ルパンレンジャー、シンフォギア、ニンニンジャーと戦って数日が経った。
バンは多次元学園の屋上で缶ジュースを片手に空を眺めていた。
「はぁ、俺たちは何のために戦ってきたんだよ…」
ため息交じりでバンはつぶやく。
この数日間、バンは前の戦いのこととドリィの転生者を更生したことを思い返していた。
バンたちパトレンジャーは特典が暴走したり、悪事を働く転生者を更生するのが主な目的である。
それがこれ以上周りに被害を出さないための方法でもある上、転生者は記憶と特典を消した上で普通の人間として別の世界に転送し生活してもらうための方法でもあるのだ。
それに対して怪盗たちルパンレンジャーは、更生ではなく、懺悔の名の下で転生者から特典を奪い記憶もある上その世界に留まらせ一生を過ごさせることを目的であると考えられる。
間違いではないと考えるが、バンはルパンレンジャーのやり方をあまり快く思わない。
転生者から特典を奪うことで普通の人間に変えるまでは良い、だが問題があった。
確かにルパンレンジャーのやり方は間違いではないし、罪を償わせるという意味合いでは共感するが、相手は転生者だ。
特典を持ったうれしさで世界を支配しよう、本来の主人公を蹴落とし自分だけのハーレムを作ろう、その世界で自分は最強の存在になろうとする輩が多い。
そんな輩は世界を敵に回す者も多いため、やりたい放題した後で特典を奪われただの人間になると必ずその付けが来る。
その付けを払うのに人生をどれだけ費やすか、いやそれ以前に付けを全て払いきるまで社会的、精神的、肉体的破滅が待ち受けているのかもしれない。
なぜ自分はあんなことをしたのか、どうして自分はこんな目に遭わなきゃいけないのか。
そんなことを後悔しながら十字架を背負うことになるのは間違いない。
それは意図せずとも、特典を暴走させてしまった転生者も同じである。
自分の意思でやったことではないとはいえ、特典で大勢の人を傷つけた。
それだけで罪悪感に苛まれることだってある。
仮にその騒動が治まったとしても、次に待ち受けるのはマスコミなどからの捜索だ。
騒動で顔が割れていたら、雑誌や新聞でも自分が大勢の人を傷つけた怪物として取り上げられることになる。
それだけで、今までの近所や友人、家族の付き合いもガラッと変わってしまうこともある。
それも悪い方向に。
だから、それを防ぐことも兼ねての更生をバンたちは行っている。
だが今回の戦いは違った。
あの暴れていた女性から特典の反応があった。
だからその女性による被害が広がる前に、その女性が今後人生を狂わされることのないようにしようと更生に向かった。
しかし、怪盗から女性を引き離そうとしたときに女性の知り合いらしき少女がシンフォギアを纏って割って入り、怪盗と女性を連れてビルの屋上へと飛んだ。
その時に少女が一瞬だけバンたちを敵意のある目で睨み付けた。
もしかしたら、ドリィの転生者の時も身内か友人が来ていたらあの少女と同じように敵意を向けていたのかもしれない。
だからバンは悩んでる。
自分達パトレンジャーがやって来たことは正しかったのかと。
「…俺達の更正は、誰かを苦しめるためだってのか?
だったら何のために転生者と戦ってきたんだよ…!」
バンは怒りの余りに缶ジュースを握りつぶす。
それほどまでに今回は動揺が隠せずにいた。
「おや、この学園に警察の戦隊がいると聞いたのだが君のことかな?」
ふと、後ろから男の声が聞こえた。
「あ?」
バンは苛立ちを隠しきれないまま振り返ると、犬の頭をした、警官のようなコートを羽織った男が立っていた。
「誰だてめぇ」
「そう警戒するな。
俺はドギー・クルーガー、宇宙警察地球署の署長だ。
デカレンジャー、と言えばわかるかな?」
「へぇ、てことは俺らの先輩の警察だな。
俺はバン、あんたの言う通り警察戦隊の一員だ。
それで、その先輩が俺に何のようだ?」
「なに、転生者を取り締まる警察戦隊がいると聞いたので顔を見に来たまでだ。
とは言っても、今の君は何か悩んでるように見えるが?」
「だったらなんだ?
あんたに何がわかるってんだよ」
「いや何もわからないさ。
だから聞かせてもらえないか?
警察のよしみとしてな」
「ちっ、わぁーたよ」
バンはドギーに悩みを話した。
「うむ、君たちは転生者の更生の下で記憶と特典を消し別の世界に転送、そしてルパンレンジャーを名乗る怪盗は懺悔の下に特典を奪いただの人間に変えてその後の人生を歩ませる、か。
確かに、君たちのやることは間違いとは言えないし、かといって怪盗のやり方も間違いとは言い切れないな」
「あぁ、けどよ。
前の戦いでその怪盗と戦った時に暴走した転生者を巡って戦った時に、そいつを引き離そうと怪盗に攻撃しようとしたらシンフォギアってやつの女が現れるわ、しかもそいつから敵意を向けられるわでわけわかんなくなっちまったんだよ」
「というと?」
「そいつは転生者の知り合いらしいんだよ。
だから思っちまうんだよ、俺たちのやっていることは間違いなのかってな。
今回だけじゃねぇ、ドリィの転生者もそんなことになっていたかもしれないんだよ!
そいつにも身内やダチがいて、もしそいつらが更生を止めに入ってきたら間違いなく俺らが悪者扱いされちまうって思っちまうんだよ!」
バンは思わず頭を抱えながら支離滅裂に語る。
それは罪悪感でもあり後悔でもある。
だから自分たちパトレンジャーのやってきたことは間違ってたんじゃないのかと考えてしまった。
だが、ドギーは落ち着いた表情でバンの肩を叩く。
「確かに、そう言う事考えてしまうことがあるのかもしれない。
だが、現実に君たちが転生者を更生したことで救われた世界や人々だってあったはずだ」
「…」
「一つ聞きたいが、君は何のために警察戦隊として転生者と戦ってきたんだ?
転生者と戦うにしても、根本となる理由があるはずだ。
今はただ、それを思い出せばいい」
そう言ってドギーは屋上を去った。
「俺は、俺がパトレンジャーになった理由、だ?」
ドギーの言葉を頭の中で反芻する。
バンはその理由を思い出そうとするが、通信機が鳴る。
「…何だ」
『緊急事態です!
転生者とみられる男が街で特典を使って暴れています!
至急来てください!』
「かこ!?
おい、待て!
転生者ってどういう…。
切れちまった」
とりあえず、かこから送られた座標や情報を頼りに、バンは走った。
未だに、その理由を思い出せないまま。