夜も寝ないで昼寝して書きました。
レイナースさんのお話です。
今回の一言
「『しょうきにもどった』という言葉ほど信用できない言葉は無い。」byRIN
――レイナースSIDE――
――私は私の生き方に誇りを持っていた。
私は御伽噺に出てくる勇者とお姫様に憧れていた。どんな敵も剣や魔法でやっつけ人々に平和をもたらす勇者とお淑やかで敵に攫われてからも人々を思い続けてるお姫様。
所詮架空の物語ではあるもののその生き方と在り方に憧れを抱く気持ちは本物だった。全く同じまでは行かないまでもそれに近づけることはできるはずだと思っていた。
ロックブルズ家に生まれてからは勇者に近づけるようにと厳しい武芸の鍛錬を行い、お姫様に近づけるようにと知識と教養を身に着けることを欠かさなかった。
元々持っていた才能・容姿とその努力のおかげか、私は所領内の魔物を一人で倒すことが出来るくらい強くなり、良き縁談に恵まれ将来を約束された順風満帆な人生を送っていた。
――しかしそれはただの幻想だったと思い知らされた。
私は所領内の魔物の討伐中、見たこともない魔物と出くわし戦闘になった。非常に強く長時間の戦闘を強いられたものの自身の槍でとどめを刺すことが出来た。…しかし問題はそのあとだった。なんとその魔物が死に際に呪いを放ってきたのだ。
私は長時間の戦闘の疲労で躱すことが出来ず、顔の右側にその呪いを受けてしまった。呪いによって私の顔の右半分は膿を分泌する醜いものへと変貌した。
そこからは世間体を気にした実家から追放され、婚約者との婚約も破棄され、転げ落ちるかのように全てを失ってしまった。
その時に気が付いたのだ。私の価値は私自身の行いには無かったのだと。勇者のように魔物を倒しても醜い私には石を投げられ、お姫様のように人々を思い続けても醜い私には全てを裏切られ続ける。
勇者やお姫様は格好よく容姿も端正なものだった。御伽噺では醜い存在は悪として描かれ、勇者やお姫様はきれいなものであり、その中には醜い顔の存在はいなかった。
私の価値はロックブルズ家で生まれた端正な容姿だけしかなかったのである。醜い顔になってしまった私には価値はなく、それ以外の技能や努力などおまけでしかなかったのだ。
もしかしたら人間にとっての勇者やお姫様にも端正が容姿が無ければ価値はなかったのではないかと思った。もしかしたら人間にとっての悪の中にも醜いが故に追放された存在がいるのではないかとも思った。
――そして私は歪んでしまった。
綺麗な容姿を見ると嫉妬心が膨れ上がり、それらから何を言われても顔だけの人間のくせにとしか思わなくなった。どうせこいつらは顔が醜くなれば私のように転がり落ちる存在である。流石に手を出したことはないがいつも心の中ではぐちゃぐちゃにしてやりたいと思っている。
私はこの顔の呪いを治すために人生の全てを掛けている。私の顔を治すためなら何だってする。それが治すために必要であるなら、犯罪だってするし殺しも躊躇わない。
そして私の顔が治ったら…そうね…色々やりたいことはあるけど…まずは結婚がしたいわ。相手は容姿に関係なく私を愛してくれる人なら誰でもいいけど…もし私の顔を治してくれた人が男性だったらその人がいいわ。
結婚でなくても少なくとも治してくれたその人のために何かをしてあげたいと思う。流石の私でも感謝を忘れるほどの外道になったつもりはない。
――いつか私の顔が治ったなら…。
私はいつもその想像をする。きっとそうなったら私は…
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…何かの水の音が聞こえる。つんと少し刺激のある匂いを感じ、私は目を覚ました。
周りは狭く白いカーテンに覆われており、私はその中央にあるベッドに寝かされていたようだ。ベッド横には薬のような粉末や水桶が置かれており、カーテンに仕切られた奥で誰かが何かを洗っていた。
――どうやらここは医務室のようだ。はて…私はなぜこんな場所にいるのか…?
私の身体を見てみるとどうやら着替えさせられたのか白い病院服を着ている。見た感じ身体には外傷らしきものはなく全てが正常に感じられた。
そして上半身を起こし奥の床に何かが落ちていることに気が付いた。それは私がいつも着ていた鎧だった。
しかしその鎧はいつも見慣れていなければ鎧だと気付けないほどに変形をしていた。これはジルクニフ殿下に頼んでオーダーメイドをしてもらった逸品だ。私以外にはこれを着ることはできないはずだ。
――では
――ふむ…それが貴殿らの選択か。では勇敢なる戦士たちよ…その若さを武器に挑むがいい。
「あ…」
――それではお返しと行こうか…《ドラゴン・ライトニング/龍雷》!《エクスプロード/破裂》!
「ああ…あ…」
――これがクリスタルの力だ。勇者諸君…耐えて見せよ!!
「あああああああああああぁぁぁ!!!」
――緑の宝石が砕け出てきたのは大量の風。嵐の中に投げ込まれたかのような暴風がレイナースを包み込む。風の圧力で腕や足があらぬ方向に曲がる。鎧も意味を成さず風の暴力でへこみ続ける。既に身体に力すら入らずただただ風の中に飲み込まれていた。
「風…風がああ!わたしの…からだ…おれて…まがって…!死…死…!やめ…!あひ…あふははは…!あははははははは!」
「だ、大丈夫ですか!!レイナース様しっかりして下さい!!」
看護師の女性に揺すられて、わたしはしょうきにもどった。
「はぁ…はぁ…大丈夫…落ち着いたわ。」
看護師の女性がホッとしたように胸をなでおろす。
――そうだ思い出した。私はゴル…
「すまない…あのあと何があったか教えて…」
看護師の話によると他の3人も同じくあの魔法でやられており、全員が戦闘不能になったそうだが、
またそのあとジルクニフ殿下から私たちを帝国四騎士として認め、
ははは…帝国魔将だと?あの御方がその程度だと?ありえない…ありえないわ!あの魔法の奔流と威力!絶対なる力とカリスマ溢れた御言葉の数々!そう…あの方こそ皇帝であるべき人物だわ!あの御方に逆らえる者なんているわけがない!逆らったら…さからったら…あはははは…!
「それにしても回復されてよかったですね!
お綺麗な顔?こいつは喧嘩でも売っているのかしら?ああ…そうか私の顔に同情してくれているのね。お世辞でも言って良いことと悪いことはあるものよ。でもそろそろ膿の処理をしなければまずいわね。
そして自分の顔の状態を確認するために醜い自分の顔の右側に手を伸ばした。
―――手には柔らかい感触…まるで
あ…れ…?右と左でも間違えたのかしら…?あのごつごつとした腐った感触が全くない…?はぁ!?えっ!?
慌てて両手を使って自分の顔をしきりに撫でさするが違和感が全くない。いや、違和感が全くないことが違和感ではあるのだが…。
髪をかき上げ、近くの水桶で自分の顔を目視で確認する。乱暴に掴んだせいか水面は揺れなかなか自分の姿を映さない。そして水面が落ち着き自分の顔が映し出される。
―――そこには私の知っているものより少し成長した…正常な顔の右側があった。
「わた…わたしのかおが…ある…!―――…!」
揺らしてもいないのに水面は少しだけ揺れ、また自分の顔が見えなくなった。
<原作を知ろう!>
おれは しょうきに もどった!
出典:FF4
使用者:竜騎士カイン
竜騎士カインがゴルベーザの洗脳により主人公パーティを裏切った後、洗脳が解けてまた主人公の仲間になったが、再度ゴルベーザに再会した際に主人公が心配して声を掛けた時にカインが言ったセリフ。この言葉だけ見ると決意の言葉のように見えるが、このセリフの直後に主人公を腹パンしてクリスタルを奪うという暴挙に出る。初見の人はまさか2度目の裏切りがあるとは思わず、カインの戦力をあてにしていたプレイヤーは装備をそのまま持っていかれ涙する者が多い。またカインの存在が重要な後のバルバリシア戦でも同じようなセリフを言うため3度目を身構えたプレイヤーも多い。まさにこいつの正気を信用できない迷台詞である。