帝国魔将ゴルベーザ!   作:RIN

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長いプロローグが終わり遂に一話を迎えました。
プロローグの長さを越えてきた人はやっと本編だよ!ゆっくりしていってね!

今回の一言

「cv鹿賀○史さんでお送りしております。」byRIN


第1章 帝国魔将
開会式


――そこは今喧騒に溢れ、大勢の国民たちが今か今かと開会を待ち望んでいた。

 

 ここはバハルス帝国内の帝都アーウィンタール。今日は帝国の最高戦力と言われる帝国四騎士を公に決める武闘大会が開かれる日であった。

 

 この帝国四騎士は帝国内の通常の役職と違い、忠義や忠誠よりも強さのみを選定基準としている特殊な地位のことだ。そのため身分や出身は関係なく、一般市民や異国の者であっても強者であればその地位に就くことができる。地位を利用した謀反や裏切りに関しても、帝国では魔法のスペシャリストである逸脱者フールーダ・パラダインがいるため、そういった者は出ることはありえない。

 

 故に国を跨いでまでこの時期にはバハルス帝国に強者が集まりこの大会に参加をする。当然街は来訪者によって潤い、国にとっては軍備強化のためのスカウトもこの時行うため、まさに国全体を巻き込んだお祭り騒ぎである。

 

 

 そんな中、今年で20歳を迎えた皇子ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスも武闘大会の開かれるコロシアム皇族貴賓席で決意を固めていた。

 

(この武闘大会で選ばれる帝国四騎士をこちらの傘下に引き入れる…この武力を手にできれば私の念願はついに叶う…!)

 

 ジルクニフはこの大会を契機に権力を手に入れ、帝国全土を自身の手中におさめることを計画していた。権力の背景には武力の支えが必須であり、何を成すにしても武力は切っても切れない関係にある。またジルクニフの計画では強引な場面が必ず出てくるので、今大会の結果は自身の進退に大きな影響を与える。

 

「殿下。そんなに覇気を出していては御父君の者に勘付かれますぞ。もう少し抑えなさい。」

 

 そんな逸る気持ちが態度に出ていたのか、ジルクニフにとっては恩師と言えるフールーダに窘められた。

 

「すまない爺。だがどうしてもこの興奮が抑えられなくてね。」

 

「ご理解はできます。しかし今大会は根回しも済んでおります。結果が覆ることはありますまい。」

 

 フールーダの言葉にジルクニフは落ち着いたようにゆっくり頷く。帝国四騎士の大会は実力で上に上がれる大会ではあるが、実のところ元々権力を持たない実力者が権力を手に入れるのに使う一つの手段なのである。こちらで選りすぐった者達を全ての国民が納得する形で権力者の側につけるための大会なのだ。

 

 もちろん選りすぐった者たちが勝てなければ帝国四騎士にはなれないが、この大会で勝てないようであるならその実力もそこまでのため切り捨てても何ら問題はない。保険として多めに選りすぐればいいだけだ。

 

 今回は特に強い4人をこの大会に招集しており、勝ち残った場合はジルクニフに協力してくれるように根回しは完了していた。

 

「爺の言うことももっともだ。しかしこういった争いごとでは何が起こるかわからない。用心するに越したことはないよ。」

 

「そうですな。油断は禁物であることは間違いありません。ふむ…?そろそろ始まるようですぞ殿下。」

 

 軽く二人で話しているうちに開会式のファンファーレが鳴り響き、各選手が入場を始めた。選手が観客に向かって手を振り、観客もそれに熱を持って応えている。

 

 ジルクニフは顔を上げ選手の顔ぶれに招集した4人が来ているか確認した。バジウッド・ペシュメル、ニンブル・アーク・デイル・アノック、レイナース・ロックブルズ、ナザミ・エネック、それら4人を確認して見た感じには不調はなさそうであったのでジルクニフは安堵した。その緩んだ惰性のまま選手の列を眺めていると…一人変わった者が混じっていることに気が付いた。

 

 

―――その者は全身を意匠の施された漆黒の鎧で包んでいる巨漢で、黒いマントをはためかせながら最後列を歩いている。そんな重厚な鎧でありながら見たところ武器は持っておらず腕を組んで堂々としている。

 

 

「…爺。あの最後尾にいる黒い鎧の者は何者だ?」

 

「む…?黒い鎧の者とはいったい…?」

 

 呼ばれたフールーダは最初ジルクニフが言ったことが理解できないようだった。最後尾と言っていたことからフールーダがその場所を観察するように見た後、懐から出した指輪を装備してやっと気付いたようだった。

 

「あの者…認識阻害系魔法を使っております。しかもかなり高位の魔法と考えられます。私も認識解除の装備が無ければ気付きませんでした。」

 

「なんだとっ!?」

 

 ジルクニフが見えたのは装備によって認識阻害を解除するアクセサリーを元々持っているためだと思われるが、逸脱者であるフールーダ・パラダインですら気付かないほどの魔法詠唱者がいることに驚きを隠せなかった。

 

「…加えてあの者の魔力が一切感じ取れません。おそらく魔力を隠すアクセサリーの類を装備しております。」

 

 フールーダは彼自身の生まれながらの異能(タレント)によって他者の魔力オーラを可視化できる。誰でも大なり小なり魔力は持っているものだが、ジルクニフの言った最後列の鎧の男には魔力を一切感知できなかった。

 

「殿下…。この大会荒れるやもしれませんぞ。」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 選手の入場が終わりジルクニフからの開会の挨拶となった。ジルクニフとってはこういった演説には慣れており、定番と化した激励の言葉に抑揚を込めるだけの簡単なお仕事だ。

ただ今回は少しばかり演説にアドリブを入れる予定である。

 

(あの鎧の奴に探りを入れてみるか…。)

 

「勇敢な戦士たちよ!ようこそバハルス帝国自慢のコロシアムへ集った!私はこの国の皇子ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスである!」

 

 基本的にいつもの定型句と一緒だ。ジルクニフの声は観客と選手を巻き込み、その威厳に満ちたそれでいて心に入り込むような話し方で聞き手を魅了していく。そうしている間に演説は最後の言葉へと向かっていく。

 

「…そして勇敢な戦士たちよ!この帝国の中心で強者同志での華麗な活躍を期待している!」

 

 演説が終わり全体から拍手が流れる。そして拍手がある程度疎らになったところでジルクニフは切り出した。

 

「この後にこの大会のルールが説明される…だが…」

 

 ジルクニフは一旦ためてから改めて言った。

 

「その最後列にいる漆黒の鎧の者よ!ルールには抵触しないが隠れているのは戦士たちへの侮辱につながる!今すぐに正体を現せ!」

 

 観客・選手共にその内容に困惑しているのか会場がざわめきだした。そして…

 

 

 

「――…ふむ。この私に気付くとは…やるではないか。」

 

 

 

 …不意に会場内の空気が重くなった気がした。言い知れぬ不安感と重圧を感じ、困惑していたはずの会場内に声が聞こえなくなった。

 

 

「なっ…に…!?」

 

 ジルクニフもこの会場の空気に中てられ言葉を発することができない。

 

 

 漆黒の鎧の男が腕を組みながらこちらを見ている。周りの者もその膨大な気配に気が付いたのか鎧の男を見ている。どうやら認識阻害魔法を解いたようだ。

 

「言う通りに姿を現したが…そのように怯えられては話もできんな。」

 

 がっかりしたと言いたげなジェスチャーを行いながらジルクニフに向けて言葉を発する。

 

「この空気ではルール説明もままならぬまい…先に控室に戻っていることにしよう。」

 

 そう言ってマントを翻しコロシアム内から出ていこうとする。

 

「…待て!き、貴様!名を名乗れ!」

 

 我に返ったジルクニフが舐められまいと頭の中から咄嗟に出た質問をする。その質問に対し漆黒の男は振り返ることなく言い放った。

 

「その勇気に免じて答えよう。我が名はゴルベーザ…暗黒の魔道の使い手なり。」

 

 

 そう言い残し、漆黒の魔導士はこのコロシアム内を後にした。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

―INSIDE―

 

 

 

 

 

 

「その勇気に免じて答えよう。我が名はゴルベーザ…暗黒の魔道の使い手なり。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ぎゃー!!やめて!王子さんこっちを見ないで!!)

 

 

 

 

 

 

 

――実はこの暗黒魔導士の内心は冷や汗で既にいっぱいだった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 私がこの世界に来てから約半年ほどになった。最初はログアウトができない状況で半泣きになりながら取り乱したが、優秀な部下達のおかげで立て直し、優秀な部下達のおかげでこの世界の情報を入手し、優秀な部下達のおかげでこの世界の文字を覚え、優秀な部下達のおかげで今この場に立っている。

 

 そう…優秀な部下達が優秀すぎて優秀が部下達なのだ。(錯乱)

 

 正直に言うと今このコロシアムにいる理由もよくわかっていない。これも優秀な部下達が出した我がギルドのための戦略の一端らしい。ちなみに何の戦略か私にもよくわからない。

 

 だって考えてもみろよ!いきなりボス級のNPC達がそのゲームの設定通りに動き始めたんだぞ!中には本当に世界を牛耳ってしまったほどのラスボス級も含んでんだぞ!しかも私に絶対の忠誠を誓っていて、私が他愛もないような話をするだけで「流石ゴルベーザ様!」「我らのために…そこまで(感涙)」「全てはゴルベーザ様のために!」「ぶるわぁぁぁぁ!(感謝)」なんだぞ!こんな重すぎる忠誠受けてたら胃に穴が空くわ!

 

 …話がズレたようだが、とにかくこんな頭の良すぎる奴らの話に元事務職の女がついていけるわけがないのである。このコロシアムで何をすればいいねん…。

 

 とりあえず目立ちたくなかったからエントリーした後は《パーフェクト・インビシブル/完全不可視化》を使ってコロシアム内を後ろから見ていたが、まさかこの高位魔法が見破られるとは思わなかった。もしかしてユグドラシル外でのアイテムや能力でも使ったのだろうか?

 

 看破されたことに驚いてしまってついスキル<敵対者の波動(ボス・オーラ)>を発動してしまい、コロシアム内が静かになってしまった。うわ…やば。場を盛り上げてくれた王子さんの演説を無駄にしてしまった。

 

 しかし演説後に私のことを大声で言うからそんなことになったんだぞ!…とりあえず『私のせいじゃないよ』的な責任転嫁をしておこう。

 

「言う通りに姿を現したが…そのように怯えられては話もできんな。」

 

 私なかなかゲスいな。

 それでも流してしまった場は取り戻しようがないので無理な責任転嫁がバレる前にとにかくこの場を後にしよう!

 

「この空気ではルール説明もままならぬまい…先に控室に戻っていることにしよう。」

 

 バレテナーイ…バレテナーイ…

 

「…待て!き、貴様!名を名乗れ!」

 

 ばれましたー!ごめんね王子さん!会場駄目にしてごめんね!怒らないでね!

 ええい!とりあえずお茶を濁して撤退だ!コロシアムを出れば私の勝ちだ!私のロールプレイ力(ちから)を見せてやる!

 

「その勇気に免じて答えよう。我が名はゴルベーザ…暗黒の魔道の使い手なり。」

 

 かっこいい!私今かっこいい!流石ロールプレイ力!これぞ万能の力!

 でも後ろから王子さんの視線をひしひしと感じる!ぎゃー!!やめて!王子さんこっちを見ないで!!今すぐ出ていくからこの場は見逃してー!

 




<原作を知ろう!>
ゴルベーザ
出典:FF4(ファイナルファンタジー4)
容姿:黒い全身鎧を着た巨漢
○原作では?
FF4の主役ボス格。バロン王国を乗っ取り世界の力の源であるクリスタルの奪取を目的とする者。その手段は狡猾で人質や洗脳、部下を使った暗殺など多岐に渡る。しかし実際はゴルベーザ自身も操られており、本来の性格は自身に厳しく身内に最大の優しさを持って接する家族思い。最後はラスボスにも戦いを挑み、クリスタルを制御できず敗北するも生存。その後は別作品で味方として登場し、唯一の弟を助けに向かう。得意系統は黒魔術(攻撃魔法)全般でその中でもサンダー関連が得意。ちなみに本当の名前はセオドール。
○この小説中では?
それっぽいロールプレイなので魔法は手加減しながら様々使います。また戦闘はDFF参考。きっと今話ではBGM『黒い甲冑のゴルベーザ』がジルクニフSIDEで流れてくるに違いない。

オーバーロード側の設定は基本分かるものとして説明はしません。原作を買ってね。一応分かりにくいところだけヒントを。アインズ様が転移した時のジルクニフ君の年齢は22歳です。

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