今回は蜥蜴人のお話。原作4巻って蜥蜴人の話が長過ぎんねん…ここを原作沿いの二次小説でしっかり書ける人とか凄すぎだろ…。
書いてて分かったが、三巻までは楽なのにここから帝国までの二次小説の難易度が跳ね上がり過ぎだと思う…しっかりと書いている人がいたら参考にしたい。
とにかく4章全体で蜥蜴人の話を削りながら、うちの小説話を通せるかが肝になりそう。
今回の一言
「今回のボスって元は湖じゃなくて海なんだよね。」
バハルス帝国とリ・エスティーゼ王国の中央を走る境界線たる山脈――アゼルリシア山脈。その南端の麓に広がる森林――トブの大森林の北に2つの繋がった湖が存在していた。
その湖は約四方におよそ二十キロに及ぶ巨大な湖で、全体像が瓢箪の形をした湖だ。アゼルリシア山脈側の高い大きな湖には水深が深いため水中には巨大な生物が住み、その下の少し小さい湖には周囲に木々も多く、潤沢な餌が揃っていることもあり、上よりも小型の生物が群れを成して住んでいる。
そして更にその下の湖の南端では湖と湿地が入り混じった場所が広がっており、その一区画でぽつぽつと建物の立ち並ぶ場所が存在した。水が浸水しないように高めの場所に建物が建てられており、湿地で生活するには適した建物と言えよう。
この建物の立ち並ぶ場所――村ではとある種族が生活を行っていた。
―――それは爬虫類型の人間である亜人種、
――ザリュースSIDE――
湿地の中でも水深のある水たまりのような池で魚が跳ねている。池の周囲は手作りの網で塞がれており、その網の中にいる大きい生物は外側へ出入りできないようになっていた。
俺は外の世界で教えてもらった知識を基に祭司達によって改良した固形の餌を池にばら撒く。そうすると中にいた多くの魚が餌を求めてピチャピチャと勢いよく跳ねた。暴れる時の水飛沫が日の光に当たり、キラキラと輝いている。今日の見晴らせる程の天気には良く合う光景だ。
今は大体1m程だろうか?最初の時に比べて非常に大きくなったものだ。これであれば村の皆に配ってもしばらくは食いつないで行ける。味も良さそうなので食事に退屈しない日々を送れるだろう。
「――ザリュース!ザリュース・シャシャよ!我が弟よ!どこにいる!」
おっと…この声は
「兄者!ここにいる!小屋の後ろのいつもの場所だ!」
「おお!ここにいたか!探したぞ!お前が家にいなかったから約束をすっぽかされたと思ったぞ!」
「それはすまない兄者。今日の約束のために良い奴を早めに選んでおこうと思ってな。兄者が好きな脂の乗ったものを選んでおいたぞ。」
先程の水たまりような池とは別のところに分けられている小さな生簀に何匹かが泳いでいる。朝一番で選んだ特上の魚だ。きっとこれは旨いに違いない。
「しかし見事なものだ。最初はあれだけ小さかったのにな。これは確か…」
「『養殖場』か?そうだな…兄者と義姉者しか稚魚から育てたことは信じて貰えないだろうな。」
俺はそう言って旅人の烙印を指でなぞる。1年前まで旅人として世界を回り、俺はこの村に戻ってきた。偶然聞いたこの養殖場の知識をこの村で実践をしたくて、後ろ指を指されながらもここまでやっと漕ぎつけることができたのだ。自分の旅人の経験が無駄にならず、村に貢献できそうなのは嬉しいことだ。
ただ俺には一つ気がかりなこともあった。
「――しかし、旅の途中で聞いていた話と少し違うな…。」
「何?この立派な魚に何か問題があるのか?明らかにもう食えそうな感じに見えるが?」
兄者は俺の言葉に訝しんでいる。まぁ、今後これを村の全員で食べていくのだ。族長としては問題は残したくないだろう。しかし、今回は村にとっては嬉しい話だ。
「むしろ逆だ兄者。聞いていた話より
そう…本来ならまだこの時期では魚は食える段階まで来ていないはずなのだ。聞いていた話が間違っていたのだろうか?しかし、今と同じ時期に工程を見せてもらった時にはここまで大きくはなっていなかった。魚の性質から考えても間違いではないと思うのだが…。
何か原因でもあるのだろうかと見渡し、池の周りをじっくりと見てみると、この池の大本である上流から流れてくる小川のようなものに気が付いた。少し大きめの岩の間からしんしんと流れてくる綺麗な水…確かこの先は…
「これは…もしかして
この近くでの水は基本的に瓢箪湖からの水が主流だが、実際に直接流れてくるのは下の湖の水だ。上からの湖の水は場所が離れていることもあり、直接来ることはほぼ無いが、稀に雨が酷いときに上の水から土砂と共に巨大生物の死骸が流れてくることもあるのだ。
(土砂の影響で上の水と繋がっていたのか…。確かに少し岩やら石が多いと思ってはいたが…。)
実験をするのに手頃な池がここしか無かったのでずっと使っていたが、まさか今更になってこのようなことに気付くとは思わなかった。
水深が深く、巨大生物が住むと言われる瓢箪湖の上の水が今のこの魚の成長と関係しているのだろうか?確かに巨大生物が住んでいるということは、もしかしたら身体が大きく成長するための栄養が多く含まれている水なのかもしれない。これは実験をしてみる必要があるかもな…。
「兄者。瓢箪湖の上の湖に行って水を取ってくる。この後少し留守に…」
―――ビタンッ!!
「それは絶対に駄目だ!!!」
俺は驚いた。兄者は尻尾を力強く叩き付けこちらに威嚇をも含めた拒否を行ってきた。この尻尾と威嚇の行為は戦士の間での戦闘開始の合図でもあり、平常時では相手から殺されても文句が言えない程の無礼な行為だ。
「あ、兄者…?どうしたんだ…?まさか魚が食べられないことで怒っているのか…?それなら準備してからでも…。」
「違う!!上の湖には行ってはならん!!もしどうしても行くのであれば族長としてお前を殺してでも止める!!」
兄者の覚悟に俺は息を飲んだ。これは…本気のようだ…。
「わ、分かった兄者…。兄者がそこまで言うなら俺は行かない。兄者と戦ってまで俺は行きたいとは思っていない…!だから気を静めてくれ兄者…!」
そう言うと兄者は威嚇を止め、少し真剣な様子で構えを解いた。
「すまなかった弟よ…少し過敏になってしまったようだな…。そういえばお前は1年前まで旅人だったのだな…。お前がここに帰ってから随分と長く過ごしていたつもりだったが…そうかまだたったの1年だったのだな…。」
「兄者…。俺のいない間に一体何が…。」
どうやら俺のいない間に何かがあったようだ。それも上の湖の関連でだ。だがここまで兄者が拒む理由とは一体…?
「…瓢箪湖では蜥蜴人以外にも様々な生物や部族がそれぞれの文化に沿って生きている。特に下の湖では大小様々な部族が手を取り合いそして時にはいがみ合って住んでいる。これは知っているな…?」
「ああ、知っている。」
我々
「…お前が来る少し前の時に『湖の支配者』を名乗る者が現れ、湖全体の部族に宣戦布告を行ってきたのだ。」
「『湖の支配者』だと…?」
馬鹿げている。湖を支配するなど一体何を考えているのだ。しかも種族の全部族となるとかなりの数になるぞ。
「
「な…!?」
実験だと…!?俺達生き物をただの物としか見ていない外道のようだな…!生贄で何をする気かは分からないが、かなり性根の曲がった者のようだ。
「当然だがどの種族の部族もそのようなことは許容出来るはずもない。上の湖に陣取るそいつを他種族全ての部族が協力し討伐に向かったらしい。おそらくこの湖の歴史上過去最大の戦力で戦いを挑んだそうだ。」
「他種族が協力してか…。それはすごいことだな…。」
普通他種族が協力をしてまで戦うことはまずありえない。おそらく相当に状況は逼迫していたのだろう。しかし、この話がこの後の前振りだとすると…まさか…。
「…思っている通りだ。――その部族達の精鋭は一部を除き全滅した。見せしめも含まれていたのか、その一部生き残った者達の話によると、上の湖の一部を赤く染め上げるほどの虐殺ぶりだったそうだ。」
「……そのあと部族の者達はどうなったのだ。」
「どうやらそれらの死体で良かったのか、それともそれを生贄として受領されたのかは知らんが…まだ存続している。その後も要求自体は無いものの、湖の支配者を至上として各部族で手を取り合いながら細々と生活をしているようだ。そして、今も支配者は上の湖の底にいると言われている。」
「………。」
想像以上に重い話であった…。確かにこれであれば兄者があれだけの反応をしても無理はない。目を付けられれば最後…部族を皆殺しにされるほどの化け物か…。
「
「『湖の主』か…。」
そのような者と事を荒立てるのは部族の存続に関わる大問題だ。今の様子ならばこちらから発破を掛けぬ限りは問題は無いのだろう…。危うく俺の軽率な行動で皆を危険に晒すところだった…反省しなければ…。だが、そいつと関わらなければ生きていけるのだ…
――これからも関わらずに平和に村で過ごせればそれでいい。
「む…何だ?空に黒雲が…?祭司達の話では今日の天気は快晴だったはず…一体何が…?」
『―――聞け!我は偉大なる御方に仕えし者…先触れとしてきた…!汝らに死を宣告する!』
―――しかし、それらの想いも外の侵略者に運ばれてきた言葉によって打ち砕かれたのだった…。
今回の話があまりにも蜥蜴人過ぎたのでコーナーは休載。
というか今回のボスってもしかして片方は知らない人の方が多いのかも…。
私はこのボスの台詞とかも、少ないけどかっこよくて結構好きなんだけどね。