遂にぶつかり合う両者!さぁ勝利はどちらが掴み取るのか!
そしてブレインの魔改造の結果はどうなったのか!
今話では原作にありそうで無い技を集めてみました。
今回の一言
「この小説にはベアの魂が宿っている…!」byRIN
廃坑内ではシャルティアとブレイン・ボクオーン組での戦いが始まっていた。
シャルティアはナザリックでのNPC内で、戦闘力では最強のスペックを誇っている。フル装備のシャルティアは創造者の愛とも言い切れる魔改造で、ほぼ全ての状態異常耐性とスペックに見合った
対してブレイン・ボクオーン組は二人組でこそ戦っているが、スペック的には明らかに劣っているように見える。ブレインは元は20~30レベルの人間であり、単体では全力でシャルティアと戦っても、小指の爪一つであしらわれてしまう程弱い。ボクオーンは戦闘力は未知数だが、明らかに前衛タイプではないので、単体でシャルティアに挑もうものならば敗北は必至である。
しかし、実際に戦闘で有利に進めていたのはブレイン・ボクオーン組であった。
「多段剣<二段切り>!」
ブレインはシャルティアに詰め寄り、高速の二連撃をシャルティアに向けて放つ。シャルティアはその攻撃を飛行して避けようとするが、天井が低く思うように飛ぶことができない。
(くそ…!廃坑が狭すぎて避けられない!だけどこの鎧ならばダメージは通らない!)
シャルティアの鎧は当然創造者の愛によって伝説級装備で固められている。神話級レベルの装備でないとダメージすら通らない。先程は生身で受けてしまったが、フル装備のシャルティアには生半可な攻撃は通らない。しかし…
「ぐ!きゃあ…!?何でこの装備に攻撃が…!?」
シャルティアはその二連撃を鎧で受けたが、伝説級で固めているこの装備にダメージが通ってしまった。
(このダメージ…神聖属性!?あいつの武器が原因ね!?)
どうやらブレインの持っている青いオーラを放つ長剣は、神聖属性が付与されている武器のようだ。しかも伝説級装備にダメージを通すということは、持っている武器は神話級装備の可能性が高い。
(ならば受けたダメージ以上に回復すればいいことだ!!)
「神話級武器『スポイトランス』!これでも食らいなさい!」
シャルティアは細長いスポイトの形をした槍をブレイン目掛けて高速で打ち出す。スポイトランスはダメージを与えた相手からHPを吸い取る神話級武器だ。普通ならばこれで攻撃を続ければ、まず負けることはない。
「防御剣<パリイ>!」
しかし、ブレインはシャルティアの高速の突きを全て剣で撃ち落とし、そのダメージを一切通そうとしない。ブレインからのダメージ自体はそこまで多くないが、このまま回復できずダメージを重ねればシャルティアが不利になる。
(くそ!まるでアルベドのような戦い方をするわね!だったら…!)
「スキル<眷属招来>!おいでなさい眷属達!!」
シャルティアの周囲に『
眷属達は雑魚ではあるが、その数は非常に多い。ブレインの身体自体は貧弱な人間のままだとすれば、ブレインにとっては眷属の一撃でも十分な脅威になりうるとシャルティアは考えた。
「分身術<残像剣>!」
しかし、それもブレインが姿がぶれるように分身したかと思うと、シャルティアが嗾けた眷属が全て撫で斬りにされてしまった。
(眷属達も届かないか…!だったら回復だけでも!)
シャルティアはもう半数の眷属をスポイトランスで攻撃し、自身の体力回復に宛がうことにした。だが、相対している敵は一人ではない。
「おっと?儂を忘れてもらっては困るの…《
「なんですって!?」
《
「カッカッカッ!回復阻害技は儂らの十八番よ!お主の考えていることなど手に取るようにわかるわい!」
「このクソ爺!馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ!これでも食らいなさい!《
シャルティアの詠唱後、ボクオーンの足元が紅く光りだす。紅蓮の業火で焼き尽くす《
「馬鹿め!甘いわ!スキル<
ボクオーンがスキルを発動したかと思うと、突然シャルティアの視界が変わり、
「があぁぁ…!?こ、これは私の魔法!?なんで…!?」
「カッカッカッ!自分の技で自分を傷つけながら死ねぇい!」
答えは相手の場所から察することができた。シャルティアが先程まで立っていた位置にボクオーンが、そしてボクオーンが先程まで立っていた位置にシャルティアがいる。つまり攻撃の瞬間に
(くそ…!これじゃ魔法なんて放ったら、また入れ替えられて自分が食らっちゃうじゃない…!でもそれだったら…!)
「舐・め・る・なぁぁぁぁ!!だったらこれならどうよ!!《
炎を振り払い復帰したシャルティアは、今度は膨大な量の負属性を単体に送り込む攻撃魔法《
(これで位置がそのままならダメージを与えて、位置を入れ替えてもアンデッドである私が回復できるか、最悪でもダメージは受けない!これを起点に攻めれば…!)
「はっ!その程度お見通しじゃ!《
「な…っ!その魔法は…!?」
シャルティアの放った負属性魔法がボクオーンに吸収されていく。属性吸収系魔法は通常の魔法と違い、絶対に一つの種類までしか取得できない特殊な魔法だ。取得方法も各職業などの最大レベルに設定されているものが多く取得が非常に難しい上、フレンドリーファイアの無いユグドラシル時代では、弱点を消したり自分で無理矢理回復したりする以外には使用用途の少ない魔法だった。
(ピンポイントでそんな魔法を持っているなんて…!くそ…!運が悪いわね!!)
シャルティアは自身の運の悪さに嘆いた。この吸収魔法だけは予め準備できるような魔法ではない。
しかし、シャルティアは段々とボクオーンの戦い方が分かってきた。相手の行動を読み、その行動を利用し、更に封殺する戦い方…搦め手を極めたような戦い方をしている。
ブレインを利用しているのも、自身の盾と露払いを他者にさせているのだろう。自身の手を汚さず他者の手によって同士討ちや自滅を誘う、シャルティアから見れば策士…悪く言えば卑怯者の戦い方だった。
ただ、そんな卑怯者の戦いでもシャルティアには効果的な手段であった。今されている搦め手の戦い方は正にシャルティアの最も苦手な戦法である。
「ほれほれ、ボーっとしてて良いのかの?相棒が今そっちに行ったぞい?」
「閃剣<光速剣>!」
考えていたのも束の間、ブレインがシャルティアでも捉えられないような動きで距離を一気に詰めてきた。何とか剣筋を見切り鍔迫り合いに持って行くものの、ブレインの力はシャルティアでも押し切られそうな程強かった。
「勝てる!吸血鬼に勝てるぞ!はははははは!俺は最強、最強なんだぁぁぁぁ!!」
(ぐぅぅ!?こんな雑魚がいきなり私レベルになるなんて絶対におかしい…!あのクソ爺、何をこいつに使ったのよ!?)
いくら装備が強いからと言って、シャルティアに捉えられない動きになり、あまつさえシャルティアと拮抗する力を持つのはありえない。もしそんな便利な術があれば、流石のシャルティアでも知っていておかしくはない。
(何かこいつの強さには裏がある…!おそらくこの青髪男かクソ爺のどちらかに強烈なデメリットが発生しているはず…!)
シャルティアは自身でも心許ない頭脳を必死に回転させ、《
ボクオーンかブレインのどちらかが崩せればシャルティアの勝ちは確定する。シャルティアにはこの状況を覆せる切り札があった。いつでもその切り札を切ることは出来るが回数制限があるため、確実に撃てる状況まで持っていきたい。
しかし、思いの外早く弱点を探る機会は訪れた。シャルティアが鍔迫り合いをしていた腕に力を入れ、相手を弾き飛ばした時に異変が起きた。
―――ぼとっ。ぼとっ。
何かが落ちた音がした。シャルティアは音の元を辿ってみると、その音はブレインの足元から聞こえてきた。
――そこにはブレインの剣の持っていない片腕と笑ったままの表情で固まった
「ちょっ…!?はぁ!?な、なんで頭が落ちてるのよ!?」
流石の死体愛好家であるシャルティアでも、さっきまで鍔迫り合いをしていた相手の笑っている頭が落ちているのには不気味さを感じた。しかも何故か血が出ていない上に、残った体は片腕であれど戦闘態勢を解いていなかった。
「む…いかん…。もうガタが来よったか。」
そう小声でボクオーンが言うと、ブレインの残った身体の首と腕から大量の糸が出てきた。その糸は落ちた頭と片腕を拾い上げ、そのまま何事もなかったかのように接着した。
「相棒よ…気分はどうかの?少し痛かったかの?」
「いいや、気分は最高だぜ爺さん!痛くも痒くもないぜ!」
どうやらブレインはしっかり生きているようだ。腕と頭が落ちたにも関わらず、本人は何事もなかったかのように振舞っている。常人から見ればとてつもなく異常な光景である。
しかしその時、シャルティアの目には別の光景が見えていた。
(ん?今あのクソ爺のHPとMPが同時に減ってる?そして青髪男のHPが増えた?)
ブレインの身体が元に戻ったときに、他よりかなり多かったボクオーンのHPとMPのオーラが明らかに目減りした。そしてかなり少なかったブレインのHPのオーラがいきなり数倍まで膨れ上がった。
シャルティアは疑問に思いブレインのHPのオーラをよく観察すると更に別のことにも気が付いた。段々とブレインのオーラが小さくなっているのだ。急激にというわけではないが、ゆっくりと目に見えて減っている。
(もしかして…青髪男の身体は長く維持ができないのかしら…?もしそうであれば…!)
シャルティアはこのことに勝機を見出す。長期戦ができない者に対する最高の魔法がある。
「あんたの弱点見切ったわ!―――《
シャルティアの周囲に白い光が包み込む。純粋な魔力の障壁を出現させた。この魔法はこちらが攻撃できない代わりに、相手の攻撃を完全に遮断する絶対防壁を作成する魔法である。
「何…!しまった!!?」
ブレインとボクオーンの動きが止まる。ボクオーンは驚きながらもどうするか考えているように見える。どうやらこの魔法は予想外だったようだ。
「やっぱり…そのスキルの弱点は長期戦に向かないこと。相手より有利なうちに倒さないと自滅をするデメリットを抱えているのね。」
一見すると二人組のボクオーン・ブレイン組が有利に見える。しかし実際はブレインの体力が徐々に減っていき、ブレインが致命傷を受けたり、体力が減りすぎるとボクオーンからHPとMPを提供してそれらを治さなければならない。
つまり長期戦になれば、ブレインの徐々に減った体力分がそのままボクオーンのHPとMPを削っていることになる。どれだけ多くとも必ずボクオーンの底は見えてくるだろう。
「ぐむむ…背に腹は代えられん!<スキル解除>!」
たまらずボクオーンはブレインの<
「もらった!!―――スキル<清浄投擲槍>!これでも食らえクソ爺!!」
シャルティアは3mもある白銀の槍を召喚し、
「馬鹿の一つ覚えか!自分が食らうがいい脳筋小娘!スキル<
ボクオーンはスキルを唱え、シャルティアの視界が廃坑の入り口側を見た時――決着はついた。
「がっ…!?なんだ…と…!?な、なぜ儂に槍が当たる!?位置は入れ替えたはず…!?」
シャルティアの投げた槍は位置を入れ替えた瞬間に反転し、ボクオーンの胸を的確に抉ってきた。ボクオーンはその場で蹲り、槍のダメージに呻いている。どうやら刺さったままの槍の痛みで動くことができないようだ。
「スキル<清浄投擲槍>は回数こそ制限があるけど、魔力を込めると必中の効果が付くのよ。
シャルティアは振り返り動けないボクオーンに槍の説明をし、スポイトランスを思い切り素振りしながらボクオーンに近づいていく。どうやら溜まった鬱憤をトドメで発散させるつもりなのだろう。
「す、すまん。わ、儂はボクオーンでも何でもないんじゃ!七英雄と名乗ってみたかっただけなんじゃ!だから頼む!許してくれ!」
この期に及んでボクオーンは命乞いをしてきた。しかも言い訳が見苦しい。シャルティアから見て言っている内容は明らかに嘘にしか聞こえず、こちらを馬鹿にしているようにしか見えない。だから当然…
「許すかぁぁぁ!!このクソボケ爺がぁぁぁ!!」
シャルティアはスポイトランスで全力を込めた一撃でボクオーンを貫いた。弱っていたボクオーンがこの攻撃に耐えられるはずもなくそのまま崩れるように動かなくなった。
ボクオーンはもう虫の息だったのか、スポイトランスでの回復はほとんど無かった。しかし諸悪の根源を倒したのだから心配する必要もない。
「ふん。HPは回復しなかったけど…まぁ、いいでありんす。とりあえずあいつの持っていた武器はいただいておきんしょうかぇ。」
敵を倒して余裕の出たシャルティアは、廃坑の奥側に倒れているブレインの珍しい武器を回収して、至高の御方に褒めてもらおうと想像を膨らませる。
この後はついでにブレインも回収して武技の使い手を確保することも考えれば大収穫だ。この手柄で偉大なる至高の御方の褒賞から、御方との蜜月の甘い夜を過ごす二人きりの逢瀬を希望し、そのまま正妻の座を手に入れる……なんと夢のような一時であろうか。
夢に期待を寄せつつその一歩を踏みしめるためにシャルティアは歩みだした。
「《
―――そしてシャルティアの夢はここから悪夢に変わる。
<原作を知ろう?>
パリイ
出典:ロマサガ2
使用者:ベア
パリイとはロマサガ2最強の防御技である。その源流は初代皇帝の代まで遡り、皇帝レオンと皇帝ジェラールを前衛で支え続けた重装歩兵ベアが閃いたとされる。古代陣形インペリアルクロスの前衛は最も魔物の攻撃を受ける位置で、この場所を死守する者は並大抵の力では立つことができない。エリート重装歩兵ベアでさえもその立ち位置の過酷さを身に染みて感じ、一時は投げ出したくなったと言われている。しかし、ベアは不屈の意思でその場に留まることを決意し、魔物との戦闘の中でこの技を閃いた。効果は相手の打撃攻撃を無効にするという効果で、正に皆を守るためと言っても過言でない究極の防御技だった。このパリイを駆使して皇帝ジェラールと共に七英雄クジンシーを撃破し、この技の有用性を世界へ発信したのだった。後の英雄にもこの技は受け継がれ、派生技として全ての剣属性を防ぐスターライトパリイや相手への反撃効果を獲得したスパイラルパリイなどが開発された。ちなみに「ィ」ではなく「イ」であることは忘れないでほしい。
分かっているとは思うが上記の8割は嘘だ。…実際は打撃攻撃を素早さ依存で無効にする序盤の防御技。素早さの遅いベアでは全く役立たない技である。この小説では相手の物理的攻撃を全て無効にする剣技。筆者の執念とベアの魂が宿り、シャルティアの攻撃でさえ一切通さないチート技になった。ちなみに本当に「ィ」ではなく「イ」であることは忘れないでほしい。