帝国魔将ゴルベーザ!   作:RIN

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遂に第4章に突入!
少しプロットに不安がありますが考えても仕方ないので勢いで進めていきます。
今回の4章は長い導火線に火を灯すような感じ。僅かな違和感がナザリック側の死に直結するタイプになりました。
また、執筆時間があまりとれそうにないことを考慮して小分けにして投稿予定になっております。また、いつも通り急ぎで作っていますので変なところがあったらごめんね!

今回の一言
「勘違いは継続中」byRIN


第4章 湖の主
無断欠勤と調査


――INSIDE――

 

 

―――私はこの世界で初めて仕事を無断で休んだ。

 

 

 

 ここは空中神殿の執務室内。ボクオーンに《伝言》で指示を出し、ロックブーケちゃんを新たに加え仕事を続けていた。バルバリシアとロックブーケちゃんと共に全員の活動状況や収支内容の確認、そして今後の軽い活動指針と新たな指示系統の確立の立案などを話し合っていた。

 

 しかし、これらの話し合いももう慣れたものだ。基本元NPC達は優秀な者が勢揃いしている。私自身は素案を投げるだけで、細かい部分は適任の者に繋いで立案の方向性とアドバイスをもらうだけで事足りる。

 

 様々話し合ったものの夜明け前には今日の議題は終了していた。バルバリシアはそれらをまとめ、決定したことを各地にいる皆に伝達するために執務室を出て行き、ロックブーケちゃんも帝国での活動があるため少し私に甘えた後地上へ戻って行った。

 

 後は帝国関連の早朝分の書類仕事を前倒しで済ませておこう。帝国は万年人手不足だからいくら仕事を片付けてもきりがないからな。その内ギルド内からも私が徴用したことにして帝国の仕事を手伝わせに向かわせようかな?今度バルバリシアに相談してみよう。

 

 

――そうして考えていたら部屋に妙な違和感を感じた。何処かで感じたことのある感覚だ。…これはもしや《ゲート/転移門》の予兆だろうか?

 

 私のいる可能性のある執務室は基本的に転移関連は私以外には禁止している。いきなり入って来られて素の発言を聞かれたり、鎧の中身を見られたりするのを防止するためだ。…それらを見られたら恥ずかしいからね。

 

 ともかくそれを知らない者なんてギルド内にはいないはず…。敵襲では無いとは思うが、一度羽ペン置きインク壺を閉じて違和感のある場所を観察した。

 

 そして遂にゲートが開き中からノエルが出てきた。…ノエル?あのNPC内で最もまともで真面目なノエルが命令違反を起こすだと…?どうして…

 

 その答えはすぐに分かった。ノエルが歩いて前に出てきた時、背負っていた者が見えたからだ。

 

 

 

 

 

―――そこには手足を失って血を出し、全身に大火傷を負ったスカルミリョーネがいた。

 

 

 

 

 

「なっ…!?スカルミリョーネ!!?」

 

 声が素に戻りかける。しかし、そんなことよりスカルミリョーネが…。私はすぐに立ち上がり、ノエルに床へ寝かせられたスカルミリョーネまで急いで駆け寄る。

 

「スカルミリョーネ!!スカルミリョーネしっかりしろ!!スカルミリョーネ!!!」

 

『――…お…お…おぉ……!ご、ゴルベーザ様ぁ…。』

 

 スカルミリョーネは気絶から目を覚ましたのか、かすれた声でこちらの名を呼んだ。これはかなりの重症だ。まずは回復をさせなくては!

 

「すぐに回復をさせる!《グレーターリーサル/大致死》!」

 

 アンデッドであるスカルミリョーネにはこれが一番の回復魔法だ。装備の外付け魔法のため威力は多少落ちるが致し方ない。負のエネルギーを流し込みスカルミリョーネに回復を促す。――…しかしどういうわけか魔法が弾かれた。

 

(ど、どういうことなの!?回復阻害があっても魔法が弾かれるなんてことはないはず…!反射だったらこっちに効果が跳ね返るはずよ…なのにどうして…!待って…()()()()()()()()()()()?――まさか…!?)

 

「スカルミリョーネ…!お前自爆魔法を使おうとしたな…!!」

 

 スカルミリョーネの覚えている自爆魔法は自身の命と引き換えに全貫通MP依存ダメージを与える魔法だが、使った時点から回復に属する魔法やアイテムを受け付けなくなる強烈なデメリットがある。それは蘇生魔法も同じなので、使った段階で相当のペナルティを負うハイリスクな魔法だ。

 

 それを使用しなければならない程に追い詰められていた状況だったということだ。どうやらかなりの強者と戦ったらしい。しかし、今は敵などどうでもいい!まずはスカルミリョーネの命を救わねば!

 

「ノエルはルゲイエを呼べ!!今すぐにだ!あいつならばこのデメリットをどうにか出来るはずだ!それと手足の止血を行う!何でもいい布を…そうだ執務室の旗を止血に使えば…!スカルミリョーネは意識を保て!安心しろ!私が必ず助けてやる!」

 

 ユグドラシルの物で駄目なら現代知識でどうにかするしかない!私は執務室の後ろに掛かっていた私の絵が描かれた旗を破り、スカルミリョーネの手足に巻いて少しでも出血を抑えさせる。本当は流水が欲しいが私が魔法で水を出したらスカルミリョーネごと押し流してしまう。…今は仕方ないがルゲイエ博士待ちだ。

 

 他にも無駄だろうがスカルミリョーネに効きそうな魔法やアイテムを全て試してみる。魔法が弾かれても別の魔法を使い、高価なアイテムも優先的に全て使っていく。クソッ!何か有効な物はないのか!?

 

『申し訳ございません…ゴルベーザ様ぁ…。て、敵の情報を…御方に仇なす者の報告を…。』

 

「今はそんなことなどどうでもよい!!とにかくお前を治療してからだ!!死なせはしないぞ!スカルミリョーネ!!」

 

 きっと私は統治者としては最悪だろう。もしこの情報に敵がこちらを攻めていることが含まれていたら、他の者もスカルミリョーネと同じ痛みを味わう可能性があるのに…。しかし私は目の前の瀕死のスカルミリョーネでもう心がいっぱいだ。うう…アンデッドの精神安定化でもあれば、もっと良い案が思いつくかもしれないのに…!

 

『ゴルベーザ様ぁ…う、う…うう…申し訳ございません…申し訳ございません…ううう…申し訳ございません…。』

 

 スカルミリョーネは何度も何度も謝りながら、白骨化していない側の目から涙を溢れさせて床を濡らす。私はそれを見ないふりをし、無駄かもしれない治療を続けた。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

「師父。以上が今回のスカルミリョーネの報告になります。」

 

「そうか…。遂に恐れていた事態が起きてしまったか…。」

 

 今はノエルの《転移門》で駆け付けたルゲイエ博士にスカルミリョーネを見てもらい何とか一命を取りとめた。容態が安定するまでずっとスカルミリョーネの側に付いていたが、傷もルゲイエ博士のスキルによりデメリットを取り除いたおかげで回復することができていた。とりあえず一安心だ。

 

 そして、今回は私がバルバリシアの報告を適当に流して聞いてしまったのが原因である。まさかスカルミリョーネ達が都市の殲滅を図ろうとしていたとは…。理由は分からないが恐らく私がNPCを設定した何かに起因するものなのかもしれない。もう一度全員の設定を確認し直そう。

 

 また、プレイヤーの出現も十分あり得ることではあったのだ。2年以上もそれらの痕跡が法国以外には見当たらなかったことで他国に無警戒であった。もし私がしっかりとそれらの話をバルバリシアから聞いていれば駆け付けることもできたかもしれない。反省しなければ。

 

「今回の首謀者はそのモモンという名のアンデッド…いや、オーバーロードなのだな?」

 

「はい。他にも連れにナーベと言う者がおります。このドッペルゲンガーの本来の名前はナーベラルという名だとスカルミリョーネから伺っております。もしかしたらそのモモンも偽名の可能性があります。」

 

 なるほど、ノエルと同じようにレベルを偽装して潜んでいたようだ。冒険者になる前は何をやっていたかは不明だが、もしかしたら私達の監視が薄い法国辺りにいたのかも。装備もかなりの物で戦術無しとは言えレベル100のスカルミリョーネをあっさりと倒してしまったらしい。レベルはあちらもカンストしてそうだ。

 

 しかも今もエ・ランテルの冒険者組合に在籍しているらしい。まだ一日も経っていないので今後はどうなるか分からないが、これからもずっと在籍しているようであれば監視を付けなければならない。交戦した以上こちらに攻め込んでこないとも限らないからな。

 

「それで師父…今後の活動はどうしましょうか。私の正体も気付かれています。…であれば皆に迷惑を掛けぬよう冒険者を辞めましょうか?」

 

「いや…それには及ばぬ。」

 

 実際こちらの世界に来てからそういった存在がいることを考えて綿密に防衛網を整えていたし、こちらには最強格の逃げ札がある。それに…

 

「そなたは『冒険者』が存外気に入っておろう?そなたは私が必ず守る。己が好きなことをするがいい。」

 

 私もユグドラシルではやりたいことができず最後は一人悲しい思いをしてしまった…。あんな悲しい気持ちをこの元NPC達にはしてほしくない。私の願いは()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。…できればこちらの世界に迷惑を掛けない範囲で。

 

「……!あ、ありがとうございます師父!」

 

 そうしてノエルはこちらへの報告を終えた後、冒険者組合の後始末に行くために地上へ戻って行った。

 

 それにしてもプレイヤーの出現か…。出来れば相手を刺激したくはないし、友好関係ではありたいと思う。しかし、こちらから攻撃を加えた以上はかなり厳しそうだが…やはり情報が足りないな。せめて相手の活動域が分かるだけでも調査の糸口が掴めそうなんだが…。

 

「若。お目通りをお願いしたいのですが。」

 

 その時執務室の扉から声が聞こえた。この声はボクえもんか。そういえばロックブーケちゃんの衣服の調達をお願いしていたっけ。

 

「ボクオーンか。入りなさい。」

 

「はっ!失礼致します。」

 

 執務室の扉を開け、ボクオーンが中に入ってくる。

 

「それで、例の物は手に入ったのか?」

 

「はい、もちろんでございます。…途中で邪魔が入り少々遅れてしまいましたが。」

 

 ん?邪魔が入る?まぁ、今考えればロックブーケちゃんの特別な衣服って結構な無茶振りだからね。手に入れるのに難航したのかもしれない。

 

「こちらに持ってきておりますが、ご覧になられますか?」

 

「いや…かまわん。ボクオーンよ。手数を掛けてすまぬが、それをロックブーケに私からの贈り物だということで渡しておいてはくれぬか?」

 

 今は…少し一人で考えていたい。心がいっぱいの状態でロックブーケちゃんに会うのもボロが出そうで怖いからね。ロックブーケちゃんには申し訳ないけどボクえもんから手渡してもらおう。

 

「かしこまりました。後でロックブーケに私から渡しておきましょう。」

 

「それとそなたを手伝った者達は生かしておくがいい。そやつらは私に対して十分な働きをしている。」

 

 元々はボクえもん専属の運び屋の人達を生き残らせる為の作戦だったからね。ここで褒めておけば運び屋の人達も理不尽な目にはあうこともないだろう。

 

「…それなのですが、実は邪魔が入った際に一体逃げ出してしまいまして。そちらはいかが致しましょう。」

 

 …そういえば殺される直前まで行ってたんだっけ。そりゃ逃げ出す奴がいても不思議じゃないか…。

 

「かまわん、生かしておけ。ただ念のため居場所だけは追跡しておけ。後々面倒なことにならぬようにな。」

 

 一応ボクえもんのところで働いていたわけだし、悪い噂でも流されたりしたら最悪だからな。場所だけは把握しておくべきだろう。

 

「はい、かしこまりました。そのように処置しておきます。あとは別件でご報告があります。」

 

 む?別件の報告?何か他に指示を出していただろうか?

 

「大まかではありますが、だいたいの敵のアジトの位置の範囲が特定出来ました。」

 

「む…!それはスカルミリョーネを撃退した者達のことか…!?」

 

「はい。そやつらも同一の敵組織かと思われます。」

 

 なんだとっ!?今一番欲しい情報じゃないか!!ボクえもんは一体どうやってその情報を手に入れたんだ?いや…それよりも報告を聞こう!

 

「場所はおそらくエ・ランテルから北の方面で、カルネ村からトブの大森林辺りに彼らのアジトがあると思われます。」

 

 カルネ村からトブの大森林辺りか…。確かに大雑把ではあるが指針は立てられる。えっと確か…

 

「付近には三人が縄張りにしていたな。」

 

「はい。カルネ村に一人。大森林に二人常駐しております。」

 

 カルネ村のあいつは…まぁ、大丈夫だろう。あいつは元プレイヤーのあの人に似てかなり臆病でお人好しだからな…元の原作とあまりにも違い過ぎて違和感がすごい奴だが、現地住民と一緒にいればまず戦闘になることはないだろう。注意だけ回しておけばいい。

 

 問題は大森林の二人だな…。一人は確か世界級アイテムの実験中で最深部に、もう一人は瓢箪湖を拠点としていたな。どちらもとても好戦的で特に瓢箪湖のあいつは縄張り意識がものすごく高い。もし相手の組織が近くで暴れようものなら戦闘は避けられないだろう。しかし、調査という名目ではあいつは悪くない。それならば…

 

「ふむ…ではまず相手の情報を掴むことを優先する。調査をする者は二人一組での行動を基本とし、片方はあの世界級アイテムを必ず持たせよ。敵が『二十』でも使用してこぬ限りはまずこれで問題はないはずだ。今回は大森林が危険領域のため、世界級アイテムを持たぬ瓢箪湖のあやつの側に一人神殿内から送り出そう。そうだな人選は…」

 

 あいつはフィールド依存の特殊な前衛タイプだから、もう一人付けるなら魔法が多く使えて臨機応変に立ち回れる者がいいな。ならうちの四天王の中に適任の奴が一人いる。

 

「ボクオーンよ。この後そなたの元にいる『水』をこの部屋に呼ぶのだ。あやつであればあの付近での護衛と調査に適任であろう。」

 

「はい、かしこまりました。退出後すぐに呼んで参ります。」

 

 ひとまずの対処はこれでいいだろう。あとはこの後全員に連絡して単体での行動に対して注意を促さなければ。相手の情報が少ない今では迂闊に動けない。とにかく相手の情報を手に入れねば…。

 

 




<原作を知ろう!>
ルゲイエ
出典:FF4
容姿:白衣を着た男性
○原作では?
 ゴルベーザ四天王のルビカンテの部下。科学者ではあるが明らかなマッドサイエンティストで作中での外道っぷりは1・2位を争うほど。特にエッジの両親をルビカンテのいないところで改造し、主人公に戦わせて来るところは中々に酷なシーン。上司であるルビカンテすら敵である主人公達に謝罪するほどである。
 戦闘ではロボットのバルナバと共に戦いを挑み、バルナバのHPが尽きるとルゲイエが乗り込んで戦うが攻撃されると何故か自爆する。その後、第二形態のルゲイエの正体であるロボットと戦うことになるがレーザーと睡眠ガスにさえ注意すれば問題ないだろう。ただしDS版ではリバースガスと呼ばれる回復とダメージを反転させる技を使ってくるため要注意。自爆必至レベルの初見殺しである。
○小説では?
 ルビカンテ配下の医務を担当。様々な状態異常やデメリットまで取り除く。ちなみにその取り除く方法は『治す』ではなく『直す』である。どんな手段なのかは読者の想像に任せたい。


この話で重要なのは主人公側は二人一組であると言うこと。今度は単体でのボスでなくて絡み合って戦って行くよ!そして主人公側のワールドアイテムは多分単純だけど確実にチートレベルであることは明記しておく。3つでナザリックに対抗するんだからそれなりに強くないとね。

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