帝国魔将ゴルベーザ!   作:RIN

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第6話の投稿です。
様々な方から意見をいただきそろそろ設定の矛盾が露見し始めた…!だが私は退かぬ!媚びる!顧みるぅぅー!(小説はこのまま書くけど、設定は途中で修正が出来るなら頑張る!)
とにかく皆様は原作設定云々なんて細かいことは気にせず、小説を見ながら皆で想像して楽しみましょう!それが一番健康的!

今回の一言
「実は六つ子の兄弟だった…微レ存?」byRIN


混乱の極致

「《究極単一封印(アルティメット・オンリー・シール)》!対象《力の聖域(フォース・サンクチュアリ)》!」

 

「えっ…??」

 

 暗い廃坑内の入り口側から一つの詠唱が響く。シャルティアは突然の出来事に頭が追いつかない。

 

(《究極単一封印(アルティメット・オンリー・シール)》は対象とした魔法やスキル一つを戦闘中一切使えなくする高位の妨害系魔法のはず…。でもあの爺は確かに殺した…では一体誰が?)

 

 背後からの何者かの奇襲により、シャルティアは魔法に反応できずそのまま《力の聖域(フォース・サンクチュアリ)》の使用を制限されてしまった。急いで入り口側に振り返り敵の姿を確認する。

 

 

 そして、その魔法を詠唱した者がゆっくりとシャルティアの視界に写る。

 

 

 

 

「――酷いのう…。そやつは七英雄ボクオーンではないと言っておるのに容赦なくとどめを刺すとは。最近の若いもんは血気が盛んでいかんな。」

 

 

 

 

 暗闇から現れた者はなんと先程とどめを刺したボクオーンであった。しかし、とどめを刺したボクオーンの死体はまだ地面に置かれている。どうやら復活したわけではないようだ。

 

「クソ爺…?どういうこと…?まさか二人いたの!?」

 

 シャルティアはこの状況が理解できない。先程のボクオーンが偽物だったのか、それとも元々二人いる存在なのか見当がつかない。

 

 

 

 

「――二人?何を言っておる。儂はここにもおるぞ?脳筋小娘よ。」

 

 

 

 

 この言葉が聞こえたのは目の前のボクオーンではなかった。その声は廃坑の奥側から聞こえてきた。シャルティアは恐る恐る廃坑の奥側へ振り返る。

 

 

 そこには三人目のボクオーンがブレインの側に立っていた。

 

 

「どうした?儂をそんな目で見て?まるで幽霊でも見たような顔じゃの?」

 

 飄々とボクオーンは煽ってくるが、混乱の極致にいたシャルティアはその言葉に反応できない。

 

(どういうこと!?何でこいつが三人もいるのよ!?もしかして元々三人組?それともこの二人のどちらかが本物?)

 

 一応HPやMPを確認してみるが、どちらも同じようなオーラを発しており判別がつかない。どちらかがステータスを偽っている可能性があるが、探知系を持たないシャルティアではそれすらもわからない。

 

「おお!そうじゃ!儂の新しい相棒がここにおるぞ。冒険者のブリタ嬢じゃ。先程知り合った仲じゃが、この夜会に混ぜてくれんかの?」

 

 シャルティアの混乱を余所に話を進めるボクオーン。入り口側のボクオーンの後ろから別の者が現れた。

 

「私はアダマンタイト級冒険者の英雄ブリタだぁ!あはははは!力が湧いてくる!」

 

 その者は冒険者特有の軽装を着こんだ赤毛の女性であった。身体つきはこの世界での一般的な細身の女性で、装備している防具は何の効果もない底辺のゴミ装備だった。 しかし、そんな細身でゴミ装備の防具には見合わぬ程の青いオーラを放った巨大な斧を両手で軽々と振り回している。どうやらブレインと同じスキルの影響下にいるようだ。

 

「ほっほっほ。では頼もしいアダマンタイト級冒険者ブリタ殿に依頼じゃ。あの邪悪な吸血鬼からか弱い儂を守っておくれ。」

 

「任せて神様ぁ!誰からも頼られるアダマンタイト級の英雄ブリタが邪悪なあいつを殺す依頼を受けてあげる!私にかかればどんな殺しの依頼でも100%成功さ!誰だって殺してやる!あはははは!」

 

 ブリタは恍惚の表情を浮かべながら、何かがズレた会話をボクオーンとしている。ブリタもブレインと同じで、最初に志した何かを忘れてしまっていた。

 

 またシャルティアの前での狂気の会話だけでなく、シャルティアの後ろでも別の狂気の会話が繰り広げられていた。

 

「どうじゃ相棒?まだまだ戦えるかの?あの憎い吸血鬼を見返せそうかの?」

 

「ああ任せてくれ爺さん!俺の努力は最強さ!この力さえあればどんな奴だって殺せる!吸血鬼だって俺の剣術で切り刻んでやる!最高だこの力は!俺みたいな強い男に相応しい力だ!ははははは!」

 

 ブレインもボクオーンに起こされて会話をしていた。やはりこちらも内容が支離滅裂で、決定的な何かがズレている。一体ブレインは最初に何を望んでボクオーンと共闘したのだろう。今のブレインでは思い出すことはもう無理に違いない。

 

 

 

 

「さて…準備も整ったところで始めるぞ?脳筋小娘。次の切り札を切って見せるがいい。次は儂が四人になっているかもしれんがのう!カッカッカッ!」

 

「多段剣<二段切り>!」

 

「多段撃<ダブルヒット>!」

 

 ブレインの高速の二連撃とブリタの大振りの二連撃がシャルティアの前後から迫る。お互いが被弾しないように絶妙な距離が保たれており、躱すことの出来ない連携を行ってきた。

 

「……!?くそ!スキル<エインヘリヤル>!」

 

 シャルティアはここで切り札の一つスキル<エインヘリヤル>を切った。シャルティアの身体から幽体離脱するかのように白い同様のシャルティアがもう一人現れ、ブレインの攻撃を受け止めた。シャルティア自身もブリタの攻撃を槍でいなしたが、ブリタの力が凄まじく反撃に移れなかった。

 

 スキル<エインヘリヤル>で出てきた分身は魔法が使えないものの、装備や力などは自身と同等の能力を持つため攻撃・防御自体は非常に高い。エインヘリヤルはブレイン側に構えを取り、牽制をしながら勢いを抑え込んでいる。

 

(屈辱だわ!こんな雑魚の人間共に切り札を切らされるなんて…!《力の聖域(フォース・サンクチュアリ)》を封じられたからには、後は<清浄投擲槍>だけが頼りだけど……。)

 

 スキル<清浄投擲槍>は回数制限があり、無暗矢鱈に放てるスキルではない。加えて相手の正体が掴めないままスキルを放てば、ボクオーンの言った通り本当に四人に増えることもありえるかもしれない。それでは先にスキルの回数制限を使い切ってしまう。

 

 とにかくブレイン方面をエインヘリヤルが抑えている間に片方だけでも何とかしなければならない。

 

「行くぞ!悪しき吸血鬼め!突撃斧<アクスボンバー>!」

 

 ブリタはシャルティアに向けて走りながら、下から掬い上げるように斧を上に向けて全力で振り上げる。

 

「こんの!……くっ!?」

 

 シャルティアは攻撃を槍で受けるが、ブレイン以上の怪力を受け、身体が上空に投げ出されそのまま天井にぶつかってしまう。

 

「まだ行くよ!投擲斧<スカイドライブ>!そのまま潰れろ!」

 

「……!?」

 

 追い打ちをかけるように今度は重量のある斧をシャルティアに投擲してきた。シャルティアは天井を蹴るようにその場から離れ地上に降りる。その僅か上を斧が通り過ぎ、そして廃坑が壊れるかと思う程の轟音を上げて天井に斧が突き刺さる。

 

(怪力馬鹿女め!武器を投げるとか迂闊よ!このまま刺し殺して……!?)

 

 武器を投擲したことにより、無防備になったブリタをシャルティアは狙おうとするが、地上にブリタの姿が無い。そしてその場所はすぐに判明する。

 

「どこを見てるんだ!私はここだ!落下撃<脳天割り>!これで死ねぇ!」

 

 ブリタは天井の斧の元へ跳躍し、斧を掴み取ってそのままシャルティアの頭上に落下しながら振りかざしてきた。

 

「うるさい!あんたが死になさい!スキル<不浄衝撃盾>!」

 

 シャルティアは攻撃の当たる瞬間にスキルを発動させ、赤黒い衝撃波でブリタを弾き飛ばした。ブリタは何とか態勢を立て直して着地したが、ダメージが相当大きいのか少しふらついている。

 

「もらった!このまま刺し殺す!でりゃぁぁぁぁ!!」

 

 スキルによる飛行で隙を見せたブリタをスポイトランスで刺し殺そうと高速で突撃する。よろけているブリタにはそれを避けることは不可能であった。

 

 

 

 

「――また儂を忘れておるな?スキル<味方‐敵性位置交換(リンク・エネミー・トランス・ポジション)>!選手交代じゃ。」

 

 

 

 

 しかしこれは1対1の勝負ではない。当然この行動に横槍が入る。ブリタの姿が掻き消え代わりにシャルティアの分身が現れる。

 

「嘘でしょ!?きゃっ…!?」

 

 どうやら分身も同じく槍での突撃攻撃をしており、お互いが高速の槍を肩に刺し合ってしまった。攻撃に反応してお互いのスポイトランスが回復を行うが…。

 

「《集団標的(マス・ターゲティング)・回復阻害(・リカバリー・インヒビション)》!カッカッカッ!互いに傷つけあって死ねぇ!」

 

 ブレイン側にいたボクオーンが妨害魔法で回復を許さない。先程の戦闘と同じような展開になってしまった。

 

「お主に良いことを教えよう!味方の人数が増えることが必ずしも有利に働くとは限らんぞ!それらを有効に使う戦術や陣形が無ければ無意味じゃ!もう少し頭を使えポンコツ脳筋小娘め!」

 

 いつの間にかブリタ側にいたボクオーンが廃坑の奥側に移動しており、シャルティアに対して明らかに馬鹿にしたようなアドバイスを投げかけてきた。しかも何故かシャルティアの呼び名が更に不名誉になっている。

 

 今の立ち位置は、廃坑の奥側に前衛のブリタとブレイン、後衛にボクオーン二人が並び、廃坑の入り口側にシャルティアとその分身が立っている状況だ。

 

(これは認めたくないけど今はこちらが不利だわ。しかし長期戦に持ち込めればこちらが有利になるはず。今は相手の攻撃をいなして耐える時だわ。逃げることは……ナザリックの一員としてするわけにはいかない!)

 

 

 

 シャルティアは不利な戦いを強いられながらも、勝利を掴むために逃げずにその場に留まった。しかし、その様子を見たボクオーンが笑みを浮かべていることに気づくことは出来なかった。

 

 

 




<原作を知ろう!>特別編2
ボクオーンのイラスト
出典:ロマサガ2・LOV2(ロードオブヴァーミリオン)・インサガ(インペリアルサガ)
 原作ではボクオーンの姿は緑色の服と白い髭と2つの角がある姿で七英雄の中でも小さく描かれている。SFC版ではドットがやや荒く、更に当時のブラウン管テレビの質が悪いとただの緑と白の逆三角形にしか見えず、一体何と戦っているのか分からない者が多かった。それを考慮されてか後に出てくるボクオーンの姿は一風変わったイラストが多かった。まずLOV2イラストでは緑色の服が法服に変わり、白い部分が髭と大きな禿げになったことから、ものすごく威厳に満ちたイラストで登場。他の七英雄に比べあまりの姿の変わりように原作を知っている誰もが「誰だこいつ!?」と言いたくなった。ちなみに私はこのイラストに惚れてLOVを始めた。また同ゲーム内でとある絵師の方が書いたものはなんと赤髪のイケメンである。顔にはしわ一つないぴちぴちの姿で数珠のような物を首に下げた爪の長いボクオーンには流石の私も品評し難かった。また他作品のインサガ(エンサガ)では古代人の七英雄時代のボクオーンが描かれており、その姿は天秤を持ったオールバックのナイスミドルでとても厳つい姿をしていた。一体どこから爺になってしまったのか理解できない姿にやはり賛否両論が繰り広げられたのだった。

 この小説内ではLOV2のボクオーンの姿を参考に容姿を決めた。私はあの「バカめ、甘いわ!」のボイスが中々にツボって筐体の前で笑い転げていたのはいい思い出。

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