少なくともユグドラシルを抜け出すまでは。
今回の一言
「君には何のボスキャラか分かるかな?」byRIN
ノエルさんと意気投合し、自己紹介を交えながら話を聞いてみると、やはりノエルさんは私と同じくレトロゲーマーだったみたいだ。様々なゲームをやってきたらしいが、今ノエルさんがなりきっているキャラクターの出てくるゲームを始めてからは、そのゲームシリーズの大ファンになってしまったそうだ。
ユグドラシルを始めた理由は、そのゲームシリーズをたくさんの人に知ってもらい、自分と語り合える仲間が欲しかったとのことだ。そのためにまずは自分からということで、課金を駆使してそのゲームシリーズで有名な敵ボスになりきって、興味を持ってもらおうと考えたらしい。
…ただノエルさんは意外と人見知りだそうで、ロールプレイ以外では初見の人と話すことができないらしい。だからといって、いきなり初見の人にロールプレイで話しても、『ゲームのことを知ってもらう』ということがロールプレイでは通じにくく、一か月くらい悪戦苦闘していたところで私と出会ったようだ。
…まぁ、なりきっているキャラクターを知っている人じゃないと、いきなりロールプレイをしても意味がわからないだろうし、なりきっているキャラクターが『自分の出ているゲーム』なんて、メタ発言しようにもできないだろうしなぁ…。逆に言えば私みたいに『ゲームを知っている人』なら、きっと労せず見つかるだろうけれど、1世紀も前のゲームだから、
――ん、あれ?
ふと私は、ノエルさんと会う前にレトロ系敵ボスの格好をした人を見かけたのを思い出した。あの時は自分のことだけで気づかなかったが、もし私の格好がレトロ系ボスキャラとその人が知っていたら、私に話しかけてくれたのではないかと思った。
私も含め、お互いにそういったボスキャラを知らないだけで、そのキャラクターやゲームのことを理解できる特別な場所を用意すれば通じ合えるのではないだろうか。
それに意外と私やノエルさんのように、レトロ系敵ボスの悪役ロールプレイや仲間探しをしている人はいるのではないだろうか。
「…?ゴルベーザさんどうかしましたか…?」
突然黙り始めた私に、ノエルさんが心配そうにこちらをみている。
私は決意を固めノエルさんに提案をした。
「ノエルさん。一緒にギルドをつくりませんか?」
これが私たちのギルドのはじまりだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
私はノエルさんと協力し、ギルド作成のための仲間を募集した。
『私たちのギルドはレトロゲームのボスキャラなりきりギルドです!昔のゲームを語り合いたい人やロールプレイをしたい人を歓迎します!』と銘を打ち、ネットや全体チャットを使って広く募集を募った。
当たり前だが『レトロゲーム』かつ『ボスキャラ限定』みたいに、ギルド募集で加入条件を限定的にするやり方は良くないことはわかっている。けれどもここまで限定的なら、少ないながらも私やノエルさんの同志がいれば、必ず入ってくれるはずだと考えていた。
ノエルさんも悪戦苦闘の経験からか、精力的にギルド募集を手伝ってくれた。ギルド人数に届かなくても、1人や2人でもいいから同志が見つかってフレンドになれれば、ノエルさんも満足できると考えていたようだ。
―――そして私たちの予想をはるかに裏切り、多くの同志がいたことが判明した。
ある日仕事が終わり、家に帰ってユグドラシルにログインしてみると、ゲーム内の個人メールに30件ほどメールが届いていた。
――…?迷惑メールでも届いてるのかな?
しかしゲーム内フレンドはノエルさんしかいないし、ユグドラシルの運営はその辺りしっかりしているため、例えば企業用などの宣伝メールも個人メールに届きようもないはずだ。
不思議に思って最初のメールを開いてみると、なんと募集を見た人のギルド加入希望だった。
まさかっ!?と思いながら次のメールを開いてみると、それも別の人のギルド加入希望だった。…次も、次も、その次も!?その次もだ!?
そういえばそこまで集まらないだろうからと、連絡先は匿名記入(ギルド加入時のみ使える一方的なメール)でのゲーム内個人メールに設定していたことを忘れていた。まさかここまで集まるとは思いもしなかった。
すぐにノエルさんに連絡し、近くの集会場を借りて、メールのあった人たちに会ってみることにした。そして集まった人たちを見てみると――うわっ再現度高すぎ!
見たことのある様々なボスキャラが勢ぞろいで、私達が来る前から、すでに自分たちのキャラクターの自慢合戦が始まっていた。
「貴様らの暴挙に敬意を表して、伝説の勇者とでも呼ばせてもらおうか」
「バカめ、甘いわ!!」
「ナイトの中のナイトと言われたこのわしの剣に敵うと思うてか!」
「だが!まだ若い!」
「わしの味方になれば世界の半分をやろう」
「ぶるわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
――これ本気で言ってないよね!これがロールプレイじゃなかったらギルドなんて無理だわ!
全員の名台詞を聞いて戦々恐々としながらも、とにかく挨拶をしようと覚悟を決める。
「まずは皆今日ここに集ってくれて感謝する。私はゴルベーザという者だ。私は同志ノエルと共に新たな仲間を探すためこの場を開かせていただいた。」
全員がこちらに気づき、神妙な面持ちでこちらを見ている。騒がしかった部屋も急に静かになり、こちらの声に耳を傾けているようだ。
――きっとみんな自分の仲間を求めてここに来ているんだ…。
期待してここに来てくれたことをこの会場で感じていた。きっとみんなもそうなんだろう…会場に不思議な一体感が包む。そして確信していた…ここから楽しいことが紡がれていく、自分たちだけの
「ここに我々全員のためのギルド『
会場に大きな歓声が挙がった。
ちょっとセリフを変えているボスキャラもいるよ!
でも今後登場するかは分かりません。
今回の概要
①ノエルさんと一緒にギルド作ったよ!
②同じ趣味の人がギルドにたくさん来てくれた!
筆者の本音:一部転移後の世界に来てはいけない人が…。