帝国魔将ゴルベーザ!   作:RIN

28 / 39
遂に3章エピローグです。
ナザリックの皆さんがどうしているのかという話です。
時系列的にはシャルティア復活後の少し後ぐらい。ちなみにこの場にシャルティアはいません。
今回の一言
「(´・ω・)っ鏡」byRIN


玉座の間で

――アインズSIDE――

 

「申し訳ございませんアインズ様。例の廃坑からは敵の痕跡を発見できませんでした。おそらく追跡出来ぬように隠蔽されたものと思われます。」

 

「そうか…。手間を取らせたデミウルゴス。」

 

「滅相もございません。お役に立てず不甲斐ないばかりです。」

 

 シャルティアを洗脳した可能性の高い『七英雄ボクオーン』と言う者…おそらくあの冒険者ノエルの関係者と思われるが…。やはりそう簡単には行かないか。

 

「アインズ様。どうせならそのノエルって冒険者を捕らえたらいかかがですか?そいつがシャルティアを洗脳した仲間なら私がとっちめてやりますよ!」

 

 なるほど。確かにそれが一番手っ取り早い。しかし…

 

「アウラよ…それは駄目だ。もし本当にノエルの仲間だった場合、単独で行けばシャルティアと同じ道を歩むことになる。」

 

「だったらアインズ様。皆でその人を捕えに行くのはダメですか?皆がいればすぐに捕えられると思うんですけど…。」

 

 確かに相手が一人であれば行けるだろう。しかし…

 

「マーレよ…それも駄目だ。相手の規模が分からない。ノエルをはじめ、私を苦しめたスカルミリョーネやシャルティアを洗脳したボクオーン、それにこの事件を引き起こした相手の黒幕もいる。ノエルが今も堂々と冒険者を続けているということは、それらを返り討ちにする自信があるのだろう。迂闊に手を出すわけには行かない。」

 

 俺としてはナーベラルを苦しめシャルティアを洗脳したそいつらを、今すぐにでも捕まえて生きていたことを後悔させてやりたい――…いや…必ずこの手で縊り殺してやる…!ギルド皆の子供とも言えるNPC達を苦しめた挙句、あまつさえ私の手で殺させた…許せん!絶対に許してなるものか!絶対にあいつらを皆殺しにしてやる!毛の一本でも残して堪るか!ああ!やはり死すら生温い!!永遠に蘇生と痛みを味あわせて存在していたこと自体に意味を無くさせてやる!!!

 

「あ、アインズ様…!?え、ええっと、あの、その、ぼ、ぼく何かいけないことでも言ってしまったでしょうか!?」

 

「――っ!?す、済まぬマーレよ。少し考えが過ぎたようだ。」

 

 しまった…怒りで守護者達を怖がらせてしまった。こういう時に上の者が感情的になってどうする。今一番重要なのは、冷静になって全ての物事を見ることだ。現実に起こってしまったものは仕方がない…これからそうならないように俺が率先して動かなければならないのだ。

 

 まずは相手の情報を得ることとそれを元にナザリックの戦力を強化していくこと。そして、いつでもこいつらと対峙できるように万全の準備をしなければならない。怒りの感情はそれから発散させればいい。

 

「シカシ、ソノスカルミリョーネナル者ハ一体何ガ目的デ墓地デ騒動ヲ起コシタノデショウカ?」

 

 ふむ?確かにコキュートスの言う通りだ。何故この世界の人間の力を借りてまで、このような騒動を起こしたのか?ズーラ―ノーンなる組織は街の破壊等が目的であったと思うが、その行為にスカルミリョーネ達にはどんなメリットがあったのだろうか。

 

「え?それは……何でだろう?お姉ちゃん分かる?」

 

「え?そ、そんなの私に分かるわけないでしょ!アインズ様、どうしてあいつらはそんなことしようとしたんですか?アインズ様なら分かりますよね!」

 

「――ぇっ…?」

 

 え?いやいやいやいや!?俺にも分からないんですけど!?どどどどうする!?ここで分からないって答えたら支配者としての威厳がなくなってしまうのでは…!?よし…こ、ここは…!?

 

「ほ、ほぅ。わ、私が答えを言ってしまっては面白くないな。デミウルゴスよ?もちろんわかっておろうな?」

 

「ええ。もちろんですともアインズ様。情報が少ないので確証はありませんが、拙いながらも私の推論を何点か述べさせていただきます。ぜひともお楽しみ下さい。」

 

 き、きたー!流石はデミウルゴス!この少ない情報から一体どんな答えを出したのか気になってしょうがないぞ!

 

「まず可能性として立地面での占領政策が挙げられます。このエ・ランテルは三国の中央に当たる主要都市となっており、この場所を占拠することで三国共に関係を持つことができます。もしこの三国のどれかに黒幕が属している場合、その国に対して裏からの支配を受ける形となり、この都市の利益を全て受けることができます。もちろん周囲の国から防衛できることが前提ですが。」

 

 ふむ、なるほど。転移や飛行の移動が一般的ではないこの世界では確かに重要な点だ。立ち寄るだけで金になるのであれば確かに魅力的な立地なのだろう。もし私達がいなければスカルミリョーネ達はエ・ランテルを占拠できていたはずだ。十分あり得る話ではある。

 

「また他の可能性として、占拠した後の英雄行為が挙げられます。この世界では英雄の登場を期待している声が非常に多いです。事実アインズ様も冒険者の名を挙げ、英雄としての地位を駆け上っています。この時『帝国の大英雄』と呼ばれた冒険者ノエルが来ていたことから、スカルミリョーネに都市を占拠させ、ノエルが開放すると言ったことが行われる場合があり得ました。ノエルが名声を得ることで黒幕の次の段階に進める布石だったのかもしれません。」

 

 ほぉ、それも状況的にあり得る話ではある。ノエルが突然あの場に現れたのも頷ける可能性だ。私もデミウルゴスに同じことをさせようとしているのだから、他人ごとではない話でもある。

 

「あと可能性は低いですが、世界征服のための示威行為の可能性があります。占領した後に名を挙げることによって、都市を足掛かりに周囲の国を攻め滅ぼす算段を立てていたことです。ただしこの場合は名を挙げた後は悪名を轟かせることとなり、全世界を敵に回す行為になります。例え強大な力を持っていたとしても穏便には行かないため、その行為自体に何かの執着でもない限りこの方法はお勧めできるものではありませんね。」

 

 うーむ…世界征服か。そんなことを企む幼稚な奴がいるのだな。そんな組織の黒幕がいれば一体どんな支配者なのか顔が見てみたいものだ。うちは名前を世界中に轟かせて仲間を探したいだけだからな。

 

 しかし、デミウルゴスは少ない情報の中でよくこれだけの推察を立てられるものだ。流石はナザリック一の頭脳だ。ん?そういえばアルベドが話に加わっていないな。デミウルゴスだけでは平等性に欠ける。ここはアルベドにも話を振ってみるか。

 

「そうか…流石はデミウルゴス。私の考えをよく理解している。ではこれを踏まえて今後の活動の指針に移りたい。アルベドよ、何か良案はあるか?―――…………?アルベド?どうした?」

 

 こちらに背中を向けて何かをぶつぶつと話している。あれ?この状態どこかで見たような…。とりあえず聞き耳を立ててみようか…。

 

「アインズ様を苦しめた…?アインズ様を苦しめただと…!?至高なるアインズ様に傷を負わせ、あまつさえ苦しめるまでに至っていたとは…!スカルミリョーネって言ったわね…!アインズ様以外の下等アンデッドのクズの癖に出しゃばって、ただで済むとは思わないことね…!必ず見つけ出してナザリックの全ての拷問を使って痛めつけてやるわ…!そいつらの仲間も同罪よ…!シャルティアはともかくアインズ様にあれだけお手を煩わせるとは万死に値する…!今すぐにでも討伐隊を編成して蘇生できないぐらいに殺しに行かなければ…!いや、それだけじゃ私の気が収まらない…!私も参加して生きていたことを後悔させるまで叩き殺してやる…!それからそいつらの○○○を×××しながら、そこら中に△△△△して□□して、ナザリックに連れ帰っても◇◇◇◇してから●●●してくれる…!ああ…!それでも私の怒りが収まらないわ…!アインズ様に楯突く者どもは全員地獄に落として……」

 

 アルベドさーん!確実に女性が使っちゃまずい表現がありますよ!?男性でも使っちゃダメだけど!アウラやマーレが真似しちゃったら大変だぞ!とりあえず声が小さくて良かった!こんなの守護者たちに聞かせられないぞ!とりあえずフォローを入れておこう!

 

「アルベドよ。こちらを向くが良い。」

 

「…はっ!?も、申し訳ございませんアインズ様!いかがなさいましたか!」

 

 どうやらまずは妄想から抜け出せたようだ。しかし、このままでは強行してでも相手のところに特攻しそうな勢いである。どうにかしなければ。

 

「アルベドよ。私を心配してくれるのはとても嬉しい。他の守護者も含め、お前達は私に忠義を持って接してくれていることは私自身もとても理解している。」

 

「はっ!勿体なき御言葉をいただきありがとうございます!」

 

 まずは何でもいいから褒める!それから主題に移るのがかっこいい上司の在り方だ!そう前に本に書いてあった!

 

「しかし、大局を見誤ってはいけない。今一時の怒りに身を任せ策を失するようでは、到底奴らの思惑を超えることは出来ぬだろう。それ程までに今回の黒幕は頭が切れる。」

 

「それは……。」

 

 次に問題点を冷静に優しく指摘する!…ちょっと優しさが足りないかもしれないが、上司初心者の俺にはこれが限界だ!

 

「ただし、怒りを鎮め次の対策を冷静に辿って行けば必ず勝機は巡ってくる。我が優秀なる守護者達であれば困難を乗り越え必ず達成できると私は信じている。」

 

「あ、アインズ様…。そこまで私達のことを…。」

 

 そして部下達を信用していることをアピールし反省を促す!うん!良い感じだ!

 

「それにアルベドよ。お前は我がナザリックを安心して任せられる者だ。私が戻ってきた時には怒りに満ちた姿ではなく、余裕ある笑顔で出迎えてくれ。私は私を安心させるお前のその姿の方が好きだ。」

 

 最後の一押しは個人として頑張っている点や評価している点を話して今後の意欲につなげていく!よし!この流れなら怒りで短慮なことはするなってことは伝わっただろう!

 

「好き…私を好き!?アインズ様が私を好きですって!くふふふ…!!」

 

 あ…これまずいかも。また妄想の世界へ旅立ってしまった。まぁ、変に特攻したりこちらを襲ってくるよりはこっちの方がマシか。

 

「…少しアルベドには時間が必要か。すまないがデミウルゴスよ…。む?どうしたハンカチなどを持ったりして?」

 

 デミウルゴスや他の守護者もうつむいたり目の付近を覆ったりしている。一体何があったのだ?

 

「いえ…。少々感極まっていたところですのでお気になさらず。それではアルベドに代わり今後の方針をご提案させていただきます。」

 

「感極まる?まぁいい、とりあえずデミウルゴスの案を聞こうか。」

 

「アインズ様がおっしゃっていたナザリック強化計画の中に、アインズ様の下僕であるアンデッドの量産と強化があったかと思われます。今のところ人間を使ったアンデッドの量産を行っていますが、実験として亜人種等を用いた量産を行われてはいかがでしょうか。」

 

 亜人種を用いたアンデッドの量産か。確かに亜人種でのアンデッド化の実験は行っていない。人間に比べ力や体格の大きい亜人種を選んで用いれば、強力なアンデッドを量産できるかもしれないということか。

 

 スカルミリョーネも限定的な条件ではあるものの、アンデッドの大軍を指揮してこちらへ十分に脅威となる攻撃を繰り出してきた。今まではレベルや個人の力量が最大の脅威と考えていたが、数もまた質をも凌駕し得る脅威だと今回の件で学んだ。この経験を活かさなくては。

 

「トブの大森林で蜥蜴人(リザードマン)の群れをアウラが発見しております。それらを用いて実験をするのはどうでしょう。」

 

 なるほど蜥蜴人(リザードマン)か。確かにそこらの人間より強そうな感じはする。それに群れと言ったか?それであればついでにコキュートスにこちらのもう一つの実験を手伝ってもらおうか。

 

「ほう?面白そうではないか。それに他にも試したいことができた。どうせなら皆を連れて見物といこうじゃないか!」

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 この場での方針が決まり、アインズは冒険者組合にシャルティアの後始末を付けるために転移をしていった。この玉座の間に残った守護者達は偉大なる死の王を見送った後、各々に動き始めた。

 

「あー…いつものことだけど、アルベドがまた暴走してたから焦っちゃったよ!……まだ妄想から抜け出せてないみたいだけど。」

 

「そうだねお姉ちゃん。ぼ、僕もどうなることかと思っちゃった。それにしてもデミウルゴスさん。今日も大活躍でしたね!」

 

「ウム、我々ノ疑問ニ対シ、アインズ様ノオ手ヲ煩ワセルトコロダッタ。感謝スル、デミウルゴス。」

 

「いや、今回の私の考えは時間があれば誰でも思い付ける程度のことしか言っていないんです。おそらくアインズ様は応えた私を立てて下さるために、あえて本心を口にせず私の解答や提案を受け入れて下さったのでしょう。私の考え以上に策を巡らせ、その見据える大局には私の提案一つ程度で揺らぐことのない壮大なストーリーがアインズ様には出来上がっているに違いありません。恐れ入るばかりです。」

 

「ほぇー。ぼ、僕には全然わからなかったよ。流石アインズ様だね!」

 

 後ろで「あは~ん」やら「アインズ様そこは…」などの言葉を守護者達は完全に無視しながら、至高なる死の王を改めて尊敬している。

 

「しかし、実はアインズ様にはお伝えしていないこともあるんですよ。まぁ…お伝えするのが難しいというのが正しいのですが…。」

 

「ムゥ?オ前ニシテハ歯切レガ悪イナ…。一体何ヲオ伝エシテイナイノダ?勿体ブラズニ教エテクレ。」

 

「そうだそうだー!私達も知りたーい!!」

 

「む…。そうですねぇ…。」

 

 デミウルゴスはどう言うべきか考えているのか、眼鏡をあげながら少し間を置いた。そして少しまとまったのか粛々と話し始めた。

 

 

「率直に言えば…――『七英雄』という名称を()()()()()()()()()()()()のです。」

 

 

「えぇぇ!?それ凄い重要なことじゃない!?一体どこで聞いたの!?」

 

「実は詳しく覚えていないのですよ。おそらく昔ウルベルト様からお聞きしたことがあると思うのですが…。」

 

「む、昔ですか?えっと…確かにその時の記憶は曖昧であんまり覚えてないけど、ナザリック内の話題だったらボクでも覚えていることが多いと思うんですけど…。」

 

「…ト言ウコトハ、ナザリック外ノ話題ダッタ為ニ、デミウルゴスモ聞キ逃シテシマッタトイウコトカ?」

 

「遺憾ながら…そういうことでしょうね。自身の無能さに腹が立ちます。どのような知識でも無駄なものは無いとわかっていたはずなのに、この体たらくでは…。」

 

 後ろから「子供服は何人分ご用意を…」やら「名前は生まれる前に決めましょうね…」などの言葉を発する者を守護者達はいない者として決め込み議論を続ける。

 

「確かにアインズ様にはお話しするべきだったかもしれません。しかし、何も目途の立っていない昔の記憶と曖昧で朧気な情報で、この先間違った方向に時間を費やす恐れもあります。アインズ様はお優しいので、例え提案した情報が間違っていると分かっていたとしても、私の立場を潰さぬようにと貴重なお時間を掛けて下さるかもしれません。」

 

「た、確かにアインズ様ならお優しいからそうするかも…。」

 

「何ノ確証モ得ラレナイ情報ヲ上ゲルノハ不敬カモ知レヌナ…。」

 

「だったら皆でちゃんと調べてみようよ!それからアインズ様にお話しすればいいんじゃない?」

 

「ええ。まず私の方で昔の文献を漁りながら、情報の裏を取ってからお話ししようと思います。皆さんも何か情報がありましたらお話し下さい。まとめようと思います。」

 

「わかったよ!デミウルゴス!」

 

「分かりました!デミウルゴスさん!」

 

「了解シタ。デミウルゴス。」

 

 守護者達は各々に伝えたいことを伝え、それぞれが偉大なる御方の為に今日も仕事へ戻って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 玉座の間では「ほら可愛い男の子が生まれましたよ…」やら「では女の子の服を着せていきましょうね…」などの言葉が響くが、残念ながらその場に守護者はもう誰もいなかった。

 

 





自分より怒っている人が目の前にいると何か一周まわって冷静になっちゃうよね。
今話は基本大筋に乗せるための辻褄合わせが多かったかも。もう少し主人公絡みの会話を増やすべきだった。うーむ…書き終わった後に気付くとは…やはり匙加減が難しいです。今後反省しなければいけませんね。

次の話はプロット総入れ替え中。次のボス達を全て変更しています。戦術を変えるのって厳しい!
また1週間ほどリアルが泊まり込みレベルで忙しいので1日前後投稿は厳しそうです。
あと今は4章に行くか幕間に行くか間章に行くかに悩んでます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。