辞世の句。流し斬りという技は中盤かその前位に覚える大剣技で相手の腕力を下げる追加効果もある。また清流剣という強めな技に派生する。当時の帝国の強さで考えるとかなり強力な剣技だった。きっとヴィクトールはその剣技が効かないぐらい相手は強いと伝えたかったのかもしれない。しかし、大体のプレイヤーはこう思う「もっとマシな辞世の句はなかったのか」と。国を守れなかったことでもなく、父より先に死ぬことでもなく、自分の技が効かなかったことを述べるとシーンは多くのプレイヤーにネタにされることとなってしまうに十分過ぎるものであった。流し斬り自体も進めていく中ではやはり最後まで持っていくには不十分な威力であることも拍車をかける。ツバメ返しとか乱れ雪月花とかのかっこいいものであればきっとネタにもならなかっただろうに…。
 小説中では手加減技として登場。完全に入っても倒すことは出来ません。だから兄さんはクジンシーを倒せなかったのさ!気絶にもなってないがな!


なお、ナーベラルは霧がトラウマになった模様

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