今回は短め。謎の者達の会話のお話…一体何者なんだ!?
ちょっとプロローグ風味で味付けしてあるので情報も盛りだくさんだが…ちょっと片道切符過ぎたかもしれない…。これは後が怖いぜ…。
今回の一言
「今でもツンデレに需要はあるのか…?」byRIN
――???SIDE――
快晴の空の下、青く反射する大きな湖が広がっている。周囲は草木も青々と生え、少し水気を含んだ風が優しく湖の上を撫でている。
ここは瓢箪湖の上の湖。湖の周りには誰も居らず動物等も動いている気配がない。また湖の中は透き通っているが水深が深いためか底までは見えそうにない。木々と大きな湖以外には非常に閑散としている場所だ。
そんな中、湖の周囲に一体の動く姿があった。その者はかなりの巨体で
「――あいつはここか…?森や湖は広すぎて厄介だ…。」
地獄の底から呼びかけているような低い声でその四脚の者はぼやく。ただ、そのぼやきは辟易している感じではなく、時間が掛かることに面倒さを感じる程度の軽いもののように見える。
どうやら誰かを探しているようだ。しかし、ここにはこの者以外に動く気配はない。探している相手がここにいるにしてはあまりにも気配が無さ過ぎる。
「おい…ここにいるんだろう…。さっさと出てこい…。」
そして四脚の者は湖に向かって誰かを呼び始める。その者が見ている方向には透き通っている湖しかない。やはり周囲には誰もいるようには見えない。
――だがその時、湖面に変化が現れる。
静かだった湖に突如流れが出来始める。その流れは段々と周囲の水を誘い込むように勢いが生まれ、更にその勢いが収束し渦を形成する。渦の中央が湖の下へ下へと伸びて行き、そして中央から声が聞こえてきた。
『――お前か…。よく来た『水』の四天王よ。我が
こちらも低い声だが非常に精悍な声をしている。加えて、その精悍な声の者は姿こそ見えないが若干楽し気な声色があった。その声の主は四脚の者――水の四天王を本当に歓迎しているようだ。
「ふん…。別にお前の為ではない…。俺はゴルベーザ様の御指示でこちらに来ているだけだ。勘違いするなよ…。」
『ふっ…ひねくれ者め。まぁいい、話は聞いている。なるほど、長は水の四天王をこちらへくれたのか。確かにお前ならばこの付近の調査にはうってつけだな。あの御方の慧眼にはいつも恐れ入る。』
関心したような声でその長なる者――ゴルベーザを讃えている。水の四天王と呼ばれる者もそれが当然だとでも言うように、首を縦に振って肯定をする。どうやらどちらもゴルベーザなる者に忠誠を誓っているようだ。
『しかし、私のところにお前が来てくれるのは助かるが、お前は王国でボクオーンの手助けをしていたのだろう…?国の要がいなくなっても問題はないのか…?』
声の主は目の前の四脚の者をとても心配そうな声色で聞いてきた。自身が讃える者の重荷になっていないかと考えているのかもしれない。
「クカカカカ…別に構わん…。そも俺が成り代わらずとも、あいつ一人でも十分に出来るものだ…。それに王の犬が尻尾を振りながら誰もいない部屋を頑張って守ってくれてるだろうよ…!」
邪悪な笑みを浮かべながら、今ここにはいない誰かを嘲笑っている。どうやらこの四脚の者は王国で何かをしているようだが、その態度からは周囲を見下している雰囲気が感じ取れる。
「まぁ、もう俺の役割は終わっている…。十分にあの国からは搾るだけ搾り尽くした…。残りは一時の夢の時間と搾りカスだけさ…。後はゴルベーザ様の名によって国を滅ぼすだけで終わり…あの御方は過去最高の『悪』として君臨するのさ…ヘェッヘッヘ…!」
『やれやれ…趣味の悪いことだ。しかし、これも長の『悪』には必要なことか…。』
その者の態度に呆れた声を出しながらも、その内容については一切否定はしなかった。まるでそうすることが当然であるかように言っている。
「そういうことだ…。おっと…そろそろ本題に入ろうか…。お前はここでゴルベーザ様が言っていたプレイヤーの情報を得られてはいないのか…?この付近はお前の
そう言って笑みを引っ込め話を促す。これがこの者達が集まった最大の理由なのだろう。この話題には声に真剣味を帯びている。
『それらしい姿を直接確認は取れなかったが、ただ一点だけ怪しい獣達がいた。この辺りでは見ない変わった獣数十体が最近この湖や森の中を徘徊しているようだ。もしかしたら何者かがこの森を調査しているのかもしれん。』
そして渦の中心から鏡のようなものが宙に浮き、その鏡から様々な獣の姿が映像で流れてくる。どうやら渦の声の者は相手の獣を記録していたようだ。
「むぅ…ゴルベーザ様の御推察はやはり合っていたようだなぁ…。おそらくこの森の中にスカルミリョーネと戦った奴らがいるんだろうよ…。」
何故だか声に苛立ちの感情が乗っているように聞こえる。足元に僅かに揺れている雑草を、首を下げてじっと見ながら何かを考えている。
『やはり同じ四天王がやられるのは我慢ならんか?』
その様子を見たのか渦から聞こえる声の者は少し心配そうに話しかける。
「…知るか。何しろあいつは四天王になれたのが不思議なくらい弱っちぃ奴だったからな…。少なくともあいつを倒した奴らに会ったら、俺はあいつみたいに無様なことはせんぞ…必ず殺してやる…!」
そっぽを向いて罵りながらも、傷付けられた仲間の仇を討つことに決意を固める。本当に素直な性格ではないらしい。
『ふっ…やはりお前は好ましい性格をしているよ。なに…
その性格を優し気に、そして素直に表現をする渦の声の者。こちらは皮肉こそするもののかなり素直な性格のようだ。
「けっ…まぁ、アテにしてやるよ…。それよりも俺はこの森の調査で怪しい場所を捜しに行く。俺の能力とゴルベーザ様から貸与していただいた物を使えば、見つからぬし逃げるのも容易だ。だが、相手が同郷の者であれば絶対ではない。お前には万が一に備えての戦力はあるのだろうな…?」
自分の能力に相当の自信があるようだが、かなり用心深いのか最悪の展開も考えているようだ。ただ力に自惚れた者とは違うのだろう。
『任せておけ。森で世界級アイテムの実験をしているあいつに取引をしてな。実験用の生贄を大量に送る代わりに、そいつらを使って私の魔物に世界級アイテムの力を施してもらった。ほら…感じるだろう?この湖の底からな…?』
―――ォォオオオオォォォォン…――
そう言うと周囲の風がざわめくように揺れ、湖全体が波紋を作るように波打つ。大地から染み出るように呻く声が拡散し、足元を僅かに震わせる。
『この瓢箪湖の上の湖ではこいつの力が溢れている。力が欲しくなったらこいつを使うがいい。』
「ほぉ…。確かにこいつは俺と相性が良さそうだ…。期待させてもらおうか…。では…俺はそろそろ行こう…時間が惜しい。」
話は終わりだとばかりに四脚の者は器用に踵を返し、湖から離れる。しかし、去り際に言い忘れていたことがあったのか首だけ振り返って呟くように話す。
「お前も何かがあれば俺を呼べ…。その時は俺が力を貸そう…。」
そう言って今度こそ四脚の者は離れて行った。
『ふっ…やはり素直では無いな。しかし、私とてここの支配者たる身。我が
同じく渦の声の者も離れるのを待った後、ゆっくりと水の流れが収まり閑散とした湖に戻っていった。
今回は入れる予定だったコーナーは無しにした。ちなみに入れる予定だったものは「ククク…奴は四天王の中でも最弱…」の元ネタについて。明らかに小説の雰囲気をぶっ壊すためボツとなった。知らない人がいればググってみるといい…多分この小説が一気にギャグになるから。