帝国魔将ゴルベーザ!   作:RIN

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第8話の投稿です。
心が死ぬほど難産だった…。あの部隊の設定がメディアで全部違うから大混乱!
お前けっこう出番あるのに名前無いんかい!って言いたくなった。皆は設定なんて気にしちゃいけない…( ;∀;)お願い許して…。

今回の一言
「転移後世界アカデミー主演男優賞受賞」byRIN


人形劇の終幕そしてアンコール

――???SIDE――

 

「目的地まであとどのくらいでしょう。」

 

「エ・ランテル周辺地域を過ぎればもうすぐトブの大森林付近です。我々の速さなら2日ほどで到着するかと…。」

 

 暗い森の中で剣や鎧を装備した者達が歩きながら話をしている。通常の冒険者とは違い重装甲な装備をした者が多く、更にその装備はこの世界の者では手に入れることの出来ないと言われている程高価なものだった。

 

「しかし…本当に破滅の竜王『カタストロフ・ドラゴンロード』が復活したのでしょうか。私には……俄かに信じられません。」

 

「スレイン法国の実力者である土の巫女姫様を遠距離から高位魔法で殺せる存在など聞いたことがありません。古では破滅の竜王が似たような術を用いて戦っていたとされていますので、今回の情報の信憑性は高いかと。」

 

 今は中性的な顔を持つ隊長格の者と大きな盾を持った重装甲の大柄な男性が道すがら話し合っている。他の者は基本的に黙っており黙々と足を進めている。

 

 この部隊の名前はスレイン法国の特殊部隊『漆黒聖典』。機密のため知っているものは少ないが、現時点での人類最強の部隊とも言われている。

 

 今回スレイン法国の部隊が何故エ・ランテル付近にいるのか。それはスレイン法国で土の巫女姫が突如として爆発に巻き込まれ死亡してしまったのが発端だった。

 

「陽光聖典のニグン・グリッド・ルーイン程の男が巻き込まれるとは……あの方も運が無かったですね。」

 

「しかしニグン隊長のおかげで人類の危機を察知できたのです。一応破滅の竜王かは確定ではありませんが、未開の樹海トブの大森林方面に元凶がいることは間違いないでしょう。」

 

 陽光聖典隊長のニグン・グリッド・ルーインを監視しようとした土の巫女姫に攻撃が加わり、神殿ごと大爆発に巻き込まれた。その時にニグンが最後にいた場所がトブの大森林付近であった。

 

 トブの大森林は人間の手の加わっていない大樹海で、様々な魔物や未知の生物が暮らしていると言われる。表層辺りではトロールやナーガ、あとは森の賢王と言われる魔物が幅を利かせ、最深部では行ったものが少ないためか情報が少ないが、巨大な化け物が生息していると言われている。

 

 今回の元凶はおそらく森の最深部に言われるというその巨大生物が破滅の竜王なのではないかと上層部は見ている。破滅の竜王は竜とは言われているがその形は様々で、共通して巨大な魔物の姿を取っていることが多い。それらが被害を出したということは差し迫った脅威が現在進行形で進んでいるということだ。時間は無いに等しい。

 

「我々だけで対処ができるのでしょうか…?この装備であれば負けることはそうは無いと思いますが…。」

 

 その脅威を素早く退けるため人類最強と呼ばれる『漆黒聖典』が出撃することとなった。全員が最強の装備を整えており、これでもし負けるようなことがあれば、もう人外レベルの強さの者に頼るか神人の再来を待つしかなくなってしまう。

 

「大丈夫じゃ。今回は私もおる。私を守ってくれさえすれば、この神の残した装備『傾城傾国(ケイ・セケ・コゥク)』が何とかしてくれる。」

 

 その言葉を発した女性は詰襟で横に深いスリットの入った龍の絵柄の描かれた女性用のワンピースを着ていた。しかし、着ているのが老婆のため、一般から見れば少し無理をしているように見えてしまう。だが、漆黒聖典の者達にはその姿は伝説の勇者に近いほどに輝き、その在り方を尊敬し信頼している。

 

 破滅の竜王へ挑む際の切り札として投入されたこの老婆カイレはスレイン法国の至宝『傾城傾国(ケイ・セケ・コゥク)』を持つことを許されている。この装備はどんなに耐性を持っていようとも、相手を必ず洗脳できるというとてつもない効果を秘めていた。この装備一つで国を容易く落とせるほどの力を持っており、正にスレイン法国の最終兵器である。

 

「わかっておりますカイレ様。我々漆黒聖典が必ず御身をお守り致します。セドラン、巨盾万壁と言われた貴方が最後の防衛線です。任せましたよ。」

 

「はっ!隊長お任せください!」

 

 役割は決まっていたことではあるが、改めて確認を行いお互いに士気を上げていく。暗い森を抜け開けた場所に出てきた。周囲に木は生えておらず少し草が生えているだけである。月が見えるぐらい広く開けているものの、道のような場所が先になく、まるで崖のようになっていた。どうやら少し小高い丘になっており少し回り道をする必要がありそうだ。

 

「…人目を避けるためとは言え少々道を外れすぎましたね。少し戻って回り道を……――?全員止まれ。何者かがこちらに来る。」

 

 隊長格の者は何者かの接近を感じ取り全員に指示を出す。それに合わせ隊員全員が戦闘態勢に即時移行する。円陣を組むその動きは淀みなく無駄の無い洗練されたものであった。

 

 しかし、その円陣も意味のないものになった。

 

 

 

 

「―――た、助けてくれぇ!誰か…誰かおらんのかぁ!」

 

 

 

 

 自分達が来た道側からしわがれた老人の声が聞こえてきた。息も絶え絶えなかすれた声色で必死に助けを求めている。

 

「こんなところに人…?しかも老人だと…?」

 

 この場所は道からかなり外れており、人が通るところでは決してない。しかし、現に今自分たちのいるこの場所に向かっているようだ。段々とこちらに来る気配を感じる。

 

 そして、遂にその老人が姿を現した。その姿は正に泥にまみれたボロボロの老人だった。立派だっただろう白い髭がくしゃくしゃになって茶色に染まっており、高価だっただろう緑色の法服を着ているが全体が泥まみれになっている。しかも、何故か法服の胸の部分に大きな穴が空いており、走り疲れたのか覚束無い足取りで前に向けて必死に歩いている。

 

「お、おお…!?人じゃ…!神のお導きか…!そ、そこの強そうな者達…お願いじゃ!助けてくれっ!」

 

 どうやら神を信奉する一般市民のようだ。人外ならまだしも、人間であれば十分に救済の余地はある。この部隊が人目に付くのはご法度とは言え、例え殺すにしても事情ぐらいは聞いてみるべきだろう。

 

 隊員に待機の指示を出し、隊長格の男は老人と対話を試みる。

 

「どうしましたかご老人よ?このような場所で何があったのです?」

 

 隊長格の男は努めて優しく問いかける。刺激しないようにゆっくりと相手を落ち着かせることに専念する。老人も話を聞いてくれたことで落ち着いたのか事情を話してくれた。

 

「あ、ありがとうございます…。今私はこの近くの盗賊に捕まってしまい、近くの廃坑で閉じ込められていたのです…。私の身柄でお金を強請るために攫われたようで…。」

 

 どうやらこの老人は人質として誘拐された者のようだ。確かに泥だらけではあるものの、服自体はかなりの高価なものであることが伺える。

 

(なるほど、盗賊の廃坑ですか…だからこのような場所に。しかし、盗賊にとっても大事な人物のはず…。どうやって逃げることができたのでしょう…?)

 

 例え盗賊であっても通常であればそんな失敗をするようなことはしないだろうし、服装から見てもこの老人が強そうには見えない。叫んで人を探していたことから隠密なんて以ての外だ。

 

 しかし、その理由は老人の話の続きから明らかになる。

 

「し、しかし廃坑にもの凄く強い吸血鬼達が襲ってきたんじゃ!わ、儂の聞く限りでは盗賊も歯が立たなかったのか、かなり大変なことになっていて…。その時偶然に牢の鍵が手に入って必死に逃げ出したんじゃ…!」

 

 かなり怖かったのか興奮した様子でその時の様子語っている。口調も覚束無い状態で老人は身を震わせていた。

 

(吸血鬼…ですか。この近くでは見ない魔物ですね…。まさかこの吸血鬼…破滅の竜王に関係が…?)

 

 破滅の竜王には当然ながら配下も存在すると言われる。その配下は破滅の竜王たる姿の一部を借り顕現すると言われる。竜なら竜が獣なら獣が配下になる。

 

(そう考えれば今回の破滅の竜王は吸血鬼…いや、それは考え過ぎか。とりあえずいまはこの老人をどうするか…?――む?何だ…また誰かが来る?しかも速度が…!?)

 

 隊長格の男はまたしても複数の誰かの接近を感じた。しかも今度は先程の老人よりも遥かに速度が速く、一直線にこちらへ近づいてくる。

 

 接近に伴い再度隊員で2度目の円陣を組み直す。先程の老人とは違い時間を掛けることもなく、その接近した者達が森の中から姿を現す。

 

 

 

 

―――現れたのは白い装いを纏った女性二人であった。

 

 

 

 

 現れた女性二人は非常に美しい成人女性のように見える。しかし、白蝋じみた血の気の完全に引ききった肌に真紅の瞳を持ち、赤い唇からは鋭い犬歯が僅かに姿を見せている。服装もこの場では似つかわしくない白い儀式衣装を着ており、明らかに普通ではない印象を持たせる。

 

(こいつらが老人の言っていた吸血鬼でしょうか…?)

 

 どうやら老人の言っていたことは本当らしい。おそらく逃げた人間に気付き追跡してきたのだろう。隠蔽や隠密の手段を持たない老人では、()()()()()()()()()()()()すぐに探し出せる。一直線に来たのもその為に違いない。

 

「人間どもか…!」

 

「見られたからには殺す…!」

 

 吸血鬼達はこちらの姿を見るや否や高速でこちらに飛び掛かってきた。問答無用で鋭利な爪による攻撃を同時に繰り出してくる。

 

 常人の動きではなく、明らかな殺意を持って放たれたその攻撃はかなりの速さであり、通常の人間ではまず視界に入れた瞬間に何をしたか分からずに殺されているであろう攻撃だった。

 

 しかし、その攻撃を隊長格の男は難なく避け、武器を使うこともなく拳で腹に一撃を、更に相手の背後に回り込み回転するように背中に蹴りを加えこむ。

 

「っ………!?」

 

「ぁ………!?」

 

 吸血鬼達の紅く染められた唇から、小さな呻きのような声にならない声が漏れだしてくる。これほどの吸血鬼であれば耐久力や再生能力が強く、拳や蹴りといった体術ではまずダメージにならないはずである。

 

 だが、それだけの攻撃で一人は腹に穴が空き、もう一人は背中から足と頭がくっつくレベルで折れるように飛んで行った。二人の吸血鬼はそのまま動かなくなり活動を停止した。それぞれが体術の一撃の元にあっけなく殺されてしまった。

 

 一人は隊長格の男の足元で蹲るように、もう一人は崖に沿った方向に進むとある森側の手前の場所にうつ伏せで倒れている。

 

「…この程度だったのですか。驚いて損をしました。まぁ、これでも一般的には強いのでしょうね。」

 

 またもや円陣が意味のないものに変わった。確かに老人の言っていたことは本当ではあったが、この漆黒聖典の隊長にはどうやら脅威とはみなされなかったようだ。

 

(有力な情報かと思いましたが…残念ですね…。さて…時間を無駄にしました。惜しいですがそろそろ口封じをしなければ…。あの老人は…。)

 

 これ以上時間を掛けるのも無駄と判断し、老人を亡き者にしようと気配のある方向に振り返る。しかし、何故か老人は森の付近にいる吸血鬼の死体をじっと見ながら、顔を青ざめさせている。

 

――そして、老人は周囲に悲鳴のような言葉をばらまいた。

 

「わ、儂じゃない…儂が殺ったのではないぞ!こ、こんなところにいては()()()()()()()()()()()()()!と、遠くに…遠くに逃げなくては!?」

 

 老人は突然錯乱したかのよう近くの森の中に向かって走り出す。その光景を呆然と見ていたことで反応が遅れた隊員達は老人を森の中にまで逃がしてしまう。

 

 そして、逃げた老人を追いかける為に走り出そうとした瞬間―――――

 

 

 

「――ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁ…!!?」

 

 

 

 その老人の断末魔のような悲鳴が森の中から聞こえ気配がなくなってしまった。

 

(な…あの老人の声…!?一体何が起こっているのです…!?それにあの老人の言葉はどういう…?)

 

 突然の老人の行動。吸血鬼が死んでからその反応が起こったように見えた。それに老人の言葉の中に『()()()()()()()()』と言っていた。それから導き出される答えは…

 

(まさか…あれより遥かに強い者がまだ残っている…?そして今の老人の悲鳴…―――!?)

 

 

 

 

―――最後に老人のいた方角からおぞましい気配を感じる。吐きそうになるレベルの強者の気配が…。

 

 

 

 

(馬鹿な…!?私がこの強大な気配に気付かなかっただと…?)

 

 3度目の円陣を組む。この気配に隊員達も気が付いており手の握る力を強くし、乾いた唇を舐める。

 

 

 

 

――そして千客万来な森の中からその姿が現れる。

 

「あれは私の吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)…!?お前らがあのクソ爺の仲間か…!何をするか知らないけど、私を怒らせて生きて帰れるとは思わないことね…!」

 

 

 

 

 その姿は紅い小さな少女だった。しかし、小さな身体全体を鎧で覆っており、不思議な形をした槍を持っている。一応少女と判断できたのも身体の小ささと鎧から覗かせている美しい顔があったからだ。

 

 だが、覗かせている顔からは先程の吸血鬼二人と同じ印象を感じた。白磁の肌に紅いルビーのような瞳、そして紅い唇からは鋭い犬歯が僅かに姿を見せている。

 

(また吸血鬼か…!?しかも、あの紅い装備…とてつもない代物です…!破滅の竜王が吸血鬼…もしかしたらあり得るかもしれませんね…。)

 

 どうやら現れた吸血鬼はかなり興奮状態にあるようだ。おそらく配下である先程の吸血鬼の二人――吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)を殺してしまったせいであろう。先程の老人の言葉もこの少女のことを指していたに違いない。

 

(この吸血鬼は我々の探している破滅の竜王に関係している可能性は高い…!確実にここで捕らえる…!)

 

「…使え。」

 

 その言葉に従いカイレが洗脳の準備に入る。そして、周囲もそれに合わせ動き始める。カイレの盾となり発動までの時間を稼ぐために一丸となる。

 

 しかし、吸血鬼も何かを悟ったのか、興奮を収め他を無視してカイレを見つめている。この視線からカイレが中心であることが見破られた可能性が高い。隊長格の男はすぐさま駆け出す。

 

「邪魔!」

 

 吸血鬼は槍を高速で薙ぎ払う攻撃を繰り出してきた。駆け出した隊長格の男はその攻撃を自身の槍で受け止め、吸血鬼の進行を阻もうとする。しかし…

 

(――…!?これは……強い…!?)

 

 吸血鬼の槍の勢いを止めることができず、そのまま隊長格の男の身体ごと空中へ放り出される。四肢がバラバラになりそうなほどの衝撃を受け意識が飛びかけるが、何とか空中で姿勢を正し着地する。

 

(くっ…距離を取られた!カイレ様!!)

 

 吸血鬼は男への視線を切り、カイレの元へ走り出す。そしてカイレに向かって詠唱をする。

 

集団全種族捕縛(マス・ホールド・スピーシーズ)!!」

 

 その魔法で何人かが捕まる。しかし、その魔法に対し全員が防御陣を一切崩さず、吸血鬼に怯むことなく各々の役割を果たしきった。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 カイレから龍を模した波動が放たれ吸血鬼を包み込む。遂に『傾城傾国(ケイ・セケ・コゥク)』が発動したのだ。

 

(…なんとか発動できたか。これでこの吸血鬼から情報を得られれば…。)

 

 

 

 

 

「ぎぃいいいいいいいいいいい!!」

 

 

 

 

 

「なにっ…!?」

 

 洗脳されたはずの吸血鬼が再度金切り声を上げ動き出した。顔がおぞましい化け物に変わり、血の涙を流しながら全力で抵抗している。

 

 そして手に持っていた奇妙な形の槍が消え、代わりに3m以上はある白銀の槍が出現した。周囲が歪むほどの青白いオーラをこれでもかと迸らせ、その槍を手に大きく身体を反らせる。

 

(あれは…投擲か!?まずい…!!)

 

「セドラン!!」

 

 その声に応え大きな鏡のような盾を持った巨漢がカイレを守るように立つ。「巨盾万壁」と言われたこの男は人類最強の盾を持つ守護者だ。どのような攻撃も一度たりとも通したことのない男がいれば必ず守り切れる……はずであった。

 

「私を……汚すなぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 そして―――投擲。

 

 

 

 意識を持ったような動きで、手から槍が放たれる。

 

 閃光のような一撃は一直線に、盾を持ったセドランに向かい――

 

 

 

 

―――()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「ば、馬鹿な……。」

 

 血反吐を吐き出す二人。ざわめく隊員達。動かなくなった吸血鬼。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、同士討ちか…儂が手を下すまでもなかったの。しかし、()()とは存外に楽しいものじゃったな。」

 

―――そしてその光景を見ていた卑怯者(先程の老人)

 

「では…この滑稽な人形劇の終幕に儂からの『アンコール』じゃ。若のご所望の品をいただくとしよう。」

 

―――漆黒聖典は更なる絶望に苛まれる。

 

 

 

 




実はこれってボクオーンが介入しなくてもそんなに変わらないんじゃ…と思った君はきっと正しい( ;∀;)お願い許して…。オーバーロード側の設定が少なすぎるのよ…。
ちなみに何でボクオーンがこんな行動をしたのかは次回明らかに…!
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