視点移動が結構あるよ。果たしてジル君は野望を達成できるのか!(ゲス顔)
今回の一言
「きっとこのシーンではBGM『ゴルベーザ四天王との戦い』が流れるに違いない!」byRIN
謎の魔導士ゴルベーザがコロシアム上からいなくなり、会場の異様な空気のままルール説明が行われた。
今回のルールはバトルロワイヤル方式で参加者全員でコロシアムで戦い最後に残った4人が帝国四騎士として認められるという豪快なものだった。
このルールはジルクニフが選りすぐった4人に協力して勝たせるための半ば出来レースにするためのルールだった。他にも同じようなことを考えている輩もいるだろうが、この4人ほどの熟達した者達を選出できないだろう。
ルール説明が終わり、次の準備時間中にジルクニフは先ほどのゴルベーザについて考えていた。
(エントリー確認では確かに名前があった。正規の参加者には違いないがあのような格好をした魔法詠唱者の話など聞いたことがない。もしかしたら法国からのスパイだろうか…だがスパイにしてはあからさますぎる。いや最初は姿を隠していたからありえないことはないのか…。)
どうもゴルベーザの素性がはっきりと見えてこない。ああいった強烈な個性を持つ者であればどこかしらから素性は露見しやすいものだが、それらしい噂を聞いたことがない。細作からも一切の情報がなく、いきなり現れたといってもよい。
「爺よ。あのゴルベーザについて知っていることはあるか?…爺?」
ここは最高の魔法詠唱者であるフールーダに話を聞いてみようとジルクニフは話しかけるがフールーダは何か考え事をしているのか黙ったままである。
そしてジルクニフが何度か呼び掛けてやっと気付いたようであった。
「…殿下。申し訳ございません。少々考えに没頭しておりました。私もあのゴルベーザというものは聞いたことがありませぬ。」
「…そうか。」
先ほどの考えていることは気になるものの、フールーダでわからぬようであれば、素性を探っても出てくるものはないだろう。
「ですがもしかしたら戦っている間に何かしらわかることがあるやもしれませぬ。しばらく泳がせてみるのはいかがですかな?」
「…そうせざるを得ないだろうな。」
現状では正規の参加者である。計画のために無理矢理失格をさせることもできるが、ジルクニフは漆黒の鎧の者への素性を探ることを優先した。
――この選択が帝国の運命を変えるとは知らずに。
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控室では各選手が体をほぐしたり、武器を点検したり、精神統一などをして思い思いに戦いへ備えている。
そんな中、大柄の体格に似合った大剣を持ちながらもそれを片手で持ち上げ悠々としている男―バジウッド・ペシュメルが顔の半分を髪で隠した女性に話しかけていた。
「あんたも皇帝に呼ばれてここにきた口かい?」
話しかけられた女性―レイナース・ロックブルズはやる気のないかのように答えた。
「ええそうよ…不本意ながらね。というかまだあの方は皇子でしょうに…。」
「がははは!近々そうなるんだから変わりゃしねぇよ!」
豪快にバジウッドは笑いながらトゲのあるレイナースの言葉を流している。
「おやおや?こんなところで大声で話しているのは誰ですか?周りに誰かがいたら聞かれてしまいますよ。私たちみたいにね。」
「その話俺たちにも噛ませてもらおうか…。」
そう言いながら近づいてきたのは金髪碧眼の端麗な容姿を持った細身の男―ニンブル・アーク・ディル・アノックと形の違う二つの盾を持った巨漢―ナザミ・エネックであった。
「噛ませるも何ももう決まった話じゃねぇか!仲良くやっていこうぜ!」
「あまり大きな声で話す話ではない…。もう少し気を付けたほうが良い…。」
豪快に笑うバジウッドをナザミが窘める。
「レイナース殿ももう少しやる気を出したらいかがか?皇子に恩義のある身なのだろう?」
「恩義があるからここに来てるんです。やる気はなくてもやることはやるわ。」
ニンブルもレイナース話しかけるが、レイナースはやる気のなさを隠そうともせず舌打ちをしながら返事をしていた。
この4人はジルクニフが自ら見つけ出した者達であり、今大会で帝国四騎士になるように仕向けられている。顔を合わせるのは今回が初めてだが、協力する分には一流の戦士である彼らには問題にならない。
また彼らは何かしらジルクニフに対して恩義を抱いており、帝国四騎士になった暁にはジルクニフの革命に協力することを約束している。
あとはこのレールの敷かれている大会に勝つだけなのだが、今回は懸念事項があった。――それは先ほどの漆黒の鎧を纏ったゴルベーザという者についてだ。
「さっきのゴルベーザとかいう奴は皇子さんが手配した奴なのか?俺は聞いてねんだけどなぁ…。」
「いいえ…多分違うでしょう。おそらくあれは今大会の
「それで…どうする?先に潰すか…?」
「私としては…関わりたくはないわね。まずは別の奴をぶつけて様子見をしたほうがいいんじゃないかしら。」
全員があのコロシアム内で発した重圧を思い出していた。一流の戦士である彼らから見ても、彼の者は只者ではないと警告を発していた。しかしここにいる以上はなんとしても勝たねばならない。そうしなければそれぞれが達したい願いまで届かないからだ。
「そうですね…まずは雑魚を間引きながら奴の出方を観察しましょう。戦い方がわかればここにいる誰かで弱点も突けるでしょう。」
バジウッドは近距離主体のバランス型、レイナースは攻撃重視の火力型、ナザミはシールドを使った防御型、ニンブルは速さと手数を中心とした回避型とそれぞれの得意分野が違うため、付け入る隙があればそこから有利にことを運ぶことができる。まずは見に回り相手の出方を見ることで話は決まった。
「コロシアムの準備が整いました!皆様コロシアム内へ移動をお願いします!」
係官からの声で控室にいた全員が移動を開始した。
――――――――――――――――――――――――――――――
広く見晴らしの良いコロシアム内では各選手が定位置にて待機をしていた。ジルクニフらが選りすぐった4人は東西南北に一人ずつ、今大会で注目を浴びているゴルベーザは中央付近に腕を組んで待機していた。
そして皇族貴賓席からジルクニフが宣言を行った。
「ではこれより帝国四騎士選抜大会を開始する!始めっ!」
銅鑼の音が大きく鳴り響き各選手が動き始めた。
「ほらほら!もっと強い奴はいないのか!かかってこいや!」
バジウッドはゆっくりとした動作で歩き始め、襲ってきた敵に対しカウンターで沈めていく。バジウッドの持っている剣が攻撃するときには閃光のように動き、瞬きをする間に敵が倒れている。
「どこを見ているのですか?こちらですよ?」
ニンブルは逆に忙しなく動き、相手の腱や手首などに攻撃を加え相手を戦闘不能にしていく。あまりの速さに選手の目が追い付かず、気付いた時には攻撃されて倒れているのだ。
「はぁ…面倒なのでまとめていきますよ。」
レイナースは集団でいる場所に突っ込み槍を振るう。そうするとその先で爆発を引き起こし一気に4,5人ほどが同時に戦闘不能になっていく。他選手が協力して集団で取り囲もうとするも地面に槍を刺すだけで周囲に同様の爆発が起こり手に負えないようだ。
「どうした…。もっと攻撃してもかまわんぞ…?」
ナザミは基本的に動かず襲ってくる敵を盾で返り討ちにしていた。攻撃してきた相手の武器を盾で弾き、もう一方の盾で無防備の相手を殴っていく。そして周囲に誰もいなくなったら移動をして獲物を探し行くという動く要塞のようであった。
そして中央にいたゴルベーザは…その場から動いていない。腕を組んだままずっと立ち尽くしている。
――しかしその動いていないゴルベーザの周りでは何人もの選手が倒れ伏していた。
別選手がゴルベーザへ攻撃を加えようと走り出すと、突然選手が武器を落とし地面に倒れ伏す。さきほどからその繰り返しであった。倒れ伏した選手にはどうやら意識はあるようだが、言葉を発するのすら難しいのか呻き声しか聞こえない。また遠距離攻撃を魔法や弓矢で加える選手もいたが、ゴルベーザへ届く前にすべて地面に吸い込まれてしまう。まるでゴルベーザの周囲に見えない何かが張り付いているようだった。
それでも諦めずに、今度は人数を集めて、ゴルベーザに遠距離攻撃の嵐を加えていたが…
「虫けらどもが…身の程を知るがいい。」
周りに倒れ伏していた選手や武器が突然空中に持ち上がり、攻撃していた者たちに一直線に飛んできたのである。一人数十キロもある人間や重量のある武器が勢いよく当たればただでは済まない。
ゴルベーザの周囲にはさらに呻き声を上げる選手が増えてしまったのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――
「なんだ?あれは何をしているんだ爺?」
皇族貴賓席にいるジルクニフは鎧の男の奇妙な魔法についてフールーダに問いかけた。しかし…
「ま、まさか…ありえるのだろうか…だがあの魔法は…」
フールーダは困惑を抑えきれないように声を出しながら狼狽えていた。
「…爺?爺!?どうした!あいつが何をやっているのかわかるのか!」
ここまで狼狽えているフールーダを見るのは初めてであった。魔法においてフールーダが知らないことはないと思っているほどにはジルクニフはフールーダを信頼していた。その魔法の師とも言えるフールーダが狼狽えるなどただ事ではないと考えた。
しばらくして少し落ち着いたのかフールーダは自身の推論を述べた。
「…もしやあれは古に聞く第9位階魔法《パーフェクト・グラビティ・コントロール/完全重力操作》やもしれませぬ。もちろん《リヴァース・グラビティ/重力反転》などの類似魔法があるので絶対とはいえませんが、放出している魔力が桁違いです。」
「第9位階魔法だと…!?」
人類が個人で到達できるのは第6位階魔法が限界であり、その体現者がこの逸脱者フールーダ・パラダインである。儀式を用いても最大で第8位階と考えると第9位階とは人類では到達できない未知の領域である。
「次に別の魔法を使えばわかると思いますが…もしその時が高位の魔法であったのならば…あの御方は私よりも優れた逸脱者であると思われます。」
フールーダ・パラダインは静かに推論を終えた。
――――――――――――――――――――――――――――――
コロシアムでの戦いもついに終盤を迎えた。今闘技場に残っているのは…
バジウッド・ペシュメル
ニンブル・アーク・デイル・アノック
レイナース・ロックブルズ
ナザミ・エネック
そしてゴルベーザの5人だけであった。
あと一人この場から退場するだけで帝国四騎士が決まる。卑怯にも4人で1人を攻撃するのか、はたまた正々堂々の激戦の果てに1人が倒れてしまうのか、観客は固唾を飲んで見守っていた。
その中でゴルベーザが周囲に向けて言葉を発した。
「さて…誰か私と与するものはいるかね?ここではっきりと示してもらおうか?」
そのままの意味で捉えるならゴルベーザと共闘するか否かを周りに問いかけているようだが…。
(どうやらこちらが4人で協力しているのを見破っているようですね…。)
(随分と回りくどい嫌味を言う野郎だな!)
(この男…私たち4人を敵に回しても問題はないってことかしら。)
(その驕り高く付くぞ…!)
この問いは明らかに4人が共闘していることに対する皮肉であった。
徐にゴルベーザを除く4人が1か所に集まり…そしてゴルベーザに対して戦闘態勢をとった。
「すまないが貴殿とは帝国四騎士で一緒に働けそうにない…ここで落ちてもらう。」
「はっきりと示してやったぜ鎧野郎。死なない程度にぶちのめしてやるぜ!」
「他人の綺麗な顔は嫌いだけど、素顔を晒さない人はもっと嫌いなの。」
「我ら4人と戦って無事でいられると思うな…。」
この選択に観客は大いに盛り上がった。普通であれば4対1など騎士として卑怯としか思わないが、相手はあの謎の魔法詠唱者ゴルベーザである。明らかに普通ではない魔法とその外見も相まって、まるで勇者vs魔王といった構図になっている。
「ふむ…それが貴殿らの選択か。では勇敢なる戦士たちよ…その若さを武器に挑むがいい。」
ゴルベーザはどうやら本気を出したのかその場で浮き上がり空中で静止したまま言葉で挑発を掛けてきた。ここに魔王討伐の試合が始まったのだった。
「どっちが若いかその身にわからせてやるぜ!」
「参るぞ…!」
まずはバジウッドとナザミが駆け出し先制を取りに向かった。試合中もゴルベーザの動きは見ていたもののそのカラクリが見破れなかったため、まずは防御の高い2人が先行することとした。しかし…
「うおっ!?なんだ体が重い…!」
「馬鹿な…!?」
ゴルベーザの半径5m付近で急激に体が重くなり、武器がまるで巨大な鉄塊のように重量が上がったのだ。
しかしそれでも2人はその勢いのままゴルベーザに攻撃を叩き込む。
「ほう…!この重力の網を抜けてくるとは…やるではないか!」
ゴルベーザは難なくその攻撃を避け、さらに両手で虚空を掴む動作を行った。するとバジウッドとナザミの身体が持ち上がり身動きが取れなくなる。必死にもがくがそのゴルベーザの手から逃れることができない。
そのままゴルベーザは左右に手を振りぬくとバジウットとナザミがそれに合わせて左右に吹き飛び、そのままコロシアムの壁に激突した。
「《ライトニング/電撃》!」
「《エクスプロージョン/爆裂》!」
ニンブルはその速さでゴルベーザの後方に回り込み最速で魔法を放つ。レイナースは槍の力を利用し、高位魔法である《エクスプロージョン/爆裂》を解き放った。
この世界で第3位階以上の魔法は十分に人を死に至らしめる魔法であり、それらの直撃を食らえばただでは済まない。しかし…
「ふん…!」
ゴルベーザはマントを周囲に翻し、なんと魔法そのものを打ち消したのだった。
「なっ…!?」
「うそでしょ…!?」
「それではお返しと行こうか…《ドラゴン・ライトニング/龍雷》!《エクスプロード/破裂》!」
この瞬間、2人の戦士の勘が警告を鳴らした。ニンブルは持ち前の反射神経で全力で横に回避を行い、レイナースは直感で槍を手放した。直後ニンブルの身体をかすめるように電撃が通り過ぎて地面を焦がし、レイナースの槍が突如爆発を起こし周囲に破片が拡散する。
ニンブルは電撃の一部を受けたのかその場で動けなくなり、レイナースは拡散した破片でところどころ血を流していた。
―――それは圧倒的であった。4人で挑んでいるにも関わらず誰一人としてゴルベーザにダメージを与えられないのだ。
(はは…おかしいだろこいつ…手が震えてやがるぜ…。)
(上位の魔法か…?私の電撃より遥かに威力が高い…。)
(俺の防御すら意味を成さない相手とは…どう立ち回ればいい…?)
(私の武器が…かなり厳しくなるわね…。)
既に満身創痍な4人は心が折れそうになりながらも立ち上がりコロシアムへ戻る。立ち位置はゴルベーザを中心に4人が囲い込んでいる状態だ。
あまりの一方的な試合に言葉が出ないのか会場は静まり返っている。そんな中ゴルベーザは立ち上がった4人に対して感心したように頷いている。
「苦境でも覇気を保つか。その折れぬ心に感服するが…そろそろ決着と行こうか《
ゴルベーザは魔法を詠唱した。
――――――――――――――――――――――――――――――
ジルクニフはこのコロシアム内で何が起きているのか理解できなかった…いや理解したくなかった。ジルクニフ自らが見つけ出した4人は、冒険者に例えるなら、オリハルコン級かそれ以上のアダマンタイト級のレベルは確実に有していた。
しかしこのコロシアム内ではその4人が集まっても、1人の魔法詠唱者に赤子の手をひねるくらい簡単にいなされている。
もし4人が倒された場合、計画上はこの後にあの魔法詠唱者と話し、ジルクニフに付いてくれるように説得しなければならないのだ。当然ジルクニフにとっては悪夢の何物でもなかった。
(待て待て…!落ち着くんだジルよ!そう…そうだ!あいつの欲しそうなものを与えればいい!欲を刺激し御するのは自分の十八番ではないか!慌てる必要はない!…しかしほしいものが皇帝の地位だったらどうする?俺はそれを駄目と言えるのか?いや待てよ?皇帝を暗殺するなら考えてやらんでもないと話をし殺してもらった後に突き落とすというのは…待て待て!待つんだジルよ!あいつを殺せる奴がいまの自分の手駒にいるのか!?いま欲しい武力関連の4人が既にボロボロなんだぞ!くそっ!武力が欲しくてなんで武力に殺されなきゃいけないんだ!だったらフールーダだ!フールーダに全てを任せよう!爺ならあいつを御してくれるはず!フールーダはどこに…)
混乱の極致にいるジルクニフをきっと救ってくれるフールーダにジルクニフは視線を当ててみると。
「な、な、な、なんということだ…!」
そこには滂沱の涙を流しながら座り込む一人の老人がいた。
「あれこそ…魔法を極めし者の姿…いやあの御方こそが神か…」
その老人は今しがた詠唱された魔法を見て何かを悟ったようだ。
「殿下…いやジルよ。この魔法は最後まで見なさい。あれがこの世に顕現した神の魔法じゃ。」
その言葉を聞いたジルクニフは思った――ああ…終わった…と。
――――――――――――――――――――――――――――――
ゴルベーザの魔法が詠唱され4人は身構えるが、詠唱後に現れたのは4つの色の違う宝石だった。小さな宝石たちはまるで付き従うかのようにゴルベーザの周囲を回っている。
(なんだあの宝石は…こけおどしか?)
(決着をつけると言っていたことから何かの攻撃系だと思われるのですが…)
(油断はできないけれど、まるで吸い込まれそうな宝石ね…)
(わからない…。何を狙っているんだ…?)
そして周囲を回っていたそれぞれの宝石が4人の方向に止まった。赤の宝石はナザミ、青の宝石はバジウッド、緑の宝石はレイナース、黄の宝石はニンブルに向かっている。
「これがクリスタルの力だ。勇者諸君…耐えて見せよ!!」
その言葉と共にそれぞれの宝石が砕け散り、理不尽という名の蹂躙が始まった。
赤の宝石が砕け出てきたのは大量の炎。煉獄が如き炎の壁がナザミに迫りくる。盾で防ぐがその盾も炎に耐え切れず溶けていく。装備が足元から燃え始め、腕ももう感覚がなく炭化が始まっていた。もう自身の身体に何が起こっているかもわからず気力のみで立っていた。
青の宝石が砕け出てきたのは大量の冷気。激痛を訴えるほどの冷気がバジウッドを襲う。冷気を浴びて手の感覚が無くなり剣を落とした。手足の指先から血が通わずそれが段々と身体の中央まで駆けていく。もう抵抗も出来ぬほど体力を奪われ恐怖すら感じなくなっていた。
緑の宝石が砕け出てきたのは大量の風。嵐の中に投げ込まれたかのような暴風がレイナースを包み込む。風の圧力で腕や足があらぬ方向に曲がる。鎧も意味を成さず風の暴力でへこみ続ける。既に身体に力すら入らずただただ風の中に飲み込まれていた。
黄の宝石が砕け出てきたのは大量の礫。天地がひっくり返ったように割れた足元から礫がニンブルに飛来する。地面が割れた衝撃で足は使い物にならない。大小様々な岩石が自身の身体を叩いており、重力がどこに向いているかも認識できない。岩石たちが飽きるまでその身体は遊ばれ続けるのだった。
観客たちは恐怖で声が出ない。先ほどまで見ていた見晴らしの良いコロシアムがいきなり地獄に変わったのだ。ゴルベーザの周囲を除いて地形の変わっていないところがない。その中にいた人物がどうなったかなど観客は恐ろしくて見ていられなかった。
しかしそんな中ゴルベーザは冷静に状況を見ていた。
「…ふむ、素晴らしい。この私の魔法に耐えたか。流石に意識はないようだが生きているだけでも称賛に値する。」
そう…全員瀕死ではあるが生きていた。腕や足を失いながらも急所だけは守っており命を長らえていた。…しかし明らかに時間の問題であり、どんな魔法詠唱者でも治せそうにないほどの重症であった。
「見事耐えて見せた褒美だ。さぁ…回復してやろう!《
コロシアム内を幻想的な光が駆け抜けていく。同時にその光を受けた4人は手足が繋がり、さらに傷や火傷、凍傷、打撲痕も全て消え、元の状態へ戻っていった。
傷のなくなった4人はまだ気絶をしたままだが規則正しく息をしており生きているようだ。
「さて…私が勝ち残ったが、この場合はどうなるのかね?」
ナザミさんだけよく分からなかったので想像補完。
また主人公の魔法がオリジナルばっかりです。作者の力が足りず誠に申し訳ない。
主人公は今話で重力・クリスタル・回復をオリジナルとしています。